2015/06/23 のログ
狭間操一 > 『おい、放せよ』
さいこの動揺に合わせるように、スキンの男は身をよじり、拘束から逃れようと暴れる
スルリと間接を極める手から逃れれば、閉められた箇所に問題が無いか手首を押さえてから

『へへへ…なんだか知らねぇが…暴発しやがったか?バカだぜ!コイツ!』
『センセイ?これでおとなしくしてくれるよな?』

空閑の様子を見て爆笑する取り巻きの男達、そして
我が意を得たりとばかりに、スキンの男がそう囁いた

「なぁ先生…頼むわ…ここは言う事聞いてやってもらえん…?
 俺、まだ死ぬのは嫌やなぁ…ここまで拗れさして…
 どうするん?先生が出てこなければ…俺も死に目には遭わなかった思うわ…
 そっちの子も………」
ゴーグルの男は、空閑に視線を向ける、居た堪れない表情で
搾り出すようにさいこに言葉を投げかけ、心配そうに空閑を見続けた
最も、それはフェイクで、能力による視線を送り、拘束するように神経を蝕む信号を送り続けているのだが

『アンタ救いがねぇなぁ、先生…ハハハ!
 どうするんだ?代わりに来てくれんのかよ、アンタ…』
そうして、改めてスキンヘッドの男は、さいこの肩に手を置こうとするだろう

来島さいこ >  
 ――相手には影響がない。無差別ではない。
 一つ、アイデアを回す。嫌な予感と――

 彼は"センセイどうにかして!"と言った後にこの口ぶり。
 芝居を打っている可能性もある。そう、邪推する。
 違ったら……その時はその時だ。

(これは――仕方ないね。一か八かだけど――)

 ――自身の、"超常を狂わせる体質"を解禁する。
 それは遍く超常を狂わせ、《能力を暴走させる異能》も、《空間を固定化する異能》も、改めて狂わせるだろう。

空閑 栞 > 「こん、の……」

集中をし直す。
今までになかったとはいえ、自分の力量不足だったのかもしれない。
いっそ全員纏めて――――
そう思った瞬間に突然固定が解ける。

「よし、なんとか治ったかな……」

そう呟くと同時にスキンの男の周囲の空気が意図せず圧縮され、真空に近くなっていく。
治った、そう思ったが違った。
使わないようにしていた使い方で新たに暴走を始めただけだったのだ。

急いで異能を解除しようと試みる。

狭間操一 > 「チッ…」
舌打ちをする、能力を狂わせる能力?何だ?そのけったいな力は…
空閑が戻っていくのを見やる

察しの通り、こんなチンピラ、本当ならいつでも片付けられる
だが、あえて面白そうだから様子を見ていたのだ
だけど、ここまでくると、はいさようなら、では済まない…

どうしたものか…そう考えていると、不意

どくん……

と何かが体の奥底で蠢くのを感じる
それは、己の腰に巻いたシザーケースからだ

能力を……狂わせる?
そこで、ふと何かに気付いた

「あかん…先生、それはマジで、止め………」
何かがまずい…
叫ぼうとして


ド……ク………

「あか……ん…」

心臓が跳ねるような音が響く、意識が、黒に染まっていく感触

『がぁッ!』

二人が、少しでも意識をお互いに向けたなら
その直後、チンピラ達の悲鳴が聞こえるだろう
それぞれ地面に倒れ付し、血だまりを作っている

その中心には、自分が居る、暗視ゴーグルをかなぐり捨て
鋏を持って立っている。

来島さいこ >  圧縮された空間を上手く立ちまわる。
 自由になった身体を察せば再び体質を封じ、栞と、抵抗がなければ狭間をひっつかんだ上で逃げ始める。
 引き摺ることになるが、この際我慢して欲しい――
 ――当然二人には拒否・抵抗の余地はある。但し、『狭間が、手を拒めば』『そう云うものと察する』だろう。

 暴走した環境で戦うなどは慣れっこだ――
 ――尤も、同じように暴走させる異能や体質を持っている奴がいるとしたら、
 上手く、自分の意志で動いているかもしれないが。

空閑 栞 > 暴走が解けるとすぐに異能が解除される。
自らの異能に手一杯でチンピラが倒れたことには全く気付くことはない。
異能の暴走が短時間に2回、流石におかしい。
原因は何か、そう考えているとさいこに手を掴まれる。

引っ張られると、そのまま引き摺られるかのように連れていかれた。

来島さいこ >  
 道中、狭間にも手は伸ばしている。
 逃げる準備も整っている。

 ――狭間の異常には、気付いていない。

狭間操一 > 引きずられるように手を引かれ、いくらかジャンクヤードを越えて走った
その間も無言だった、ブツブツと何かをうわごとのように呟いている

ヒュッ………
突然金属が閃く音が響いた
それは銀色の鍬き鋏だ
振り抜いたその合間には、自分を引きずるさいこの手がある
察して避ける事がなければ、その手首の皮を鋭利な切れ味で切り裂くだろう

