2015/08/06 のログ
ご案内:「カフェテラス「橘」」に東雲七生さんが現れました。
東雲七生 > ──なんだか静かに騒がしいな。

東雲七生がそんな感想を抱いたのは、カフェテラスに着いて少したっての事だった。
具体的に何が騒がしいのか分からない。けれど、“何か”騒がしい。
毎日毎晩、ランニングと称して島のあちこちを跳び回っているから気付けるような、細やかな違和。
七生がそのわずかな違和に首を傾げたところで、声が掛かる。

「お待ちどう様です。こちら当店オリジナル
 
 『常世島学生街大時計塔昇天パフェのホイップマシマシソフトクリームのせ~料理長のきまぐれフルーツを添えて~』

 になります。」

その違和が、今、音を立てて崩れて行った。
どんな不穏も極限スイーツの前では塵芥に等しいのだ。糖分万歳。

ご案内:「カフェテラス「橘」」に唐沢響さんが現れました。
東雲七生 > 七生の前に置かれた“それ”はメニュー名に入っている通り『昇天』と呼べるものであった。
普通の大パフェの容器にこれでもかと詰め込まれたシリアル、フルーツソース、ドライフルーツ、白玉
そしてその上に色とりどりのフレッシュフルーツの数々
さらにその上に載せられたストロベリー、チョコ、バニラのアイスクリーム
それだけでも人によっては胸やけを起こしそうな取り揃えであったが、

そこに上乗せされたソフトクリームとそれを守る様に塗り固められたホイップクリーム

そして片隅に申し訳程度にウエハースとミントが付いている。
その様はまさしく大時計塔。カロリーの超高層建造物。

「……噂には聞いていたけど、これすげえな。
 本来の容器の倍くらいの高さあるんだけど……。」

唐沢響 > 「ふう…疲れた…」


先ほどまで依頼をこなして疲労が溜まった状態である。
一通りカフェテラスで休憩しようと考える。


休憩がてらにこの施設を利用するのも珍しくはない。
テスト勉強などで頭を使ったときにはよく訪れる。


自分も休憩する為に着席し、注文を頼もうとするが

「むむ…困った、満席…か」


ここのドリンクはとても好みで、それを楽しみにしてきたのだが満席で空いてる席はない

諦めて他のところにいこうか、それとも同じテーブルにお邪魔させてもらおうかと考えていて

東雲七生 > 七生がこの冒涜的とも呼べるパフェの存在を知ったのは、
午前中の補習を終えて、さっさと帰って遊びに行くべと帰り支度をしていた時の事だった。

たまたま学生街ですれ違った女子生徒の会話が耳に入ったのである。
──ねえねえ、「橘」で何か新しいスイーツ始めたってさ
──あー、知ってる知ってる。一人で食べきったらタダになるってあれでしょ?

スイーツ おひとり様完食で タダ

一人暮らしアンド成長期アンド日頃から消費カロリー過多の少年にとってはまさに願っても無い情報。
気が付けば足はカフェテラスへ向き、炎天下の空き待ちに耐え、さらに注文からの調理時間待ちを耐えての対面だった。

「ふっひひひひ……久方振りに本気で満足するまで甘味充出来るとはな。
 しかもタダ!全部食えばタダ!シリアルの欠片も残さず食えばタダ!

 ……ぉん?」

やたら赤い目をギラつかせて目の前の高層甘味を見ていたが、
その視界の端に、困り顔の女の姿が映った。

唐沢響 > 周りを見渡す、がほとんどが連れやカップルなどで席が空いてるような様子もなく、あったとしても入りにくい雰囲気である


どこかに空いていて入ってもさほど気まずくならないような席はないか


と思っていたそのときにこちらを横目で見ていた少年の姿を確認する。


彼も幸い一人のようである。
彼のテーブルならば空いてる。


少し戸惑ってしまったが思い切って巨大なデザートをテーブルに乗せている彼に声をかける

「すまないが隣、よろしいか?」

東雲七生 > 「え、あ……はい。」

声を掛けられ、思わず身構える。
盗み見を咎められるのかと思いきや、意に反して相席を求められた。
別段この後連れが来るとかいうわけでも無いので、若干の戸惑いの後に首を縦に振る。

