2016/06/13 のログ
■癒斗 > (ああこれ、完全におばかのレッテルを張られたような…)
今さらお姫様になりたいわけでも無いからなあと、魔人の言葉を大人しく聞く。
「そうですね、世界はとっても広いです。
自分の世界の外側に、こんな多種多様な世界が広がってるなんて思ってませんでしたから」
周囲の温度が下がるのを感じると、頭を軽く動かした。
誰かが来たわけでもないらしいので、この魔人が熱を留めてくれた(と思いたい)のだろう。
声も姿も威厳を感じるのに、ちょっと指示の細かい――
……そう、言うならば予防線をビシッと用意するタイプの存在だ。
「カインさん、カインさん。炎に関する精霊やそれ以上の存在なる名前がたくさん連なりましたね。
ちょっと冷汗出そうです。ランプが変に濡れたら申し訳ない……」
それから、言葉の最初に告げられたことへの答えを出した。
「聞いたら後悔するかもしれないですけど、今の私は聞きたいから、良いんです。そんなの。
後の私が苦しむなりに、それを誤魔化すはずですし」
全部は聞けそうにないので、お話は3つで良いですよと結んだ。
■カイン > 『そう呼ばれていた、というだけだ。それ以上の意味は無い。
我が目的に必要な名前は【カイン】だけだ。』
そう、きっぱりと伝えた。
カインには『カイン』以外の名などないと、そう伝えた。
そう言って、ゆらりとその姿を揺らめかせた。
それはまるで陽炎のように、黒い姿がそのまま黒い炎のように溶けていく。
その黒い炎が、するりとランプの中へ吸い込まれた。
『今すぐ必要な話、というわけでもなかろう。後で話をするか、此処ですぐ聞くか選べ。
それと、ランプは濡らしても構わん。海の底に沈んだこともあるのだ、いまさら気にはせん。』
■癒斗 > おおお、と感嘆の声が漏れる。
カインが出てきたときも驚いたが、姿が収納されていく姿もおとぎ話にそっくりで。
海に沈んでいたと聞けば、あっ大丈夫なんですか!といらぬ心配をしたことに気恥ずかしさを覚えたようす。
そりゃあ、そうだ。なんていったって、ランプの魔人――魔神なのだから。
「…そーですね、ちょっと場所を移動してからで。
常世神社のほうなら良かったんですけど、ここはあんまり治安が良くありませんからね」
そうと決まれば、さっさと移動してしまいましょう。
もう少し日陰の多そうな、お話を聞くにも安全なところへ。
■カイン > 『良かろう。……しかし、話か。何を話したものか。
……そうだ。先日この島で出会った男の話でもしてやろう。』
ランプの中からそんな声が聞こえる。ランプは既に熱を発するのを止め、
すっかり普通のランプに戻っている。微動だにしない普通のランプだ。
ただ、その中から声が聞こえている以外は。
『この島の治安の悪い場所で出会った男だった。
夏だというのに厚着をした奇妙な男だったな。』
日陰に移動するがてら、話を始める。
話し慣れていないせいか、その言葉はぎこちなかったが……。
『炎を求める男』。カインが自らの炎を与えた、最も新しい契約者の話。
『金を求める男』。カインが金を与え、そしてその見返りに国から追われ、死んだ愚か者の話。
『死を求める男』。カインが『人間は殺さない』の注釈を加える事になった人物の話。
その3つを話した。
■癒斗 > ランプの熱が冷めれば、女生徒の手から霜も消える。
話を聞いている間、彼女は目を丸くしたり、悲しんだり、はらはらしたりしていただろう。
少し物悲しくも感じた3つのお話に、何度もランプを握り直しながら。
「………不思議ですねえ。単純な願いのはずなのに、どれも本で読むような話みたい。
全部、現実のはずなんですけど実感がわかないというか……カインさん、案外話し上手ですね」
嬉々とした瞳でもなく、悲哀に満ちるわけでもなく、ただ混雑とした溜め息をひとつ。
ランプを小さく撫でて、それに向かい「ありがとうございました」と軽いお辞儀をした。
■カイン > 『……そうか。』
