2016/06/11 のログ
ご案内:「メールでのやり取り 悠薇の場合」に伊都波 悠薇さんが現れました。
■伊都波 悠薇 > 夜。若干悶々として眠れない。
というのも、姉と、付き合ってた? らしい男性が分かれたというものを目の前で見てしまってから。
どこか未消化なものを感じていた。あれから、姉と一緒にお風呂に入って彼のことを聞いたが、どうにもしっくりこない。
だから――
「は、初めてのメールにチャレンジ、です」
『きゃっ大胆☆』
家族以外には初めてである。
ぽちぽちと、メールを打つ――打ち込みは遅い。
”こんばんは、今お時間大丈夫でしょうか。できましたら、メールというものにお付き合いいただきたく、ご連絡いたしました。なにとぞ、よろしくお願いいたします”
これだけの文章、なのに打つのに30分くらいかかった。
なんとも携帯は難しい
■伊都波 悠薇 > 返信が来た。
ひひーんっという、馬の鳴き声。
設定を姉にお願いして、これにしてもらった。
聞いてて和む。
「か、堅苦しい……うぐ、めーる、難敵です」
『ファイト、はるっち、堅苦しさを抜いてー、丁寧にー』
ストラップの応援を聞きながら。再度チャレンジ。
”ありがとうございます。ではちょっとだけ、肩の力抜きますね? いえ、その。烏丸さんのことを、聞きたいなと思いまして。ぶしつけな質問をしてしまうかもしれませんが、よろしいでしょうか?”
力は抜いている、はずである。
■伊都波 悠薇 > ひひーん。
返信が早い。時計を見る……2分もたってない。
自分は10分はかかっているのに……さすがだと戦慄。
「うぐぐ、早く打とうとするとどうしても間違えます……」
かいては消し、をしてたら今度は15分かかった。
メール、侮りがたし。
”私のことですか? はい、そんなことで良ければ
お時間の許す限り。――姉から聞いたのですけど、烏丸さんは
器を壊すことが好きと伺ったのですけど。どういう、意味なんでしょうか?”
オブラートに包む方法はしらない。からまっすぐに聞いてみた
■伊都波 悠薇 > やっぱり、返信は早かった。
帰ってきたのは、間近な礼。
想像する。お気に入りのお人形。
大事にしたい、それ。でもどれだけ大事にしても、汚れてしまうときはあるし。
壊れてしまうときがある。
残念な、ことだけど。
”あります。子供の時は特に”
短い返事。でもやっぱ時間がかかったのは考えたからだろう
■伊都波 悠薇 >
ずっと、一緒にいたいから。
ずっとかわいがっていたいから。
大事にしたいと思えば、思うほど。好きなものを連れまわしてしまい。
結果的には壊れてしまう。そういうこと、だと彼は言う。
なるほどと、理解した。
それはきっと、彼の想いに器が耐え切れないということなのだろう。
もしくは、彼が。子供のような想いを捨てて、大人になり切れないからかもしれない。
少し、そんな想像をして。一つ、息を吐く。
「可哀想? 悲しい……? ううん、たぶん違うよ、お姉ちゃん」
でも、言葉は。体験の少ない悠薇には見つからなかった。
でも、そういったものを告げるのは違う気がする。
だって、たぶん。それでいいと彼は思っているだろうから――
それを変えたいとは思ってないだろうから。
”大人だと思ってた烏丸さんにそんなところがあったなんて意外です”
だから素直にそう告げた。
携帯を見ながら、クスリと笑みを浮かべて
■伊都波 悠薇 >
”そうなんですね。それで女の人にあきれられたり、しませんか?”
女がうずく母性を刺激するものとは違う子供っぽさ。
どちらかといえば見てて、イライラしたり。見ていて、呆れられたりする類のものだろう。
でも、たまーに。ダメ男にそそられる女性もまれにいるわけで。
そういう、いい人と彼が会えることを祈りつつ。
”ありがとうございます。もっと仲のいい友達になれた気がします”
感謝の気持ちと本心を告げて――
■伊都波 悠薇 >
――すでに壊れてる。
そう聞いたとき。浮かんだのは、疑問符。
姉は、壊れていたのだろうか。
そうかもしれない、あんな事件があったのだ。
でもそのままで幸せとは思えず、立ち向かい勝った。
そういうことだろう。でも――
そういえば、自分も好きって言われたような?
「~~~~~っ」
思い出せば顔は真っ赤になる。恥ずかしさで、言葉の意味を考える余裕はなかった。
いわゆる不意打ちである。なので――
”あばらばえおは、なななな、何を言ってるんですか?”
動揺とは違う、恥ずかしさによる誤字だらけのメールをそのまま送信してしまって。
「あーーーーー!!?」
絶叫が家に響いて、慌てて口をふさいだ
文だけ読んだらそれは――
■伊都波 悠薇 > 返信が帰ってきた……
どうしよう、もうお嫁にいけない……ではなく
返信もしたくない。でも無礼になるのでいやいやながらちらっと見た……
「お、おこってなかったぁ……」
『せうと! ターン続行!!』
ぽちぽちと返信。
ごろごろ転がった後なので、やっぱ時間はかかった。
今までで一番かかった。
”壊れてません。 もう、烏丸さんが変なこと言うから
そんな夜遅くに、友達の家に泊まりに行ったら親に怒られちゃいますから
それに男の人ですし。まだ好きも分からない人とそういうことしたら、不義になりますし”
とやんわい断りつつ。
”また、メールしてもいいですか?”
最後にそう、付け足した
■伊都波 悠薇 >
「し、下着!? や、やっぱお姉ちゃん……」
それから姉に何があったのかを調べるためという建前の元、性知識の興味を埋めるために、家にマニアックな本とか、なぜなにせっくすとかいう本とかがあって。
家族に見つからないようにしてるのは未来の話。
さすがにそこは姉に聞けずに、今でももんもんと読むだけです。
”お、お姉ちゃんに取りに行ってもらいますね! ご、ごゆっくり? あ、使ってくれてうれしいです。また遊びに行きましょうね?”