「良いっすけど、えっと……邪魔じゃないっすかね?」

七生が尋ねたのは、今まさに攻略せんとするスイーツのことだった。

唐沢響 > 「いや、気にしないでくれ。むしろ邪魔者は私の方だろう」


巨大なスイーツに目を張るものはあるが別に邪魔と言うほどでもない。
響が頼むのはドリンクぐらいがせいぜいなのだから


「すまない、メロンソーダを一つ」

響のお気に入りのメニューである。
炭酸が好きだが中でも特に好きな飲み物


「すまないな、助かったよ。まさかこんなに混んでるとはね…」


一通り注文を済ませるとまずは相手に礼を言う

東雲七生 > 「いやいや、そんなことは!
 まあ、邪魔じゃなくてもそんなに長い間存在しないと思うんで!」

にぱ、と女へ子供っぽい笑みを向けてからスプーンを手に取る。
スプーンも専用の物なのだろう、随分と柄が長い。

「ホント、混み混みっすよね。
 俺も入店までちょっと……10分ちょいかな、待ったっすもん。」

うんうん、と女の言葉に頷く。しかも季節は夏真っ盛りだ。流石に屋内席でも暑さを感じる。

唐沢響 > 「む?そうなのか?意外と人気だな…ここは…」


相手がスーツを食べてる調度に注文のメロンソーダが運ばれてくる。
そしてストローを使い好物のメロンソーダの一口飲み


「しかし、冷房が効いてるとはいえこうも混んでるようではいささか暑いな…」


響はこの世界の暑さには慣れておらず
この冷房がきいてる室内でも暑く感じられ、たまらず異能<万物得手>を使い、空間の裂け目に手を突っ込み中から扇子を取り出して

東雲七生 > 「学校が近いってのもあるけど、
 今は夏休みだし、それでいつもよりは混んでるのかもしんないっすねー」

スプーンではぎ取ったホイップクリームを口へ運ぶ。
決して過度じゃない甘さが口に広がり、にへら、と緩んだ笑みを浮かべた。

「まー、暑いのは仕方ないっすよ。夏ですもん。」

扇子を取り出したのを見れば少しだけ驚いたが。
それよりも今は目の前のスイーツ攻略が優先された。特に詮索もすること無く黙々とスプーンを動かす。

唐沢響 > 「そうだったな…夏休みはどこの施設も混みやすいものだ…。ま、賑わいがあっていいじゃないか?」

扇子で仰ぎながらいう
人ごみは決して好きではないが賑わいがあるならばそれはそれでよしとしていて。


「私はまた遠いところからきたのだがそれにしてもここの夏の暑さは異常ではないか?」


そういいながら今度はメロンソーダを一気に飲む
異世界からきた。そういう情報は一応伏せといてこの地の夏の暑さについて愚痴を言ってしまう
よほど暑さに慣れてないのか扇子で扇ぐ音がバタバタと音を立てていき


「そうそう、学校で思い出したのだがさきほどか?風紀の連中が襲撃されたらしいぞ」


さもついでのようなノリで重要情報を話す。
というものの先ほど風紀委員会の建物の近くを通りその惨状をすこしばかりではあるがみてきたのだから

東雲七生 > 「まあ、賑わいと言えば賑わいですけど。」

七生も人混みは嫌いな方だった。
人混みに紛れると背丈の所為で気づかれない。ぶつかったり足を踏まれたりというのは日常茶飯事だ。
そんな事を思い出して少しむくれながらスプーンを動かしてパフェを解体していく。

「そんなに暑いっすか?

 遠い所って言うと……ロシアとか、北欧とか、北半球の方?
 ああ、それとも異邦人、とか?」

あまりにも暑そうな姿を見て色々と考えてみた事をそのまま口にする。
一見しただけではこちらの世界の人間と変わらない姿から、先に「遠く=諸外国」という式が成ったようだ。

「へえぇ、風紀委員が。
 それで何だか静かにざわついてたのか……。」

得られた情報に、なるほど、と言ってアイスを口へ運ぶ。
どうやらあまり気にしてはいないらしい。

唐沢響 > 「…君も人ごみは嫌いか。」

良い返事、ちょっとむくれた態度から察するにあまり人ごみは好きではないと察せる
少年がよくそんなに食べれるものだなぁ思いながら解体されていくパフェを見ていて


「私の故郷はそんなに暑くなかった…。気候は…そうだな北欧に近いところだな…」


はっきりと嘘を言うのもどうかとおもったのか少し曖昧な答えながらも嘘だけは言ってはいない。
実際に北欧辺りの環境に近いものであり


「意外と驚かないものだな…。まぁ、“襲撃の一つや二つ対したことではない”か、」


異世界では戦争なれしてしまったせいなのか奇襲の一つや二つ、内紛の一つや二つはほとんど気にしてないようで
相手も大して気にしてないということは推測するに本当に感心がない、自分の様に戦争慣れしている、あるいは―――

