2015/06/04 のログ
■まりも > ……?
【店主の、都合の悪そうな態度にやや疑問を浮かべる。】
それじゃぁ、クオーツの件はよろしくおねがいしますねっ!
――っとと、もうこんな時間!終電ギリギリだ!
今日はありがとうございました、またお願いしますねー!
【仕舞おうとした携帯電話を見ると、時計は深夜を示していた。
店主に深くお辞儀をすると、店の出口へと向かう。】
■ヒメル > ああもう夜中か、時間が経つのは早いねぇ。
うんうん、じゃあまたねぇ。万屋シュネーをよろしくねぇ~。
【名前聞いてないのを忘れつつ、手を振りお見送りする】
■まりも > 【店を出る際に再度会釈をすると、入ったときとは対象的に、静かに扉を閉める。
明かりの少なくなった夜の通りに、少女の影は消えて行った。】
ご案内:「万屋『シュネー』」からまりもさんが去りました。
■ヒメル > (……あぁ。ふぅむ~、名前聞いてなかったやぁ)
(まぁいいかぁ。にしても小さくてかわいい子だったなぁ~)
(そろそろ店も閉めないと。今日はそれなりに売れたなぁ、よきかなよきかな~)
【そんな事を考えながら、玄関先に『CLOSED』の札を下げ鍵を掛ける】
ご案内:「万屋『シュネー』」からヒメルさんが去りました。
ご案内:「常世寮/女子寮、自室」に鈴成静佳さんが現れました。
■鈴成静佳 > (夕刻。カーテンを締め切った、薄暗い4.5畳の部屋。ベッドの上で、静佳は裸体を丸めて震えていた。外からはものすごい雨音……夕立だ。そして、時折雷鳴が響き、2秒ほど後に閃光が走ってカーテンの柄を浮き立たせる)
……ひいいっ!! 嫌っ……やだっ!! もうやめて……っ!! あっちいって……!
(かすれた声で、誰に向けるともなしに叫ぶ。顔は青ざめ、全身に脂汗が浮いている)
■鈴成静佳 > (1時間前までは、寮の友達の聡美ちゃん、そして噂の不良生徒・川添先輩とともに楽しくスイーツパーティーと洒落こんでいた。たらふく甘味を味わった後のウキウキ気分は、しかし、帰宅途中に鳴り響いた遠雷の音1つで砕け散る)
(どうやって帰ってきたかは覚えていないが、覚えたての短距離転移魔術を連発して一直線に寮へ向かい、ロビーも経ずに直接この部屋へと飛び込んだようだ。途中で転移魔術の集中に失敗し、衣服も財布もどこかに落としてきたようだが、この雷雨のなかで拾いに行くなんてことはできない)
ひっ……嫌……雷嫌ぁ……また死ぬ……ビリビリして死んじゃう……嫌っ!!
■鈴成静佳 > おげ……ェッ……ハアッ、ハアッ……ハヒッ!!
(恐怖で胃が裏返る感覚。酸欠の魚のように口をぱかっと開き、のたうちまわりながら嗚咽する。何も出ない。川添先輩に「晩飯は諦めろ!」と突っ込まれるほどに喰らい尽くしたスイーツは、さっきトイレにすべて流してしまった)
(楽しかったひとときの記憶はもはや余韻も残っていない。今静佳の脳は感電死への恐怖に完全に支配されている)
ハアッ……ハアッ……うぐっ…!
