2015/06/09 のログ
■狼谷 涼介 > 「……依存する事が悪いことだと思わない。ただ、それでも、僕は自分を信じて生きていきたい
曖昧でも、不確定でもいい。僕は、今僕が持っている自分の気持ちを信じたい。自分の信じる人の事を、信じたいんだ」
絞り出した言葉はどこか震えていて
握りしめた青年の拳も、それと同じように
■薄野ツヅラ > ───……あっそ
(どうでもよさげに呟く)
(目前の感情の海に呑まれる青年をちら、と見遣ればいたたまれなくなったのかすぐに目を逸らす)
(ふい、と踵を返した)
(少女は落第街のもっと、もっと暗い深海へと沈み込む)
(去り際に小さくごめんね、と)
ご案内:「路地裏」から薄野ツヅラさんが去りました。
■狼谷 涼介 > 去っていく少女を俯いたまま見送る
少女の残した最後の言葉は届いていたのか、いないのか
その場で立ち尽くしていた青年は、しばらくして、少女と同じように何処かへと立ち去っていった
ご案内:「路地裏」から狼谷 涼介さんが去りました。
ご案内:「路地裏」に桐竹 琴乃さんが現れました。
■桐竹 琴乃 > 何時も通りでは無く、歩く。
様子は別段変わっている訳ではない。
違うのはそう、考え事をしているという一点のみ。
学園で起きた事。
カフェテラスも少なからず被害を受け。
幸いそこに私は居なかった。
居なかっただけだ。
幸いなのか不幸なのか、枠の外。
恐らく、幸運だったろう。
聞いた話だと相当に酷い事になったと聞くし、今もまだ一緒に働いたことのある子が生活に戻ってきていない。
それが私だった、と思うと。
その子には悪いとは思う。
ゾっとする。私で無くてよかった、そう思う。
「ん……」
思考が途切れ改めて周りを見る。
どうやら気づかない内に入った事の無い方の道に入ったようだ。
見覚えが無い。
■桐竹 琴乃 > 「……」
まあ、たまにはいい。
位置が分からなくなれば、跳べばいい。
それだけだ。
歩きながら、思考がまた元に戻る。
一般的な考えなんだとは思う。
よかった、と思う自分に罪悪感を覚える事も。
そこまでひっくるめて嘆息する。
「あー……こういうのはヤだなあ」
はああ、と息を吐く。
ネガティブになればなるほど気も、足も重くなる。
趣味の夜歩きも、全く楽しめたモンじゃない。
……いや、元々楽しんでいるのかと言われるとそれも疑問であるんだけども。
■桐竹 琴乃 > 趣味ではあるが楽しんでいないというこの行為自体にいう程意味はあるのか、と言うとこれもまた無い。
始めた理由なんて強いて言うなら放任主義の両親に対する反抗心がアレでコレでソレになった結果の要は非行への第一歩だったというこれまた話題にすらならないオチだ。
まあ、結果はやっぱり何も言われないし、ムキになって朝帰りしても「帰らないのなら一報を入れろ」そう言われただけであったので更にムキになり一週間ぐらい友人宅を歩き回り、これで流石にと思って帰れば「居なかったのか」の一言で反抗心も何も全て呆れ返って放棄された。
思えば怒られたかったのか、心配されたかったのか。
「どっちなんだろなぁ」
歩くのを止めて適当な所に腰掛ける。
胡乱な思考。
元々考えていたコトを考えないようにしようとしている、そんな自衛行為。
これ自体にもやっぱり意味は無かった。
ご案内:「路地裏」にchitaさんが現れました。
■chita >
「……」
巡回していた警備機械を避けて、路地に入り込んだチタは、思わず
独り言を言ってる少女を、探るようにじっと見てしまった。
ちょっと、びっくりしたのである。
■桐竹 琴乃 > 顔を顎にのせ、ぼーっとする。
尞に戻るのも、このまま歩くのも今は気が乗らない。
余計な事を考えたせいだろう。
何してんだ私、という思考と。
ちょっとネガティブ入ったぐらいで今まで続けてきた事を止めるって?何ていうこれまたムキになった思考。
その訳の分からない二つの思考に縛られてどうしたモンかとなっている現状に何やらよく分からない手詰まりを感じる。
だからこその停滞を選ぶこの現状。
非常に悪手と言わざるを得ない、が。
それでも身体は動くことを拒否するし。
頭は要らない事を延々と考え続ける。
心だけがそのもどかしさに悲鳴を上げる。
■桐竹 琴乃 > 「ああ……」
段々とイライラしてきた。
次第に心が身体と頭を押さえつけ始め。
「……」
そこで目の端に映る人影に気づく。
■chita >
「……」
夜のスラムの路地裏である。怪しい人間等はいくらでも見てきた。
しかし、酔っぱらいでもジャンキーでもなさそうな少女が、こんな
所で物憂げに独り言しているのに遭遇したことはない。
チタの行動は、動物的な所がある。
未知の存在に、当然警戒して、観察したのだ。
■桐竹 琴乃 > 「……えーと」
こちらを見る少女(?)らしき人物に焦点を当てる。
全く気付かなかった。
そこには綺麗な銀髪と対照的に薄汚れた迷彩服を来た少女。
逆に言うと、こちらからすれば。