東雲七生 > 「んまあ、好きじゃないっすよ、そりゃぁ。」

流石に自分から身長の話題を振るのも癪だった。
しかも自分より頭一つくらい長身の異性に、だ。曖昧に言葉を濁して真っ白な甘味を口へ運ぶ。

「…… ふぅん、北欧みたいなとこ、か。」

どんな所なんだろう、と少しだけ頭に情景を思い描いてみたりする。
しかし異世界に行った事は無いため、あくまでこの世界の風景しか出て来なかった。

「まあね、何かと色々あるしさ、ココ。
 最初のうちはビビってたけど、だんだんそれもバカらしくなっちゃって。」

へらり、と苦笑にも似た笑みを向ける。
自分の身に降りかかるわけでは無い火の粉に怯える道理はないでしょ、と。

唐沢響 > 「そうか、ところで名前はなんと?私は唐沢響だ」


相手の反応から見るにこの話題はもうやめておいた方が良いだろうと考え話題を変える
そういえば名前はまだ聞いてなかったと思い出し、名前を尋ね



「君は知らない方が身のためだぞ。何せ物騒なところだからな」

少し脅すような口調でそういう
実際に戦争の絶えない世界で極力関わらないでほしいと言う意味でもそのような発言をして


「そうだな…。異世界とやらに直接関係してるような場所だしな。問題がないわけがない」

自分もその異世界からきた人間であるのにも関わらず平然と他人事、しらばっくれていて
実際に色々と問題があるのだから色々と依頼を受けれるのだと思い。

東雲七生 > 「俺? ななみ、東雲七生。唐沢サン、かぁ……」

歳は自分より5つかそれくらい上だろうか。
という事は教師なのかもしれない、と身なりなどから推測を立てる。

「はは……んまあ、ほどほどにしときまぁす。」

この世には色んな場所があるものだ。
この島だってそうなんだから、“世界規模”になればそれこそ、本当に様々な場所があるのだろう。

「まあ、問題は確かにあるんすけど──」

いつの間にか半分ほど、つまり普通の大パフェ程度にまで減っているパフェのグラス越しに唐沢を見つめる。
言葉を探す様に紅い双眸が揺らめいたのちに、ゆっくりと口を開けて。

「物騒だったり、するんすけど。
 種族立場関係無くダチが居て、バカ話が出来て、そんでもってこうやって美味い物が食える。
 ──そんな場所だから、俺は好きっすよ、ココ。」

へにゃり、と子供の様に破顔した。

唐沢響 > 「東雲七生か…。それと私の事は響でいい…」


苗字よりも名前の方が呼ばれなれている。
自分よりも歳は下でも名前で呼ばれた方がいいとおもって


「種族と関係なく話ができて友達をつくるか…。立派だな七生。戦いに汚れた私とは大違いだ。」


相手の考えがここの学校にとっての理想に近いものであると悟り、素直に相手を賞賛する。
自分よりずっと年下でもあるにも関わらず立派な考えを持っていて。
対して自分は自分の考えが間違っていると分かっているのにも関わらずその生き方を変えることはできないでいて


「そろそろ私は行こう。邪魔をしたな」


休憩もそろそろ終わらせ、課題に取り組もうとしようとして席を立ち相手に一礼をして

東雲七生 > 「えぁ、あ、はい。ひ、……響サン、っすね。」

そう申し出られてしまっては従わざるを得ず。
あまりにも自然に名前を呼ばれ、『立派』と褒められれば軽く肩を竦める。

「いや、そんな大した事じゃねーっすよ。
 ……ただ俺は、……ただ。」

──弱いだけだ。
そう言おうとして、どうにも喉の奥でつかえてしまって無理だった。
そうしている間にも唐沢は席を立ち、こちらへと頭を下げている。

「ああいや、何も出来ませんで……って別にここ俺の家でも何でも無いっすけど。
 ……あ、響サン! もし縁があれば、またどっかで。」

変な話までしてしまった気がして、何だか申し訳なくって、
去ろうとする女へと、せめて朗らかに笑みを浮かべて見送ろうと。

唐沢響 > 「また縁があればまた合おう、七生」


自分も別れ際に笑顔を向ける。
いつもは淡々としている冷たい印象の彼女だがこのときだけは純粋な笑顔を向けていて

そしてそのまま勘定をすませると店を後にし

ご案内:「カフェテラス「橘」」から唐沢響さんが去りました。
ご案内:「カフェテラス「橘」」に唐沢響さんが現れました。
ご案内:「カフェテラス「橘」」から唐沢響さんが去りました。
東雲七生 > 「あら。」

去り際に唐沢が見せた笑顔に鳩が豆鉄砲食ったような顔になる。
表情に乏しく、さらに言ってしまえば冷たい印象だったのが一気に崩れていった。
……うん、やっぱり人は笑顔が一番。

そんな事を考えながら七生は小さく切られたフルーツと共に、溶けたアイスの染みたシリアルを口へと運ぶ。

「……ははっ。」

新たな出会いと甘みのダブルパンチに自然と頬も緩む。
何だかんだ今日は良い一日だった、そう思いながらたっぷり時間をかけてパフェを完食し、カフェテラスを後にするのだった──

ご案内:「カフェテラス「橘」」から東雲七生さんが去りました。
ご案内:「カフェテラス「橘」」にリーセ・グリエさんが現れました。
リーセ・グリエ > 懐中時計で時間をみて、まだ時間がありますね。
等とつぶやいて懐にしまう。