そしてしめを考えた後――
”お姉ちゃんに、何かあったら。助けてあげてくださいね? おやすみなさい”
そう締めくくった。
その晩、悶々として変な夢を見たのは言うまでもない
ご案内:「メールでのやり取り 悠薇の場合」から伊都波 悠薇さんが去りました。
ご案内:「落第街、スラム某所地下施設」に”マネキン”さんが現れました。
■”マネキン” > 【”マネキン”は高峰司の様子を確認している。
部屋は薄暗く、壁面のルーン文字だけが光っていた。】
【部屋の入り口に当たる金属扉はまだ開かれていない。】
ご案内:「落第街、スラム某所地下施設」に高峰 司さんが現れました。
■高峰 司 > 「…………」
力なく座り込んだまま俯いている。
気落ちしたような、そんな様子で、頬には涙の跡がある。
「…………」
言葉を発する気配もない。ルーンを刻もうとする気配もない。
脱力し切って、遠目から見れば寝ているか死んでいるのではないか……と思えるようなありさまだった。
■”マネキン” > ……。
【高峰司の顎に手をやり、顔を上げさせる。
”マネキン”は親指で彼女の唇をなぞった。】
わざと…ではないか?
【入り口の仕掛けが解除される音にフードを被った顔をあげた。
視線の向く重い鉛製の三重金属扉が機械仕掛けに従い、重苦しい音を響かせて上へと持ち上がっていく。】
客のお出ましか。
■高峰 司 > 「…………」
普段の彼女なら気丈な反応を返すであろう行為に、しかし一切反応はなく。
光のない目で虚空を見続けているだけだった。
が、扉が開けば……
「…………」
ゆっくりと、そちらの方に目を向ける。
ご案内:「落第街、スラム某所地下施設」に伊都波 凛霞さんが現れました。
ご案内:「落第街、スラム某所地下施設」に蕎麦屋さんが現れました。
■伊都波 凛霞 > 扉の開いた先は薄暗い地下室
壁面で光る文字には見覚えがある
高峰司が仕様する、ルーン魔術に用いるそれだ
けれど今は何よりも、そんなものよりも
部屋のただ一点にしか目がいかない
「司ちゃん!!」
声を張り上げる
意識があるのか、生きているのかもわからない姿を晒す、親友に向けて───
■蕎麦屋 > 「へぇ――」
ぐるりと、部屋を『視』渡してみれば。
手の込んだ魔術除け。これはしてやられるわけだ。と。
開いた扉も中々分厚い。入り口は間違いなく一つか。
それはともかく。
「――はい、毎度。」
くるくる消火斧回しながら。
いや、場違い感半端ないですよ私、どうしましょう。
■”マネキン” > 【高峰司の腕にはウィルス抑制剤のアンプルが刺さった点滴がついていた。
そのほかには、傷一つ無い。撃たれた筈の右足にも傷は残っていない。】
【伊都波凛霞の背後にいた余計な客に視線を向けた。
左手が一瞬だけ持ち上がる。】
(後ろのは扉で挟みたいところだが、伊都波姉には高峰司を連れて帰ってもらわねばならない。)
…ようこそ。歓迎するよ。
だが、後ろのが君の妹かね?
【大げさに両手を広げて、やや背筋をそらした。】
■高峰 司 > 「ぁ……りん、か……」
親友の姿を認め、よろよろと立ち上がる。
腕に刺さっている点滴を外す事すら忘れ、おぼつかない足取りで凛霞と蕎麦屋の方へ歩いていく。
「ごめん……わたし……」
声には力が無く、目には覇気が無い。
『高峰司』と言う人間を知っていれば、明らかに異常だと分かるような状態だった。
■蕎麦屋 > 「ん……あ、お気になさらず。通りすがりの親切な蕎麦屋です。」
入り口、あえて扉の真下に立てば、にこりと笑う。
この期に及んで、『マスターキー』を回しながら通りすがりは無理があるだろうが。
さて、そうしながら観察はしてみよう。
魂の、色を『視て』みよう。魔術ですらなく、純然たる能力なら阻害もされない、と踏んだ。
■伊都波 凛霞 > 「っ…!」
変わり果てた友人の姿に血相を変えて、
マネキンのことなど気にも留めずに、歩み寄る司へ走り寄り、抱きしめる
…点滴の針が刺さったままだが、慌てて引き抜いたりはしない
「もう、大丈夫。助けに来たからっ…!」
強く、迎えに来たという思いを乗せて抱きしめる
キッとした視線を、そのままマネキンへと送り
「……妹は連れて来ていないわ。一目瞭然でしょうけど」
■”マネキン” > 【魂に影響は無い。”マネキン”からは干渉もしていない。
彼は魔術については理解していない。魂についても同様に、”マネキン”はその存在を信じていない。】
【伊都波凛霞の動作にあわせるように高峰司のもとから距離をとる。】
だろうな。通りすがりに武器でも持たせて連れてきた…というわけでも、ないようだ。
・・
監視からもそのように報告を聞いている。
何も教えなかったんだろう?彼女は何も知らないまま…だ。
念のために行っておくが。
私は彼女に何か手出しをしたわけではない。
異常な状態だとは思うがね。
ああ、忠告しておこう。その点滴は毒や悪いものではない。むしろいいものだ。
だからすぐに外さないほうが懸命だよ。
【点滴を指差す。フードを深く被りなおす。】
■伊都波 凛霞 > 妹が異常…?
言っている意味が理解らない
「…貴方の言葉をそのまま信じるつもりもないけれど…」
ちらり、と点滴を眺める
一体何を投与されているのか、想像もつかない
「誘拐罪、その他色々適応されると思うけど、
この場で通報されておとなしく捕まれば、手酷い目に遭わせるつもりはないよ」
司を護るように、その手のうちに抱いて、そう告げる
■高峰 司 > 「うん……うん……」
きゅ、と抱き付く。
力なく、弱弱しい抱擁。しかし、その後に。
・・・・・・・・・・・・
「ありがとう、凛霞……だから、アタシも、もう少し頑張る」
目に、急速に力が宿る。
先程と違い、気力満点とはいかずとも死人の目ではなくなった状態で、抱き付いたままマネキンの方に顔を向け……
「『イス』!」
声を必死に張り上げる。
『ドーピング』をしてもまだ気持ちは回復し切らず、今にも折れそうだが……この親友がいれば、もう少しだけ、頑張れる。
声に呼応し、座っていた椅子に刻まれていた「I」の形のルーン……氷の象徴、イスのルーンが氷の槍となり、マネキンに伸びる。
ルーン阻害の術式を無視して。
■蕎麦屋 > のの字でも書くべきだろうか。
くるり、と回した消火斧。柄を持って、ぴたりと留める。
推移を見守るとして――。
魂の色。興味があるのは主人ではなく。相手の方だ。
果たして人間か。
■”マネキン” > 【顎に手を当て、顔を引く。】
信じるか信じないかは、君が選べ。
そうか。だがこちらとしても…!?