ランプの中の声は、相変わらず堂々としている。
『貴様のコロコロ表情の変わる顔ほど面白くはなかろう。
……人にとっての現実は目の前で起きたことだけだ。それ以外の現実など、所詮は対岸の火事よ。』
そう言い、普通のランプが宙に浮く。ランプそのものが見せた、2種目の普通ではない点だった。
『我も、この程度で願いを叶えたと言えるのはありがたい。
……時に。』
ふわりと浮いたランプが、癒斗の顔を見るように正面を向く。
『■■■■という名を知っているか。』
聞き取れなかった。
否、聞き取れなかったというわけではないのかもしれない。聞き取れたのかもしれない。
だがそれは、今の癒斗には…人間には理解できない、まるで暗号のような言葉だった。
言葉そのもの、発音それ自体を変形させたような言葉だった。
『知らぬなら良い。』
■癒斗 > ひとりでに浮かんだランプを見上げる。
カインはこうやって、幾千もの移動を繰り返してきたのだろう。
「そんなに百面相をしてたつもりは―――え、いま、なんて?」
上手くは聞き取れなかった。
いいや、耳に残る音ではあったのだ。自分の口での再現は難しい。理解が出来ない。
それゆえに聞き取れなかったという結果だけが残る。
「ごめんなさい、私ではちょっとわかんないです。
それはカインさんが探している"なにものか"なのでしょうけど……」
でも、覚えておきますねと微笑む。
「あと、せっかくカインさんのお名前とお話が聞けたので、私からも。
夜久原 癒斗(やくばら・ゆと)と申します。覚えても、覚えなくても大丈夫です。
……そろそろ、またどこかでってヤツですかね?」
■カイン > 『否、していた。』
きっぱり言われた。
『そうか。やはりな。
……そうだ。我はそれを探している。永劫の時、那由多の果てという時間を掛けてでも、
我はそれを見つけ出さねばならぬ。我が我であることのために。』
そう言って、ランプはくるりと旋回する。
180度方向を旋回して、高度を上げた。
『癒斗、か。覚えておこう。
他の者の願いを叶えてくる。元々、此処には願いを叶えに来ては居ない。
古い顔見知りらしき気配を感じて見に来ただけだ。
……またどこかで、か。だと良いのだがな。』
そうして、ランプは海の方向、落第街方面へと向かう。
どうやら、再びそこにとどまって願いを叶えようというらしい。
ランプは金の光を放ちながら、ゆっくりと流れるように飛んでいった。
ご案内:「廃神社」からカインさんが去りました。
■癒斗 > 「さようなら、カインさん」
黄金の光跡を眼で追い、小さく手を振る。
ランプと魔神が去ってしまうと、まるで本を閉じた時の様な気持ちになった。
ただ、あの熱風やカインの話はおとぎ話ではない。
「………たまには、遠出するのもいいものですねー」
背伸びをすると、癒斗からぶどうの匂いがちらばる。
ゆるく手足を動かしてから、彼女は――
ご案内:「廃神社」から癒斗さんが去りました。
ご案内:「青垣山」に蕎麦屋さんが現れました。
■蕎麦屋 > 落第街の方は何やら嫌な予感がする。
ので、今日もほのぼの麓にて営業開始でございます。
はい、一介の蕎麦屋でございます。
「――さて。」
とはいえ、ここは落第街よりうらびれていますので、客なんて期待も出来ませんけれど。
『かけ100円』の提灯がほのかに明るく周囲を照らす。――もうちょっと明るい方が良かったかもしれません。
■蕎麦屋 > ぼへー。……あんまり突っ立ってるだけだとまた妖怪扱いされそうです。
「……暇つぶしは要るかもしれませんね。」
仕方がないので、器を磨いてみたり、鍋の様子を見てみたり。
■蕎麦屋 > 「……今日も全部一人で食べるのはしんどいのですけどねぇ。」
価格は安いながら、麺まで手打ち――つまりはそれなり以上に手間が掛かっていたりする。
だというのに、最近は客が寄り付かなかったり、せっかく作っても塵にされたりと散々なのです。
もったいないから残ったら全部食べますけど。
ため息。今日もお客はきそうにない。