コーヒーをゆるりと飲みながら、
端末を用いて情報を収集しながら――

「……」

ふっ。と笑う。

リーセ・グリエ > 愉快、愉快である。
何故ならば――

「SSRゲット……」

おい、カメラ止めろ。

さておき、なんというか優雅に朝の一時を取りつつ、
やっている事はソーシャルゲームである。

「嵌ると結構ぬけれませんね。これ。」

などと呟いてる間に、
頼んでいたサンドイッチがきたので、
一口もぐもぐ。

リーセ・グリエ > 一頻り終えると、端末をしまい、
コーヒーとサンドイッチをゆったり食べながら、
周囲の人物の観察を始める。

――様々な者達がいて、
見ているだけでもあきさせず、
目の保養になる。

なんというか、
恵まれていると想って眼を細める。

リーセ・グリエ > 「ま、ともあれ――」

一つ息を吐いて。

「何があっても、優雅なモーニングタイムを満喫しつつ、
 ゆるやかにいきたいものですね。」

等といいつつ再び懐中時計を見る。
時間はまだ、ある。

リーセ・グリエ > 再び懐中時計をしまい、
サンドイッチを食べきって
コーヒーを飲み干す。

「さて、行きますか。」

――仕事の、時間だ。

ご案内:「カフェテラス「橘」」からリーセ・グリエさんが去りました。
ご案内:「カフェテラス「橘」」にシインさんが現れました。
ご案内:「カフェテラス「橘」」にリーセ・グリエさんが現れました。
ご案内:「カフェテラス「橘」」からリーセ・グリエさんが去りました。
シイン > 腕時計に視線を配る。
もうそろそろ待ち合わせの時間だ。
彼女との待ち合わせはこれで二度目。
一度目は時間通りに来たので、安心して待てる。

彼は待ち合わせの人物が来るまで、待ち続ける。
彼女が人であることを配慮して、テラスではなく室内を本日は選択。
夏日でのテラスは熱くて敵わないからだ。
自身は問題なくても、彼女に問題が起きてしまう可能性が高い。

脚を組みながら珈琲を音も立てずに静かに飲み干す。
此処の珈琲はお気に入りの味だ。後処理の事を考えず、気軽に飲める。
それは素敵な事だ。

そんなゆったりとした時間を、彼は過ごす。

ご案内:「カフェテラス「橘」」に四十万 静歌さんが現れました。
四十万 静歌 > 「えーっと。」

どこにいるんだろうと、辺りを見回す。
店員の人に聞いて案内してシインの元へと。

「すみません、お待たせしましたでしょうか?」

まだ約束時間前ではあるから大丈夫だと思うが、
とりあえず先に来ていたようなので、
頭を下げてまずはそういって――向かい側へとすわる。

「――お待たせいたしました。
 あ、紅茶とレモンパイお願いします」

そして、とりあえずまずは注文である。

シイン > 「待ってないから平気さ、それに約束の時間前だ。」

やはり時間を守れる良い子だ。
何処かの軍人とは大違いである。

「私には珈琲の代わりを頼む。」

四十万が呼んだ店員に、丁度いいとついでに頼む。
珈琲を切らしながら会話を交えるのは些か手持ち無沙汰だ。
脚を組み直し、テーブルに置かれた指がトントンと音を鳴らす。
特にその行動に意味もなく、無意識でやってるのか。

「で、だ。
この前の約束だが、覚えてるかい?」

四十万 静歌 > 「良かったです。
 はい、どんな事でもいいから夢を見つける事。
 で、いいのでしたよね?」

間違いありませんか?
というように微笑んで首を傾げ問いかける。

――何か妙に嫌な予感が走るかもしれないし、
気のせいかもしれない。

シイン > 「あぁ、何も問題ないし間違いもない。
『夢』というのは一つの指標にして、成長の道筋となる。
それを君に持って欲しかった。」

首を傾げて問いかける彼女に、淡々と本心半分の言葉を述べる。
残りの半分は、また別の所に行ってるが。

特に気にした様子も無く、彼は告げるのだ。

四十万 静歌 > 「ええ、ですからですね。
 ――見つけたんですよ。夢。」

そういってパラパラとメニューを捲り、
とあるページに来た所ですっと差し出す。
そこには大きく書かれている、
『超スペシャルデラックスゴールデンデリシャスかき氷』
わりと良い値段してる上、厳選素材を使った巨大カキ氷である。

「これを誰かに奢ってもらうの、夢なんですよね?」

なんて、ふふーとにっこり上目遣いにみながらにっこり笑う。

「ダメですか?」

なんて、ちょっともじもじしながら。

シイン > 言葉を聞いて間を置かずを思わず目を見開かせる。
驚きと以外過ぎる方面の『夢』
女の子らしいと言われれば、そうだなと納得してしまうかもしれない。
だからこそ、彼は怒りもせず、落胆もせず、溜息も出さず、ただ笑顔を見せたのだ。

「ははっ、うん、そうか、なるほどな。」

何かが欲しい。何かを誰かに奢って欲しい。
それもまた一つの『夢』
夢とは決して、人生の指標となるモノだけではないことを思い出したのだ。

「いいよ、構わない。それぐらい奢ってあげよう。」

約束は約束なのだ。二言はない。叶えてあげるのが筋というものだ。
そして、店員が珈琲を運んできたと同時に、コレを頼むと告げた。

四十万 静歌 > 「本当は人生の目標としての夢をいえたらよかったのですが……」

多分、恐らくはきっと――

「焦って出した答えはきっと、
 私の夢だなんて胸を張っていえないですよ。
 ――夢を見つけるのが夢の今では。」

ごめんなさい、というようにウィンクして人さし指を口元にあてて笑う。

「だから、どんな夢でもいいなんていわれたら、
 私は間違いなく、
 躊躇することなく、
 私の夢である欲望を告げます。
 だって――」

少し首をかしげて、

「――叶えてもらえるなら、
 そっちの方が断然素敵なことです。」

と、自信をもって悪戯っぽく微笑んだ

シイン > 「どんな夢でも、夢に変わりはない。
夢に良し悪しはないのだからな。
それが例え、復讐であれ、富を得ることであれ、力を得ることであれ。
全ては同じなのだから。」