【言いかけたところで、跳び退ってイスに刻まれた『イス』の槍を避ける。】
そういうふりだったか?
まんまと一杯食わされたと言うわけだろうか。
突然仕掛けてくるとは、しかしこのタイミングと言うのは解せない。
一応尋ねさせてもらう、高峰司、君に何があった?
【魂と言う概念がないと言う意味では魂など無いと言うべきだ。
人間と認められるのならば彼は人間となる。
そして人間ではないと理解されたなら、その魂は異形の形状をみせる。】
■伊都波 凛霞 > 「……3対1だし…卑怯とも思わないから、大人しく捕まったほうがいいんじゃないかな」
目に生気を取り戻した司の背を優しく撫でて、その腕を解く
片手には大薙刀、両隣には、頼もしい味方だ
気後れする理由は一つもない
■蕎麦屋 > 「嗚呼、成程。面白いですね――?」
首を傾げた。
魂、自我、自己、そういう、生物にあるべき規定がない。故に見る者次第で化ける。
「――――頑張るのはいいのですけど。
いや、大人しくは捕まってもらえないんじゃないでしょうかね、この人。
人と規定していいのです?」
半死人1は戦力にそもそも数えていない。
救出する要件があるから人間1はその手に割かれる。
割と厳しいんですけどねぇ。とは内心。
■”マネキン” > 【高峰司にむけて手を突き出す。懐から一枚の資料を取り出した。】
せめて「解説」する時間くらいはくれてもいいじゃないか。
この資料がどうなってもいいと言うなら、やむをえないが。
【伊都波凛霞の言葉に頷く。
右手を弾く。奥へ繋がる扉が開く。】
では3対3にさせてもらうよ。
【開いた扉の向こうに小刻みに震えるのっぺりとした白い人型がいた。
頭部はつるりとした粘土の卵を用意して横に捻ったような形状で、手足の関節部から爪上の構造物が突き出している。
その両手は4本の爪刃で床を引っかいていた。アクリルの床を引っかく耳障りな音が響く。
上半身だけ遅れるような歩きかたで足を突き出す。その動きを吸収しないぎこちない歩きかたで、全身を揺らしながら一歩を踏み出す。】
■高峰 司 > 「……うっさい。それでも何とかしてくれ。じゃないと、アタシは……」
蕎麦屋……ヘルヴォルの言葉に返しつつ、ふる、と少し震える。
自分の魂が改竄されるという恐怖。それから脱し切れているわけではない。
あくまで『イング』のルーンにより、無理矢理心を活性化させているだけだ。
『イング』も『イス』も、上下左右対称のルーン。故に『天地反転』の意味阻害を受け付けず……魔力の籠ってない単なる文字のルーンがあるだけなら、ある程度しっかり意識すれば意味撹乱も受け付けない。
非常に限定的だが……使えるルーンを見出していたのだ。
「…………オマエが打ち込んだウイルスだろ、白々しい」
離れた凛霞に、少し手を伸ばし掛けて止め、そのままマネキンに声をかける。
こんな恐ろしいウイルスを打ち込んでおいて、いけしゃあしゃあと。
……ここまで待った理由は、単に『凛霞がいないと不安に押し潰されて集中できないから』と言う情けないものなのだが、口にはしない。ぜったいに、しない。
■伊都波 凛霞 > 「…ウィルス…?」
そう聞けば表情も険しくなろうというもの
…そして奥から現れた偉業
どうも簡単に、というつもりもないらしい
「………」
司を護るように、一歩前へと出た
■高峰 司 > 「凛霞」
小声で後ろから話しかける。
「アタシは正直……弱ってるし、ルーン阻害のせいで本気出せねぇ。ごめん、本当に何もかも甘えちまう……。
でも、これくらいなら、出来る。 ……たすけて」
言いながら、凛霞の背中にも『イング』のルーンを刻む。
活性化のルーン、凛霞の力を底上げするくらいの効果はあるだろう。
……攻撃的な効果を発揮できるのは、現状『イス』くらい。それも十全とはいかない。
だから、せめてもの補助を。
■蕎麦屋 > 「あら――ああ、大丈夫ですよ、最低限の手筈は整ってます。
整えたのは私じゃありませんが。中々いい友人お持ちじゃないですか。」
応えながら、奥に出たのは――また人間じゃないのが。
人間相手が一番楽しい、というのに。化物のふりをした人間なんて最高に面白くないじゃないですか。
「凛霞さん?司君?
戦おうという意志は大変すばらしいですけれど、目的は履き違えないでくださいね?」
構えて前に出るのを見れば、静止の声はかけておく。
掛けておかねば、この二人は戦闘する方向に転びそうだ。
■高峰 司 > 「……分かってる。でも、コイツからウイルスの事聞きださねーと、どうにもならねーんだ」
怯え。
高峰司に似つかわしくない感情をにじませながら、蕎麦屋に告げる。
そう……ウイルスを根本からどうにかする手段を聞きださないと、いつか、このウイルスに呑まれてしまう。
それだけは……絶対に、嫌だった。
「頼む。仮契約でこんな事言うのもアレだけど……助けて、くれ」
■”マネキン” > 【高峰司の発したウィルスとの言葉に首肯する。】
彼女に刺さっている点滴はウィルスの抑制剤だ。
どうやら何らかの異能による干渉を受けたか、何らかの手段で知識を得たか?
