2015/08/19 のログ
スラッシュ!! > 雑魚にそこまで舐められた発言をされていたとは。
無事に切り抜けたら絶対殺してやると胸に誓いつつ、今はどうするかだ。

「そんな服如き、作っても盗んでも殺して奪ってもどうにでもなるのニャ。
学生証を…」

と、ココで響く舌打ち1つ。
やったのはリビドーか。
無理も無い、たまたまお話してた学生がこんな進展の無い話を延々としているのだから。

ふぅ、と一度ため息をついて、頭を冷やす。

「とにかく、アンタが本物だって確証が無いウチは何にも答える義理はネェのニャ。
 仲間を呼ぶなり、アイツを尋問するなり好きにすりゃ良いのニャ。」

どうせ、アレに捕まえられる様な確固たる証言ができるとも思えない。命たる商売のルートの話をしたわけで無し、売買の関係にあったわけじゃ無し。

流布堂 乱子 > 「……まあ、確かにそうですね。付け焼き刃ではどうにもならないか」
肩をすくめて左手をポーチから離して、肩の高さでひらひらと振った。
ついでに、前に立つリビドーへと視線を送る。
不純交友カップルと呼びかけたからにはこれくらいしておいたほうがいいだろう。
物理的にどうこうするつもりはないことを明らかにして。

「正当なこの島の住民二人を前にして、わざわざ非合法手段を取ることもない
…ということにしておきます。」
代わりに左手が胸ポケットから取り出したのは、風紀委員会所属と記された学生証。
電子マネー機能や保険証としての機能が無い代わりに、
表面の偽造を精巧にしてあるため、見ただけならそう簡単には判別できない。
…例えば、よほど今までに偽造学生証を見慣れていない限りは。

「島民の義務として、捜査にご協力頂くという形ならお答えいただけると思います。
……ああ、ラウンジのボヤ騒ぎの件ではなく。
そこで話されるはずだった一件についてです。
白い仮面を付けた男が、この辺りを根城に活動していると聞いているのですけれど。
何か、ご存知のことはありませんか。」
淀みなく喋る姿は、先程までの後ろめたい掛け合いとは打って変わって。
本来は探るべき必要のないことに鼻先を突っ込んでいると伺わせないほどに、堂々と。

「ちなみに活動内容は人攫いだそうです、しかも集団で」
それでも脅しをかけるのは相変わらず。
ほんの少しだけ口元を歪ませながら。

リビドー >  
 
「流布堂 乱子、と。聞かない名前だな。」

 此方に意識が向いたと見れば、苛立った様子を引っ込める。
 学生証を見て、一言呟く。
 違う名前が書かれていても、きっとそう呟くだろう。

「白い仮面を付けた男?……いや、知らないね。
 しかし、最初からそうしてくれないかい。もうちょっとで堪忍袋の緒が切れる所だったよ。
 ボクは心は広いが、気は短くてね。週に1度はご乱神だ。――ああ、冗談だから笑っていいとも。」

 が、改めて乱子へ睨んでみせた。
 窘める様な口調で、言葉を続ける。

「もう少しでキミに関するあらぬ噂でも広めてやろうかと思ってしまったよ。
 ある風紀委員が恐喝を行っているとか、偽の風紀委員が紛れ込んでいるとか、
 楽しみにしていた行事が中止になった腹いせを一般生徒にぶつける風紀委員が居るとか、
 そう言った根も葉もないものだ。

 ……そう云うものは、もし信じられてしまえば風紀委員会の悪評や権威の失墜となる。そしてボクも風紀委員を貶したくない。
 キミは風紀委員なんだから、あまり非合法な事や、回りくどい事をしない事をお勧めするよ。
 いくら落第街でも、だ。胸を張って、真っ直ぐに聞きこむなり、逮捕すれば好いじゃないか。
 
 ……落第街は公式には存在しない場所とは言え、一般市民は何処にいようが公式に存在する生徒なんだからさ。
 その一般市民の前で非合法な手段がどうのこうのと云うだけで、大分アウトだと思うぜ、ボクは。」

スラッシュ!! > 突如として、流暢に話し始めたリビドーに少し呆気に取られる。

最初から言い合いだったら自分でやるより、任せていた方が良かったかもしれない。
その辺りは下手に口を出すとボロが出るかもしれない。ここからは任せよう。
そう、そっと決めると。

「ま、アタシは白い仮面の男に関しては情報ナシ。一般学生として、捜査に協力してやってもイイけど、ソレでも知らない物は知らないのニャ。」

流布堂 乱子 > リビドーを、見る。
笑うとは思っていない態度で
『笑っていい』、とそう言い切る男を見つめた。

「ああ、名前も行いも、覚えていただかなくても結構ですよ。
他に代えの居る、いつ消えるとも知れないただの新人ですので。
奇矯な振る舞いでしたらいずれ諸先輩方が矯正して下さることでしょうし、
やがてその振る舞いの噂が立たなくなれば没個性な風紀委員が一人が存在するだけですもの。
…ですけれど、ご忠告は心に留めておきます、ね」
言いながら、もう少しだけ口の端を持ち上げた。
成るほど確かに、今度は腹いせを一般生徒にぶつけているわけだ。

けれど。
消滅した凶行と、その動機を知っている者は片手で足りるほどしか居ない。
その中にこの男の見覚えなど有りはしない。
…自分の左耳に嵌めた、傍受用のインカム。そこから想起される行い。
まさか、こんなところでそんな存在に出会うとも思っていなかったけれど。

「壁に耳あり障子に目あり、と申しますからね。
何処にどんな学生……いえ、住民がいるか、わからないもの、と」

リビドー >  
「全く、そんなこと云わずに少しはボクにも構えよ。
 構わせてくれないかい。寂しいだろ。泣いちまうぜ。
 ……少しばかり様子を見ていたが、ボクの琴線に触れるものは見れ無さそうだからさ、
 口を挟ませて貰ったよ。
 