デザートを奢って欲しいというのも、また全ての夢と扱いは変わらない。
彼女が本心から叶えて欲しい思う夢ならば、素敵な夢に違いはない。

微笑みを見せている彼女の顔を見れば、尚更に疑う余地はないだろう。

「素敵な夢だよ、本当に。」

コレは本心だった。虚偽を交えない本音の言葉。
人間が言うならば、心の底から思った言葉だ、と。

四十万 静歌 > 「ありがとうございます
 素敵っていわれると、照れてしまいますね。」

なんて、少し頬を染めて微笑みながら
いってるうちにカキ氷が運ばれてくる。

「ふわぁ……!」

眼をきらきらさせてその巨大さ、
その優美さに息を呑む。
だって、素敵じゃないですか、
様々なシロップがかかっていて、
様々な果物が飾られている。

どこから食べるのか、
どう混ぜ合わせるのか、

それによって幾千幾万もの味わいが楽しめる。

「――」

しゃく、と一口食べて凄い幸せな顔を浮かべるだろう。

「そして、そんな夢をこうして食べれるのは、
 シイン先生のお陰ですね。」

なんて、えへへと笑いながら。

シイン > 「夢を叶えるのに力になれて、あぁ、嬉しいよ。」

幸せそうに、本当に美味しそうに食べてる彼女。
それは夢を叶えたばかりの者の顔に近かった。
幾度と見てきた者達の顔だ。
そして、此処から堕としてきたが、今回ばかりは無理難題か。

小さく一つの溜息。
彼女ならばと思ったが、難しい。
最近はとことん上手く行かないのだ、絶不調と言った所だ。

難しいものだ、と。

巨大なかき氷を頬張る彼女を見ながら、彼は呟いたのだ。

四十万 静歌 > 嬉しいよの言葉に尚更笑顔に嬉しさが増す。

「~~♪」

しゃくしゃくと堪能しながら、
ふとみると、難しい顔をして、
難しいものだなんてため息をついてる姿をみて、
少し考え――

「シイン先生あーん。」

なんて、一口差し出すだろう。
そして、

「何が難しいかは分かりませんけど、
 シイン先生は何か難題に取り組んでいるんですね?」

なんて首をかしげて笑って

シイン > 「難題といえば難題だが、簡単な問題でも……………。」

彼にしては珍しく、時が止まったかのように無言を晒す。
その視線の行く先は、差し出されたスプーンと、その上に乗っているかき氷なのだが。
そんなことをされたのは、製造されてから初めてであり、どう対処すればいいか分からなかった。
いや、分からなかったというのは語弊があるが、それを私がやっていいのかと。
自問自答を三回、四回、五回と繰り返した。

繰り返して、導き出した答えは。

「……あーん。」

受け入れるという選択。
瞳を閉じながら、小さく口を開けて、それを受け入れるのだ。
感情機器の故障か、何処の機器の故障か分からないが、初心な少女のように僅かに顔を赤くするだろう。

四十万 静歌 > 「難しい問題にしろ、
 簡単な問題にしろ――」

静かに微笑み、首をかしげて。

「冷たくて甘いものでも食べて、
 たまには気にしない事も大切ですよ、
 なんて。」

食べて紅くなる様子に、思わずクスリと笑いを浮かべる。
何か貴重なものをみたようで嬉しかったのである。

「煮詰まった時は出る答えも、
 答えがでませんし、ね?」

なんて、またシャクリと一口食べて、
スプーンをくわえたままにっこり微笑んで首をかしげた

シイン > 「……んむ、…一理ある。」

今は多くは喋りたくないのか、自分のボロが出てしまいそうでそれだけ呟いたのだ。
慌てふためきながら珈琲を飲んで落ち着かせる。
彼女には翻弄というか、行動が読めないからか、狂わされっぱなしである。
興味はあるが、同時にコレ以上に深入りしては良くはない、と勘が告げるのだ。

それは何故だろうか。
自分が自分で無くなりそうに、不思議とそのように考えさせられるからか。

未だに頬が赤くなってるのを抑えられず、はて、どうやって収めようかな。
そればかりが思考を巡らせるのだ。

四十万 静歌 > じっと、そんなシインの心をよんだかのように、
顔を近づけ眼を覗き込もうとするだろう。
実際の所、何からしくないなとおもって心配してるだけなのだが――

「――」

どうかしたのですか?というように少し首をかしげ――

「やっぱりシイン先生は素敵ですね。」

なんて、
これからもよろしくお願いしますというように微笑むのだ。
覗き込んだ顔が、
その顔があまりにも人間らしさが強く出ていたから――

シイン > 心臓があれば漫画の表現のように『ドキッ』と擬音を出してしまうぐらいに、近づいてきた顔に驚くのだ。
製造されてから27年。
様々な経験をしてきたが、このような経験は今までなかった。
なかったからこそ、驚きを隠せないのだ。
仮面を被れずに、自ら仮面を外してるようなものだ。