そうであれば君がいま侵食ステージ1に立っていることも理解しているというわけだ。
やあ、解説の手間が省けるね。
ああ、紹介しよう。
彼は君の先輩に当たる。侵食ステージ4aの御仁だよ。
【白い異形の人影を紹介するように手のひらで指し示し、礼をする。】
元は落第街で人斬りをやっていたようだがね。
どうにも邪魔だったものでそのツケを彼自身に実験台になってもらうことで払ってもらったんだ。
こうなる前は、小太刀二本で20人ほどを斬った手練れだったらしい。
【そこに魂は無い。人影は小刻みに震えている。】
■伊都波 凛霞 > 「…なんてこと。
司ちゃんに危害は加えないって!!」
激昂する
そもそも信用に値するかといえばNOではあったものの、
こうも簡単に……
冷静に対応しなければ、いけないというのに
■蕎麦屋 > 「今なら出血大サービス、契約なんて糞喰らえで御座いますよ。
――まぁ、聞くだけ聞いて帰らせて頂けばいいんじゃないでしょうか。」
仮契約の上に反転した契約などあまり意味のない話。
趣味です、趣味、というか契約とか言わないで下さいよ善意の蕎麦屋なのに、と手をひらひら。
「……凛霞さん?
落ち着いて――そこの弱ったぽんこつ連れて帰ってもらわないと非常に困るのですけど。」
怒るのだろうな、と思ったら案の定。
聡明ではあるが、筋が通りすぎるほどに通った子だ。
わかりやすい。だからこそ何度でも釘は指す。
■高峰 司 > 「嫌だ……」
凛霞の後ろで、恐怖におびえる。
ああなるのか。いつか、このままウイルスを取り除けなかったら。
自分は、ああなってしまうのか。
「嫌だ……あんなのに、なりたくない。アタシはまだ、凛霞と一緒にいたい……!
助けて……!嫌だ、嫌だ……!」
イングで補強してなお、心が折れそうになる。
自分は悪だ。ロクな末路は辿らないと分かっていた。
分かっているつもりだった。
でも。そんな覚悟は所詮机上の空論で。
自分の無残な果ての姿を見せられて……光に、縋り付く。
英雄と、戦乙女に。
悪を討つ存在に、悪でありながら縋り付く。
■”マネキン” > 抑制剤を使っている限り、彼女にはなんとも無い。
侵食ステージ1のウィルスは宿主の細胞に潜伏し擬態する。どんな検査でも見つかることも無い。
つまり、今の彼女は…ああ。ちょっと五感が鋭くなっているかもしれないが、ただちに影響は無い。
ほら、危害は加えてないだろう?
【資料を左手に持ち帰る。扇ぐように振る。】
こちらも解説するだけ解説して帰ってもらうつもりだったのだが。
残念ながらくそ黒眼鏡の先輩に予定を邪魔されてしまってね。
この手がかりが欲しければ、ちょっと戦闘実験をしていってもらうよ。
【右手で腰の拳銃を抜く。
ヴォジャノーイに叩き込んだ水銀鉛合金弾頭のデザートイーグル。】
■高峰 司 > 「アレは……!」
ヴォジャノーイを弱らせた、対魔術弾を装填していた銃だ。
通常の拳銃としても有用だが、アンチマジックウエポンとしての側面が強いのだろう。
故に、影響が強そうな方に即座に声をかける。
「ヘルヴォル、アレは対魔術弾入りの銃だ……気を付けろ」
神話を生き抜いた戦乙女に、対魔術弾如きが効果があるのかは謎だが……それでも、警告はしておく。
■伊都波 凛霞 > 「すんなり帰すつもりならあんなの出してこないでしょ…。
それともお蕎麦屋さんがまとめて蹴散らしてくれます?」
小さくため息
「…その抑制剤っていうのをどう調達すれば良いか、が重要なんだけど…?」
■蕎麦屋 > 「ああ、やっぱり。
お姉ちゃんが妹を連れてこないことまで織り込み済みでしたか。」
やっぱりこの手の絡め手相手はやり辛いなぁ。と思う。
「まとめてって――え。最初からそのつもりでしたけれど。
はい。気を付けます。――あと今の私は蕎麦屋ですよ。」
むしろ殿要員なのだろう、と思っていたのだが、違うのか。
呼ばれれば、やんわりと訂正を加えつつ――錯乱気味の主人には無駄かもしれないけれど。
■”マネキン” > 【資料を手にした左手でフードを抑え、目元を隠す。】
…ヘルヴォル。
さて、予習はしていたがなんだったか。
欧州の古人名。ルーンの魔術師。ゲルマン人。北欧神話…。
【思い出そうとしている途中で問いかけに呟きを止めた。】
ウィルス抑制剤の調達か。
この薬は作用機序が特殊でね。複製しても抑制効果は大きく低下するだろう。
つまり、私にしか作れないとしかいえないね。残念な話だが。
【芝居がかった動きで腕を組み、大きく頷く。】
■伊都波 凛霞 > 「……」
抑制剤は彼にしか調剤できない
つまりこのまま司を連れ帰っても、いずれは
…かと言って、この男を殺したり逮捕しても同じことである
───いや、往々にしてそういったものは
『本人がそう思っているだけで抜け道はある』ものだ
ならば、まずは司の保護を優先すべき
幸い味方…ヘルヴォルは心強い
手早く司の腕に刺さった点滴針、その先にあった薬剤を手にとって、司へと押し付けるように渡す
逃げる準備は整った、後は───
■高峰 司 > 「……」
押し付ける様に渡された薬剤を握りしめる。
このまま戦っても意味がほとんどなさそうだ。
となると……
「……蕎麦屋。頼めるか?」
ちら、と見て口にする。
恐らく、手筋としては―――
■蕎麦屋 > 「はい。手筈通りに。
私達の通ったルート以外はお勧めしません。逸れたら死にます。
――いやぁ、後方支援任務なんて久しぶりでちょっとハッスルしすぎましたね?」
あっはっは。
外からなだれ込む伏兵は居そうにはないが、念のため、と。
派手好きな相方らしかったのでついついやりすぎたのは本当のこと。
「はい、任されましたよ。」
■”マネキン” > 【”マネキン”は胸元のポケットにある、ウィルス抑制剤のアンプルを2本見せ付ける。
口元を三日月状の笑みの形に歪めた。】
戦闘していけばあと二本、追加で手に入るぞ。
ああ、倒してしまっても構わん。その程度なら平気だ。
…そこの高峰司ならよくわかっているだろう?