(震える四肢にムチ打ち、雷鳴の間隙を縫ってなんとかベッドから身体を持ち上げる。そばに置いてあったクーラーボックスを開けると、そこにはお茶のペットボトルと、錠剤のケースが入っていた。生ぬるいお茶で、静佳は鎮静剤を飲み込む。吐き出しそうになるのを、喉を締め付けるようにしてなんとか抑える)
■鈴成静佳 > (静佳の部屋には、テレビもパソコンもない。ルームシェアを始める前に使っていた冷蔵庫は捨てたので、この部屋にある「家電」と呼べるものはエアコンだけだ。そして、床付近に備え付けてあるコンセント穴には、すべて絶縁体のカバーが付けられている。しかし雷鳴が鳴り響くとき、そんなカバーなど静佳にとってはお守りにもなりはしなかった)
……っく……ハァ、ハァ……ヒッ……ハァ……
(薬が効いてきたか、全身の震えは徐々に収まっていく……左腕以外は。筋肉の収縮などでは説明がつかない速度で振動する左手、その掌には、赤茶けたケロイド状の火傷痕が花のように刻まれている)
(ガガァンッ! …寮の近くで雷鳴と雷光がほぼ同時に轟き、建物を揺らす。静佳の身体がぴくりと震えるが、怯えは薄い。薬が効いてきたか、それとも疲労困憊しきってしまったか。混濁する意識のなかで、過去の記憶がフラッシュバックする――)
■鈴成静佳 > (小学3年の夏……テレビゲームで遊んでいるところに、外で鳴り響く雷鳴……ゲームをやめるように母に諭され……コンセントを抜こうとした、その時……閃光が走って、アタシの身体は左手から真っ二つに割れた)
(それから半年間……アタシは白いビルの乱立する都会にいた……憧れていた都会……しかしそこには人は一人もいなかった……お父さんもお母さんも……寂しさが積り……無力感が積り……泣いて、泣いて……いつか涙も枯れて……)
(意識が元に戻り、私は病室にいた……全身が痙攣し続けたまま……眼球も焦点が定まることはなく……ぐらぐらする世界と身体……泣きながらアタシを抱き締めるお母さん……リハビリの日々……)
■鈴成静佳 > ハァッ……くっ……ハァッ……
(ガゴォ……ン。雷鳴は再び遠くなり、稲光までの間隔も延びる。静佳はなんとか起き上がろうと、汗でグショグショに濡れたシーツを握り締めて両腕に力を込める。苦悶の過去の再生が終わり、魂が身体に戻ってきたように感じる)
……クソッ……アタシ……何度こうして……死にかければ……いいの……
■鈴成静佳 > (肉体を振動させるという、よくわからない異能。リハビリによって制御の術を習得し、いまでは振動を応用できるまでに使いこなせるようになった。しかし、その対価として夕立のたびにこうまで苦悶せねばならないとは、あまりにも高価すぎる代償ではなかろうか……)
あんな思いは……もう嫌……。普通の人生がいい……。痛いのも、淋しいのも、もう嫌……二度と……。
(振動の異能とももう6年来の付き合いであり、自分の人生の一部だと思っていた。でも、もし雷鳴に怯える貧弱な精神を捨てられるのならば、この異能はすんなりと手放すであろう。異能の研究機関でもある常世学園には、そのような選択肢もあるかもしれなかった。異能と生きる、異能を捨てる、欲しいのは選択肢だ)
■鈴成静佳 > ……捨てて、どうにかなるとも限らない……(青ざめて乾いた唇を、震える舌で舐める)。
(異能を捨てられる選択肢はないかもしれないし、捨てたからトラウマともさよならできるとも限らない。だから、この発作とも言える苦痛との共生を甘受して、異能を自身の人生の一部と規定して、先を目指す。少なくとも、常世学園を目指し、島に渡ってきた時、静佳の志はそうだった。天の気まぐれはしかし、そんな彼女の奥に潜む弱気をいともたやすく引きずり出す)
■鈴成静佳 > (いつしか、雷鳴は去り、雨音もぱらぱらとベランダを鳴らす程度になった。身体から緊張が抜けていき、脱力して仰向けにベッドに横たわる)
……ハァ……ハァ……どうすればいいの……。アタシ、このままで生きていけるの……。アタシの人生って……。
(人生を定めるためにこの島に来た。ではいつ決める? 手元には解答用紙さえない。提出できない。それまでは、曖昧なままで異能と向き合いつつ、雷鳴に怯え電流を避ける暮らしを送らねばならない。島に来る選択肢を取らなければ、それはよりいっそう先延ばしになっていただろうから、現状は最良の選択肢を取ってると言えるが……)
ご案内:「常世寮/女子寮、自室」に雪城 氷架さんが現れました。
■鈴成静佳 > クックック……ハハハ……そうじゃん。アタシ、まだ選択できる立場にないじゃん……仕方がないよ……ハハハ……。
(情報が足りない。異能についてもっと勉強するのだ。結局それしかない)
(…否、もう一つある。仲間を探すのだ。同じように異能に翻弄され、人生を決めかねている者を見つける。そして話すのだ。一人では立ち向かえない。人と違う何かを持ってしまった以上は)
……うん……アタシ、今のところは正解の道を歩いている……
■雪城 氷架 > 突然、部屋の灯りが点けられる
「おーい、静佳帰ってないのか?どこもかしこも真っ暗で」
灯りをつけた少女が辺りをキョロ見しながら…
■鈴成静佳 > ひょ……氷架ちゃん? お、おかえり……
(静佳のプライベートルームは戸が半開きになっており、中からは弱々しい声が。中に入れば、ベッドに全裸で倒れ込む静佳がいる)
■雪城 氷架 > 「何だ、いるなら電気ぐらい……」
ちらりと部屋を覗きこんで、思考停止
僅かな時間、空気が凍った気がする
「なななななんで裸なんだよお前!?」
顔を真っ赤にして戸の向こうに引っ込むルームメイト
■鈴成静佳 > えへへ……自分の部屋でくらい、裸になってていいじゃん……グスッ……氷架ちゃんだってそうでしょ?