「素敵、か、そうか。そうか。」

壊れた機械が同じ言葉を連呼するように、彼は『そうか』と三回も声に出して言うのだ。
これ以上はいけない、自分の中の危機信号が先程から出ている。

今の自分は、まるで恋を覚えた男子高校生ではないか。
以前に読んだ小説内の主役のようだ。
笑えない話だ、人間なら冷や汗が吹き出てた。
行儀悪く、珈琲カップを傾けて一気に飲み干す。
自身の気持ちを紛らわそうと、だが行動は無駄だった、狂いそうだ。

四十万 静歌 > 「そうですよ。」

なんてにっこりいいながら、
再び美味しそうにカキ氷を。
そのうち紅茶やレモンパイも運ばれてくるが、

それを箸休めに食べ続ける。
実に幸せ、実に満喫である。

「~~♪」

幸せそうに食べる姿を見るたびに、
視線があう度に――
首をかしげて微笑むだろう。

シイン > ようやく落ち着いてきた。時間が掛かり過ぎである。
こんなに乱れやすい性格ではなかったはずなのだが、不思議なものだ。
落ち着いてきた所で、気になった事を一つ。

「何故、素敵なのか、聞いてもいいかな。」

空の珈琲カップを精神安定剤のように、持ちながら問いかける。
どこに素敵と思う要素があったのか、理解できないからだ。
私に微笑む彼女の方がよっぽど素敵と思うのだ。

四十万 静歌 > えっ?という表情をうかべ、
人さし指を右頬にあてて少し首をかしげて、

「え、だって素敵じゃないですか?」

何を当たり前の事をなんていうかのように、

「――素敵なまでに完璧で、
 そして、今のシイン先生は、
 素敵なまでに人間味に溢れている。
 これを素敵といわずして、
 何が素敵なんですか?」

なんて、笑っていうだろう。
本心からそう思っているのは、
顔と眼を見れば明らかだろう。

シイン > 「人間味に溢れてるか、そんな言葉を言われたのは初めてだ。」

機械である自分が、そのような最も合わない言葉を言われたのは初めてなのだ。
だからこそ、言われても理解に苦しむ。
勿論、言葉の意味は理解できるが、それが機械に対して言われるというのが、どうも受け付けない。

彼女から嘘の言葉を告げられている気はしない。
本心から、心の底から、私に対して言ってるのだ。

「不思議なものだよ、本当に。」

それだけしか言えない。
彼女のことが不思議でしょうがないのだ。
不思議で、不可思議で、理解できない人間。

四十万 静歌 > 「きっと、私がみたシイン先生をみたら、
 10人が10人いうと思いますよ。」

なんて笑って。

「そんなに不思議な事ですか?
 私からすると、
 凄く当たり前の事だと思いますよ?」

と食べながら首をかしげるだろう。

シイン > 「……言葉に出すのは厳しいが、そうだな不思議なのだよ。」

彼女にとって、当たり前でも。

今まで活動してきて言われたことがない言葉の所為もある。
自分の中で、どう処理していいか分からない言葉の所為でもある。
翻弄されすぎて、考えが纏まらない所為でもあるのだ。

ただひとつだけ、本当にひとつだけ言えることは。
ヤラレっ放しは好かないということだけだ。

「少しいいかな、片手を前に出してくれないか。」

利き手でも、そうでなくても、なんでもいいと告げて。

四十万 静歌 > 「そんなものなのでしょうか?」

なんて、こちらも不思議そうに首をかえしながらも、
片手を出して欲しいといわれたら、
特に断る理由もないので、
右手を前に出すだろう。

「これでよろしいでしょうか?」

シイン > 「あぁ、なんせ私は人間ではないからな。」

だからこそ、人間味溢れるなど、そんな言葉は合わないのだ。
過去に行って来た事を思い返せば、尚更に。

右手が前に出され、特に抵抗もされなければ、自分の右手でその手を掴む。
そして身を乗り出し、その右手の甲に唇を軽く当てようとする。

四十万 静歌 > 「人でなくても、
 夢を想えて人ように考えれるなら、
 それはもう、人とほぼ変わらないのではないでしょうか。」

なんて、微笑んで、
次の瞬間、

「はわっ!?」

やられている行為に思わず真っ赤になる。
いや、払いのけるとかはしませんけど、けどぉっ!

