2016/07/26 のログ
雨野 明 > 「…し、死んでたのか。お、おう、気にすんな。」

当初は文句言いに来るつもりだったのもあって、
御礼はそこそこぶっきらぼうに頷いておいた。

「あー………完全に生き返るには、もう一個いる?
いや、タオルとかいるか…やっぱ保健室行った方が・…」

二本買って良かった。
明らかにこれ一本じゃあ足りなさそうだってことは飲む様子からも分かったらしい。
もう一本、ちょっとばかし勢いよく、起き上がったばかりの彼女の真ん前へと突き出して見せた。
ついでにどうせ乗りかかった船だからとあれこれ節介を言いだし。

「んー、いけそうか?
何か…思うところもあるみたいだけど。」

黒焦げた鉄の輪っか。
それに目をやると、

「かなり、大変な異能みたいだなあ…面白そうだけど危なさ極まりないっていうか…。」

先の燃えて回る輪の運動や暑さを思い出す。
溶鉱炉みたいな光景だったっけ。

尋輪海月 > 「……」

見られてた、というのが地味に彼女にとってまずい事だったかもしれない。
大変な異能、という単語の飛ぶまで、ぼんやりと聞きながら、受け取って早速半分ほど飲み干したボトルを揺らして弄んでいたが、不意に、その単語に、

「っ……大変な、どころじゃない……」
……ぼそ、と。
ぐ、と、握られる手。かちかち、と、震えて、歯が、当たっていた。
「……あの異能の、せいで、……色々、ひどい事にもなったり、したので……」
……黒焦げたそれらを見遣った眼は、何処か、怯えるようでもあった。

ふと、差し出されたそのボトルから視線を外すと、ふらりと、よろけながらもなんとか立ち上がり、壁際のトートバッグを拾いに行く。
「……っ、…ともかくっ、その、すいません、助かりました……ありがとう、ございましたっ……ので、だから……」
掠れ声に、けれど早口に告げつつ、片付け始めている。
「……あの、どうか、此処で見たものは、あんまり、言わないで頂けるといい、な、って……」

まとめ終わった彼女は、ゆっくりと振り返り、そんな事を言う。何か急ぎか、或いは、何か気まずいからか、特にその後話しかけられなければ、会釈と共に、「では、失礼しました」と、やや逃げるような足取りに、この場所を後に、立ち去っていくことだろう。

ご案内:「訓練施設」から尋輪海月さんが去りました。
雨野 明 > 「……ああ、そうか。うん…すまない。」

地雷ふんじまったか、なんて思ったのはもう遅かった。
異能にトラウマ、少なからずこの学園にはいるだろう。
足早に帰り支度をする彼女。

「おー、気をつけて…な。」

半分くらい自身も心ここにあらず、みたいな状態で。
颯爽と事情を怯えながらに説明して、速足駆け足で訓練施設から小さくなっていくその後ろ姿を、
呆然と見送って手を振った。

軽率に人の異能について触れない方が良いのだと言う事を改めて思い知り、
片手に残ったペットボトル握った。

「……補習、戻るか。」

ちょっとした後味の悪さと精神的な疲労感。
記憶に残ったのは燃え上がる炎や、震える彼女。

ぐったりとして所定の訓練施設へと戻った彼に、待ち受けていたのは
「またお前サボってたのか」っていう教師の呆れた顔であった。

ご案内:「訓練施設」から雨野 明さんが去りました。
ご案内:「演習施設」に谷蜂 檻葉さんが現れました。
谷蜂 檻葉 > ルギウスが教導する 『魔術近代史学(大復活以後)』


本来は座学を中心とした非常に大人しく、静かな授業だったのだが―――


「何で、こんなことになるかな……。」

運動しやすいジャージに着替え、演習場の中心に立つ檻葉は小さくため息を付く。


『では、次の授業では実際の魔術見学とレクリエーションを兼ねて……
 谷蜂檻葉さん、水月エニィさん。実技演舞を宜しくお願いします。』


唐突な、あまりに脈絡もない『実技演習』。
名指しに何かしらの含みを感じたのか、はたまたルギウスに寄贈されたとある貴重な魔術書について思い当たったか。言葉を濁して 「水月さんがいいなら」 と返したものの、何かを囁かれた水月は二つ返事で了解してしまった。