ご案内:「青垣山」に真乃 真さんが現れました。
■蕎麦屋 > ちりん、と風鈴が涼やかな音を奏でる。
――――。
――。
蕎麦屋はあんまり流行らないのかもしれない。
「――そろそろ場所変えましょうか……?」
小さく首を傾げた、視界の端に何かが映る。
■真乃 真 > そうだ!山籠もりしよう!とか軽い気持ちで山に登ったことを後悔し始めてうん時間。
拾った棒を杖にして。首からはやけに長いタオルをたなびかせていた男が上の方から歩いてきた。
「ついた…ついに山から降りられた!」
山の上から薄らと見えていた光はどうやら提灯の明かりのようだった。
「いやあ!こんなところで蕎麦屋が出てるとはね!」
暖簾をくぐって席に座る。
見た感じではどうやらやはり他に人はいないらしい
■蕎麦屋 > 「はい、毎度――かけしかありませんけれど、よろしいです?」
なんというか、いかにも『遭難してました』な風体ですこと。などと思いつつ。
さくりと蕎麦の準備を始める。
鍋に放り込んだのは手打ちの生蕎麦。鼻孔をくすぐるのは出汁と返しの濃厚な香り――
温めた器に湯を切った蕎麦と、汁を張る。仕上げに刻んだ葱と海苔を添えれば。
「はい、どうぞ。」
ことり。
熱々のかけ蕎麦が差し出された。
■真乃 真 > 「絶対、昔話とかだと化かされてるやつだよね…。」
そんな事を思いながらも空腹はどうしようもないところまで来ている。
乗っている具に油揚げものってないし多分狐とかじゃない。
「いただきます!」
蕎麦なんてコンビニのカップ蕎麦か家で食べる年越しそばぐらいしか食べていない真にとって
その蕎麦の味はで今までの物との違いを感じるのに十分だった。
「こ、これは、鰹と昆布の出汁もしっかり出てるし蕎麦もすごい!」
語彙の貧弱さと空腹も相まってどうしようもないコメントを残しながら
一気に蕎麦を啜る。
「っっっはあー。生き返った!」
■蕎麦屋 > 「あら……そんなに怪しいですかしら、ねぇ――。」
かく、と首を傾げる。
もはや時代劇の中でもお目にかかり辛い時代錯誤の担ぎ屋台。
蕎麦屋風の着物とはいえ、190を超える長身で、しかも異人の女。
はい、あやしくないわけがない。
でも、蕎麦の味は中々の物――のはずだ。
「はい、ありがとうございます――」
ぺこり、と一礼。
あ、もう一杯いかがです?などと提案してみたり。
■真乃 真 > 「だって、夜中にこんな所誰も通らないじゃないか。来ないよね?」
こんな辺鄙なところに昼間はまだしも夜なんて人が通るはずもない。
そしてそんな奇特な人を相手に100円で商売出来るはずがない!
いや、知らないだけで意外と人が来るのかもしれない。
「いや、これだけおいしいなら朝起きた時に葉っぱでお腹いっぱいになってても許せるけどね。
あ、もう一杯もらうよ。」
空の器を返しながら言う。
ご案内:「青垣山」に”マネキン”さんが現れました。
■”マネキン” > 女将、一杯くれ。
葱、海苔抜きで。
【屋台の逆側から唐突に百円硬貨をつまんだ手が差し出される。
男子生徒の制服を着ていて、フードを目深に被っていた。】
繁盛しているか?
【相手はもう一人の客に顔を向けていた。】
■蕎麦屋 > 「いえね。今日はいつもの所がどーも騒がしくなりそうなもので。」
なんか今頃風紀委員とか走り回ってる気がします。
気のせいかもしれません。
「はい、おかわりもかしこまりました――」
いいながら、空の器を受け取って。
新しい器を二つ。一つは目の前の客の物。もう一つは今しがた来た客の物。
「いいえ、みての通り閑古鳥でございますよ?」
此方のお客さんが今日の一人目ですしねぇ、いやはや。
さくりと蕎麦を茹で、温めた器に盛りつけていく。一つには刻んだ葱と海苔。もう一つには何も乗せずに。
「はい、お待ちどうさまです。」
ことり、ことり、と。
それぞれの前に、湯気の立つかけ蕎麦が差し出された。
■真乃 真 > 「へえ、いつもはここでやってないんだ。」
普段はどこでやっているのだろう?