まさに未知の存在である。
が、こちらはそれに対する訓練など受けている訳も無く。
ただ、そのままの姿勢で眼だけは突然現れた少女を凝視していた。
■chita >
危険は気配は、チタの感覚器には無い。普通の人間、学園の生徒と
いう奴なのだろう。
チタは、この間同じように路地で遭遇した白衣の男を思い出す。
目の前の彼女も、アレと同じように妙な力があるかもしれない。
警戒は緩めないまま、また、警戒されないようにゆっくりと横を通
りすぎようとする。
■桐竹 琴乃 > 努めて冷静に。
まず最初に声を掛けるかべきか否か。
この少女は危険ではないのか、と言われるとまず最初にでた感想は。
『恐らく争いになれば死ぬ』
という結論に達する。
状況が異常すぎる、そう感じる。
私自身も大概この場からするとイレギュラーなのだろうが。
―――---。
「こんばんわ」
通り過ぎようとする少女に。
数秒の思考の後に。
きわめて自然体の挨拶の言葉を送った。
■chita >
「こ、こんばんわッ」
ちょっと上ずった声で答えた。ほとんど反射的に。
ビビリな柴犬等が、撫でようと手を出したら後ずさって尻を地面に
つけるのに、ちょっと似ていた。
■桐竹 琴乃 > 思った以上の反応にこちらも一瞬だけビクリとする。
すぐに持ち直すが。
元々特に話題もなく。
酷く被虐的な思考から声を掛けていただけに。
その先の事を何も考えていなかったせいで。
「こんな夜に独り歩きは危険だよ?」
などと言う、「お前が言うな」という一言を盛大に送る。
■chita >
「私は、問題無いです……」
不機嫌そうな、チタの瞳が少女を見た。チタは、いつだって不機嫌
なのだから、いつもの顔であるが。
私より、自分の心配をしろ、という表情に見えなくもない。
その実、さっさと逃げればよかったかな。等と困惑中である。
■桐竹 琴乃 > 案の定という感じで睨まれ「だよね」
なんて顔をする。
ともあれ会話が通じる相手であり、いきなり襲われ、この世からもドロップアウトする事はなさそうだ、とある程度の結論を付けた。
少し余裕が出てきたので少女を少しだけ観察し思考を働かせる。
私みて探るようにこちらを見ていた、のだから私は彼女の日常にとって非日常だったんだろう。
つまり、この辺りが言ってしまえば縄張りのようなものか。
なので一先ずこういう。
「気にしないで、たまたま迷い込んだだけだから」
すぐ、出ていくよ、というニュアンスを込めて。
■chita >
「私も、ただ通りがかっただけ」
それから、大通りへ続く方を指さして。
「迷ってるなら、あっちで助けて貰えるのでは」
彼女は、短く端的な言葉で会話する癖があるようで。
「警備の機械が、巡回してるので」
■桐竹 琴乃 > 「心配ありがと。ただまあ」
よっ、と言いながら腰かけていた所から軽く飛び降りる。
「それには及ばないかな。迷い込んだワケじゃぁないからね」
空を見上げる。
コンクリートと鉄の樹海から覗く空。
「それに私も巡回してる機械に見つかりたくも無いしね」
単に夜歩きがバレて絞られるのが嫌だから、という軽い理由ではあるが。
■chita >
「なら、ここから2ブロック先の路地なら。
これからの時間、朝まで巡回は無いです」
そう言った。
チタは、この島の非正規住人で、空を見上げる彼女はそうではないの
だが。
夜のスラム路地で、人目に付きたく無い事情がある同士なら、幾分
緊張も和らぐというものである。
それで、彼女が不意に上を見上げたのだから。つられて見た。
■桐竹 琴乃 > 「空って好きかな?」
唐突に全く考えても、言うつもりもなかった言葉。
「私はワリと好きだけど」
答えが返ってくるとも思わないし、ただ戸惑わせるだけだろう。
回りくどい、世間話のようなもの、なんて頭の中で言い訳をする。
たまにはこっちから帰るか、などと既に別の事を考え始める。
夜歩きでは普段使わない。
興が乗った時しか使わないが、今日はその興が乗った日だ。
彼女に会うまでに重苦しかった身体も頭も、今はとても落ち着いている。
「ご忠告どうも。とはいえそっちだと私が帰る所と逆方向だから」
トントン、と地面を蹴る。
使う時の合図のようなもの。
■chita >
「空ですか?」
何故急にそんな事を聞くのだろう。
天候がどうであるか、あるいは敵がいるかどうか。そういう目的で
空を見ることはあっても、好きや嫌いで見たことはチタに無い。
■桐竹 琴乃 > 「何でも無い独り言だから気にしないで」
苦笑しながら言い繕う。
「さて、とお邪魔しました、ありがとね」
少なくとも気がまぎれたし、今はさっきのあのイライラした感じも無い。
これまた意味が分からないと思うが感謝の意だけは伝えておく。
「気と何かがあえば、またこの辺で」
会う事があるのか、そもそも会って何かあるのか。
至っては会うなのか遭うなのか。
とりあえず今は気にしないでおこう。
トン、と空を蹴る。
あくまで飛ぶのではなく跳ぶ事しか出来ないこの能力。