「ふ……かはは…」

ドクン…ドクン…
ペースの狂ったオルゴールのように、心臓が鳴り響いて止まらない

「ひゃああ…っッハハハハハハハハハハハァッ!アーッハハハハハァ!」
その頬には、握られた鋏を中心に、梵字のようなアザが浮かび上がってきている
おかしくてたまらない…そんな哄笑が響き

「髪…かみ…カミヲ…ねぇ…カミが切りたい…切り裂きたい
切りたい、切りたい!どこまでもきりたい、どんどん切りたい!どこまで切りたいのか自分でもわからない
体が軽い…力が漲ってくるよぉ…最高の気分だよおおお……」
ドク……とまた心臓の音が跳ねる
その度、禍々しい梵字が、自身の肌を侵食していく
まるで、フタをしていた呪いが、強引に開けられたみたいだ
力が…漲ってくる

来島さいこ > 「痛っ……!」

 不意打ちの一閃、手首の皮が裂けた。紅い筋が浮かび、液が溢れる。彼を見据える。
 ……今の彼はちょっとしたワルとかグルとか、そんなチャチなものではない。
 もっと恐ろしいものだ。――漸く、狭間の異変に気付いた。

「……栞ちゃん、ごめん、ちょっと先に逃げてくれるかな。
 大丈夫、直ぐ栞ちゃんの家に寄るから。――わたしも、恐らく彼も、異能を狂わせる力を持ってる。だから、一対一の方が良いかも。」

 左手首を抑えながら、栞に告げる。
 ――相性が悪い、そう栞に告げている。

空閑 栞 > 「でも……」

そう言って口を噤む。
足手まといだと暗に言われていることがわかった。
しかし、ここで逃げることもしたくない。

一瞬の逡巡の後、ポケットから小瓶を取り出す。

「……魔術ならどうです?」

異能が使えないなら魔術を。
使ったあとに来る自分への反動を考えずにそう提案する。

来島さいこ >  
「やめた方がいいかも。……多分同じに扱われる可能性が高いよ。
 ……《能力》や《スキル》を狂わせるって言った方がいいかな。私の方は、少なくてもそう。」

 そう、即答するだろうか。

狭間操一 > 自分がこの島に来る事のできた理由、異能
それは、相手の能力を狂わせる魔眼ではない
本当は、もっとごく簡単なものだった、評価はEクラス、価値のないものとされていた

ある日、荒野で遭遇した化け物
ある日、蔵で見つけた鋏

それが、自分の運命を変え、自分に力を与えた
自分の能力は
『体質として呪いを引き寄せ、自分に宿した上で制御し、自分の力とする能力』だった
だが、その蓋は一度開けられてしまった

開けてしまうと、フタをする事は出来ない
ダムのように決壊した、鬱屈する呪いのエネルギーに正面から蓋をするなど、出来はしないのだ

ゆっくり、目を開けた、オニキスのような漆黒の瞳だ
その目を覗き込めば、閉じ込めていた自身の根源的恐怖を、強制的に引き出されるだろう
そんな目を、ギョロ…と二人に向ける
魔力も異能も、全て暴走させる凶眼が、更に暴走し、中心は赤黒く変色。

「『死』とは…『死』は…こわくなーい……
 生きているから死ぬのは怖い。怖い怖い、理解の出来ないものはこわーい
 人間はしらないモノがすごくこわーい……でも本当は、こわくなーい……
 しぬのは、シヌ、シヌのはタノシイこと…はははははは
 へ…ヘヘヘヒヒヒヒヒャハハハハハハ……」
ガリ…ガリ…
鋏を握っていない親指の爪を噛みながら、世迷言のような言葉を呟き、また高く笑う

獣が、犬が大地を這うように低く構え…飛んだ
「たの死……あはははははははははははははははははは……」
ぐりん…と、人体の限界を超えて身をよじり
さいこに踊りかかる

その肉厚のハサミを開いて、胸元を中心に下から切り上げるつもりだ
人間ではありえない挙動、そして早さである

空閑 栞 > 即答され、自分の無力さに歯噛みした。
口の端を赤い雫が一筋伝う。

「……無事に帰ってくださいね」

そう言い、二人に背を向けて駆け出した。

来島さいこ >  咄嗟に半歩下がり、――胸元を下から上へ薄く引き裂かれる。
 致命には至らない、痛みと衣服が犠牲になる程度――が、痛い事には変わりはない。左右には動けなかった。

『絶対に彼に栞を見せない』為には、自分に視線を向けさせる必要がある。故に動けなかった。
 自分の体質を強制的に引き出されれば、それは超常を狂わせてしまう。
 が、元より相手の異能を狂わせるだけなら、問題はない。
 自分のもう一つの異能も、発動しっぱなしの異能の影響で発動出来ない。大丈夫だ、問題ない。

「……うん。」 

 狂った相手の言葉には一度、深くは考えない。
 考えるのは、落ち着いてからだ。

 ――左手に狩猟用のブーメラン、右手にナイフを、スカートの内から取り出した。
 恐らく、それらを収納するホルスターでも付いているのだろうか。

空閑 栞 > 自分はなんて無力なんだろう。
唇を噛む力は一層強くなる。
後ろの戦場に見向きもせず、ただひたすらに走り去っていった。

ご案内:「落第街大通り」から空閑 栞さんが去りました。
狭間操一 > 「おろ…」
浅い、肉を切る感触はしたが、やはり浅かった
なまじ胸の中心を狙ったばかりに、衣服しか着る事はできなかったようだ
ぐらり、とよろめく