シイン > パッと思いついた中で、簡単に行える行動。
うら若き彼女に一泡吹かせられそうな行動。
余計な策を巡らせるより、分かりやすい方が良いとの自分の中の結論。

他の客の視線も気にせずに、甲へのキスを終えて。

「そのような考えも初めて聞いたよ。
君は、静歌は、本当に話してて飽きない子だよ。」

すっかり落ち着いた表情に、いつもの様に淡々と言葉を告げる。
まるで先に行った事など知らん顔で。

四十万 静歌 > なんていうか、
そんな行為をされたらまっかっかになって、
ぷしゅぅと湯気が出ているような錯覚を覚えるかもしれない。

「極普通のことを極普通にいってるだけなんですけどね……!」

なんていいつつ、カキ氷を食べて、
ゆだった頭を冷やそうとしつつ――

「もう、あんなキスをするなんて、
 からかいましたね?」

なんて、ぷんぷんですよ、といいたげに、
ちょっと紅い顔のまま頬をふくらませた

シイン > 「静歌にとっては普通かもしれないけど、私にとっては普通では無いのだよ。」

反撃は成功だった。
彼女の顔を見れば、判定が直ぐにハッキリと分かるのだ。
内心でガッツポーズ。はて、私は何をしに来たのだと考えさせられるが今は知らない。

「『あーん』のお返しだよ、お返し。」

無邪気な笑顔で、子供みたいに言い返すのだ。
大人とは、教師とは思わせないぐらいに、子供らしい思考だ。

四十万 静歌 > 「そんなものでしょうか……」

なんていって、続くお返しの言葉に、

「お返しなら仕方ないですね……!」

というしかなかった。
そうこうしてるうちに、
大量のかき氷はほぼ食べつくされて――

「でも、やっぱり、そんなお返しをするなんて、
 本当に人間らしいと思いますよ。
 人間よりも、私よりも、もっとずっと――」

ね?なんて少し寂しげに微笑むだろうか

シイン > 「ん、それはないよ。
人間でない者というのはな、人間にはなれないし、人間らしいなんて言葉は遠いのだよ。
化物は所詮は化物で、機械は所詮は道具でしかない。」

あんなにあったかき氷があっという間になくなっており、
女の子のデザートに対する食欲は異常だな、と。
頭の片隅で考えながら、そんなことを言う。

「私は静歌は普通に人間だと思ってるよ。
赤く頬を染める顔や、微笑みを見せる顔に、表情豊かで面白い。
それは私も同じではあるが、コレがまた違うのだ。
根幹が違うと言ってもいい。
私は人間に焦がれているよ、その短い生命で一生、ずっと輝いてられるのだから。」

だからこそ、輝きを止めた人間は許せない。

四十万 静歌 > 「でも、それならですよ?」

なんて、首をかしげてスプーンでシインを指差すように、
さしながら、

「――シイン先生だって、
 落ち着こうとしたり、
 顔を赤らめたりしてましたよ。
 確かに表情豊かなそれと比べたら分かりませんけど……」

それでも――

「そこまで豊かでない人なら、
 同じような反応するんじゃないでしょうか?」

なんて笑う。

「――化け物には無理な反応だと思います。
 そして、確かに短い命で輝きもしますが……」

スプーンをくわえ、

「燻りもする。色鮮やかに明滅するのも人だと思います。
 ――でも、どうしてそれが人間だけのものだと思うんですか?」

と首を傾げるだろう

シイン > 「人以外では無理があるからと言うべきか。
感情を備えていたとしても機械や化物では、真の輝きは見せられない。」

実体験のように、断定付けながら。

「私……僕がそうであったように、歩けない道を歩こうと。
無理に行動にして後悔したように。」

全てが全てそうでないかもしれない、だが。

「僕以外の事例を見て確信した。
夢を持つのは可能だ、叶えることも可能だ、一時的に輝くことも可能だ。」

でも、それは。
一時的に過ぎないのだ、と。
一人称を変えた軍人は真っ直ぐな瞳で言葉を紡ぐのだ。

四十万 静歌 > 「そんなものなのでしょうか。」

一時的に過ぎない。
それは無理な事なのか。
本当に無理なのか――

でも、そんな事はないという想いも強くある。
確かにそうかもしれない。
でも、そうでないかもしれない。
だって――

「夢はもてる。
 一時的には輝ける。
 でも、輝き続けれない。」

真っ直ぐ見据えながらいう。

「人もまた同じです。
 皆が皆輝き続けれる訳ではない。
 そして――大切なのは……」

少し首を傾げて。

「歩み続ける事なのではないでしょうか?
 後悔しても、絶望しても、
 何も見えない闇の中でも歩み続ける。
 ――いつか見えてくる光の為に。」

そう告げる言葉には、
まるで、そこにあなたは輝きを見出していたのではないか、と
いわれてるように錯覚するかもしれない。

シイン > 「輝きが霞むほどになったとしても、歩み続ければ光は再度現れる。」

彼女はそう、まるで過去の自分だ。
過去の自分と同じことを、今の私に言い聞かせているのだ。
何を知ってるのか。私の過去を知ってなのか。

「そんな考えを持ってた時期もあったな。
過去の話、昔の話だが、そんな希望を持ってた。」

彼女は自分を見透かしているのか。
わからない、また狂わされてきた。

四十万 静歌 > 彼女に人の心を読む力はない。
彼女に人の過去を見る力はない。
彼女に人の未来を見る力はない。
――もし、彼女に己の過去をみて、
見透かしているように思うのならそれは――