 ばらしてしまえば、ボクはエルピスとは縁が深い。
 そして、事件の直前まであの場で彼と彼女と話していた。
 そう云う事で、それ以上は口を挟む気も無い。」

 繰り返すが、エルピスに起こった事や交友関係は、エルピスを通じて大体把握している。
 故に目の前の存在にある程度――殆どのレベルでアタリを付けながら、嘯いてみせた。

 呆気に取られているあろうスカイブルーの髪の女性へと、一つ目配せをする。
 悪いね、みたいなニュアンスが、こう、取れたかもしれない。

「……まあ必要悪や、己が信ずる正義に殉じる存在や、その意思までは否定しないよ。
 それでも正しいと思えば、突き進むがいいさ。
 でも、そうだね。正義故に奇矯な振る舞いをした正義がどんな大事件を引き起こしたかは、
 キミも案外、その目で見ているんじゃないかな。
 
 ……と、失礼。説教が過ぎたね。耳障りなら、子供な老人の戯言だと思ってくれれば構わないとも。
 今度ご飯でも奢っても良い。お金に困っていれば貯金を崩して貸しても良い。
 だからまあ、ボクの非礼はそれで手打ちにしてくれないか。」

流布堂 乱子 > スラッシュ!!の言葉に頷くと、ポケットに学生証を仕舞いこんだ。
「ご協力に感謝します。
一般学生としてなら、被害に合わないようにお逃げになったほうが良いと思いますよ。
捜査協力で貴方のボヤ騒ぎの疑いが晴れる線も有るかもしれませんけれど…」
口角の歪みは消えて、無表情な…あるいは真面目な表情で応じる。
「……商売は暫く様子を見るほうがいいかと、他人ごとながらお伝えしておきます。」

スラッシュ!! > 目配せに気付くと、イヤイヤと小さく首を振って見せる。

とりあえずは引き続き任せよう。
うん、正直出る幕が無いといったところか。

「ま、他人のコトを気にする余裕がありゃ、自分の出過ぎたマネをどうするか考えた方が良いんじゃないかニャ。
他人事ながら伝えて置くニャ。」
子供じみたオウム返し。
それに、ボヤは自分のじゃないのだから風紀がマトモに仕事を進めてくれればいい話。
煽るだけ煽って、正論はリビドー先生に任せるとしよう。

流布堂 乱子 > 琴線。
あの英雄を作る男の琴線には、そうそう触れないだろう、と自分でも思う。
立ち位置が真反対。私は倒されるために存在する側だ。

「盛大な暴露をありがとうございます。
むしろ貴方の存在が風紀への最大の当てこすりと言わんばかりの事件への関わりようですね。
私個人の動機は既に解決していますから、兎や角は申しませんけれど」
先ほどまでより平板な声音は、むしろ不機嫌さの表れとしか言いようがなかった。
整理のついた事態と感情へ無理やり波を起こされることへの、不快感。
…エルピス、という存在に、この男が大きく影響を及ぼしていることへの、不愉快。

「その正義を求める意思や欲求、あるいは正義そのものを規定するのが学園の法ですから」
「それだけに従っているのが正しい法執行機関のあり方、というものですしね。」
この場にあるのは違法行為だけだ。
落第街への立ち入りは風紀委員が監視することになっている。
非合法行為を明言したエセ風紀委員にも、
事件へ関与しておきながら風紀委員へ協力するつもりのなかった目の前の男も、
違法な商売と違法な暴行を行った目の前の売人も。
法なんて蹴り飛ばしてここに居ることだけが共通項でしかない。

「いいえ、非礼なんて全く。お手数をかけてしまってこちらこそ申し訳ありません」
左手には杖を。
聴きこみが終われば、立ち去るのが"正しい"風紀委員だ。

流布堂 乱子 > 右手に力を入れて、立ち去るために歩き出そうとしながら。
「ご心配痛み入ります。組織に所属すると先輩に怒られたりして大変ですから。」
それこそ全く完全な他人事、と言わんばかりに。立場の違いを言ってみたりしつつ。

「そうやって他人を頼ったり他人に任せたりしたほうが話が早いとわかっていて、
その上で普段は独りでおやりになってるんでしょうから。
気遣いは無用、ということは重々承知致しました」
首を振るさまを見て思ったとおりに言葉を投げかけて、
通報とか有っても駆けつけない決意を固めながら――

流布堂 乱子 > 「それでは、お騒がせいたしました。
何か有りましたら、"また"」

杖を鳴らして、路地を離れて。
紅い制服の少女が、段々と遠ざかっていく。

リビドー > 「キミもあんま煽るなよ。好奇心でなくとも猫は死ぬぜ。
 ボクはキミについてまだ何も知らないが、痛い所突かれて泣きを見ても知らないよ。
 痛くもない腹かどうかは、分からないけどさ。」

 商売がどうのこうの、って言ってたのは聞いたものの、おくびには出さない。
 彼女らが何をしようが知ったこっちゃない――訳ではないが、思惑や意思があるなら。

「いや本当偶然。偶然だぜ。
 "だから直接手出し出来なかった"んだよ。現場に残っていたら動いたとも。
 それに、竜なんて相手にしたら骨が折れてしまう。ボクは英雄なんかじゃないんだよ。」

 冗句交じりに一言加えれば溜息一つ。
 事件に協力しなかった、と言えば否になる。
 結局直前まで会話していただけであり、その場を去った後に起こった出来事まではどうしようもない。
 居場所の探知が出来る訳でもない。あいつがどんな奴か、なのをある程度把握していただけであり、
 それすら被害者当人程把握している訳でも、ない。