「おいしい、すごく…すごくおいしい……」
ペロ…鋏についた血を舐めながら、ト、トン…と2~3歩跳ねる
相手は武器を取り出したようだ、それを漆黒の瞳で眺めていた


「あーあー…アバー…あー……思い出したぁー…
あんたさいこ先生だろー…
結婚したんだっけぇー?そうだな…良い先生だった
あー…なんで今まで思い出せなかったんだろう…
そうか、アンタよく考えたら、学校の先生じゃん…」

ガシガシと左手で髪を掻き毟る、そうだ、思い出した
この人は立派な学園の先生をやってる人だ、そう
確かめでたくこの前結婚して…結婚して…
「結婚、してぇー…」

「幸せそうにしてんじゃねぇよッ!!あァッ!
 しあ…幸せ!幸せそうに!してんじゃねぇよ!!!」
ダン…と地面を踏みしめると、蜘蛛の巣状に地面にヒビが入る
その勢いのままに、加速をつけて飛んだ
飛び込むような体制で、脇腹めがけて切り込んだ
距離を詰めて何度も外皮を切り込んでいくつもりだ

来島さいこ > 「……うん。」 

 瞳を除けば恐怖心が膨れ上がる。が、意志力で恐怖心を制御する。

 恐怖心に克己する為の理論を創る。
 ……『怖い』ということは『向き合うべき脅威である』ということ。
 もし恐怖心を感じないとすれば、ノミと同類。そんな言い回しを何かの漫画で読んだ気がする。
 
 『怖い』。だからこそ、『向き合う』。

 とは言え、彼女が逃げ切ったら私も逃げよう。
 云わなかったけど、私の異能が暴走させて彼の現状を形成した可能性は高い。
 罪悪感に、心が痛む。

 でも、これで『ちゃんと動ける。』自分のための理論を作って、誤魔化す。


 相手は速い。自身も身軽さには自信があるが、それに匹敵する――
 ――と言うか、単純なスペックで言えば人間の限界を相手は超えている。
 効率的に致命傷を避けて、漸く渡り合える。

「幸せで――ごめんねッ!」

 紙一重で脇腹を切らせる。想像以上の痛みが奔り、赤い線が引かれる。
 大きな動きはしない。完全に避けようと大きく動けば、『どこかで失敗し致命となりかねない』。
 『刺す』動きにだけ気をつけて、後はピーラーのように身体を剥かせながらも栞を逃げ切らせよう。

 そうだ、私は幸せなんだ。ちゃんと、頑張って帰らなきゃ。
 左手のブーメランを、狭間の顎目掛けて振り上げ叩き付けに掛かる。

 ――三度打ち合った後ぐらいなら、栞も逃げ切った後だろうか。
 その後から逃亡に転じよう。そう、逃げる算段を計算する。

狭間操一 > 「オッほぉぉ…マジかッ、受けやがったあッ!」
血の付いた口元をゆがめながら
ざくり…と肉を切る感触がエーテルシザーから伝わってくる

「止まらねえええー…なぁ…先生ーアンタのお陰さぁ…
 こいつはどうしようもねぇ、クズでよぉー…ひゃははははぁ…死ぬのが社会のタメってモンだ
 俺の…おレのことを…アバー…いい様に使いやがってよぉー……
 でも、抑える能力のタガが外れてよぉー…あははははガッ…ゴホッ………
 だもんで…うっかりのっとっちまったぜぇー…い…ヒヒ……」
ゴキ…ゴキリ…と、今の挙動でおかしくなった骨を
強制的に戻している、それは、人間としての機能ではなく
空から糸操り人形として体を動かしているようだ

目に色はない、狭間本人の意識も、今は暗闇の奥底に居る
ああ…俺は…乗っ取られたのか…
暗い意識の底で、それしか思う事はなく
狭い密室の中で、プロジェクターが再生するビデオを膝を抱えて見るかのように
ニューロンの奥底で人事の様に、自分の体が行っている光景を見ていた

昔と同じだ
帰ってこない親父と、蒸発した母親を待ちながら
この世界で、一人ぼっちで冷たいパックの寿司を食っていたあの時と……


「このッ!体使ってよおッ!これからずっと人をヒトをひとをおおおおお!
 ヘヒヒ……ごぶっフ……」
アゴが強力な衝撃で揺らされる感覚、通常ならばこれで脳が揺らされ、ノックアウトだろう
だが、今自分を動かしているのは、体に命令をしているのは、脳味噌ではない
ぐぎり…と嫌な音を首からさせながら、目線だけをさいこに向けた