(冗談めかして言うが、その声は震えており、時折鼻を啜る音も聞こえる)
……うん、ちょっとね、雷にびっくりして慌てて帰ってきたから……途中で服を落としてきちゃった……
■雪城 氷架 > 「…いや、何か言ってることめちゃくちゃだって静佳……」
途中で服を落っことすとか意味がわからない、でも何かおかしな空気を感じ取って……
「どうしたんだよ、何かあったのか…?」
戸の向こう側から、心配そうな声が投げかけられる───
■鈴成静佳 > いや、だから、雷にびっくりしちゃって……。テレポート魔術でババーって帰ってきたけど、まだ覚えたてのやつだから、服とかを一緒に転移させるのを忘れちゃって……。アタシ、雷とか電気とかがすごく苦手なんだ……えへへ、おかしいでしょ。
(扉越しに、いつものような快活な口調を装って事情を話す。しかし体力の消耗が感じられる)
……ねぇ、氷架ちゃん。ちょっとだけ、一緒に居てくれる? 何もない部屋だけどさ……
■雪城 氷架 > 「うわ、マジかよどうするんだそれ…まぁ、雷が怖いヤツくらいいっぱいいるけどさ…」
そうだ、別段不思議なことでも何でもない
女の子なのだ、雷が怖いくらいは普通だろう
「ん、べ、別にいいけど…」
いつもとは違う雰囲気に、なんか着ろよ…と言いたくなった言葉は飲み込みつつ、静佳の部屋に入ると、ベッドの前まで歩いてくる
■鈴成静佳 > (静佳の部屋は湿っぽく、ちょっと汗臭い。それもそのはず、彼女が横たわるベッドのシーツはまるでバケツでもひっくり返したかのように汗でびしょ濡れだからだ。身体を起こし、張り付いたような笑みを浮かべようとする静佳はひどくやつれており、唇は真っ青だった)
……あはは、どうしようもないよね……。とくにこれから夏だからね、夕立もいっぱい来るし……いやぁ困った困った、あはは……。
(ベッドのそばまで来てくれた氷架さんの手を、左手で握る。異能が発動し続けているのか、その表面はかすかに揺れ続けている)
……ねぇ。氷架ちゃん、氷架ちゃんはアタシの友達で居てくれるよね。こんな変なアタシでも……一緒に異能の勉強、続けてくれるよね……
■雪城 氷架 > 近くまでくると、その光景が目に入る、どう見ても普通じゃない
「お前っ、これ…凄い汗かいてんじゃないか!大丈夫なのかよ…」
かすかに揺れる、その左手を両手できゅっと握って
「何言ってるんだよ、こんな、心配にはなるけど変なんて思うわけないだろっ…当たり前だろ…」
静佳の目をまっすぐに見る氷架の瞳は、今まで見たことのない友人の姿に、心配そうに揺れる……
■鈴成静佳 > あはは、ホントだ、すっごい汗。おもらししたみたい……いやしてないよ?