一気に空を跳び上がり、街を見下ろす。
見慣れた道がある。帰りはそっちだ。
初めての道で初めての少女と出会い。
久々の空中散歩で今日の夜歩きは締めるとしよう。
そういえば名前も聞かなかったな、と思いつつ。
ご案内:「路地裏」から桐竹 琴乃さんが去りました。
■chita > (おつきあいありがとうございましたー)
ご案内:「路地裏」からchitaさんが去りました。
ご案内:「路地裏」に湖城惣一さんが現れました。
■湖城惣一 > 雨の降りしきる夜。一人の男が路地裏に現れた。
息は荒く、腹部の真一文字の傷は、鮮血で濡れていた。
■湖城惣一 > 「……」
腹の傷は既に処置を施している故に、失血死することはあるまい。
傷を指でなぞりながら熱のこもった息を吐く。肺の空気をすべて出し切って、リズムを取りながら呼吸を始める。
ひとまずは鎮痛だ。ただの呼吸法一つでも痛みを和らげることはできる。
■湖城惣一 > ひとまず雨だけでもしのげる場所に移動すると、ゆっくり座り込む。
姿勢が落ち着けば、慣れた様子で痛みを和らげていく。そう、慣れたものだ。
「…………」
茫洋とした瞳。間違いなく失血の兆候で、意識が朦朧としていた。
さもありなん。痛みを和らげる方法はあっても、即座に血を補充する術など男は持ちあわせていなかった。
■湖城惣一 > しかし、それが男の日常でもあった。
依頼を受け、破壊の抑止力となる。それが、彼の仕事である。
今回も、彼は傷ひとつ与えられることなく相手を制圧できたといっていい。
■湖城惣一 > 切腹奉納。彼は己を自傷し、その命を神へと奉納することで神域へと至る。バカバカしい技で、だが、それゆえに効果は絶大だ。
腹を切らずに戦えるような相手なら、惣一がわさわざ呼び出されることもないわけだ。
だから今の彼が居る。
■湖城惣一 > 「ふむ……」
顎を撫でる。茫洋とした意識の中、これまでのことを思い返していた。
このところは出会いが多いような気がする。
あまり人と関わるほうではない彼は、確かに、ここ最近でひどく人と話しているような実感があった。
■湖城惣一 > 桐竹。死にかけていたところを助けてもらった。
まっすぐではあるまいが、良き学友であった。
結局、気をつけろという忠告はあまり守れていないようにも思えた。
風間。書店で出会った。奇妙に信頼を寄せられた気もする。
彼の買おうとした本は望外に面白かった。少々刺激的な気もあったが。
彼のその立ち振舞いは、なるほど。かの風間忍軍の名にし負うものであった。
■湖城惣一 > 「……む」
そこまで考えて、眉をひそめた。これではまるで走馬灯だ。
意識を強く保とうと集中するも、それはあっさりと霧消する。
いつものことだ。こうして腹を切るたび、ぼんやりと過去のことを整理しているような気すらした。
■湖城惣一 > そうだ、続きだ。靄がかった意識が続きを促す。
苗羽。働き者だ。本人は望んでないのだろうが、
ああいった生き方自体は好ましく映った。
名を呼んだ時、明らかにこちらを警戒していた。
うむ、次会った時は謝罪しよう。
■湖城惣一 > 遠条寺。いや……今はショウブだったか。
交友を広めたいといっていた。あの家で、あの境遇だ。
何か、それを聞いた時、胸のつかえがとれたようなそんな感覚すらあった。
■湖城惣一 > 上泉教諭。刀鍛冶であったようだ。刀の手入れに学割が効く……などと言っていたか。
奉納演武を嗜んでいたとも言うし、その態度は正に穏やかな、良い意味で土の香りがするような御仁だった。
■湖城惣一 > 士尺教諭。鬼。……とはいえ、荒御魂の類でもなし、わざわざ討つ必要はない。
こちらのことを随分気にかけてもらった。
今の己の姿を見たら、さて、どう思うかどうか。
"ただではすまない"というその意味を理解するだろうか。
■湖城惣一 > なるほど。やはり、思い返せば様々な人と会話した気がする。
印象に残っているだけでもこれだけ話したのだ。
みな、一様に素晴らしい人物たちだ。
己の命を賭して、後悔しない程度には。
■湖城惣一 > 「…………ふ」
心の中から、ふと、笑いがこみ上げた。
仕事のためか。それとも守るためなのか。
茫洋とした頭ではそれが区別をつけられなかった。
だが、それも悪く無いかと結論付ける。
どちらにしてもやることに変わりはないのだ。
ならば気分の良い方を理由にしたほうが良い。
■湖城惣一 > 長く、長く息を吐く。
徐々に意識は遠のいていく。まあ、死ぬわけではない。
蓄えられた力が、翌日には彼を歩ける程度には快復するだろう。
それまでに賊に襲われないことを祈願するばかりだ。
術を行使すればまた戦うことはできるだろうが、
二度目の切腹奉納は確実に死に至る。
つまり、彼の純粋な剣だけで相手ができる手合でなければまずいということであった。
ご案内:「路地裏」にchitaさんが現れました。
■湖城惣一 > (PL:あまり長くはお相手できませんが、5:30ぐらいまでなら大丈夫です!)