次点でここに来るくらいだ。多分変なところでやっていると思う。
「おお、来るんだねお客さん!」
しかも常連っぽい感じがする。
しかし、普段と場所が違うのに来るなんて相当のファンであろう!
「はあ、二杯食べてもまだうまい…丁良い度濃さだよね。」
カップの蕎麦もおいしいけどもあれは少し濃い。
二杯はつらい。
■”マネキン” > もらおう。
【かけそばの碗を受け取る。
被るフードは以前より真新しい。】
【一味の蓋を捻り、逆さにしたところで止めた。】
いや、野暮だったな。
…ああ、普段は落第街でみるものだが。なぜここに?
【音を立てて一口で1/4ほどまとめて啜る。
その後、独り言を言う。】
そういえば、伊都波妹に先日黒眼鏡の男が近づいていたようだが。
■蕎麦屋 > 「はい、普段は落第街の方で商いしておりますよ。」
変な所の極み、よりにもよって一番治安の悪い所である。
「足を運んでもらえれば――気に入ってくださる方もいるのですけどね。
いやはや、まずきていただくのが難しくて。」
怪しい、という意味ではこれ以上ない。
落第街ならともかく、ほかの場所ならまず、客の方が逃げる。
「ええ、出汁も返しも自家製でございますれば。よい塩梅になっているなら幸いですねぇ――。
いえ、一味を入れていただいても、また違う良さがございますよ。」
もちろん、薬味の類も自家製。その辺りは徹底している。宜しければどうぞ、と、むしろ薦めすらする。
よくみれば。器も市販の安っぽいモノではなく、しっかりした陶器の物。
■蕎麦屋 > そして若干の間。
何の話でしょうね?と小さく、白々しく首を傾げて見せた。
■真乃 真 > 「落第街…。」
その名前が出ると少し怪訝な顔をする。
落第街でやってる100円の屋台の蕎麦屋。
…なんか犯罪の匂いがする。
そういえばこの蕎麦もおいしすぎる気がする…。
「そうなんだ、自家製かー。何か隠し味とか入ってたりするのかい?」
とりあえず一味を軽く振りかけながら聞く。
うん、たしかに少しピリッとした感じが混ざるとまた違って…。
そして、男の怪しい話にあの反応…やっぱり犯罪の匂いがする。
■”マネキン” > そうか。使うか?
いや、いらなかったか。辛いのは平気なようだ。
【もう片方の客に一味の容器を差し出す途中で手を止めた。】
では商店街か歓楽街に店を出すべきだろう。
……身分証が必要だというのなら、都合できないこともない。
蕎麦だけを出す。真っ当な生き方じゃないか。
少なくともこんな怪しい場所で怪しい屋台を出す必要はない。
君も美味いとは思うだろう?