(自分のベッドの惨状を改めて見、苦笑する。そして、氷架さんの生真面目な眼差しにニコリとはにかんで応えた静佳は、左手で掴んだ氷架さんの手に頬を寄せる)
……ああ、この前も思ったけど、やっぱり氷架ちゃんの手って温かい。触ってるだけで元気になれそう。ごめんね、もう少しだけ、触ってていいかな……
■雪城 氷架 > 「わかってるよそんなこと」
茶化すような言葉にははぁ、と小さな息をついてそう答える
あまr,こういった状況でかける言葉というのが彼女には見つからず…
ぐっしょりぬれたシーツを気にすることもなく、ベッドに腰を降ろして
「こんなんで落ち着くなら、どーぞ、遠慮なく」
かける言葉が見つからないので、そんなぶっきらぼうな言葉になってしまう、
自分でも不器用だなと思う、なのでせめて、もっと近くにいようと
■鈴成静佳 > えへへ、ありがとう……。氷架ちゃんはやっぱりやさしい。
(ぶっきらぼうな態度はよく知っている。そんな氷架さんでも静佳のことを気にかけてくれている、触れ合ってくれる。それだけで静佳の怯えきった心は癒されていった)
……落ち着く……ああ……温かい……ひょーかちゃん……大好き……。
(……氷架さんの手に頬を預けたまま、静佳はいつしか眠ってしまった……)
■雪城 氷架 > 「そりゃ…と、友達だからな」
優しいと更に大好きとまで言われればやはり照れくさそうにして、
でもいつしか寝息を立て始めた静佳の髪を空いた手で優しく撫でるようにして、静かな時間が過ぎていった───
ご案内:「常世寮/女子寮、自室」から鈴成静佳さんが去りました。
ご案内:「常世寮/女子寮、自室」から雪城 氷架さんが去りました。
ご案内:「高級中華料理店『山麗華』」に西園寺偲さんが現れました。
■西園寺偲 > 「――――」
偲は人を待っていた。
今日は公安の男達に厳命し、外を見晴らせている。
この会食を知られるわけにはいかない。
それくらい、彼女は用意周到に「ある人物」を待っていた。
ご案内:「高級中華料理店『山麗華』」に五代 基一郎さんが現れました。
■西園寺偲 > 「――お待ちしていました」
椅子から立ち上がり一礼する。
普段の傍若無人な態度を見ている人々が見れば驚愕に目を開くだろう。
偲はそのまま五代に椅子を勧める。
ウェイターにコースを始めるよう言いつけると、自分も座った。
今日は酒も女も無しだ。
■五代 基一郎 > 『そして待ち人は現れた。
仮に定刻を設定していたならその通りに到着し、でなければ待たせずまた早過ぎもせず現れる。
制服でなく一応の礼服であり、正しく付け焼刃のような文字通りの偽装。この時期に公安の人間との風紀の人間が同じ場所にいるのだ。
大なり小なりその事実に興味を持つものなら目を光らせるかもしれない……が故の粗末なハリボテ。見るものが見れば冷笑するかもしれないその姿』
■西園寺偲 > 「――ロストサインが壊滅して以来、でしょうか、五代部長」
懐かしい呼び名だ。
あの頃の偲は一介の執行部書記にすぎず――
いや、思い出話をしている時ではなかった。
今日はもっと別の話があるのだ。
■五代 基一郎 > 本日は御招きいただき……
『 しかし如何なる格好であれこの男は常日頃から出歩いている。着崩した制服で、革靴の底を削りながらまさしく不良警官のように。
異能が、力がどうということではなくどこにいても”まぁあの男だし”と思われるような男がここ……高級中華料理店、山麗花にいる
薦めらるまま椅子を引き、座り。西園寺偲……かつての部下の顔を見た』
■西園寺偲 > 「――似合いませんね、その格好」
くすりと笑う。
運ばれてきた前菜に、偲は遠慮なく手を伸ばす。
かつての上司の食道楽を、偲は十分承知していた。
こうして自分が食べれば、相手も遠慮なく食べられるだろう。
■五代 基一郎 > 早いものであれから2年。思い出話をするような時間が流れたと今改めて思うよ
『言外に思い出話をするために呼びつけたわけでは、と伝えつつ
西園寺の箸が動けば、自分も箸を取り手を動かす。
現在公的な立場でいえば彼女の方が上だ。彼女は気にしないかもしれないが、それでも礼儀は守るのがこの男だった』
これも直に見慣れるさ。風紀の制服も馴染みつつあるしさ。
君も袖を通し初めてどのくらいになる?