【3人の”マネキン”に既に一度あっている彼女に声をかける。
革靴を一度踏み鳴らす。
部屋の光量がやや強くなる。照らされていなかった部屋の隅や壁面が明るく見えた。
よく見れば、壁のルーンに妙な三角が描かれている部分がいくつかある。
明かりが強くなって、その入り口付近の壁面に何かが張り付いていた。】
3対3と言ったな。
紹介を忘れていた。tnDr-05という。tnD-04の改良-refine-タイプだ。
彼に背中を向けないほうがいいと、忠告しておこう。
【黒い、光る三角形の眼孔を持つ不定形の獣がそこにいた。】
■高峰 司 > 「……」
じ、とそちらを見る。
……これは、安易な撤退は許して貰えなさそうだ。
「ダメ、だな……逃げたら速攻で追いつかれるぞ、アレ。あのヤロウは、殺してもすぐ湧いてくるんだけどな……」
部屋から出るくらいの隙があれば、誰かを呼び出せる可能性はあるが……この部屋の中では、召喚が出来ない。
これは、難しそうだ。
■伊都波 凛霞 > 「……蕎麦屋さん?…あれに言い包められたほうがお得だと思う?」
凛霞にしては珍しく、判断を委ねた
こういった事態は自身もまた初めてである
逃げようと思えば逃げられる
しかし必要なものは、敵の手の内
手を貸してあれを奪えるなら奪うほうが、確実に
それとも───
■蕎麦屋 > 「何、寝言を言っているのです?3対3?」
鼻で笑う。
元々が背が高い。腕を伸ばせば、降りていない扉に――ぎちり、と指が食い込む。
「いいですか。相手の思惑に乗るのはそれだけでデメリットです。
手段は一つなんてふざけた話はありません。盤面は引っ繰り返しなさい。
そういうわけで――いいからとっとと行ってくださいませんか。足手まといが居ても邪魔なだけです。」
くすり、と笑顔すら浮かべながら。
どこまでも蕎麦屋である。
■”マネキン” > …どうやらそこのヘルヴォルによほど自信があるようだが。
では、記録を開始する。
【指示を出す。
それまでのぎこちない動きとは異なる、床を滑るような動作で白い人影が伊都波凛霞と高峰司へ接近し、その4指の爪刃を振り上げた。】
ああ!もうひとつ忠告しておこう!
侵食ステージ4以降の感染者の保有するウィルスは素体へと変化している。
つまり、その爪には感染能力があるということだ、気をつけてくれよ?
【”マネキン”の忠告と同時に、その両腕をそれぞれ二人に振り下ろす。
様子見の一撃であり、腰は入っていない。】
■高峰 司 > 「……!」
怯え。
あの爪に触れれば、悪化するかもしれない。もっと進行するかもしれない。
だが……それを塗りつぶす感情があった。
それは、怒り。
「汚ぇ爪で、凛霞に触んじゃねぇ!」
瞬間的に意識を集中、突っ込んでくる二人に『イス』のルーンガンドを叩きこむ。
無二の親友、こんな自分を助けに来てくれた伊都波凛霞。
そんな彼女を、こんな下衆なウイルスに感染させるなど許せない……!
「ヘルヴォル、オマエウイルス喰らって大丈夫な自信あるか!?」
単なる人間とは一線を画す『戦乙女』に問い掛ける。
■伊都波 凛霞 > 「────」
様子見の一振りは二人に到達することがなかった
なぜなら振り上げた時には既に、肘の辺りから綺麗に分断されていたから
肉塊が落ちるような音がして、爪刃ごとイスによって凍てついた腕が転がる
「……私だけならもう少し手加減してあげれたけど、司ちゃんまで狙ってくるのは、何かな。
…挑発のつもり?」
大薙刀を振り払うように薙いで
「提案、共同戦線のほうが確実かつ早いです。
蕎麦屋さんに万が一のことがあっても困りますし?」
感染の話を聞けば、余計だ
■蕎麦屋 > 「さぁ?あんなのは流石に見たことがありませんけど。
ただまぁ――『人間』はバケモノに勝てませんよ?」
英雄には強いですけれどね。
そんなことを思いながら二人を見る。
「あと、まともに打ち合うつもりもないので大丈夫でしょう、多分。
三人そろって感染しましたあっはっはー。の方が笑えないので行ってください。」
ミヂリ、と。扉の奥、内部から――引き千切れる音が響く。
■”マネキン” > 【白い人影だけが今は突撃している。
人影は即座に一歩後退し、『イス』のルーンガンドを左の刃で切り捨てた。
爪同士を打ち鳴らし、様子を見ている。】
【肘からも刃が出ている。
大薙刀の一撃は狙った場所が悪く、腕を捻り肘の刃で受け止めた。
切り捨てたはずと言う残像が残る。腕のように見えた爪刃が床に落ちた。】
細かい指示が出せるわけじゃない。
…そうか。元の特性かもしれないな。
【”マネキン”はひとごとのように言う。】
■高峰 司 > 「…………」
状況を整理する。
必死に思考を回して……判断を下す。
「一気に畳みかけた方が、多分いい。ヘルヴォル、オマエだけに任せると、オマエを失う可能性が高くなる。
アタシは、オマエも失いたくない」
結局は、我儘。だが、その我儘を押し通す。
「アタシは後ろから援護する。二人で何とかソイツ等処理……出来るか?」
■伊都波 凛霞 > ひゅうん、と頭上で一度振り回してから、大薙刀を構える
「蕎麦屋さんは大丈夫な自信があるみたいだけど、
そういうので割り切れない感情持ってるのが人間なのかもね」
信用していないわけでもないし、買いかぶっているつもりもない
「司ちゃんもひどいね。私の事誰だと思ってるの?」
曰く、完璧超人
しかも今宵は愛用の業物まで完備だ
最初から何が出てきても負ける気はない
■蕎麦屋 > 「――はぁ。」
溜息一つ。
最初から殿のつもりで『色々』と用意していたのがすべてぱぁ、である。全く。
ミヂッ、と厭な音を立てて、扉が、天井にめり込んだ。
「では、善意の蕎麦屋としてお相手いたしましょうか。」
得物を片付けて、ぱん、と両手を叩き合わせる。
■”マネキン” > (伊都波凛霞の動きが冴えている。
やはり予定外のズレが響いているか。本来ならば、同時に姉妹を襲撃するはずだったのだが。
そしてあのもう一人…余計だな。…ヘルヴォル?)