「痛…いよ…ねえ。センセイ…いたいよ?どうして…?」
さいこを覗き込む暗い瞳、そして閃く銀の刃

それは、倒れこむようにゆっくりと地面に沈みながら
その足首の裏側を狙って閃いた

切り裂いて、機動力を奪おうというつもりだ

来島さいこ >   ――冷静に見据える。
 攻防に於いて低い姿勢を取るとすれば、手の打点の高い攻撃を避けるか、下から狙うかが真っ先に浮かぶ。

 ――となれば。

 足首の裏、足の腱、アキレス腱は切らせない。
 機動力を中心に据える私にとってはそれは致命だ。
 相手が沈む動作を見せると同時に飛び退いて、裏を斬らせぬ様に動く。
 相手の狙いから後ろにずれれば、側面がざっくりと裂かれる。
 アキレス腱よりマシだが、それでも痛みが動きを鈍らせる。

 狂った彼から、どことなく、悲しい感情を覚えるような。
 ――いや、それより。

「抑える能力の……そっか、私が……やっぱり、『私のこの体質は、誰も得しない』ね。
 ……ごめんね。」

 だから、去ればマシになるかもしれない。
 一抹の期待と不安を持てば、脱出を早める事にする。
 居れば居るだけ、悪化するかもしれない。

 後方に下がりながら、ブーメランを立てに、倒れこんだ狭間へ投げる。
 直後、背を向けて逃げ出した。
 痛む足で、強引に駆ける。

 機動力を削ぐ選択肢を取る以上、私の異能がたしかに影響している以上、
 長く此処にいてはいけない。もう遅いかもしれないが。

 これで2度目の打ち合いと読む。少々不安はあるが、時間は稼げたか。

狭間操一 > 「かわっ…!かわ!かわいそう!センセイハ…カワイソウ…アッヘヘ…
 こんな状況で…見捨てて逃げちまったナァ…あの子…カワイソウ、同情だ…
 ヒトは所詮ヒトリ…こんなモンだよォ…アンタの場所なんて…
 良い様に盾にされてスてられんのさぁぁ……」
切り裂いたハサミを手元でクルリと一回転、地面に突き立てるようにして
倒れこむ力に制動をかける、この勢いで身を起こしにいく

「アンタは意味のない存在だよぉ……何の意味もない存在だ…
 せめて俺に意味をくれよぉ…生きてるってイミヲお……
 オニイサン知りたいなあ…生きてるってなんだろおなあ…
 生き…きき…イキてるってえ…ぁああはははははははは…」
狂騒とも言うべき雄叫びを上げながら
尚もバーサーカーのように向かっていく、痛みはトんでいるようだ

「良いよ、良いんだ…先生…俺が悪いんだ…でも、そんなに自分を責める心があるのなら…」
向かっていくと、飛んでくるのはブーメランだ
これを避ければ、恐らく相手は彼方へ逃げ去るだろう
だが、当然とばかりに避ける挙動は見せなかった、ぐちゅ…と水音がする
左目に命中した音。

「――――ねぇ、かみを、きらせて」
構わず突き進む、血まみれの手を伸ばして
さいこにタックルを仕掛けるだろう

地面へと押し倒すつもりだ

来島さいこ >  
 
 
   「――やっ!?」

  
  詰めを焦りすぎた。
  タックルを受けて、押し倒され、た。

狭間操一 > 後ろから、勢いを乗せ、体重を乗せ
何の遠慮もなく、地面へと押し倒す
左目からは血とも、涙とも取れないものが流れている
だけど気にした風はなかった、痛みに歪める表情もなく
ただ、狂ったように笑う顔だけ

「はぁ…はぁーッ…はぁーッ………」
押し倒す、と…
興奮したように吐息を漏らしながら、両膝でその肩を抑えるようにマウントを取ろうと動きつつ
ゆっくりと、歯で、ガチン…と鋏を咥える

「か…かみ…切ひはい…キりはひ…フーッ……」
刃を開いたままのハサミを咥えながら
後ろから、さいこの横に纏めた綺麗な黒髪に、顔を落としていく
刃があたれば、プツリ…と髪の毛が断裁されていく音が響くかもしれない

来島さいこ > 「……。」

 狙われているのは髪。
 決して喜んで斬られたくはないものだけど、

 マウントを取られれば、興奮した彼の顔が見える。
 ……獲物を捨てて、その彼を優しく抱きしめる。

 別に感情や優しさで奇跡を起こせるとは思った訳じゃない。
 私は聖女じゃない。

 だけど、しでかした罪悪感や、彼?から語られる彼の過去が、どうしても私の心を引いて、同情してしまう。

 繰り返す。私は聖女じゃない。
 こんなのは、ただの『エゴ』だ。『罪』だ。『愛』ではない。
 でも、同情せずには、罪悪感を抱かずにはいられない。

「ごめんね。……いいよ、優しく切ってね。
 生きてるから、髪を切れるよ。切らせてあげる。」

 本心から、優しい《あまい》言葉を、投げかけていた。
 優しく抱きしめて《おさえて》、"それだけをさせるように"――そんな下心を考える自分に、少しだけ嫌気がさした。