どこか期待されるような視線は実技場の周囲から。

授業内容として受講者に3年期生以上は少なく、また『魔術』を使えるものもあまり多くはなかった。
そこに、『よくわからないけどなんだか可愛い魔術を使うらしい図書委員の3年生』と噂を持つ檻葉は、普段よりも少し多い好奇の視線を向けられていた。


軽くストレッチをしながら、対する水月の様子をうかがう。

ご案内:「演習施設」に水月エニィさんが現れました。
水月エニィ >  
「全く――」
 
 怪訝に思いながらもストレッチを行っておく。
 隙間時間を埋める為に取った講義の一つだったが、このような事になるとは。
 耳打ちで炉の名前を囁く辺りには胡散臭いに程がある。
 
 とは言え、信条上何が無くとも承諾するつもりだ。
 だからこそ、あのように囁いて動線を握るつもりなのかもしれないが。
 
「まぁ、――
 ――宜しくお願いします。谷蜂先輩。」

 頭を下げる。
 建前は【全ての魔術が混在する世界での魔術戦闘とはどうなるのか?】
 言い換えると、【座学ではわかったけれど実際どうなんだ】――そのような題に向けた提示らしい。

(魔術でもなく、何を使っても良いとのことだけど。――言い換えればこうよね。)

(谷蜂檻葉がどのように魔術を駆使して挑戦者を撃退するか。)

  

谷蜂 檻葉 > 「ええ、よろしくお願いします。水月さん。
 ……って、どう始めるのかしら。 え? もういいんです?始めて?

 と、取り敢えず―――行きます!」


軽く半身で構え、その背には瞬時に翅が広がって淡く輝く。

「さぁ、『駆け足!!』」

武術をやっているようには見えない。
踵は付いているし、言葉とは裏腹に彼女は動くようには見えない。


――その足元、此方に真っ直ぐに砂が舞い上がる。
   まるで見えない何かが猛烈な勢いで突っ込んでいるかのように。

『風の弾丸』、不可視の若き風の精霊は全速力でエニィのすね目掛けてダッシュしている。

水月エニィ >  
 ……建前上は大復活以後の魔術史だ。
 ならば、ある程度はそれに沿って動こう。
 魔術は■■術以外は此処で学んだものしか知らない。
 頼るに頼りない――

 目の前の先輩――檻葉から発された言霊は走るものではなく地を這わせるもの。
 初見で気付くには少しばかり難しい。
 風の弾丸が左脛に中れば、それはエニィの左足を崩す。

「っと、……!」

 思案を巡らせている暇はなさそうだ。
 脚を整え直しつつ魔力を集束させる。
 四元素から少し離れた、雷光の性質を持つ魔力を指先に溜める。
 見えない銃を握るように指を繰り、引き金を引く動作。

 動作に呼応し、雷光が檻葉へと飛ぶ。
 講義の中で紹介された 初級的な光系統の魔術だ。
 

谷蜂 檻葉 > 初撃、風の精霊の体当たりは綺麗にエニィのスネを叩いて彼女の反撃を促す。
”どこまでやっていいのか” ―――ルギウスはそれを言わなかった。

故に、ここまでが『試し打ち』。


「―――『キャッチ』!!」

エニィの指が此方に向けられたのを見て、素早く後方に倒れこむように身を屈める。
そして再び言葉に呼応するかのように次は土壁が水のように湧き立つと、雷光を阻むように立ちはだかる。



《妖精術》

世界に”復活”した精霊達の悪戯は、ただその一挙動が魔術として発現する。


「『やりかえしなさい』っ!!」

土が形を変える。
壁から”腕”が生え、石弾とも言えるほどの硬さのボーリング球サイズの『土団子』を投げ飛ばす。

水月エニィ >  
 
「……この位ならっ!」

 飛来する土団子に向けて一歩踏み出し、跳ぶ。
 空中で放たれた土団子を足蹴にし加速する。空を跳ぶ。

 手を講じなければ勢いのままに檻葉の背を過ぎながら、口を開く。

「――『ろうそくの火』ッ!」

 宙にいるまま魔術を使う。
 重力に従うような形で火が降り注ぐ。
 それらが地に落ちても、少しの間残り続けるだろう。

 先のものとはまた別の初級魔術。
 これも講義で習ったものだ。
 

谷蜂 檻葉 > (―――飛んだ!?)