 たまにうっかりで法を踏んづけそうになる事は、まぁ、否定しないが。
 実際に踏んづけた踏んづけてないは、置いておく。

「キミへの興味は、あるのだけどね。ああ、また会おう。」 

 尚、琴線に関してはエルピスが英雄がどうのこうのではなく、
 あまりにも進展の無い話を延々としている故であった為、このような対応を見せるに至った訳で。
 軽く手を振り、見送ることにする。

スラッシュ!! > いえいえ、こちらこそありがとうございました。
ご案内:「路地裏」から流布堂 乱子さんが去りました。
スラッシュ!! > 自分のコトを売ってくれたあそこの組の何人かに代理になって出頭してもらうことで、ココでのことは無かったこととしよう。
結局はニャーとなく、派手な薬売りが落第街にいる、という都市伝説レベルの噂が残るだけなのだし。

(オマエも組織に属してから言えよ)
と心の中でツッコミながら

「さて、なんだかんだで助けてもらっちゃったのニャ。リビドーせんせ。
…アタシがメシでも奢ろうかニャ?」
なんて、さっきよりも親しげな笑みを浮かべ。

リビドー >  
「本当は黙っておくつもりだったのだけどな……
 あまりにも話が長引きそうなのとボクが寂しかったから、つい横槍を入れてしまったよ。
 
 それっぽい事を言って、偶々知っていた事実を都合よく叩きつけて、
 あの可愛い女の子をイジメてしまっただけにしか過ぎないぜ。

 そう言う意味では、反省点でもある。彼女の察しが予想以上だったとはいえ、だ。」

 やや気落ちした素振りを見せ、溜息を付いた。
 嘘を付く意図はない。故に、その仕草は嘘ではない様に見えるかもしれない。

「だから礼など云わなくても良いが、そうだな。
 ……食事をするには日が遅い。明後日以降に暇な日があれば、食事でも遊びでも付き合ってくれないかい。
 ボクは捻くれものの先生でね、友達が全然居ないんだ。最近まで研究で引き篭もっていたのもあるけどさ。」

 "連絡先なら教えるし、費用は持っても良いからさ。"
 改めてどうだい、と、スラッシュへと尋ねた。

スラッシュ!! > 「へーぇ…ニャーがやられたらうまく丸め込まれて心が折れそうだけどニャー」
なんて褒めているのか、それとも、ただ、自分がその対象にならなかったことをただ喜んでいるのか。

やっぱり言い争うとか向いてないしさっさと逃げるのが正解なんだろな、とこっそり思う。

「それくらいならお安い御用ニャー。
出してくれるってんなら尚更ニャ。」
なんて、自身の連絡先のカードを取り出しつつ。

何かと研究者との食事の約束をする気がするけど、これも何かの縁か。
まぁいいか、別に。今のところは悪い人では無さそうだし。

リビドー >  
「議論は進ませるもので、心は育てるものだ。折ってしまってはどうしようもないんだよ。
 だからこそ、反省点でね。……ああ、苛立ったとは言え、もう少しやり様があった気がして来たよ。
 彼女の事は気になっていたんだが、怖がらせてしまったな。どの口が言うかと突っ込まれそうだけどさ。」

 軽く頭を書き、二度目の溜息。
 気を取り直してみせて、軽く背のび。
 連絡先のカードを受け取れば、教師である事だけ書いてある名刺を渡す。
 
「じゃあ、細かい時間と場所は追々な。
 これでも大人なんだ、金銭ぐらいは出すとも。格好も付けたい。
 ……取り敢えずボクは帰る。今日の所は早く帰って、眠るとする。」

 そう言って、ゆっくりとその場を去ろうと、するだろうか。

スラッシュ!! > 名刺を受け取りながら
「ま、アッチの子もアタシみたいに声かけて、ゴハンでも行けばいいんじゃないかニャ~」
なんて、無責任なことを言って。

いつの間にかに落っことした煙草の代わりに、新たなのを咥える。

「んじゃ、オヤスミナサイ、せんせ。
 イイとこ見せてもらえるの待ってるニャ♪」
なんてウィンクしながら、リビドー先生を見送るだろう。

リビドー > 「ははっ。火を吹かれてしまいそうだよ。ま、それも一興か。
 ……ああ、お休み。イイトコロを魅せる為の努力をするとしよう。」

 そうして、その場を去った。

ご案内:「路地裏」からリビドーさんが去りました。
スラッシュ!! > さて、自分も向こうの亀甲縛りの誰かさんの上司にゆっくりお話を聞いておくとしよう。
路地の奥、違反部活動群へと向かっていくのだった。

ご案内:「路地裏」からスラッシュ!!さんが去りました。
ご案内:「路地裏」に迦具楽さんが現れました。
迦具楽 >  
【――太陽が頭上を越えていく。
 ゆっくりと、ゆっくりと歩みを進めていく陽を見上げていた。
 路地裏の片隅で、何をする気力もなく、壁に背を預け座り込み、瞳を焼きながら太陽を見上げ。
 しかしその目はなにを映すこともなく、ただただ遠くを、瞳を焼くその光よりもさらに遠くを見上げていた。

 ――私は一体、なんなのか。

 先日、”二度目”の死を迎え、解放された記憶。
 それを辿れば辿るほど、自分がなんなのかわからなくなっていく。
 迦具楽は自分を、ずっと人を喰らって生きる怪異なのだと認識していた。
 この”自分”は、内から響く聲から生まれたただの《エフェクト》に過ぎないのだと考えていた。

 ――それは、間違いじゃない。
 けれど、ただの一側面でしかなかった。

 聲から発生したものに過ぎないとしても、自我として、聲を聞く意識として”迦具楽”があり。
 この数日の間、まったく人を食べずとも生きていられた。
 なにより――死んでから生き返っている。
 これは、生命維持のために人を喰らう必要があるという認識を覆すものだった。