■chita > (りょうかいしました!)
■chita >
カツッカツッ、と足音がする。
人間の物ではない、犬だ。
弱った生き物の臭いを嗅ぎつけて、男を、遠巻きにして野良犬の群れ
が集まってきていた。
人間同士が、たやすく命をやりとりする街である。
畜生が、人を食うことも珍しいわけではない。
■湖城惣一 > 「…………」
朦朧とする意識の中、感覚だけは研ぎ澄まされている。
肉を食らおうと野犬の群れが迫っていることは理解していた。
この量ならば問題はない。――が、しかし。それでも貴重な術式を消費しなければならないのは確かだった。
故に、襲われるその寸前まで、彼は微動だにもせず、ただその身体を犬にさらしていることだろう。
■chita > タンッ、と犬共よりも重たいブーツの足音がして。
群れていた犬達は、足音の主を振り返り避けるように離れだす。
通りがかったのは、薄汚れた迷彩服を着た、銀髪の少女である。
■湖城惣一 > 「…………」
敵か、味方か。今のところ新たな闖入者に害意は感じない。
切腹はいずれにせよ死に至る。
つまり状況に変わりはなかった。
熱い吐息を吐き出し、少しずつ戦闘状態へと身体を切り替えてはいくが、未だ野良犬に対してアクションは起こさずにいた。
■chita >
野良犬達は、少女の姿を見ると後ずさり。何度か吠えたりもしたが。
どうやら、その少女は、犬共にとって厄介な顔見知りだったようで、
すぐに逃げ出していった。
「……」
今度は、少女が、男を見た。
野良犬達と同じように、降りしきる雨も、振られて濡れるまま。
■湖城惣一 > 「…………何か、用か」
小さく呟いた。なるべく体力を使いたくはない。
か細く、雨音にかき消されてしまいそうな声。
しかし、ただ黙っているだけでは相手の動きもわからない。
結果としてのこの返答だ。
■chita >
「通りがかった、だけですので」
路傍に死にかけた人間がいたとしても、ここでは珍しいことではな
いのだから。
いつものことである。
水たまりを踏んで、少女は、歩き出した。
■湖城惣一 > 「…………感謝、する」
僅かに目を開いて、その姿を見た。その姿を忘れまい。
通りがかっただけであろうが、こちらが恩義を感じる分には一方的だ。
……そして、彼女を見送りながら惣一は眠りへと落ちた。
ご案内:「路地裏」から湖城惣一さんが去りました。
■chita > (ありがとうございましたー!)