■西園寺偲 > 「――私は、1年半でしょうか」
あっという間の2年間だったが、それでもお互い失ったもの、得たものは数え切れない。
あの2年前にこのような形で再会するなど、想像も出来なかっただろう。
とはいえ、重ねて言うが、思い出話をする為に来たわけではない。
本来の用件を切り出すとしよう。
「――近々、風紀委員会で公安委員会、及び関連施設への強行捜査が計画されているそうですね?」
■五代 基一郎 > やると思う?強行捜査
『彼女の意図をどうとでも取りうることができる問いに肯定否定ではなく
既にあるものとして答えた。過程を飛ばすような答え方だが西園寺偲がこう言ってるのだ。
計画自体既に掴んでいるかそもそもそれを計画を組むように仕向けるか
あるいは元より本人が組んだ等考えられることであるのだ。何にせよ”はい いいえ”で答えるなど時間の無駄でしかない。高級中華も冷めきったものを口にしてほしくないだろう』
■西園寺偲 > 「そうですね――」
箸を主菜の仔豚の丸焼きへと伸ばす。
あまり味はしない。
かつてこの上司と不平を並べながら食べたレーションの味の方が思い出せるくらいだ。
「『して欲しい』とは思いますよ。
ただひとつの条件をクリアできれば、ですが」
■五代 基一郎 > 条件ね……
『流石の高級中華。子豚の丸焼き……普段の食糧事情から考えれば、なんとうまいものか。
この料理を前にあまりよろしくない顔をしているのだから、この一年半に食いなれたのかとも思うがそんなわけはあるまい。
今ここに自身を呼びつけた理由、条件が”彼女自身の助命”か”強行捜査の失敗”であることのように。
後者からになるが、強行捜査が失敗すれば当然風紀委員の失敗は公安にとって…またはこの事件について糸を引くものからすれば喜ばしいものだ。
ただでさえ証拠らしい証拠がつかめていない故に、血の気の早いものを先導して勇み足で突っ込ませる。
そして失敗と巻きこめば杜撰な強行捜査に加え風紀委員の実質的な力自体疑われることになる。
が、それは現状でも言われていることだ。このまま餌を与えず放置していれば、評価は下がるばかり。つまりわざわざ風紀委員を怪しい場所に呼びつける必要なんてないのだ』
■西園寺偲 > 「ええ」
ひとつだけの条件と言うが、事はそんなに簡単ではない。
公安の一般構成員の力は、風紀委員に大きく劣る。
この前のレイチェル・ラムレイとの対決が良い例だ。
1VS4という圧倒的条件なのに、結局勝利する事はできなかった。
だがそれでも。
この条件をクリアできなければ、ほぼ敗北は必至と言える。
「あなたが指揮を執らなければ、なんとかなるでしょう」
■五代 基一郎 > 『前者など特にだ。正確には保身というものだが。
今回の件、彼女は目立ちすぎている。この一連の騒動を目撃した自分もであるが公安委員会副委員長という立場の人間が
そこらの違反学生の頭のような行動を取っているのだ。それが波及し、現在では真偽はさておき神を名乗る生徒が反学園統治機構の組織まで作っている。
時折上がる噂でさえ、公安委員会の悪名がここ最近特に響いている。
おかしいとは思っていたが、今の西園寺の立場からすれば……と考えていたところで
その西園寺自身から語られた条件を聞き……その目が一時。西園寺自身の目を見て、また料理に戻った』
■五代 基一郎 > 執らないよ、俺は。正式な命令がない限りうちは動けないし。
『つまり正式な命令があれば管轄を越えて執るわけだが、そもそも強行捜査には消極的である。
それよりも』
ねぇ、潮時じゃない?そろそろ尻尾の切り時だと思うんだけどさ
■西園寺偲 > 「そうはいきません」
偲はうっすらと笑う。
まだ目標の達成には程遠い。
「私の行動は、全て学園秩序の為であり、公安委員会、そして委員長閣下の為ですから」
それは本当だ。
もっとも、全てを言っているわけではないが
■五代 基一郎 > 学園秩序と組織、そしてその組織を率いる者のため……
如何なることでも執り行い受け入れる。美談ではあるがなぁ
『その姿、まさしく滅私奉公。だが人間である限りその精神というものは複雑なものを内包する。
彼女が権力を笠に好き放題したいが故に、また盲目的にかの委員長を信仰しているなら単純な話だろう。
しかしそうではなく、現在既に一線を越えた彼女自身その複雑となったもののために命を惜しんでいないように思える。