 そう、迦具楽は生き返ったのだ。
 それも、二度。

 一度目は、自己意識に拘り、聲に反発し思考を進めすぎた末の、自我崩壊――精神的な死。
 そして生き返ると、自分を”迦具楽”を疑問なく受け入れ、確かな自分だと認識していた。

 次の二度目は、エネルギーの過剰放出による枯渇から、生命維持が不可能になった――肉体的な死。
 そして生き返れば、肉体は再構築され、生命活動に支障はなく、それまで忘れていた記憶すら、蘇っていた。

 ――生まれた時は、明確な自我も、人のカタチも持っていなかった。

 七生を最初に見たのはそうして、発生した直後だ。
 母体であった玖杜と、”炎”から零れ落ち、最初に目にした人間だった。
 それから。カタチを持たない不定形の怪異として、欲求の求めるままに人を襲い、その魂を、熱を喰らっていた。
 いつだったか、正確な時間は――六月の真夜中……いや明け方か。
 その日、多量のエネルギーを得ると同時、自身を殺しえる存在がいることを知った。

 ――生き続けるために、人にまぎれる事を選んだ。

 人の魂を多く喰らい、エネルギーを十分に蓄えたことで、自我が生まれた。
 けどそれは酷くあいまいなもので、喰らった他人の人格をトレースしなければ維持できないような物だった。
 それが明確に”迦具楽”というワタシに成ったのは、石蒜に出会い、七生と再開したのが切欠にある。
 あの時自身に名前をつけ、石蒜や七生、そしてトカゲ女と、それぞれにかかわりを持ったからこそ、”迦具楽”という人格が、自己が生まれた。
 そうだ、人にまぎれる事にしてから、食に興味を持って、無差別に食べるのでなく、質を、美味しいものを求めるように――趣味も得た。
 けれど聞こえるようになった”聲”に惑い、反発し、その末に深刻な精神崩壊を起こし――いくつかの記憶を封じ込めた上で再構築、蘇生させられた。

 ――明確な自分を得て、人と関わり続けた。

 精神状態を不安定にする記憶を封じられたまま、七生をはじめ、何人かの人物とかかわりを持った。
 多くの感情を経験し、”迦具楽”としての性格が構築されていった。
 そのうち、自分の記憶が虫食い状態であることに気づき、苛立ち、八つ当たりをした。
 その結果、ワタシを構築するエネルギーバランスが崩れ、異常な空腹を覚えるようになった。
 その時に聞こえた聲が―― Erorr ――思い出せない。
 空腹に触発されるように欲求が、衝動ばかりが強まっていった。
 それに負け、欲求に身を任せてしまったら。
 以前に戻ってしまいそうで。”迦具楽”でなくなってしまいそうで、ただ耐え続けていた。
 けれどそれも限界だった。
 だからせめて自分のままで死にたいと、自壊の道を選んだのだ。

 ――そしてまた蘇った。

 ”迦具楽”としての人格にも影響なく、空腹も衝動も収まっている。
 それどころか、虫食いだった記憶も補完され、生まれてからこれまでのことを鮮明に思い出せるようになっていた。
 けれどまるでそれと引き換えるかのように、身体は作り変えられたかのようだった。
 身体はこの人のカタチから、本来の液体のような姿に戻れなくなっている。
 一部分を変化させることは出来るのだが、それだけだった。
 それに加え、今は髪や爪も伸びるようになっている。
 まるで人のように、代謝を行うようになっていた。

 ――私は一体、なになのだろう。

 ただの怪異ではない。
 いや、そもそも生命というのすら、歪で、不適切だ。
 死んでも、死に至る負荷を受けても、すべてを構成しなおして生き返る。
 死があるからこそ、生があり、生があるからこそ生命、生き物なのだ。
 なら死なない、死んでも生き返るワタシは、生きていると言えるのだろうか。

 いくら考えても、答えが見えない。
 自分が何者なのか。その自問に答えられるだけのものを、迦具楽は持っていなかった。
 いや、それよりも――】

迦具楽 >  
【――あわせる顔が無い。

 思い浮かぶのは、悔しそうに悲しそうに、苦しそうに歯噛みした少女の姿。
 突き放そうとしても、ずっと思ってくれていた友達の姿。
 あんなに苦しませて、辛い決断を迫っておいて……生きていました、じゃあ笑えもしない。
 ただ彼女を苦しませた事のほうが、自分のことよりもずっと、悩ましい。

 これからどうすればいいのだろう。
 生きていたことを喜ぶ気にはなれない。
 けれど、死にたかったわけじゃない。
 なら、自分がなんなのかもわからないまま、死んだように生きていくしかないのだろうか。

 それとも、このまま何もせずにいれば今度こそ死ねるのだろうか。
 人のように代謝を行っているのなら、飲まず喰わずではいられない。
 ならいずれは飢え死んでしまえるのかもしれない。

 それとも、ここにいれば誰かに殺してもらえるだろうか。
 恨みは多少、買った覚えがある。

 ――いやきっと。どうしたところでまた再構成されるだけなのだろう。

 それでも、これからを考えている。
 途方にくれながらも、貪欲にこれからのことを考えていた。
 消えてしまいたいと思いながらも、この先を考えてしまっていた】

迦具楽 >  
【生暖かい風が路地裏を抜ける。
 いつの間にか腰まで伸びた髪が、顔を覆うほどになった前髪が風に揺れた。
 それでも迦具楽は身じろぎ一つせず、一糸纏わぬ姿で見上げる。
 白い光に焼けた視界で、何も映すことなく、ただ宙を見上げる。

