2016/05/21 のログ
エリン > 「……ちょきじゃないとダメなの?」

首をかしげ、片手を銃の形にして獅南に向ける。
いわゆる芋チョキ。

「チョキにグーをあわせるとかは、だめかしら」

獅南蒼二 > 「…私は、チョキが一番好きだからな。」

珍しい形のチョキだ、と内心に思う。
この白衣の男の記憶にはその形状のチョキは存在しなかったらしい。

「ほぉ………面白い考え方だな。グーをパーに変えてしまえと?
 だが、どうやって変えるというんだ?」

グーをエリンの目の前に作って見せて、苦笑した。

エリン > グーをパーに、といわれれば、こくこく、と頷く。
だが、どうやってといわれれば、獅南をじっとみてから

「……」

グーを作った指一本一本をチョキのまま解いていこうとする。
よいしょ、よいしょと。

獅南蒼二 > あまりに単純なその行動に呆れ半分、少しだけ微笑ましくも思う。
とは言え、方法としては効率も悪いし、現実味も帯びていないし、そもそも例え話になっていない。

「………どうやらお前の力では無理そうだな?」

親指が開き、人差し指が開けば親指が閉じる、中指が開けば人差し指が閉じる。
いたちごっこである。この白衣の男、完全に遊んでいる。

エリン > 「っていう、てきとうな答えをだしておいて、後は自分で考えるべきだとおもうわ」

ふん、と自慢げな顔でいいつつ、パーにするのを諦める。

「ほんとうにパーにしたいなら、チョキからグーに直接影響を与えるようなやり方は非効率。
チョキとグーの間にワンクッション置いて、間接的にパーにすればいいとおもうの」

獅南蒼二 > 少女の言葉を聞けば、ほぉ、と小さく声を漏らした。
それから、突き出していたグーを引っ込めて、

「確かに魔術では自己の本質を変容させることは容易だが、対抗する意志のある他者を変容させることは難しい。
 先ほど標的を落下させたように、自分のチョキをパーに変えることは容易いのだが…。」

「…あまりスマートな方法だとは思えんな。
 最初にも言ったが、これは果てしなく無駄で、無意味な実験だ。
 不可能を可能にしたいなんて願ってしまった馬鹿な男が、馬鹿をやっているだけだからな。」

苦笑を浮かべて、近くの端末を操作する。
半球状のドームは消え失せて、普段通りの演習場へとその姿を戻させた。

エリン > 「……」

場が元に戻るなか、苦笑を浮かべる男に、愛想のない顔を向ける。
どこか冷ややかな目。
若干、責めるような視線で。

「【それでも地球は動いている】。
そんな言葉を発したのって、誰だったかしら。
当時はすごくバカで無意味な研究だったに違いないのに。
でも、そんな研究も後世ではすごく評価されてるって、不思議ね。

当時はバカで無意味なことだったのに、時代が経てば価値を見出されるのって、不思議ね?」

じっと、獅南を見る。

獅南蒼二 > 「お前が、何を言いたいのかよく分からんが……」

その視線を受けても、男は僅かも表情を変えることは無い。
視線を真っ直ぐにエリンへと向けて、小さく頷き、

「私が死んだ後の事など私には分からんよ。
 ただ、1つだけ言ってやるとすれば……死んでから評価されるつもりは無いな。
 だが、誰かが私の後に続いてくれるのなら、それも良い。」