【腕の装備を確かめる。
そして今度は白い人影と”マネキン”、そして不定形の獣の3体で同時に仕掛けた。】
【白い人影は伊都波凛霞と高峰司へむかう。
”マネキン”と不定形の獣は両側から挟み込むように蕎麦屋へと向かった。それぞれ人外の速度で踏み込む。】
つれてきただけあって、切り札と言うわけだ。
戦力はそちらに振り分けよう、神霊?
■高峰 司 > 「……悪い」
溜息を吐いた蕎麦屋に詫びる。珍しく、本当に珍しく、素直に。
だが、やると決めた。なら最大の成果を持って帰る。
「凛霞。ヘルヴォル。 ……何度も悪いが、頼む。アタシを助けてくれ。
アタシも出来るだけ、オマエらを守る……!」
と言っても、イスのルーンガンドしか使えないが。
言いながら、向かってくるそれぞれにルーンガンドを撃ち込み、動きを阻害しようと試みる。
加えて。
「ヘルヴォル、イング要るか!?」
自分のルーンが戦乙女にとってプラスになるかは分からない。故に、それを確認する。
■伊都波 凛霞 > 「………」
部屋に入った段階から、壁に浮かんでいるルーン文字が気になっていた
対魔術の、というならおそらくこれだろう
「当然、そのために来たんだよ ──ふっ!」
向かってくる人影に放つのは草伏せ、
その足を大きな動きで払い倒そうとする、そして
そのまま───
「ッはぁぁ!!」
壁面、ルーンの文字が淡い光を放つその壁へと向けて大薙刀を全力で以って叩きつけた
■蕎麦屋 > 「残念、切札でも神霊でもなく、お節介な一介の蕎麦屋でございます。
ああ、今度いらっしゃったら海苔もなしでお出しいたしますね?」
いいながら、くるりと手を回す。
12.7mm重機関砲。
人が扱うには重すぎる車載兵器を両手に一丁ずつ。交差ささせれ銃口は相手の鼻先。
ナマの魔力と神格が乗った鉛玉が、毎秒20発。
「ああ、結構結構。自分の身を守る方に集中してください。
それよりも――」
そういえばパスが通っているか。なら――パスを通しての魔力供給。
やったことはないが、通っているならいけるはず。
■”マネキン” > 【対精霊用には水銀鉛の弾丸を用意した。
対神霊用には”マネキン”は魔術に詳しくなかったが、ルーンを使うところから
逸話を元にヤドリギの槍を薬剤で硬化処理し、先端をメタルジャケット化したスピアガンを腕部に仕込んでいた。】
ラグナロクとかなんだかよくわからないけどね。
まあ槍は槍だ。多少は効いてくれるとありがたい。
【そのうちの二発の小型槍を接近できる限り近づいた位置から、蕎麦屋に向かって発射する。
ガス式スピアガンの残り弾数は六発になった。
鼻先に突きつけられた銃口には、対処しない。
そして蕎麦屋には背後からも、ケモノが大口を空けて喰らいつこうとしていた。】
【伊都波凛霞の一撃によって壁が大きく抉れる。
鉛の下地が露出した。
歪なルーンの一部が崩壊する。妨害効果は減少した。】
■高峰 司 > 「……!」
妨害のルーンがある程度破壊され、尚且つ扉は開け放たれている。
加えて、蕎麦屋からの魔力供給……魔力も必要分回復した。
好機。
「ヘルヴォル!」
蕎麦屋の後ろに迫るケモノにルーンガンドを撃ち込みながら、自分が切り札を切れるタイミングをうかがう。
「『二人とも、アタシがルーン刻む時間稼いでくれ!』」
念話で二人に語り掛け、自分も戦況の把握に努める……!
■伊都波 凛霞 > 「!」
さすがに鉛を打ち砕く、といかないまでも、文字が削れた
つまりこの妨害作は表面的に加工を施しているだけのものだ
「ヘルヴォルさん!ちょっと伏せてね今すぐにっ!!」
自分と、蕎麦屋を挟んで反対側の壁に向けて数発の、
そしてマネキンの背後の壁にも、苦無を連続て投擲する
苦無は浅く突き刺さり───そして破裂音を立てて爆発する
「『OK、任せて!』」
念話で応答し、薙刀を構え直す
■蕎麦屋 > 「あら――せっかくの営業ですのに。乗ってくださらないなんて。
それはおくにしても――終焉はよく分らないモノでしょう。わかった時にはすべてが終わっているが故に。
ええ、私にもわかりかねますが――」
相手が避けないならば受けて差し上げるのが礼儀でしょうか。
脇腹に刺さったヤドリギの槍。血の代わりに噴き出したのは、炎。瞬く間に焦げ、灰になり、崩れ落ちた。
「はい、かしこまりましたよ。」
諸々には纏めて頷きつつ――
銃口は引き絞ったまま、動じた様子もなく、無動作でその場に正座で座り込む。
座り込む拍子に頭を一振り。重く束ねた髪が後ろの相手の足を払うだろう。
■”マネキン” > 【白い人影は草伏せに一瞬だけ体勢を崩す。横を通る苦無は見逃す。】
【即座に姿勢を立て直すと、伊都波凛霞に向けて腕を振るう。
右手は横薙ぎに。左手は縦斬りに。確かな技を持って今度は体重を乗せて振るわれる。
片方を斬り飛ばそうとすれば、もう片方の一撃がそれとかみ合う。】
【壁面の光るルーン文字はもうほとんど少なくなっていた。】
■”マネキン” > 【”マネキン”の頭部が毎秒20発の弾丸に吹き飛ばされる。
フードが粉々になって床に落ちる。手ごたえは無い。】
残念だが、こちらも効いていない。
しかし一応予習しておいたが、やはり魔術と言うものは分からないな。
ヤドリギの槍、終末の引き金を引いた神殺し、ミストルテインだったか?