 誰かに見つけてもらえるのを、思考のどん詰まりから助けてもらえるのを、自分が何者なのか教えてくれる誰かを待つように、ただ見上げる】

ご案内:「路地裏」に蒼穹さんが現れました。
蒼穹 > (今日も今日とて給料の為の幽霊による風紀運動。
太陽は丁度真上。時間は、二時頃だろうか。丁度今が暑い時間帯。
真っ暗闇なイメージのここ、路地裏もまぁ明るい。灰色の地面から熱気が噴き出るかのような気候。
水撒きでもしたらアスファルトからジュウウウ、と、水の蒸発する音でも聞こえてきそうな、そんな具合。
温い風は、それでも熱湯の如き気温に比べれば冷たくさえも感じるか。
紺碧の空。晴れ渡った今日日、日向ぼっこでも何でもすれば心地いいだろうに。ではどうして今警邏なんかしているんだろうか。
それは―――どうしてだろう?わけがわからないよ。
さて、今日の予定はと言えば確か、程々授業をサボリながら時計塔か転移荒野だった筈。…まぁいいか。

さっさと済ませてしまうに越したことはない。あと75%くらい。帰り道のその半分まで来たくらいだった。
といっても、単に散歩で風紀委員の腕章ふりふりしながら適当に逃げ回ったり魔術ぶっ放したりするだけしたのは言うまでもない。
邪神様の特権の一つは不労所得だ。
散歩気分でゆっくりと歩む。とても悠長な歩幅。)

…。
(一瞥。やたら髪の長い少女が壁に凭れこんで思索に耽っている。その瞳は「虚ろ」と形容するのが適切か。
それに、何やら恰好が如何わしい。路地裏をこんな少女がうろつくからこうなると思うわけだが、如何せんよく路地裏にある少女のソレとは違うのに気付くのは前を通って3秒後。)

やっほー…こんな場所でそんな恰好で日向ぼっことは物好きだね。
ああ一週間ぶりくらいだけど、元気だったかい?

(足も止めず、そちらへとまた一瞥するにとどまり。また己の進行方向を向けば、彼女がいる側―――左の手、腕章が見える方を上げて気さくに軽い挨拶。
返ってくる事はあまり期待していない。要は単なるちょっかい。
まぁ、それ以前に元気では、なさそうだが。)

迦具楽 >  
【――誰かが来た。
 望んでいた、誰かの足音。
 匂いは、わからない。
 目を向けても、瞳は陽に焼けて、今は役に立たなかった。
 
 だからそれが、いつか八つ当たりをした相手だと気づいたのは、目の前を通り過ぎたとき。
 匂いがわかれば、どこも見ていない虚ろな瞳を向けて、その背を追うように僅かに首を倒した】

「……蒼穹」

【声を掛けられれば、かすれるような声で――いや、実際に擦れた声が、小さくこぼれる。
 喉が枯れ渇き、正常な構音が出来なくなっていた事に、声を発して初めて気づいた】

蒼穹 > ……んお。
(返ってきた。ちょっと意外と言うかのように、とん、とゆっくりした足を止めた。
もう一度一瞥を遣る。喉でも乾いているのかと言いたいが、生憎そんな気のきいた言葉は持ち合わせていなかった。)

ん、元気じゃなさそうだね。
どうしたの?返り討ちにでもされたかい?
(此方を見ているのか、見ていないのか。向きは此方に向いているけれど、瞳は己を捉えてはいないだろう。
小さな動きは、まるで全く動いていないかのように、動くことさえできないように見える。
付け加えれば喋ることも思うままに出来なさそうだが。彼女の置かれている状況など知らないし、
それに、御節介を焼く義理もない。心算。…今のところは。)

迦具楽 >  
「…………」

【訊ねられても、答えられなかった。
 自分でも今の状態が理解できていないのだから。
 白が焼きついた瞳は何も映さない。ただ向けられているだけだ】

「……死んだの」

【擦れた声で、ただそれだけ呟いた。
 言葉を発するのがこれほど億劫なものだとは思わなかった。
 今更ながらに、それほど体力を消耗していたことに気づく。
 いつの間にか、身体を動かす事もままならなくなっていたようだ】

蒼穹 > …んぇ?死んだ?誰が?
…ああまぁ…そう、死んだ…ねぇ。
(まぁ、こんな所に居たら早死にしても致し方あるまい。この話の流れで誰が死んだかなんて二人しか候補は上がらない。
己か彼女。己は生きている…生きているといってどうかは分からないが、己の生死など彼女が知るまい。そこは消去法で分かることとして。
殺し殺されが毎日当たり前に続いているんだから、彼女もその犠牲になったのか。それとも。
はて、と首を傾げて反芻する様は、彼女に見えて、聞こえているかどうか。
問題はそこではない「死んだらどうなるか?」という命題をひっくり返している点が問題なのだ。)

そう、御愁傷様だね。
じゃあキミは差し詰め幽霊って事かい?ああ、それともリザレクションでもしてきたのかな。
…で?不死身の能力なり蘇生魔法なり使った?
若しくは、残留意思とでもいうのかな…ま、冗談は良いか。
(不老不死も蘇生能力も、まぁこのご時世では珍しくもないが。…己がそう思っているだけかもしれないが。さておき。
本人は…何というか、本当に幽霊の様に、抜け殻の様になってしまっている。
最早小さく音声を出すだけの置物の様だ。向き直って己の方は尚も五月蠅げに語るのだが。)

迦具楽 >  
「……わから、ない」

【姿は見えない。けれど、声は聞こえ、離れていく気配はなかった。
 だから擦れた言葉を続ける】

「わたしは、どう、して。生きてるの」

【死者蘇生の術、不死の能力。アンデッドやゴーストの存在。
 それは知っている。
 けれど自分はそうじゃない。そのいずれとも違っていた。
 答えを期待したわけじゃない。
 ただ、誰かに問わずには居られなかったのだ】

蒼穹 > は、はい?
…さぁ、私が聞きたいなぁ、そりゃ。いや別にあんまり聞きたいわけでもないけど。
(たまげた質問だが、本人がそんな事聞くとはどういった了見か。)