狭間操一 > 「は…ハッ……はぁーっ…!」
甘い声が聞こえる…
これは何だろう、女性の声…
女ってのは金切り声を上げて、ただ俺を蔑むだけ、そんな生き物のハズだ…
ゴミのように俺を見る、ただの生き物
だけどなんだろう……落ち着く声だ…

「ふーっ…フー……!」
髪の一つまみ、指先で掬う程度の髪束に刃が入れば
それはぷつり、と音がして切り裂かれるだろう

黒髪、それはこのハサミの最初の持ち主である殺人鬼が
最も愛し、執着していたもの…このハサミに宿る意思の究極だ

瞬間、ハサミを通じて快感が流れ込んで、最初の慟哭は塗りつぶされた
全てを手に入れたような全能感と、恍惚とした快楽の波

「フッ…フゥー…フゥー……」
残る右目が血走る、たまらない…もっとだ…
もっと……快楽を……

地面に組み敷き、抱きしめられながら、咥えたハサミの刃を、首元に当てようとする
まるで動くなとでも言うように…
そうしてから伸ばしたのは

その、先程衣服の断裁された胸元

残った布をめくり上げ、胸を乱暴に掴んで捏ねようとするだろう

来島さいこ >  
 ――狼藉を働かれても、この程度なら受け容れよう。
 耐える。耐える。

 だけど、それ以上は進ませない。
 ――しれっと、彼の瞳から視線を外す。
 相手はハサミを加えて乱暴を働いている。
 
 ――直感的に体質を抑えられると認識し、抑える。
 《目があっていない》。だから、抑えられる。そして、

 髪を斬る以上の事をするならば、

(湖に宙を描く――)

 場に存在する超常を把握し、描く。
 ――現象を現象のままに引き裂く超常。其れを描く。
 
 目を瞑り、語る。

「……それ以上は、やめて欲しいな。
 私にも大切な人が居るんだ。だから、ダメ。」

狭間操一 > 「フーッ…フゥーッ……」
荒い呼気だけが鳴り響く
目の前のモノを征服したいという、本能
付き動くように掌は動いた
まるであつらえた様に服が引き裂かれたその胸へと、乱暴に伸びる

「フーッ…フー……」
荒い呼気は尚も止まらない
相手のしている事に気付けば、何かしたかもしれないが
相手の能力については知る由もなく
ただ言葉だけで嘆願しているように写る
最も、ここで止めなかった結果、肉体が滅んでも
それを動かしているモノにとって見れば、何ら損をする事はない

「フーッ…!」
血走った目は、もぞもぞと手を動かした
それ以上、スカートに手をかけ、引き裂くつもりだ

聞く気はない、とでも答えるかのように

来島さいこ >  
 
 裂けたスカートの中はスパッツと、ホルスター。
 其れすら裂けば、ベージュの下着。
 詳しくは描けないが、とても綺麗だ。

「ごめんね。」

 強引に手刀を以って、その場に存在する反転流動のエーテルシザーが持つ、《現象を現象のままに切り裂く》超常を奮って、放つ。
 現象を現象のままに切り裂く――例えばそう、呪いを呪いのままに、断ち切ろうと。

 但し、その間に首をがっつり斬られても、おかしくはない。

狭間操一 > 「ふ……く……」
ドク…とまた心臓が跳ねる、梵字が侵食度を上げ
己の自我を苛んでいた
やれ…もっとだ…

下着すら引き裂いて、全て征服する…
鬱屈した精神が相手を慰み者にしようと進む

ガキ………
とそこで鋏に手刀が当たった
壊れはしない、そういう鋏だ
だが

「が……あ…」
右半身が急に無くなってしまったかのように動かない
手刀を受けた右の刃の黒ずみが、綺麗に切り落とされたように

「ああああああああ…この…女ァ!」
苦しむように呻き始めた、この女ふざけるなよ…
怨嗟の声を上げようとすれば、ぽろ…と口からハサミが零れ落ちる
痛みに耐えかねて口から離されたはさみは、さいこの右頬を掠めるような軌道で
地面に突き立つかもしれない

「ぁ……が………」
己を取り巻く呪いの4分の1が切り裂かれる
右掌に血が通う感覚がした

ス……と、スカートから手は離れていく

左の手は、見えない目でハサミを探すように、地面をのたうっている

来島さいこ >  ――その先は言うまい。
 ただ、綺麗だったと言っておこう。
 そして、呪いの1/4を、断ち切れた。そこで一度描かれたものは消える。

「……っ」
 
 とは言え拘束が解かれれば、即座に立ち上がって背を向けて――

 鋏を咄嗟に遠くへ蹴り飛ばす。出来れば、ゴミやジャンクの山の中なんかがいい。

 本心としては回収はしたい――が、どうみてもあの鋏は危険だ。
 持った瞬間呪われてもおかしくはない。私は解呪師じゃない。

 だから、蹴飛ばして、時間を稼ぐ。
 
「……ごめんね。もっと前に出会えていれば、一時の慰みものにぐらい、なれたんだけどね。
 でも、今はダメ。ごめんね――」

 疲弊したからだで、下半身を露出させて走る。
 逃げて、逃げて、逃げ切った。

ご案内:「落第街大通り」から来島さいこさんが去りました。
狭間操一 > 「あ……が……」
かすれる意識と、揺らぐ視界
視界…?右しか見えない…左目はどうなって…
ぼやける頭で、ハサミを探る、見えな…