【フードを失った”マネキン”は即座に跳ね起きる。
今度はデザートイーグルを構えて蕎麦屋へと突きつけていた。
左手で懐を大きく開き、円柱状のグレネードを掴む。】
【黒い不定の獣はルーンガンドでうろたえた。髪がその姿を打ちすえる。】
■高峰 司 > あの二人は大丈夫だ。
ほんの数瞬支援が無くても、やられる程度の二人ではない。
―――今ここに紡がれているのは、二つの物語。
気高き少女の英雄譚(キャバルリィ)と。
勇壮なる戦乙女の神話(ミソロジィ)だ。
ならば、ここにもう一つ、神話を書き足そう。
全てを焼き焦がす、獄炎の物語を。
「エオロー、アンスール、ユル、ソーン、ケン、ウル、ティール、エオロー!」
(我が友は、神域より堕ちたる炎の巨人。荒々しき力にて勝利を齎す者。我を助けよ!)
高速で、そしてしっかり魔力を込めて空中にルーンを刻む。
―――これなるは、高峰司の最大火力。傲慢により天界から追放された、炎の巨人。
「燃やし尽くせ、イフリィィィィィィト!!!」
『契約召喚・獄炎魔神(サモン・イフリート)』。
本人が最強でなくとも、本人が好調でなくとも。
使役するモノが最強ならば、その最強は揺るがない。
高峰司も、ようやっと本当の意味で……この戦いに、参戦した。
『ハハハハハ、俺を呼ぶとは随分と切羽詰まってんな、ツカサァ!』
獄炎を纏う巨人は笑う。笑って。
『で、多分だがあのフード野郎を……焼けばいいんだな?』
言うや否や。
マネキン本体に向けて、燃え盛る腕を伸ばし捕まえようとする。
■蕎麦屋 > 「ミストルティン。嗚呼、光の子を殺った懐かしい名前ですが。
それが効果を及ぼすのは――」
生憎と、その神格は『所持していない』。
くるん、と重機関銃をしまえば、じゃらじゃらと硬貨が溢れだす。
100円玉――纏めて四枚、ぴん、と弾いた。白い人影の右腕の肘と手首の関節へと吸いこまれるように飛んでいく。
髪は打ち据えればそれでおしまい。
突きつけられたデザートイーグルの眼前に、つい、と板を差し出した。
FRONT TOWARD ENEMY――。
「――あら、時間稼ぎは十分です?」
熱風。視ずとも何か呼んだ、程度の理解は及ぶ。
■伊都波 凛霞 > 「!」
司の召還で現れた炎の魔神を横目に、人影と相対する
縦と横から振られる攻撃は───避けない
あえて踏み込み、その懐へと押し入り、その攻撃を殺す
あとは、そのままに
「吹き飛べっ!!」
体の中央に、肘打ち
更に肘を曲げたその拳に、一瞬だけ薙刀から手放した右の掌を打ち当てる
二重に重なった衝撃はその体内を通過し、背中側から弾けるように
"伊都波流・真柱鎧通し"
強固な外装を持つ相手にも有効だが、そうでない相手に決めれば──面白いように吹き飛ぶ
そのベクトルは、フードの男に向いている
■”マネキン” > (やはりそういうのもいるか。
対熱量、非物理系統の相手への対策。想定どおりではあるが。)
【デザートイーグルを撃たずに投げ捨てる。
”マネキン”の視線は蕎麦屋から外され、召喚された炎の巨人に向かう。
右手も同じくLOXと文字の書かれた円柱状のグレネードを握る。安全ピンを外す。レバーを握りこむ。】
そいつも、予定済みだ。
LOX…Liquid Oxygen 液化酸素の冷却グレネードだ。
冷やしきれると思ってはいないが。
これで冷やせない相手の輻射熱と、周辺の急激に上昇する酸素濃度が何を引き起こすかぐらいは、わからなくもないだろう?
【丁寧な解説と共にレバーを外した冷却手榴弾を2発、アンダースローで床すれすれの軌道を通してイフリートへ向け投げつけた。
効果範囲には全員が巻き込まれる。】
【ふき飛ぶ白い人影には一度だけ視線を向ける。
100円玉を脅威と認識できずに受け、必殺の十字斬撃を踏み込みでかわされる失態を演じたそれにむけて、”マネキン”は左手を振り下ろす。
奇怪な動きでそれはアクリルの床に叩きつけられた。】
【時限信管を短時間にセットされていたグレネードが、炸裂する。】
■蕎麦屋 > 「あら――」
一瞬で意図は読めた。
垣間見える他人の終焉。なんとも。
「やるせませんねぇ。」
ですので終わらないようには致しましょう。
ぴん、と髪留めを外し、髪が広がる。姿が隠れ――
■高峰 司 > 「ッ!イフリート!」
『ハハハ、皆まで言うな!』
瞬間。
獄炎の魔神の炎が、消え失せる。
『舐めてくれたなクソガキィ!俺の特性は炎だけじゃねぇんだよ!』
言いながら、何と氷で冷却グレネードを更に包み込み、冷凍してしまう。
……イフリートは、炎のイメージが強いが、実はその能力は炎に限定されない。
その実態は、万能の魔術師。様々な魔術を操り、変身能力など人間の持ちえぬ能力をも操る神話の魔神。
『舐め腐ってくれた礼だ、いっちょ潰れとけクソが!』
短気で傲慢な性格が玉に瑕ではあるが……この魔神は、まさに切り札。
……問題は。
思いっきり地面ごと殴り潰そうとしているが故に、周囲に瓦礫が飛散してしまいそうなことか。
■伊都波 凛霞 > 「(うわーすごい、でも口悪いなぁ)」
そんなことを考えながら、軽やかなステップを踏むようにして素早く司の横へと移動する
確実な安全圏であるからだ
これで周囲を召喚獣が気にすることもないだろう。気にするタイプにも思えないけど
■蕎麦屋 > 跳ね上がる髪と同時に吹き上がる、熱。イフリートと同等か、それ以上の熱量。
本来の権能から外れた熱は、鎧を赤く焼け焦げさせて。広がった髪はさながら天使の翼のごとく、形を変えて――守護すべき英雄を包み込んだ。
「まったく。焦って損したじゃないですか――ねぇ?
全力でやって大丈夫でございますよ。」
兜の端から見える、口元がゆがむ。
■”マネキン” > (…熱量操作!)