うーん。
どうだろう。「どうしていきてるか?」なんて…そんな事どうでもいいと思うけどな。
生きてるから生きてる。それだけでしょ。今口を動かして喋ってるのは生きてるから、そうだよね?
キミが死んだって思ってるのはキミだけだよ、少なくとも、この場ではね。
それに、キミは生きたいって願ってわざわざ私に口止めまでしたよね。良い事じゃないかな。
それと、死ぬ前に借りは返して貰わないとだしー…。
(きっと、彼女の欲しがった答えなんて持ち合わせていなかったろう。
深い事を気にしない、そんな考えを述べる。彼女は相変わらず動かない。
肌の色や髪の色、小ささなんかと今のこの状況も相俟って人形の様だと、いい意味でも悪い意味でも形容できる。
彼女はそもそも、生きていたいのだろうか、それが少し疑問だった。)

迦具楽 >  
「…………」

【生きているから、生きている。
 そうなんだろう。きっとそれくらいの認識でいいのだ。本来は。
 けれど】

「わたし、は……、……」

【言葉が続かない。
 いや、声が上手く発せられなかった。

 ――不便な身体になったなあ。

 そう、そもそも自分は生き物として成立していたのだろうか。
 二度死んで、生まれなおし。
 あらゆる物を再構築され――進化とは程遠い。
 言うならば――そう、最適化。
 そんな生命が自然に、たとえ怪異だとして、生まれるだろうか。

 ――まるで作り物みたいだ。

 人形のようだと心中で蒼穹が形容したように。
 迦具楽もまた、自身に対して作り物めいていると、感想を抱いていた】

蒼穹 > ………。
(喋れることさえ自由にできないのだと察した。もう死体と同じようなものだ。
死人に口ありとでも言ったところだろうか。その口ももう閉じてきているけれど。)

んーじゃ、友達多いっていうキミの為に、冥土の土産に一つだけ聞いてあげようか。
その節穴みたいな耳に全神経集中させてよーく質問聞いて、それからそのカラッポみたいな脳味噌使ってよく考えな。
ああ、そもそも頭に脳味噌があること自体疑わしいし、耳で言葉を聞いているかも分かんないけど。
(甘ちゃんか、御節介か。何だかんだ、捨て置けないのは、知り合いに似ているからだろうか。
それとも、可哀想とでも思ったからか。ああいや、そんな事ない筈だ。
そう「貸し一つ」返してもらわないとダメだから、それだけの御節介。
ここでこの怪異を仕留めたって証拠もつかめないだろうから。そう、ただ「貸し一つ」返してもらうためだ。
最も、本当にどうでもいい話…自己満足だろうが。何をしているんだろうか、自分は。)

質問はシンプルだよ。二つに一つ、―――"生きたい?"それとも"死にたい?"

(彼女が死ぬ運命にあるなら、それを生き長らえさせることは当然出来なかろう。
彼女が死んでも死なぬ運命にあるなら、それを殺しきることもまた出来るまい。
いや殺しきる方は出来なくもないかもしれないが、そんな事は無粋だろうし。
格好つけたようで、とても無責任な質問。これくらいは、だがこれくらい答えられるはずと見込んで。「い」か「し」か、それだけ聞き取れれば分かるから。
どちらに答えられたらどうするか、そもそも彼女がどちらを望むか、そんな事全く考えてないけれど。後から考えればいい。
そもそも己はただ八つ当たりされただけの―――一応職務ではあるが―――通行人。
彼女が死のうと生きようと、そこに責任感など感じる必要もないのだから。
端から駄目元、まるで考えなどなし。出来なければ投げ出せばいい。己にその義理や義務はない…筈。)

迦具楽 >  
「…………」

【問われれば――答えられる言葉は一つだけ】

「    」

【それは、なんと聞こえただろうか。
 『い』も『し』も母音は同じ。擦れた音では、聞きとるのは難しいだろう。
 けれどその言葉を発する瞬間、何も映らなかった瞳が、いずこかへ焦点を合わせた。
 頬に雫が流れる】

蒼穹 > ………。…察しろ、とでも?馬鹿言うんじゃないよ。
(聞こえない。「い」とも「し」とも付かない、か細い声が落ちた。
矢鱈滅鱈暑い、夏の黒いアスファルトの海へ、沈んで、溶けた。)

答えるだけだよ、何とか言ってみたらどうだい。
(彼女にはきっと、近寄る己の姿も、答えに不満さを露呈する表情も見えていないだろう。
全く、その"言葉"は答えになってはいないのだ。人の御節介を。
何処かを向いた視点さえ、零れた雫さえ作り物なのだろうか。腕組みしながら、彼女の前へと。)

ああッ!!もう…!この…!
(不甲斐ない。まるで不甲斐ない。私は何を考えているんだ。
地団駄を踏むように路地裏の地面を蹴り抉る。そうだ、知り合いに似ているから悪いんだ。この少女という姿が悪いんだ。
別にこんな事をさせられるいわれはない。貸しを付けたのが悪いんだ。
腕組みを解けば、顎元と腕を取り、それからぶっきらぼうに彼女を立つ姿勢をさせようとする。
流れた水の後の潤いの一筋…死に直面して泣くのなら、その心は?…生きたいのだろう。普通そうだ。)

…全く。貸し、もう一つ付けとけ。死のうが死のうまいがどうでもいいけどちゃんと返してよ。
死んだらあの世にまで取り立てに行ってやるから。
"生きたい"って事で良いんだよね?後で"死にたい"なんて言ったらぶっ壊して殺してやるから。生きたいって言っても殺すかもしれないけど。
(やっぱり、己は何だかんだ甘ちゃんなのだろうか。そんな事はないと、思いたいが。己も大分腐ったものだ。
物騒な言葉をいつになく乱暴に吐きながら。ああ憎たらしい小娘めと、内心にて毒づきながら。
続いて立たせられたなら、それはそれはけったくそわるそうに、強引に持ち上げようとするだろう。)