「あ…あああああ…痛い…痛い…」

正気づけば、後から沸きあがる痛み、痛み
左目が…脳がかき混ぜられているみたいな痛みだ

「痛いいい!」
ゴロゴロと、落第の町を転がる姿
それは、男のしてきた事を考えれば
相応の代価にしても、温かったのかもしれない

男がのたうつ、血も流しすぎた、汚い地面に傷口が押し付けられる

助けも

差し述べられる手も、ない

悪とは、そういうものだ。

ご案内:「落第街大通り」から狭間操一さんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」にさんが現れました。
> 「あ?
 あぁ、お前らか。久しぶりだな」
唐突に声をかけられて後ろを向くと、随分前に路地裏で手を貸したチンピラ達がそこにいた
ココらへんでもある程度まともな二級学生達らしく、集団で情報共有しながら暮らしているらしい
まともな二級学生って言葉にピンと来ない奴らもいるだろうが、こいつらはこいつらで結構必死に生きているもんだ
部活動時代色んな奴らを見てきたから、まぁ、そこそこには詳しい
だからこいつらの顔を見るのは久しぶりで、立ち話でもしようという気になった

> 何処か遠くで聞こえる発砲音に物騒だな、と思いつつも、この辺りでは珍しいことでもない

「最近みなかったじゃねーか
 どうかしたのか?」
『なぁに、この辺も物騒になってなぁ』
よ、顎鬚の男が無精髭を撫でながらいい
『元から物騒だろ
 まぁ最近は特にだがな』
とハゲ坊主がそれに答える
この二人はペアを組んでいるらしく、割りかし何時も一緒で、集団の顔的存在でもあるらしい
だからこそ、この二人だけで俺に話しかけてきた、というのが気になった
「物騒、ね
 確かに最近色々とヤバイらしいじゃねーか、こっち」
つま先で地面を軽く叩く
『あぁ、まぁなぁ
 何時もやべー奴はゴロゴロと居るんだがな
 今回はよくねぇな』
参った、というように顎鬚が肩をすくめ
『何時もなら大体潰し合ってくれたり、他の奴らの不興を買ったりしてある程度の数まで淘汰されるんだがな
 最近のはどうも、粒ぞろいでな
 私らも迂闊に表を歩けないぐらいだ』
腕を組みながら坊主が頷く

「それで、わざわざ俺に話しかけてきたってことは
 依頼、でもあんのか?」
部活動のことも、正期IDなのもこいつらは知ってる
手を貸したり貸してもらったり、まぁ利用し合うような関係だが

『話が早くて助かる』
と、頷きながらも、顎鬚は何処か迷うような顔をしている
訝しげな視線を送ると
何度か頷いて決心が固まったのか、坊主頭が顎鬚と頷き合って

『風紀委員にここ最近の辺りを荒らしまわっている奴らを取り締まって欲しい
 と、陳情を頼みたい』

という言葉と共に、一通の封筒を差し出された

いやいやまてまて

> 「お前ら、馬鹿か?
 んなもん風紀委員が取り持つわけねーだろ?
 ていうかんなもんを落第街の奴らから出すわけねーだろ?」
思わず一歩踏み込んで語気荒く答えちまう
いやそりゃそうだろ?
それはつまり、もう自分らでなんとも出来ねーから手を貸してくれ、と頭を下げるようなもんだ
二級学生、っていっても色々な奴がいて
正規学生に対してコンプレックスを持つような奴らもいれば、逆に二級であることを逆手に取って裏で生きるような奴らも居る
こいつらは後者で、二級であることに一種のプライドのようなものを持っているような奴らだ
そんな奴らがんな頼み事をしてくるとはまったくもって思わないし、未だに信じられねぇ

『頼む』
『正規学生でこんな依頼を聞いてくれるよう奴はお前しか居ないんだ』
と、二人同時に頭を下げられて、ずずいと封筒を差し出される

「いや、まてとりあえず顔を上げろ
 あのな、お前らだってわかってんだろ?
 ここは落第街だ
 落第街は『存在しない街』だ
 そんなもんが通るかっつうんだよ」
自分で言いながらも、こいつらだってしっかり考えてこの行動を起こしてるんだろうという事もわかる
だから、その封筒が何かを握ってるんだろう
『この中には、俺らの仲間内で集められる限りの署名が入っている』
頭を上げないまま顎鬚が告げる
思わず、額を打った
「いや、どう考えても無理だろ」
んなもんで動くとは全くおもえねー
なにせそこに書いてあるだろう署名は全員二級学生及びそれすらない奴らの署名だ
んなもんで動くならとっくのとうにこの辺の治安もよくなるだろう

ここは、存在しない街だ
そこにすむ人間も、存在しなくて当たり前だ
だろう?