【店を出す話しに誘う。最後の言葉はもう一人の客に向けて声をかけた。】
何の話だろうな。
どうやらその彼女、重傷らしいが。
【碗に口を付けて汁を飲む。】
■蕎麦屋 > 「――あ。正真正銘、天然物のみ使っておりますけれど。
やっぱりそういう方向でも信用出来る何か――用意した方がいいですか。
でも今時産地証明なんて言いたい放題でしょうしねぇ……」
落第街、と聞くと同時に怪訝そうな顔を浮かべられれば、察しは付く。
混ぜ物、化学調味料の類は一切使っていないのですけれど。それを証明するとなると難しい。
むむ、と腕を組んでしばし、悩んでみたり。
「隠し味、というほどでもないですけれど。砂糖は上白糖ではなく白双糖を使っているくらいでしょうか。
生憎と、こうやってふらふら店を構える方が性に合っておりますし――」
後は手製で手間を惜しまないくらいでしょうし。あまり気の利いた隠し味はなくてごめんなさいね、と。
店を出す、そんな話には腕を組んだまま、やんわりと否定を返す。
「あら――重傷だなんて。この辺りも物騒なのですね。」
ああ、怖い話もあるものです。やはりどこか白々しい。
腹芸は苦手です。
■真乃 真 > 「おっと、ありがとう。大丈夫だよ。」
辛いのはあまり得意ではないけれどもこれぐらいならいける。
「うん、確かにこの味なら学生街でも店をだせると思うし落第街よりは
異邦人街のほうが危なくはないと思うけど…。ああ、別に合成云々とかは特に気にならないよ。
おいしければいいよね!」
きっと、異邦人街の方がまだ落第街よりは治安的にマシであると思う。
学生街とかと比べるとあれだけども。
「へえ、身分証を準備できるって。君は生徒会か何かなのかい?」
少なくとも一介の生徒が簡単に作れるものではない。
あれだ、怪しいのはこっちのフードの人だ人だ。
「うん、おいしいな。」
隣の男に視線をやったままで汁に口を付ける。
ご案内:「青垣山」にリビドーさんが現れました。
■”マネキン” > 気にしているなら信頼できる検査機関に依頼すればいい。
もっとも、商店街でまともな飲食業務を行うなら許可証が証明にもなる。
【残り少ない蕎麦を啜る。碗の中身は後一口となった。】
彼の言うとおりだ。商店街でも屋台は開ける。
クレープ屋やケバブなんかが人気ではあるが、蕎麦でも十分売り物になるだろう。
なに、少し伝があってね。二級学生を拾い上げるのも風紀の仕事だ。
【フードの先端を指でつまんでを手前に引く。】
そう、何もそんな物騒な場所で営業する必要もないだろう?
客の安全を考えてみたらどうだ。
■リビドー >
どうにも何食わぬ顔で山を下る年若き風貌の男。
――ふと、何かしらの明かりを把握すれば、足早に近寄った。
ほぼ駆け足と言わんばかりだ。早い。
「嫌な事ばかりでもないものだな。……席はあるかい。」
視線は厨房に向いている。
もっと言うなら、蕎麦だ。
■蕎麦屋 > 「異邦人街ですかー……あちらの方も行きましたけれど。今度は日本食が希少種過ぎてどうにも駄目でしたねぇ。
あとはやはり、お客が遠巻きに見て去っていくのが少々。」
あ、うん、やっぱり怪しいんです。
まずこの屋台をどうにかしろ、というのは聞こえません聞きません。
「で、まぁ――お客の安全は大事ですけれどね――と。
あら。」
また、人の気配。新しい器をとりあえず用意しながら。
今日はどうやら千客万来の日であるらしい。
■蕎麦屋 > 「はい、どうぞ。お好きな所にお座りくださいな。
――少々手狭なのかご勘弁くださいね。」
流石に3人目、ともなると少々狭く感じるかもしれない。
用意した器に、ゆで上がった蕎麦を盛りつけ、汁を張る――手慣れた動作だ。
「はい、どうぞ。」
ことり、と。刻んだ葱と海苔がアクセントの、かけ蕎麦一丁。
■真乃 真 > 「そうか、あの辺は食が独特だから…。」
あそこで出ている日本食は基本的に変に変わっている。
島外のテレビ番組で良く紹介されてるらしい。
「確かに風紀委員の仕事だよね。そっか風紀のつてか…。」
てっきり、偽造学生証かなんかかと…。
風紀の伝手ならとくに言えないな。
「たまにこんなとこでやってくれたら遭難した人が助かるからたまにはいいと思うけどね!」
■”マネキン” > 【残った蕎麦を嚥下する音を遠慮なくたてて汁ごと飲み干す。
空になった碗を長椅子に置いた。】
ごっそさん。
日の当たるところに出るのはよほど嫌か。
確かに、落第街で後ろ暗いことをするには蕎麦屋と言うのは便利な職業だ。
どのような場所にいても、強く咎められることはない。例え売れないと分かっている異邦人街でも店を出すこと自体はできる。
【他の客の前にてやや強めの口調で批難する。】
稼ぎを考えていない価格といい、別に目的があるかのようだ。
ああ、すまない。蕎麦がまずくなるな。
【新たな客に詫びを入れた。】
■リビドー >
「ありがたい。ああ、2杯目も用意しておいておくれ。
東郷の奴と食べたっきりこの手の蕎麦はお預けを喰らってたんだ。
3杯ぐらいは食べて帰る。」
差し出された蕎麦を掻っ込んで噛んで味わう。
咀嚼が終われば満足そうに呑み込んだ。喉が膨らむ。
「厭な事もあったが、これで釣りがくるほどには気分が晴れた。
……ああ、キミたちもこんばんわ。ここの蕎麦は美味いな。」
蕎麦を食して機嫌が良いのだろう。
調子のよい素振りで他の客――真とフードの男に声を掛けた。
■蕎麦屋 > 「良くも悪くも普通のかけ蕎麦でございますので。ああいう人目を惹く料理とは競いづらくありますねぇ……」
派手さはないが純朴な蕎麦ではある。
世間的には派手で、食材過多なぐらいのほうがよく売れる昨今、あまりにも目立ち難い。
「こうして面白いお客がいらっしゃったりもしますからね?