迦具楽 >  
「――――」

【見えていない。けれど、聞こえた。
 不満げに、苛立った声。
 それでも近寄って、貸しもう一つだと、自分を立たせて持ち上げようとする。
 抗う体力など残っていないし、その気力もなかった。
 だからされるままに持ち上げられる。
 少女の身体は軽かったが――確かな重みがあっただろう】

「      」

【持ち上げられ、距離が縮まれば。
 きっと今度は聞こえただろう。
 自分がなんなのかもわからず、生きているのかも疑わしく。
 この先どうすればいいのか、何をすればいいのかもわからなかったが。
 あのまま誰にも声を掛けられなかったなら、緩慢な死を望んだかもしれないが】

《生きたい》

【結局は。
 それ以外に選べなかった】

蒼穹 > (寄れば、確かに聞こえた、その意思は。「生きたい」と。どうせそうだと思ってた―――。)
…はん。ばーか。知ってるよ。
(―――だから、余計に苛立たしい。憂さ晴らしに人命救助ボランティア。善意に付け込んで不労所得の邪神様を扱使いやがってと、尚も毒づく。
毒づくだけで、それにとどまるのだが。ともかくとして、軽々と持ち上げる。)

はぁ、で?
…何をどうすれば生きられんのさ…まぁいいか。
さっきの、聞こえてないかもしれないけど、もう一回ちゃんと言うから。兎に角借りは返せ、絶対だよ?
(どうしてやろう。このまま病院に投げ込んでやろうか。
しかし、そもそも治療の概念さえなさそうだ。
路地裏をこうしてうろつくのもよくあるまい。さっさと転移なりなんなりしておさらばしたいところだが―――。
ああ、また風紀委員の仕事にバツ印が増える。最後の最後まで迷惑かけてと勝手に責任を転嫁して。
腕章を外して、また何処へやら投げ捨てた。職務放棄だ。)

ご案内:「路地裏」に流布堂 乱子さんが現れました。
迦具楽 >  
「…………」

【借りを返せといわれれば、弱弱しかったが確かに頷いただろう。
 けれどどうすれば生きられるのか――それは自分にもわからない。
 変わってしまったのも、人に近い身体になっている事もわかっているが。
 これまでとまるで違っているものだから、どうしていいかもわからない。
 そもそも、だ。どうすれば生きている事になるのか――そんな事すら考えていたのだ。
 自発的に動く余力も無い、とすれば。
 何をされるにしても、蒼穹に任せるしかできないだろう】

流布堂 乱子 > 投げ捨てられた腕章を、拾う手があった。
左手の杖に体重を預けて。
かつてなら尾で掬い上げただろうけれど、今はそうする他にない。
「幽霊と幽霊で、仲良くなった、というところですか」
紅い風紀委員の制服で、口の減らない少女が。

二人の後方あたりから。声を掛けた。

蒼穹 > はっ、じゃあ精々死なないようにしときな。…取り敢えず休むか、ここは日差しが多いしさ。
ん。
(ぐちゃり。空間―――厳密に言えば、距離を捻じ曲げぶち壊す魔術。
繋げる距離は、路地裏と学園地区。面倒だし、精密動作しなくても、この辺りまで逃げ込めば確実だと思って、転移先は曖昧だ。
物理的でも魔術的でもあり、実際そのどちらでもない"穴《ゆがみ》"を開けて。持ち上げた少女と入って行こうとした矢先―――。)

わー、ペットが脱走した。
人の事を幽霊とか言うんじゃないさ。
まぁ、私もこいつも人じゃないけど。んで、警邏?ご苦労さん、もうこの辺終わったから、帰っていいよ。
(あからさまに苛立っている。八つ当たりと言われればそうかもしれないけれど、
柄でもない事やポリシーに反する事をし建前気分が悪い。
減らず口を叩かれれば、少々棘のある態度ながら半笑い。)

迦具楽 >  
【聞き覚えのある声だった。
 そう、たしか。いつか会った、トカゲ女。
 その判別こそついたものの、今の状態では、その声に反応を返すことも億劫だった】

流布堂 乱子 > 「先輩よりはよほど、人に近い幽霊に見えますよ。そちらの方」
割合に親切心旺盛な先輩に抱えられている少女を知らないわけではない。
ただ、知っているからと話ができるほどの付き合いがあったわけではない。
…それでも。感覚的な話で言えば、見過ごすことが出来なかった。

「…ですので、あいにくと人間であるところの後輩としては何か言っておいたほうがいいのかと思いまして。
だいたい弱ってる人間なら食事と睡眠が必要で、
定宿のない蒼穹さんですから、ここは保健室に連れて行くのが一番だと思います、とか。」
手を貸したいのはやまやまですけれど、というジェスチャー。
まだまだこれからこの先輩の名前を騙って捜査するところがあるし、
この足では人を支えられやしない。

……それでも、燃えさしのような少女を見やりながら。
かつては人を薪にした火と呼んだそれを見ながら。
「多分、人の食事で足りる…と思いますけれど、ね」

蒼穹 > それは思うね。私も始めてみた時幽霊かと思った。ってまぁそれは兎も角として。
んーとね、その辺微妙なんだよ。勿論保健室ってのは考えた。
けど、この間保健室行った時は、病院に行った方が良いって言われたしね。
だからどうするべきか分からないんだよ。病院連れてった方が良いかな。
(とげとげしい雰囲気は然し、助言を貰ったらば割とすぐに融解して。
そこそこ真摯に向き合って頷いて。)