「私か私の教え子が、チョキでグーに勝ったなら……少しは祝ってやってくれるか?」

エリン > 分かるように言っているわけでもないから、当然だろう。
だが、言葉に満足そうな顔をする。

「貴方がチョキでグーにかったら、あなたを祝うわ。
教え子が勝ったなら、教え子を祝うわ。
その時は、残念ながらあなたのことは祝えないけれど」

子供のような笑み。
出来た子を褒めるのは当然だ、と。

獅南蒼二 > その表情を見れば、獅南も僅かに笑んだ。
それからエリンに背を向けて、静かに歩きだす。

「魔術学に興味があるのなら、魔術学部棟の研究室に来るといい。
 そうでないのなら、あまり近寄らん方がいいだろうが、な。」

手を振ることも無く、振り返ることも無く、
白衣の男はそのまま歩き去って行ってしまった。
半球状に抉れた地面を、そのまま放置して。

ご案内:「演習施設」から獅南蒼二さんが去りました。
エリン > 去る獅南の背に視線をやる。
ちりん、と一回だけ鈴を鳴らし、後は背を追いかけるのをやめた。

「魔術学……」

そういえば、それは受けたことがない。
なんせ、エリンの使う魔術は精霊術だ。
精霊を媒介に、精霊の力を持って、術を行使する。
召還術も、精霊術の一種でしかなく。

「それも、おもしろいかしら」

そう呟いて歩き出す。

ご案内:「演習施設」からエリンさんが去りました。
ご案内:「演習施設」に寄月 秋輝さんが現れました。
寄月 秋輝 >  
さて、そんなこんなで端末からようやく目を離した。
少し運動不足気味なので、取り戻さねばならない。

一応防御魔術をベースにしたギプスで普段から鍛えているとはいえ、動かないのは気分が悪い。

今日もまっすぐ立てた刀の上に立ち、目を閉じる。
変わらぬ明鏡止水の境地、一瞬でそこまで至って世界と一つになる。

「……まだ、いけるな……」

目を開く。
世界の光が、魔力が、気が、全てが見える。

もう少し深く。
自分の人として限界まで、深く。深く。深く。

寄月 秋輝 >  
世界がまるで止まって見える。
時間の流れが遅く感じる。
極限を越えて張りつめた精神は、あらゆる感覚神経を強化している。

とん、と軽く飛ぶ。
足元の刀は揺れない。
着地し、刀を携える。

そんな動作が、まるで音速のように速い。
自由落下する速度すらも速い。

しゃん、と鮮やかな音を奏でながら、白銀の刀身を引き抜く。

世界の流れに逆らわないよう、優しく刀を『流す』。

その動作は一切の運動エネルギーのムラなく、あらゆる無駄を排した動き。
この動きだけしていれば、きっとバテることもないのだろう。

寄月 秋輝 >  
無心のまま魔力を解き放つ。
飛翔する。


――― upon the sky ―――


まるで空へ『落ちる』ように自然に、体を宙に浮かす。

その中でくるり、くるり。刀を舞うように振るう。

(……あぁ……)

笑顔が、漏れる。
世界は、体は、刀は、全てに応えてくれる。
目に見える世界は、色とりどりの光を放って輝いている。

そう。どれだけ悩もうと、苦しもうと、それは小さなこと。

世界はこんなにも単純で、簡単なのだ。

寄月 秋輝 >  
ほう、と悩ましげなため息を吐く。

中世的な顔が、まるで女性のように。
幸せの絶頂に居る聖女のように緩んだ。

刀は曇らぬ銀の光を反射し、ゆらり、ゆらりと揺れる。
道着は風に乗り、ふわり、ふわりと舞う。
少しだけ長い髪が、さらり、さらりと踊る。

演習施設のちょうど中心点。
そこでただ一人、舞を続ける。

幸せに、簡単に、無心に。

寄月 秋輝 >  
約一時間もの間、そうして舞い続けた。

ゆら、と刀を振るうのを納め。
音も無く着地する。

「すぅ……ふぅぅぅぅぅぅ」

大きく息を吐き出す。
同時に明鏡止水の境地から戻ってくる。

汗は体質の問題でほとんどかくことはないが、どっと疲れが押し寄せてきた。
長時間持続させる境地は、恐ろしく体力と精神力を消耗する。
特にここ最近の思考の回転時間が常軌を逸していた分、ダメージは大きい。

「……でも、これでいいんだよな……」

何も考えず、刀を振るう。
そして居合剣士の心構え。

『一撃必殺、二の太刀はないと思え』

二の太刀を可能とする秋輝の筋力でも、一太刀で勝てるならばそれが一番だ。

そう、勝つのだ。

無意識に考えていた勝利への道を、ようやく見つけ直せた。

寄月 秋輝 >  
迷う必要はない。勝つのだ。
そのために戦えばいい。

「今度こそ、勝たせてもらうぞ」

勝利を約束する。
ヤツに、彼女に。

刀を納め、道着を正して演習場を出る。

その表情はいつになく晴れやかに見えた。

ご案内:「演習施設」から寄月 秋輝さんが去りました。
ご案内:「訓練施設」に悠樹臨助さんが現れました。
悠樹臨助 > 演習場で一人、法系を行っている。
法系とは躰道における形であり、動きの基礎となるものである。