ご案内:「路地裏」からchitaさんが去りました。
ご案内:「路地裏」にソラさんが現れました。
■ソラ > ある日の路地裏。
1人の少年を囲んで数人のチンピラが頭を抱えるという 一種異様な光景が繰り広げられている。
■ソラ > 「……どーすんだよ、こいつ……」
チンピラの1人が口を開く。ぽりぽりと金平糖をかじりながら。
■ソラ > 事の始まりは落第街大通りでふらふらしていた少年を見つけた事。
余りに無防備だったため、いいカモだと飴玉で誘い出して連れてきた。
だがしかし。この少年は財布どころか小銭すら持っていない。
おまけに知遅れか何かなのか 話も通じない。
ただずっとへらへらと笑っているだけである。
■ソラ > 話が通じないだけならまだよかったのかもしれないが。
大声で脅しても拳を振り上げてもずっとへらへらと笑っている。
所持品はといえば、金平糖の瓶ひとつ。
しかもそれを嬉しそうに差し出してくるものだから、すっかりチンピラも毒気を抜かれて頭を抱えている次第である。
■ソラ > 「なあ、もういいからお前帰れ。親御さんとかいるだろ?」
諦めと疲れの入り混じった声でチンピラの1人が諭す。
困ったことに、この少年は帰りすらしない。
ずっとチンピラの根城を遊び場にしている。
つまみ出そうともしてみたが、なかなかすばしっこくて捕まらない始末。
■ソラ > いっそ身売りに出してしまおうか などと物騒な話題も出たには出たのだが。
ここにいるのはただの跳ねっ返りのチンピラであり犯罪組織などではない。
犯罪といえば万引きや喧嘩が関の山である。
そんなこんなで、無駄に明るい無口な少年を前に全員で頭を抱える羽目になってしまった。
全員が少年から貰った金平糖をぽりぽりと口に運びながら嘆息する。
また、この金平糖が無駄に美味しいのがどこか悲しい。
■ソラ > そんなことはつゆ知らず。
少年は勝手にチンピラの居住区を漁り回って楽しんでいる。
最初は下手なことをされる度に声を荒げたチンピラ達も、もはや声をかける気力すらない。
というか、この少年はすでに数時間ずっとくるくる回って遊んでいる。
子供の体力は恐ろしい。
そんなことを考えながら少年に諦めの視線を送るチンピラ達。
■ソラ > 「……いっそのこと、マジでぶん殴って追い出すか?こいつ……」
1人が疲れた口調で提案する。
ただ遊びまわっているだけならまだいいのだが、時々私物やらなんやらを持ち出して楽しそうに見ているものだから気が気でない。
既に数回私物を晒されて気まずい雰囲気になっているのだから、これ以上家探しされたらたまったものではない。
■ソラ > 「……俺はやらんぞ、お前代わりにやれよ。」
「やんねーよ。流石にガキを殴るのは、なぁ?」
割と平和な会話である。
落第街暮らしの不良にもいろいろいる。
今回少年を攫った連中は、案外良心的なのかもしれない。
もっとも、学生証がない以上堂々と表には出られないのだが。
■ソラ > そんな会話を尻目に、少年は物陰から見つけてきた雑誌を持ってくるくると回っている。
持ち主らしき人物の顔が一気に青くなったあたり、見られたくないものだったのだろう。
また被害者が出た。
チンピラ達は嘆息するばかり。
■ソラ > 少年は時々戻ってきては金平糖をつまみ、再び家探しにもどる。
もはや全員突っ込む気力も残っていない。
■ソラ > 「……なあ、頼むからそろそろ帰ってくれ。もう一個飴玉やるから。」
攫ってきた本人が疲れた様子で飴を差し出す。
と、少年は笑顔で飴を掴み上げ、嬉々として路地裏から去っていった。
■ソラ > 後に残されたのはげっそりした顔のチンピラ数人。
置いて行かれた金平糖をつまみつつ、ただただ嘆息するのみだった。
ご案内:「路地裏」からソラさんが去りました。
ご案内:「路地裏」に朝倉千蔭さんが現れました。
■朝倉千蔭 > 「ここなら人は居ない、かな」
周囲を見渡しながら、薄暗い路地裏を一人歩く。
……何かをするには、こういった目立たない場所は都合が良い。
人目もなく、そもそも見るからに何が起きてもおかしくない。
ご案内:「路地裏」に空閑 栞さんが現れました。
■空閑 栞 > 「うーん、この辺に居ないかな……」
誰かを探している素振りで路地裏にふらりとやってくる。
その少女は周囲を見回しながら歩いていた。
「ツヅラどこだろ……お好みたい焼き買ってきたのに……」
そんなことを呟きながら歩いている。
■朝倉千蔭 > 「『羽撃く』――」
前方の空間を手でなぞり、能力名を鍵語として発動を試みる。
……だが、その手は途中でぴたりと止まることになった。
「ん」
人の気配がした。
前に掲げていた手を降ろすと、ゆっくりと気配の方向へ振りかえり。
「……こんにちは」
ひとまず、挨拶をしてみることにした。……怪しまれなければいいのだが。