だからこそやめておけば、と誘ったわけだが一件どうの以外にも彼女自身ワケアリらしい。
これも2年ほどの時間のせいだろうか。彼女が見ているものは見えない。』
俺は博愛主義というわけじゃないが、だからといって死んでいい存在がいるとは思わないな。
曲がりなりにも今でもご縁がある人間なら尚更さ
■西園寺偲 > 「――もし、人間に普遍的な価値観があるのなら、私達は2年前にあんな地獄を見なくて済んだはずです」
もう箸はつけない。
会食の時間は終わり、会談の時間だ。
「ですが、地獄は顕現した。
ロストサインなどというわけの分からない連中の為に、今の何十倍もの血が流れ闘争が繰り返された」
偲は笑う。
心から笑う。
「あの地獄を二度と蘇らせない為ならば、
この程度の死など許容すべきでしょう?」
■五代 基一郎 > そうだなぁ……この世のどの連中も善良で誰かを大切にする、優しい連中だったらあぁはならなかったろうさ
『西園寺の語る、いつからか渾沌とした世界の濁流が生み出したものを肯定するように語り
また西園寺とは逆に、しっかりデザートの杏仁豆腐とマンゴープリンにフルーツの盛り合わせまで手をつけて完食し水を一口
ナプキンで口元を拭い……笑う西園寺の目を見た』
なぁ、肩書はさておきその流れた血が……死を許容できなかったからこそ
俺達はあの場所にいいて、今の場所にいるんじゃないのか
■西園寺偲 > 「――そうですか?」
偲は疑問を呈す。
会談の目的は既に達成しているが、ここまで来たら最後まで付き合うべきだろう。
「私はともかく、もしあなたがあの死を許容できなかったのなら。
あなたは何でそんな所に居るんですか?
望めば生徒会長の地位だって手に入れられたでしょう。
そして、もしそうなれば――
何人の死が、回避できましたか?」
■五代 基一郎 > こんなところだからいるのさ
生徒会長でもなく、公安でもなく……今この場所にいるからこそ
”ここ”にいるのさ
『それは役職と、今この場所高級中華料理店【山麗華】……公安委員会副委員長であり
かつての部下である西園寺偲と会食していることを合わせてまず一の疑問に答えながら
これがその疑問への答えだと二の疑問へ繋げた』
ごちそうさま。
思い出話と中華料理、どちらも楽しめたよ。
うちはあまり食糧事情がよろしくないもんでさ。
『膨れた腹からひと息つきつつ、椅子を引いて席から立った
その目は西園寺偲を見ておらず。体と共に出口を向いて
入ってきたときとかわらずゆっくり歩いて出て行った……』
■西園寺偲 > 「――昔から、そうやって韜晦してばっかり」
偲は少し膨れた。
どうしても彼の前に居ると、昔の自分に戻ってしまう。
――学園の為に地獄を駆けずり回った少女など、もう居ないというのに。
男が出て行った後も、偲は席を立たなかった。
ご案内:「高級中華料理店『山麗華』」から五代 基一郎さんが去りました。
■西園寺偲 > 「――――」
偲は立ち上がる。
その顔は、何時もの彼女のものへと戻っていた。
「写真は撮れましたね?」
奥から出てきた部下がこくりと頷く。
五代と偲の食事風景。
この写真があれば、万が一にも五代は対公安捜査の指揮は執らないだろう。
「あの西園寺偲と密会していた男」という鎖が、彼を縛る事になる。
■西園寺偲 > 「あの人が指揮を執らなければ、そうそう負ける事も無いでしょう」
風紀委員会の弱点は、どこまで行っても『指揮官の不在』だ。
個の力は強いのに、独立不羈の気風が強すぎてその力が無駄に発散される。
現在、主だった風紀委員でその力を上手くコントロールし公安に立ち向かえるだけの『軍』に仕立て上げられるのは、五代基一郎くらいのものだろう。
■西園寺偲 > 故に潰す。
一片の容赦もなく。
まず戦略に影響する大駒を潰し、戦術面で取れる行動を大幅に制限する。
それこそが<ガウス・ブレイン>の導き出した結論。
「撤収します」
最大の難関は越えた。
あとは、盤面が覆されないように調整するだけだ
――最早なんの感傷も無く、偲は『山麗華』を後にした
ご案内:「高級中華料理店『山麗華』」から西園寺偲さんが去りました。
ご案内:「高級中華料理店『山麗華』」に麻美子さんが現れました。
■麻美子 > (透明化してこっそりと入ると、
同様に透明化してあった盗聴器を回収する。
……回収後、即座にその場を後にした。)
ご案内:「高級中華料理店『山麗華』」から麻美子さんが去りました。