【”マネキン”はイフリートの一撃を抵抗する様子も無く受ける。
巨大水槽にも使用されるアクリルの床に一面大きく罅が入り、鏡としての役割を失った。
ルーン魔術への妨害はこれで全て消えうせた。】
イフリート…これは想定していなかった。
ルーンの魔術師じゃなかったのか。
エオロー、アンスール、ユル、ソーン、ケン、ウル、ティール、エオロー…
なるほど、それが全文か。予習しておこう。
【殴り潰したその下で、小さな炸裂音が聞こえる。
残り持っていたグレネードが炸裂し、その勢いで胸ポケットのアンプルが離れた床に転がった。】
【残った彼らの残骸は、黒い泡となりつつある。】
■高峰 司 > 『ハッハハハハハ!!俺にかかりゃあこんなもんよ!!!』
殴り潰した感覚に高笑いするイフリート。
……一部飛び散ったアクリルの破片やらが蕎麦屋の生み出した炎にかき消される。それが無かったらどうする気だったのだろうか、この魔神は。
「アホかテメェ、アンプルとか欠片とか考えやがれ!」
司も、指差してイフリートを叱り付ける。
それに応えて
『ハハハ、いいだろ結果オーライでよぉ。つーわけで俺は帰るぜ』
司が制止する間もなく、すぅ、と薄くなって消えていく。元の居場所に戻ったのだ。
「…………ぁ」
気が抜ける。
その瞬間、ぺたん、とその場にへたり込む。
一段落。なのに、全然解決は出来ていない。
戦い終わって、それを思い出してしまった。
■蕎麦屋 > 「いや、おおざっぱなのはいいですよねぇ。」
炎の魔神とそろって笑う。はっはっは。
こうしてみると二体に増えただけにしか見えない。
「……で、逃がすとお思いですか?」
多分、私がこの場に居る理由――。
兜に隠れた瞳が、死に行く者たちを『視る』。
戦乙女の別名、魂の裁定者。
死にゆく魂を拾い上げ、英雄の園へと運ぶ――魂の導き手、死神としての力。
残留するにせよ、消え失せようとするにせよ――逃がしはしない。
■伊都波 凛霞 > 床に転がったアンプルを素早い動きで回収する
割れていない…とりあえず一息である
……まぁこれをそのまま信頼して使用することもできないのだけれど
「まぁまぁ…おかげで一応……終わったし、ね…」
少し、後味が悪い
結局自分と妹にどういう用だったのか、
それに最後の言葉も気になった
「………まだ、いるの?」
ヘルヴォルの思わせぶりな言葉につられて、周囲を探す
■”マネキン” > 【魂の視覚に黒い塵が扉の奥へ流れていく様子が見えた。
だが個体ではなく、塵のように薄れていく。ウィルスとしてのサイズへ変化していく。
それはウィルスサイズの魂ともいえた。やがて見えなくなる。】
【”マネキン”が最初に出した資料がその場に残されている。
この文章には続きがある。】
「>ディアブロ・ウィルス研究データ
■■年前に海底遺跡の溶けない氷を採取した際に発見された未知のウィルス。
服務規程違反により感染した第一実験体を”ディアボロス”と名づけられる。
侵食の初期段階において人体の能力が向上することが判明。
以後、海底施設を拠点として研究が開始される。
数ヵ月後、第一実験体以外の感染者が自我を失い、研究者を襲撃する事件が発生。
財団は施設の封鎖を決定する。」
■高峰 司 > 「……どうだ?」
へたり込んだ状態で蕎麦屋に魂の状況を問い掛けつつ、資料を取りに行こうとして……力が入らず、倒れこんでしまう。
「ぁー……だめ、か」
そもそも、精神的に追い詰められてボロボロ。体力的にも消耗していたのだ。
魔力供給があったとは言え、そんな状態で切り札のイフリートを召喚していたのである。
体力的に、既に限界だった。
■蕎麦屋 > 「いえ、もう『此処には』居ません。」
首を左右に振りつつ。
突入の直前に飛ばした烏。『姉の魂を一時的に持たせる』などという荒業だが。さて、彼らで『視える』だろうか。
位置の特定くらいはしておきたいが。
「さて、あれはなるほど、みたことがないですよ。」
問われれば、肩を竦める。
言いながら髪をまとめて、簪で留める――
■伊都波 凛霞 > 「…無理しないで」
ぽん、と司の背中を撫でて、
床に落ちている資料を見つけて歩み寄り、手にとる
「……これ…」
その内容に眉を顰める
……手に余る、そういった感想しか出てこない
よもや常世財団の名前が出てこようとは…
神妙な顔つきで、二人へと資料を見せに戻った
■高峰 司 > 「そう、か……」
ここにはいない、と言うことは追跡も出来ないという事。根本を叩くという真似も出来そうにない。
しかし……軍勢の守護者であるヘルヴォルが見たことのない魂の形とは、一体……。
「ごめん、凛霞……」
そして、親友の気遣いには謝罪で返す。
そもそも、謝りたい事ばっかりだ。守りたくて動いたつもりが、危険に晒してしまった。
情けなさがぶり返し、涙が零れそうになるのを堪えながら資料に目を通す。
「ディア、ボロス……コイツ、夢で」
ベッドマンに見せられた夢の空間。その中で出会った女の名乗った名が、ディアボロス。
つまり……常世財団の、研究員だったのか。
■”マネキン” > 【資料には別項目の続きがある。
まずは前半だけ記述する。】
「>ディアブロ・ウィルス侵食段階分類
侵食ステージ1
ウィルスが感染者の細胞内に潜伏する。
五感が鋭くなる[訂正]周囲のウィルスによる認識を本人のものに加算していた。
侵食ステージ2
感染者の深層願望に応じて能力が向上する場合がある。
侵食ステージ3
さらに能力が向上する。
肉体の変異が始まる。
侵食ステージ4a
適合率が低い感染者の肉体と精神が形状を維持できなくなる。この状態では他の感染者の指示に素直に従う。
ウィルスが潜伏をやめ他者への感染を行える素体状態へと変化する。」
【追えばおぼろげに方角を感じることはできる。
その向かった先は落第街沖合い海底に位置している。一部の拡散は青垣山にも向かった。】