> それも、こいつらはわかっているんだろう
それでも、と言っている、というのもわかる
そんでもって、これは『依頼』だ
なら

「報酬は」
漏れるため息を隠そうともせずに、封筒を受け取りながらそう返す

『話が早くて、助かる』
ひとまず安心したように言う顎鬚と、今度は逆に顔をしかめる坊主頭
「おいまて報酬がないならこいつは返すぞ」
と封筒を押し付けるように胸に当てると坊主頭は慌てて頭を振って
『違う
 ただ、これはその、アレで、あってな』
何故か気まずそうな顔で坊主頭が無い頭を撫でながら答える
はぁ?と言葉に出しながら睨む
何いってんだこいつ感も満載だ

『まぁ、見てもらったほうが早いだろ』
顎鬚がそう言いながら携帯をとりだして画面を見せる
覗きこむと、一枚の写真だ
そこにはまぁ、なんていうかポルノ一歩手前、っていうか普通に見えてんな
とまぁあられもない姿で走る女性の写真で
「これがなんだ」っていうんだよ、という言葉が途中で詰まる

その顔と胸は、見間違え用もなく井戸木 さいこ先生、その人であった

手が、携帯を握りしめ顎鬚を睨む
「お前、これを何処で?」

顎鬚が、息を呑む
『あんまおっかなく睨むんじゃねーよ
 話づれーだろーが』
「あ、あぁ、悪い」
手を離し、それでも睨む視線はやめない
もしこいつらの仲間内だというのなら
『とりあえず落ち着け
 それは仲間内の奴らが外の奴らから仕入れた写真だ』

視線をはずす
とりあえず、落ち着こう

> 『昨晩、この辺りで派手ではないが戦闘があった
 その後に、この先生が走り去るのを捕らえたそうだ』
坊主がそう言いながら、写真から眼をそむけているのが見える
あぁ、そういやこいつ、こういうの苦手だったか
まぁだからこそ顔役の片方なんだろうが

『んで、報酬っていうのは、あんたがそれを届けてくれるなら俺らはこれの流出を全力で止める、っていうのだ』
今度は、俺が苦い顔をする番だった
確かに俺はさいこ先生に借りがある
だがそれをこいつらが知ってるとは思わなかった
なんせこっち側には着てない筈、だからな、多分
じっと顎鬚を睨むと
『ま、俺らも色々と伝手はあるんだ』
ニヤリ、と
駆け引きの手綱を握っている奴の笑みを見せられる

これで、依頼内容の確認は終わった

ため息を盛大に吐いて
「届けるだけだぞ」
と予め釘を刺す
『あぁ』『頼んだ』
軽く手を挙げる顎鬚と、拝むように両手を合わせる坊主
まぁ、どーせムリだろうけどな、と思いながら
「なるべく止めろよ」
と背中越しに声を書ける

全部はムリだろう
もうすでに流れ始めている写真だ
だが、あいつらなら多分、行っても歓楽街までで止めてくれるだろうとも思う

学園にまで流すなよ

そう願いながら、大通りを離れた

ご案内:「落第街大通り」からさんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」にスラッシュさんが現れました。
スラッシュ > 夜の落第街、午後8時頃。
まだまだ人通りも多く、活気もある。

スカイブルーのツインテールに、デカデカとしたバラの髪飾り。
見るからに目立ちたがりで騒がしそうな女だが、大人しく人通りを眺めている。今日は珍しく手ぶらで。

この街で女性が一人でいれば男どもが黙っているはずがないのだが、誰も寄りつこうとしない。
むしろ避けていくものすらいる。
それは彼女のトレードマークである胸のワッペンを見たからだろうか。
それとも、頬の返り血を見てだろうか。

彼女はそんなことを気にも留めず、ただただ無表情に通りを眺めている。

ご案内:「落第街大通り」に薄野ツヅラさんが現れました。
薄野ツヅラ > ───カツリ、杖の音がひとつ。
ぼんやりと通りを見つめる少女の姿を見遣れば、ゆっくりゆっくりと歩み寄る。
生憎見た目に合う賑やかさは其処にはなく、少々訝しみながらもじわりと笑みを浮かべる。

「やァ、随分とご機嫌なご様子だけどぉ──……」

彼女の双眸を覗き込むようにして人当たりのよさそうな笑顔を浮かべた。

スラッシュ > 「おう、ツヅラとかいうヤツだニャ。」
眉一つ動かさず、ひらと片手をあげる。

「喜ぶがいーニャ。今日はオフだしニャ。」
そしてやっと表情が変わったかと思うと、ただのあくび。

いつもの様な営業スマイルや、オーバーリアクションも無く、例のトランクも無い。あと頬の返り血がいつもとは違うところだろうか。

薄野ツヅラ > 「そう、なら手間は省けた──、と云いたいところだけどぉ」

にこりと笑みを湛えたまま、こてりと首を傾げる。
ちょんちょん、と自らの頬を数回指し示す。

「過激なファッションみたいだけど何かあったか教えてもらえないかしらァ?
 ホラ、お友達のよしみでぇ───……☆」

普段と違った様子の少女に対して普段通り、何も変わらない様子で話し続ける。
言葉は蛇口を捻ったかのように流れ落ちる。

スラッシュ > ぐしぐしと頬を拭う。
…ぬるりとした感触。
そうか、血が付いていたのか。
特に驚いた表情も見せること無く、ポッケから出したウサギちゃんハンカチで血を拭く。