はぁ、人殺しさせてまで生かそうとは思わないけどなぁ。
まぁいいか。その辺の犯罪者殺して食わせたら…うーん。
ああ、一応宿がないってわけじゃないんだけど、あそこは暫く使ってないからないし、
そもそも寝泊りする必要がない系の種族だからさ。あとランコちゃんよ、キミは人間ではなく…まぁいいか。
(腕組みしながらぐるぐると思考。折角開けたワープゲートは無駄になったか。
弱っているというか、もっと別なものの気がするけれど。取り敢えず言う通りにしてみる他ない。
人間と同じ方法が通用するかなど分からないけれど。
…後付、まぁ今更持ち上げた少女が全裸であることなど些細な問題である。落第街では珍しくないのだ―――きっと。)

流布堂 乱子 > 「病院はダメです」
即答だった。自分の胸元の学生証を押さえているのは反射的なもの。

「いえ、えー……と。学生証が無いと診てくれない場合が多いですから。
例外も知っていますが、外傷専門の先生が多いですし、
貴重そうなら献体扱いも辞さない、という場合もあります。
…その扱いでも、こちらとしては文句は言えないのですけれど」
モグリと言えどピンからキリまで居る。
学生街で開業医を営む傍ら…という上等は予約なしの飛び込みは無理に決まっている。
「…学園外の話を出さずに、あくまで学園内での体調不良としてベッドを貸してもらうだけ、というのが一番かと。」
「生活委員は懐の広い方が多いですから、恐らく大丈夫です」
根拠の無い生活委員信仰は未だ変わらずである。

「首尾よく寝床の準備が出来ましたら、食事の支度を…」
聞こえた言葉に、思わず言葉を切った。
大きく見開いた焦茶の瞳は呆れでもなく、非難でもなく、ただ自分に驚いていた。

…そうだ。いつの間にか自分でも随分と人間に馴染んでいる。
そっちが、この路地裏の日常だ。
例え直接食わないとしても、その日の飢えと渇きを癒やすのは、どこかの誰かが後生大事に持っていた懐のものから。
それが、この路地裏で生きている人でなしの生き方だ。
「…先輩が人間の生活に慣れていないのはよくわかりました。
火急の用事を一つ終わらせたら連絡します。手伝いに行きます。」
「人間と同じ食事で大丈夫、という意味です。食堂に行けば良いという事です」
元通りの半眼に収まった目つきは、冗談じみた口調とは裏腹に、静かで真っ直ぐだった。
まるでたった今、相手にしているのが人間ではないのだと気づいたかのように。

蒼穹 > はい?
(ささっと学生証に手が宛がわれたが様だが所以は知らない。兎に角、ダメらしい。)
はぁ、…そういう物かな。
どうだろう、一応生活保険に知り合いはいるから何とも言えないけど。
あそこじゃ本当初歩的なことしかできないみたいだよ。
まあ…その、そこまで言うなら、…ううん?
(なんというか、どうにも信じて良いかどうか分からない。
ただ、一応は従った方が良いのだろうか。)

まぁいいか、空き部屋のベッドくらい勝手に借りたって大丈夫でしょ。
確かに病院で無理矢理休ませろーってのは難しいかな。はいはい、了解。
…ん、仕切り直し。
(開けた"穴《ユガミ》"を防いで、もう一度。ひょいと手を上下に振れば、「距離」を薙ぎ去る。)
…ここかな?ああいや、こっちの方が良いかな。これも良いな。
(本人なりに数回試行した挙句、漸く意図したところに繋がった。
電気が付いていない、きっと今日は誰も使っていないし、使わないだろう学生棟の比較的上層にある、真っ暗で辺鄙な保健室。
人一人はゆうに入れる様な大きさの穴を作った。―――というか壊したというのが正しいのだがそれはまたの機会に。)

…ん?…勘違いしてない?
別に私は人を食べないよ。ま、食べられないわけじゃないだろうけど、好き好んで食べたりはしない。
人を食べるのは、こっち。食事が殺人なんだって、物騒だねー。
(くい、と真っ白な肌の人形めいた少女を持ち上げて見せる。
一体、彼女が何に驚いたかなど露とも知らない。ただ己はいやいやと首を左右に振って。)
私は結構人間なんだけどー…。まぁいっか。了解了解、お寿司でも食べさせておくさ。
………そんなに見つめてどーしたの?
おっけ、了解。学生棟の8階保健室だよ。いってらっしゃい。
(そうして捜査に向かうだろう彼女を見送る。)

さぁ、行こうか。…はあ。
(こうして、カーテンに締め切られた真昼間でも暗い保健室へと踏み入るわけだが。
流石に、一糸纏わぬと言ったその姿を多くに晒すのは良くないと思ったが故だろうか。取り分け目立たない所をチョイス。
毒づいていた態度は、後輩によって幾許か柔らかくなった。
己の開けた転移魔術の中へと踏み入って―――。)

ご案内:「路地裏」から蒼穹さんが去りました。
ご案内:「路地裏」から迦具楽さんが去りました。
流布堂 乱子 > 最大の危惧は、病院でデータを取られて、財団の研究機関の興味を惹くことなのだけれども。
それは"何とかする力のある"先輩に説明するのは、どうにも難しく。
「とりあえずは寝かせておいて様子を見ようとか病院でも言われるものですから。一緒ですよ、一緒」
熱中症とかだとダメ絶対なのも説明するのはどうにも難しく。

「……ええ、幽霊なら人を害することも有るかもしれませんね。
それでは、また後ほど。」
その物騒な食事を、自分で控えていた末路が、これなのか。
(奇遇、としか言いようもないですね)
力を失った燃えさし二つ。
今は、別々の方向に向かうほかはない。

杖をついて。再び少女は歩き出す。
手には腕章、今日はこれを用いて幾らか人を騙す必要があった。

ご案内:「路地裏」から流布堂 乱子さんが去りました。