――あー。」
だからこそふらふらしているのは楽しいのだが。
――別の目的。なるほど、そうとる人もいるか。
「まぁ、蕎麦喰って笑えるならそれ以上の事はないでしょう。」
くすり、と笑いながら、客の非難には怒ることもなく。
二杯目の用意には小さく頷いて、さくりと次の器を取り出した。
■真乃 真 > 「こんばんわ、本当美味しいよね!」
自分も三杯目いこうかなと考える。
よし、行こう。
「ちょっと君、それは言いすぎじゃないか?」
フードの客にムッとした視線を向ける。
確かに自分も思ったけれども…!
秘密のトッピングと称して薬とか売ってるんじゃないかと思ったけども!
「確かに値段は安すぎて怖いけども!おいしくて安ければそれでいいじゃないか。
あと天ぷらとかがあったらもっと素敵だと思う!!」
男子学生としてはもうすこしがっつり行きたいのも事実だった。
■蕎麦屋 > 「ああ、いえいえ。ある意味事実でございましょう。そういうご意見もある、というのは重要です。
ですがほぼほぼ趣味でございますからねぇ――これ以上値段上げますと、今度落第街で売りづらくなりますし。」
正直タダでもいいかな、くらいの趣味である。
売れればよし、売れなければまぁ、それもよし。
「あ、では今度は掻き揚げの一つでも用意致しましょう。
先日用意したのは中々好評でしたし。」
先日の、桜海老と新玉の掻き揚げは中々好評だった。――まさかご飯まで求められるとは思わなかったけれど。
そういう要望があるなら用意はしよう、とうんうん頷く。
さくり、と器を二つ目。温めて、食べ終わるタイミングを見計らって蕎麦を投入――
■”マネキン” > 蕎麦以外に目的があるわけじゃないんだな?
好き勝手に落第街の人間の魂を選別して回っている、などということはないわけだ。
ああ、蕎麦湯をくれないか。
【手を差し出す。】
そうだな。
蕎麦屋が病院で暴れたとか、落第街で重機関銃を振り回していたとか
そう言う噂話がなければ、私とて気にしなかったよ。
先ほども言ったが、蕎麦は私も買っているんだ。
■リビドー > 「ああ、実に美味しい。この真円に近い素朴さが良い。
毎日でも食って帰りたい。この山までくるのは骨だが、その価値はあるか。」
座って食すまでは批判めいたやり取りそのものは特に厭がる素振りはない。
それよりも食事、と、言わんばかりに気分よく掻っ込んで飲み干す。
そうして二杯目を待つ構え。
落ち着いた当たりで、そして蕎麦が無い故に、
興味は会話に行く。
「――ふむ、無免許で100円でってのは妙な安さを感じるが、
道楽か何かかな。隠居気味の輩が外に出るのを嫌って道楽に走るのにはとても覚えがある。
大抵の事はできるし大抵のものは手に入れられるから、好きな事を出来るんだよな。
あるいは手に入れた後だ。年季の入った道具屋は」
次いで、物騒な事件を耳にすれば。
「おや、フードの少年。そんな物騒な事件があったのか。
少し聞かせてくれないかい。」