ゴンッ! と大きな音を立てて地面に叩きつけられて砕き割れる土塊。
飛び上がるエニィに目を見開く。


「……でも、”飛んだ後”はどうするつもりかしら?」

次々に落ちて来る火を即席の塹壕から抜け出て、落ち着いて躱す。
火矢《ファイアボルト》の類ではなく、
狐火と同種の火炎は相手を「制限」するには強みがあるが直接当てて使うものではない。


「さあ、『遊んであげなさい』!!」

そうして、エニィの『着地地点』に大きな【蟻地獄】がざりざりと音を立てて現れると小さな砂の手がワサワサと生えてくるではないか! ワキワキと蠢く『手の海』に落ちれば……どうなってしまうのだろうか?

水月エニィ > 「……はっ!」

 左手に巻いた布を叩き付けるように落とす。
 真下に潜む砂の手を布で抑え込んだ後、左右のそれに捕まえる前に手の海から脱する。
 足場を作って跳び直してしまえば、獣の様に地を摺りながらブレーキを掛けて着地。

「っ、ふぅ――流石先輩、でしょうか。
 ……追い付いていくのが背一杯ですもの。」
 

谷蜂 檻葉 > 見事着地を狙った罠を機転で抑えこんだエニィ。

対し、檻葉はといえば―――


「ううん、今ので押さえ込めれば良かったんだけど……やっぱりそう簡単には行かないかぁ。
 運動がデキる子とは知ってたけど、ボールに乗ってジャンプするのは驚いちゃった。

 ……ねぇ、そういえば先生は特に決めてなかったけどどうすれば『一本』なのかしら?
 私の魔術って、あまり”加減”がないからやっぱり決めておいたほうが良いと思うんだけれど。」


一見すれば、余裕を見せたような発言。
だが、言葉の意味そのままに檻葉は困っていた。

―――これ以上は、『加減の効かない事』しか出来ない。

水月エニィ > 「――ルールは特に定めていないと聞きました。
 勝負あり、となるまでとのことでしょうね。」

 小さく首を横に振る。
 困った素振りの檻葉を見て、両手を挙げた。

「でも――それなら降参致しましょう。
 魔術戦としてはどう考えても谷蜂先輩が上。
 レクリエーションの演舞としても十分でしょう。」

 私には異能がある。 
 だからどのみち勝てないのだ。
 試合であるならば尚更だ。

 故に、両手を挙げて降参を示した。
 
 

谷蜂 檻葉 > 「……そう、解ったわ。   では、有難うございました!」

ルギウスに視線をやると頷かれたので ―――不承不承、に見えたのは何故だろうか。―――そのまま、一礼をして演習場から降りてエニィの方へ歩み寄る。



「……えへへ、ありがとね。華持たせてくれて。 
 あんまり誰かに怪我させたくないし、それに水月さん、まだ、こう……力有り余ってる?よね?」

小声で、そんな頬を掻きながら感謝の言葉を贈る。

水月エニィ >  小さく首を横に振り、視線を逸らす。 
  
「……それとこれとは話が別ですから。」

 落ち着かなさが半分、勝てぬ己への嫌悪が半分。
 その両方を隠す様に逸らす。

「ともあれまだまだ講義時間中ですから。
 残りは先生の指示に従いましょう。
 ……ああ、改めて自己紹介を。水月エニィと申します。以後、よしなにを。」
 
 講義中、且つ、同じ講義を受ける先輩後輩としての立ち位置で演武を行った関係。
 故に確かに言葉を整えて、礼と共に名乗るだろう。

 礼を終えれば受講生の集団へと向けて足を運ぶ。
 何も無ければ彼らに混ざり、講義の続きへと身を投じるだろう。
  
 

谷蜂 檻葉 > 「そう? あ、私は檻葉。谷蜂檻葉です。 ねぇ水月さん、また別の機会にでも―――」


どこか不機嫌そうにそっけない態度の水月に対して、やや困ったように言葉に詰まる檻葉。
しかしその背が遠くなる前に、呼び止める。

「あ……、っ水月さん!!

 ――― 罰ゲームの、メイド服受講……その、頑張ってね?代わってくれて、ありがとう。」



ルギウス発案の【罰ゲーム】、クラス支持のコスプレ受講。
男性票だけでない、女性票を集めたメイド服はルギウスの足元に綺麗に折りたたまれて置かれていた。

ご案内:「演習施設」から谷蜂 檻葉さんが去りました。
水月エニィ >  
「――忘れてたわ。」

 目頭を押さえて大きく溜息。
 ……まぁいいか。
 
 ゴシック色のある制服を着用した少女にとっては、
 案外抵抗のないものだった とか。
 

ご案内:「演習施設」から水月エニィさんが去りました。