「別にケンカ吹っ掛けられたから返り討ちにしてやったダケ。
正当防衛だニャ。この街では別に珍しいことじゃニャいデショ?」
仕返しでもするかのように首を傾げてみせる。

薄野ツヅラ > 「そ、加害者と勘違いされて美人な死神さんに捕まらないようにねェ」

目を細めて、じわりとまた笑う。
ポシェットの中からチュッパチャップスを取り出して、乱雑に包みを開ける。
口の中に飴を放った。
ガリガリと奥歯で噛みながら、静かにゆったりと口を開く。

「───あの莫迦に何を売ってくれたのかしらァ?」

グイ、と杖に体重を預けつつ、また覗き込むようにして其の双眸を見つめる。

スラッシュ > チッと舌打ちをする。
あからさまな公安に、商売がバレるという失態、穿り返されて気分が良い物ではない。

下から覗き込まれれば、汚物でも見るかのようで見下すだろう。
「ウチが顧客情報バラすとでも思ってんのかニャ?
ナメくさったマネするのも大概にしろよニャ。」
感じるかどうかはさて置き、それなりの威圧感は出ているだろうか。

薄野ツヅラ > 「じゃあ──情報提供のご協力を願えないかしらぁ?」

見下されれば、楽しげに笑顔を浮かべる。
あくまで不敵に、不遜に。彼女らしい笑みを湛えたまま、ポシェットに手を入れる。

「舐めるなんてそんなことしないんだゾ──……☆
 此処の住民は平等に無価値なんだから舐める必要もないでしょう?」

ボク含めて、と曖昧に笑う。
ごそごそとポシェットから公安委員の腕章を取り出せば、ゆっくりと左腕に巻く。

「さて、あくまで『一般市民』の『情報提供』で終わらせたいのだけどぉ」

不敵に笑った。

スラッシュ > 「ったく、ワンころがキャンキャンとエラそうに。」
公安委員会の腕章を見れば、そんな悪態をつく。

「あの子に売ってんのは残念ながら中毒性も無いごく一般的な魔力強化のクスリ。別に使い方間違わなきゃ次の日ダレるだけ、用法容量もしーーーっかり教えてやったニャ。」
とだるそうに話す。無表情からは伝わるかわからないが、嘘をついている様子はない。

薄野ツヅラ > 「あッは、使える物は使う主義なものでねェ──…」

ご協力どうも、と呟きながら笑顔を浮かべる。
暫しの沈黙の後、カツリと云う乾いた音が大通りに響く。
杖をつき直し、小さく欠伸をひとつ。

「───あとこっちはオシゴトでねェ。
 アンタが普段売ってる薬の中にちょーっと非合法なお薬があるって聞いたのだけどぉ」

お話してもらえたりしないかしらぁ、と付け足す。
ガリガリと上機嫌に噛まれていた飴が砕けた。

スラッシュ > 「『一般人』の『情報提供』はしてやったニャ。
それ以上情報が欲しいならソレなりのやり方ってモンがあるんじゃネーのかニャ?それとも携帯でも出してお友達呼びますかニャ?」

別に流石にまだアジトまでバレている訳ではない。
たった今証拠を持っている訳でもない。暴けるのは精々栞さんに売ったクスリだけ、ならば精々5年ほど。

「商売人相手にしてる自覚はあんのかニャ?
お互い実りのあるお話をすべきだと思うんですけどニャー?」

相手に主導権を握られて面白くは無い。
が、何かを顔に出してしまえば下手な情報を与えてしまうだろう。
無表情を保つ。

薄野ツヅラ > 「じゃあいいわぁ、真面目に仕事するのもキャラじゃないしぃ」

気が削がれた、とでも云うようにふああと大きく欠伸を一つ。
にっこりと笑みを浮かべて左手の人差し指をぴんと立てる。
現状証拠に成り得る物を持っていない彼女を深追いするのも余り得策でないことも理解していた。

「其れでは────」

けほん、と咳払いをひとつ。

「其れでは『監視番号324』。
 お互い実りのある生活が出来るように、
 今後の振る舞いには気を配るのをお勧めするわぁ──……

 其れと。暫くの営業自粛をお勧めしておくゾ──…☆」

ジイ、と最後に紅玉のような双眸を向ければ、くるりと踵を返す。
かつり、かつりと杖を鳴らして大通りから細く入り組んだ路地へと姿を消した。

ご案内:「落第街大通り」から薄野ツヅラさんが去りました。
スラッシュ > 「・・・なんニャ。まだ話は済んでネーっての。」
チッと聞こえるように舌打ちをすると、再び通りの人々を眺める一般人に戻る。

(やれやれ、ココでスザキに昨日もらったヤツつかっときゃよかったのかねぇ)と大きくため息。
まったく、いいお客を捕まえたと思ったら一緒にとんでもないモノを引っこ抜いてしまった。ツイてない。