■空閑 栞 > 「あ、えと、こんにちは」
声をかけられて振り向く。
こんな路地裏に普通であろう学生がなんの用だろう……と考えたが、自分も同じ状況なので言及しないことにした。
■朝倉千蔭 > 「……どうしたの、こんなところで。迷子にでもなった?」
口元に手を当て、かすかに微笑んだ。
……努めて冷静にしようとはしているが、焦りが伝わってしまっているだろうか。
「なんだったら、表通りまで一緒に行こうか」
■空閑 栞 > 「いえ、私は人探しに来たのでお気遣いなく」
柔らかな笑みを返す。
いつものように警戒していたら気付いたかもしれないが、相手の体躯を見て警戒が薄れていたのか、焦りに気付きはしなかった。
「それよりもあなたこそどうしてこんなところに? 危険らしいですけど」
投げられた問いを返した。
笑みを浮かべたまま。
■朝倉千蔭 > 「……人探し……こんな所で、か。それはまた、難儀なお話だね」
「私? 私は……」
困った。迷子になったという訳にもいかない。
……少し考えなしで喋ってしまったようだ。
「測量かな。この辺りの地図の作成と、魔力の影響の調査にね」
「魔術の単位を取ってるからさ、私」
まあ、実際大きく外れたわけではない答えだろう。
怪しまれなければいいと願いつつ、こちらも微笑で返した。
■空閑 栞 > 「そうなんですよね、家に帰ってきてくれればいいのにほんと困ります……」
まるで反抗期の子について話すかのような口ぶりでそう言う。
「魔術、ですか。そういえば魔術の授業はサボりっぱなしだなぁ……」
「こんなところに来ないといけないなんて、色々と大変そうですね」
苦笑を浮かべてそう返す。
どうやら話を信じたようだ。
■朝倉千蔭 > 「心配にもなるよね。何せこんな場所だし……無事ならいいけど」
「私もしばらくここを歩いてたんだけど、あなた以外とすれ違わなかったからなあ」
困っている彼女とその友人が心配なのは本当の事だ。
……自分の身を守る事が優先される今の状況が、ほんの少し惜しい。
「まあ、大変とは言っても……私にとっては、やりたい事だからさ」
「……あなたは魔術がそんなに好きではなかったりするの?」
■空閑 栞 > 「そうですか……少し前に見た時は大怪我してたので心配で……」
表情が曇る。
心から心配しているようだ。
「ああいえ、魔術には結構興味があるんですよ」
「でもその、1回目を休んじゃったのでいいかなぁって……」
恥ずかしそうに頬を掻く。
■朝倉千蔭 > 「……大怪我。それはまた……」
「最近この島でもいろいろと起きているみたいだから、変なことに巻き込まれてたりとか……」
そこまで言って、しまったと思い口許を手でふさぐ。
ごめんなさい、と小さく頭を下げた。……普段ならこんなことはしないのに。
「ああ、そういうのありますよね。出足を挫かれる、というか」
興味があって、それでいて魔術に関わる事ができていない彼女。
今現在困り事があって、危険な路地裏をうろついている彼女。
「……」
■空閑 栞 > 「変なこと……巻き込まれてるんだろうなぁ……」
悲しげな表情になるが、すぐに笑顔を作る。
気にしてない旨を伝え、言葉を続ける。
「そうなんですよ、なので誰かに教えてもらうか自分で勉強するかしようかなと」
魔術があれば殺す心配もなく戦えるかもですし―――
その言葉が紡がれることはなかった。
「どうしました?」
無言になった千蔭を見て、心配そうに声をかける。
■朝倉千蔭 > 「……いや」
きゅ、と軽く唇を噛んだ。
――大丈夫だ、覚悟はもうした。今朝、常夜神社で終わらせてきた。
だから、今から始めようと。
ふ、と微笑みを浮かべた。
それは今までの穏やかな笑顔とは違う、わずかな曇りを孕んだそれだった。
「ねえ、魔術に興味があって、誰かに教えてもらいたいんだったら」
「……私が今から教えてあげようか。ちょっとした魔術だけどさ」
どうかな、と、困っているという彼女に提案を投げかけた。
深く赤い瞳で、じいっと目の前の存在を見つめながら。
■空閑 栞 > 「……いいんですか?」
少し訝しげな視線を投げかける。
名前も教えていないような相手がそんな提案をしてきたことにやや不信感を抱いた。
「まだ名前すら知らない相手にそんな親切を……?」
抱いた疑問をそのままぶつける。
ここは落第街、どんなことが起こるかわからない。
少し前の出来事を思い出して警戒を始めた。
■朝倉千蔭 > 「ええ」
「あなたが困っているようだったからね。……それも、友達の事で」
「それでこんな所まで来れるような、勇気のある人が――」
「ちょっと機会を失っただけで、ひとつ選択肢を失うなんて、もったいないし」
「……だってさ。魔術は誰にも公平な力なんだよ?」
もう、後には退けない。
退くつもりはない。
赤い瞳が細められる。優しげな微笑にも、あるいは狙いを定め目を凝らしたようにも見えるように。