以前、伊都波凛霞に華麗に投げられてからというもの、臨助は重点的に形稽古を積んでいる。
島内に居る間は兎も角…いや、学園内にいる間でも。
例えば彼女のように熟達した者と相対するかわからない。
そうでなくとも自分は目的を達成したら常世島を去り、多くの者の前に立ち向かうだろう場所に帰るのだ。
いずれ来るやも知れない時のために、腕を上げて十全に備えておき、少しでも憂いを無くすべきだ。そんな考えから、それまでよりもより意識的に稽古に磨きがかかる。

拳を突き出し、後ろに側転して背後に対して回転によって脚を叩き落とし、即座に前転、立ち上がりまた半回転し拳を突く。
時に中空で後ろに回転して蹴りを落とし、時に跳躍し3メートル程上空を蹴り上げるなど、体操のようにも見える動きを、敵を倒す技として想定し、振るい、研磨し続ける。

「——ェエエエエエイッ‼︎」

最後に、正面に拳を突き出し、一連の法形が終わる。
稽古自体をサボったことはないが、法系を行うのは随分久しぶりなせいなのか、他の稽古よりもあとに感じる疲労がやや多く感じる。
ひと段落ついたので、とりあえず休憩する事にした。

悠樹臨助 > (使う動きに偏りが出てるな。法系はもっと頻繁に行うべきだったかもしれない。)

タオルで体を拭きながら自省する。
特にバク転などはそうそうそう使わないせいか、忘れがちで訓練を怠っていた。
まだまだ実戦で使う分には問題無い程度ではあるが、キレの衰えを自身では如実に感じる。
水分補給したらさっさと続きを始めよう、そう思いスポーツバックをあさり水筒を出そうとする——が、カバンの中に目的のものはない。

「……そこの自販機で買うか。」

訓練において忍耐は必要だが、必要なモノを拒否する痩せ我慢は余分だ。
硬貨を握りシャワールームの近くの自販機へ向かう。

悠樹臨助 > (そう言えば、伊都波上を見てないな。てっきりよくここを利用するんだと思ったが、そうでもねぇのか。)

以前ちょうどこの辺りから声をかけてきた彼女のことを思い出す。
彼女にはまた組打ちの相手をお願いする事もあるかもしれない。

(また、っつってたしな……また会うだろうそのうち)

またと言ってた割には殆ど顔をあわせることがないのは、自分が決まったところばかりで歩いてるせいだろう。
思い出して降ってきたちょっとした懸念をそう片付けた。

悠樹臨助 > ガコンと音を立てて、取り出し口にスポーツドリンクが落ちる。
取り出すと早速キャップを回して、中身を4割ほど空け、バックの中に放り投げる。休憩はもう十分だ。

「さ、もっと気合入れてくか……」

再び畳に戻り、激しく躰を操作する。

悠樹臨助 > ——唐突に、足がふらついた。
踏みとどまり倒れることはなかったが、なんだかややおぼつかない。
ふと、高いところにかけてある時計を見ると、休憩後から何時間も続けて稽古をしていたようだ。3時間4時間はとうに過ぎていた。

(あぁ、くっそ、まだ限界には早えだろ…もうちょい、やらなきゃだ)

そう思うのだが、意志に身体はついてこず、思うようには動かない。
仕方なく、また休憩する事にした。倒れこむように体を床に横たわらせる

悠樹臨助 > 少し冷えたように感じる畳が心地よい眠りを誘う。
流石に眠ってはいけないと思うのだが、意識のワガママに答え続けた代償なのか、身体は言うことを聞かず我を通して眠りにつこうとする。
睡魔が首に手をかけている。

悠樹臨助 > いつの間にか止めを刺されていたらしい。
次に意識が覚醒したのは、それから45分ほど後の事だった。
やれやれ、今日はもう限界か。もっと精力的に取り組まねえとな。
嘆息をついて演習場を後にした

ご案内:「訓練施設」から悠樹臨助さんが去りました。