「……ああ、教えてなかったっけ。すっかり忘れてたね」
「私は、二年の朝倉千蔭。専門にしているのは――」
ば、と水平に腕を振るった。異能『羽撃く書架』が行使される。
虚空から表れた二つの銀製の聖杯を、両手で受け取った。
「儀式魔術。聖杯の治癒――どうかな」
■空閑 栞 > 「……なるほど、私は運が良かったと」
「異能と違って才覚がある程度あれば強弱はあれど使えるものが多いですもんね」
微笑み返す。警戒は解かない。
前回は警戒したからこそ無事帰れたのだから。
「ご丁寧にどうも。私は2年の空閑栞です」
「して、対価は?」
警戒をひた隠しにするため、笑顔を向ける。
■朝倉千蔭 > 「ま、そういう所かな」
「平等というのは、良い物だよ。――私だって魔術がなきゃ、大したことはできなかったんだ」
警戒されているな、というのは理解できる。
……それは自分が今まで経験してきた視線とは、全くと言って良い程違っていた。
冷たい。そう、夜の神社より、時間を置いた紅茶より。それは身を切るようだ。
あるいは自分が後ろめたい事をしているから、そう感じるだけなのかもしれないが。
「対価」
「……対価?」
そこまで言って、先ほどと同じように口許に手を当てた。
まずい。つい二回聞き返してしまった。……だって。
「いや……そんなの、考えてなかったんだけど」
「……だって、ただでさえ困ってる人から何か貰うのって、おかしくない?」
……何だかあまりにも素で返事をしてしまったような気がする。
実際考えていなかった物は仕方が無い。どうにでもなってしまえ。
■空閑 栞 > 「異能が蔓延るこの島では魔術は数少ない平等なものですもんね」
笑顔、ただただ笑顔を向ける。
何か怪しいことをしようものならいつでも対応できるように警戒しつつ。
恐ろしさを感じるほど、笑顔のみを向けていた。
「へ?」
気の抜けた返事。笑顔が崩れる。
「いやだってこう、お金くらいは……ほら、諭吉くらいなら居ますし」
鞄から財布を取り出す。
なんだか拍子抜けだった。
落第街だからといって警戒しすぎたのかな? そう考えつつ相手を見る。
笑顔は崩れて少し困惑したような表情になっていた。
■朝倉千蔭 > 「諭吉!? ……えっ諭吉!?」
「いやいやそんな別にお金をもらうわけにはー……」
諭吉といったら高校生の自分にとってはそこそこの金額である。
そんなのホイホイと受け取るわけにはいらないと、手をブンブンと振った。
いや、自分が交渉を持ちかけておいてこの状況は少しおかしいのだけれど。
「と、とにかく」
こほん、と一つ咳払いをして。
「……別に私は、何かあなたから貰おうとしているわけじゃないよ」
「あなたに魔術を教えて、あなたはそれを使って」
「ええと、まあ、強いて言うなら……使用感を私や他の人に教えたりしてほしい、くらい?」
なんだか調子が狂ってしまったものの、私が言いたいのはそういう事だ。
何よりもまず、私の術を共有してくれる人物が必要だったのだ。
■空閑 栞 > 「3人くらいなら……っていらないんですか、謙虚ですね」
ゆっくりと財布をしまう。
はした金とは言わないが、諭吉数人で魔術が覚えられるなら安い物だろう。そう思っていたかいらないらしい。
「ふむ……? それを広めて何かメリットがあるんですか?」
「例えば……あなたが崇められるようになったり?」
善意からの言葉なのかもしれないが、なぜか完全に信用しきれない。
とりあえず詳しく聞いてから決めよう。
そう考えて質問をしていくことにした。
■朝倉千蔭 > 「三人!? ……お、お金持ちなんですね……凄い……」
何だろう、凄く負けた気がする。敬語になってしまったし。
あと恐らく発音も変だった気がしなくもない。
……いや、そんな事を気にしていてはだめだ。ペースを崩すわけには。
「まあ、崇めるかどうかは別としても……似た話ではあるかな」
「私にとっては、皆が魔術を使えるようになるのがメリット……」
「……というか、そうなったらうれしいな、みたいな?」
返答がふんわりしすぎた。
■空閑 栞 > 「親のおかげとバイトのおかげですけどね」
照れくさそうに頬を掻く。
魔術が使えるのなら安いのでは? と思ったが、金銭感覚がズレていたらしい。
「うーん。なるほど……?」
「因みにそれを使うことによるデメリットは?」
少し怪しいが保留。最も重要なことを切り出す。
万が一大きなデメリットがあるのなら使うわけにはいかない。
■朝倉千蔭 > 「バイト……ああー。やっぱり皆やってるのかな……」
「……落ちたんだよなー、本屋の……」
悪いことを思い出した。何故精神力を削られる必要があるのだろうか。
いいや、そんな事を気にしている場合ではないのだ。軽く頭を振って忘れようとする。
あれ、数秒前にもこれと全く同じ事を考えたような気がするのだが。
「まあ、無いとは言えないかな。……とは言っても、儀式はいわゆる魔術行使の方法の一つだから……」
「例えば魔力が無ければ、龍脈が無ければ、媒介が無ければ魔術は使えない」
「……で、儀式魔術における『必要なもの』は……これ」
左手に持った銀製の聖杯を、顔の前に掲げた。
「マジックアイテム。これを媒介にして使う術だから、当然これがなければ魔術は使えないよ」
「……そして、大それた術を使おうとすれば、それ相応のアイテムと……まあ、自分がどうなってもいいっていう覚悟はいるだろうね」
ぎゅ、と聖杯を持つ左手を軽く握った。
■空閑 栞 > 「バイトって言ってもこう……自営業的な?」
「本屋さんとかではないので落ち込まないでください……」
申し訳なさそうにそう言う。
魔術を教えてもらうはずがなんでこんなことになってるんだろう。
自分の話をするのはやめるべきだろうか。
「魔力、龍脈、媒介、ですか……」
銀の聖杯に目をやる。
「自分がどうなっても……それなら私は使えませんね」
「死ぬならツヅラ……同居人の前で死ぬって約束したので」
屈託のない笑顔でそう返す。
まぁ、軽い術ならいいのかな? そう考えるが、言ってしまったものは仕方ない。
「で、朝倉さんは何か大それた術を使う予定なんですか?」
左手を握るのを見てそう問いかけた。
■朝倉千蔭 > 「そうだね、うん。まあ……運が悪かったと考えるしかないかなって」
「って、えっと……そういう話ではなくって……」
「……そっか。まあ、自分は大事にしなきゃいけないだろうからね」
「その……ツヅラさんっていう人の為にも」
「よっぽど大事なんだね、その同居人さんの事が……」
そう言われてしまっては、自分が何かを強制することはできない。
羨ましいね、とぽつりと零す。それだけの想いを持たれている彼女の同居人さんの事が、だ。
両手の聖杯を手から離す。それらは地面に落ちる事なく、虚空へと消えた。
「うん? 私が大それた術? ……まさか」
「でも……いつかそういった術に辿り着きたいな、とは思うかな」
「私は、魔術師だからね」
左手をもう一度、二度と握りなおしてから、彼女の方を見てそう言った。
■空閑 栞 > 「ええ、私の恩人ですから」
「聞けることくらいなら聞いてあげたいですし」
「それにほっとけないんですよ、危なっかしいですから」
笑顔でそう返す。
恋慕ではなく親愛。そして深愛。
今の栞の中では最も大切な存在。
そう考えると、何故か胸に痛みが走った。
胸の前で手を握り、そして離す。
彼女に向き直り、言葉を紡ぐ。
「ふふ、なるほど。それならそのお手伝い、させてもらえませんか?」
「ここで会ったのも何かの縁ですから、友達として」
そんな言葉が口をついて出た。
■朝倉千蔭 > 「……そうだね、話を聞く限り、あなたを心配させるのが得意な人みたいだし」
「がんばって。私はあなたの事を応援するよ」
くすり、小さく微笑む。それはいつも通りの穏やかな表情だ。
きっと彼女とツヅラという子は、これからもそうやって過ごしていくのだろう。
――救われれば良いと、胸中で小さく祈りを捧げる。
「……え。いいの?」
彼女の『手伝いをする』という言葉に、きょとんとした表情を浮かべた。
魔術についての話を断られたのだから、てっきり縁が無い物だと思ってしまったが。
「友達、そっか、友達……。……うん」
「もちろん。むしろこっちからお願いしたいくらいだよ」
「……よろしくね、空閑さん」
■空閑 栞 > 「ありがとうございます。応援されたからには頑張りますよ」
警戒心が微塵も感じられない柔和な笑みを浮かべる。
ツヅラが覚えていなくても、自分だけが覚えていればいい。
そう胸中で呟いた。
「もちろん、友達のお手伝いなら無償でいいでしょう?」
「よろしく、朝倉さん」
近づき、右手を差し伸べる。
そんな2人を、月光が優しく包んでいた。
■朝倉千蔭 > 「……ん……」
カーディガンの裾を一度握ってから、差し出された右手に応える。
収穫とは違うかもしれないが、良い出会いになったと、そう心から思う。
この前落第街に紛れ込んだ時には気付かなかった事があった。
彼女の向こうに月が見えた――冷たく厳しいこの場所にも暖かい月光が差し込むのだと。
「……さて」
「私は今日は、これで帰るとしようかな。真っ暗になる前に」
そう言って手を離すと、もういちどきちんと空を仰ぎ見た。
あの月の位置からいって、そろそろ良い時間である事は間違いない。
……本当に暴漢等が出てくる前に、退散するのが得策だ。
「じゃあね、空閑さん。またいつか」
彼女に軽く頭を下げると、背を向ける。
それから漆黒の闇に包まれた道の先へと、歩みを進めることにした。
ご案内:「路地裏」から朝倉千蔭さんが去りました。
ご案内:「路地裏」から空閑 栞さんが去りました。