「そうですよ。
 希望があるからこそ、
 人は夢をみて、歩み、輝く事が出来るんです。」

――恐らくは絶望からどうなったかの違いだろう。

「そこに希望がないと分かっていても、
 私は歩み続けますよ。
 ……まだ歩けるのですから。
 なんて。」

そういって笑顔を浮かべる。
冗談ですよ、と続きそうな言葉に対し、
その笑顔は、
本当ですよといってるように見えるかもしれない。

シイン > ふっ、と小さく笑う。
こんな時に冗談と言う彼女ではない。
本心から語っているのだと、確信と行かずとも思うのだ。

「私は歩み続ける人間が好きだよ。
だからこそ、君は是非、歩み続けてくれ。」

一種の告白にも聴こえるかもしれない、だが本人は無自覚である。
朴念仁と呼ばれても何も言えない。

「もしかしたらだが、僕と君は似た者同士なのかもしれないな。」

そう言って席から立ち上がった。
珈琲と紅茶にレモンパイとあのデザートが、
余裕で払える分のお金を懐から出して、机に置くだろう。

「今日はありがとう、楽しかったし、安らげた。」

御礼の言葉を送り、最後に彼女の頭に手を添えて撫でようとするだろう。

四十万 静歌 > 「もちろん、歩み続けるつもりですよ。
 歩みが止まるその時まで。」

ゆっくりと一歩ずつですけどね、
と照れたように笑って、

「似た者同士っていうには、
 私がへっぽこすぎますけど。」

なんて首を傾げるだろう。
そして、頭をなでようとすれば、すんなりとなでられるだろう。

「ん……
 どういたしまして、そういってもらえると嬉しいです。」

真っ赤になって上目遣いで見上げながら、
笑顔を浮かべもじもじして。

シイン > ゆっくり一歩ずつでも歩めるだけで立派なのだ。
そう、笑顔には笑顔で応える。

「いや、君は十分に立派だよ。
自分を蔑んではいけない。」

柔らかな手入れが施されている髪の感触が手から伝わる。
良い触り心地だ。思えば今日が初めてだろうか。彼女に触れたのは。

「…ん、それじゃまた今度。また話そう。」

頭を撫でてた手を離して、彼は去って行ったのだ。
ハイヒールを履いた軍人は上機嫌ながら、店を出て行った。
目的は果たせなかったが、悪くはなかった。
逆に果たせなくてよかったかもしれない、そう思ったのだ。

ご案内:「カフェテラス「橘」」からシインさんが去りました。
四十万 静歌 > 「?」

変なシイン先生というかのごとく、
笑顔を浮かべて首を傾げて見送り。

「あっ。」

そういえば奢っていただきありがとうございましたっていってないと気づいて、
今度言おうと心に誓いつつ、
残りの紅茶とケーキを食べると、
お金を支払い、
おつりを封筒に入れて帰るのであった。
今度あった時に返すつもりで。

ご案内:「カフェテラス「橘」」から四十万 静歌さんが去りました。
ご案内:「カフェテラス「橘」」に薄野ツヅラさんが現れました。
薄野ツヅラ > ──かつり。細い杖の音が店内の騒めきの中に紛れた。

注文するのはアイスティ。ストレート。断じて砂糖もミルクもガムシロップも入れない。
片手についた杖と意味ありげに巻かれた左手の包帯。
傍から見れば全身くまなく怪我人、と云った風貌の小柄な少女。

風紀委員本部でなんだかんだと騒ぎがあったその暫く後。
中々随分と冗談にしては笑えない話は公安委員の端くれである彼女の耳にも入っていた。
其の話を少しばかり聞きに委員会街を訪れたあと、日課のようにカフェテラスに足を運ぶ。
仕事終わりの一杯は欠かせない。落第街では味わえない一寸ばかし贅沢なそれ。
窓際の席をぽすりと陣取って、ひとつ。

「……、はァ?なんでこんなに甘い訳ェ………?」

ごくり、グラスを傾ければ喉が鳴る。
無糖、という訳ではないらしい。極めて不機嫌そうに溜息を吐いた。

ご案内:「カフェテラス「橘」」に渡辺慧さんが現れました。
渡辺慧 > 「ガムシロップ入れれば? 麻痺すれば甘くなくなるでしょ」

その姿は、白くはなかった。
赤いその服に袖を通し。
――気のせいか。なにを感じてるのかもわからないが。――
少しばかり、目を細め、口元に、小さく笑みを浮かべている。

図々しくも、その窓際の隣の席へ座り込んだ。
片手に持っていた、コーヒーカップをテーブルに置くと。
ようやっと、片手をひらひらとさせ。

「――やぁ。つづらんじゃん。ゲンキー?」

薄野ツヅラ > 「甘いモンは甘いのよぉ、絶対嫌に決まってるじゃない」

白とは対照的な風紀委員の赤い制服。先刻も見た、紅いそれ。
落第街で見遣れば顔を顰める、それ。

「見ての通り普段通りよぉ、そっちこそお疲れじゃないのかしらぁ」

片手には右手で返す。ひらり、小さく手を振る。
グラスを片手にストローを噛みながら特に気にした様子もなく。

渡辺慧 > 「そりゃ奇遇」
「俺も嫌だ」

ふざけてるのか、と思うべきだが。
生憎、これがいつも通り。いつも通り――なのだが。彼女の言う通り、少しばかり疲れがにじんでいるように見える――。

「……あぁ、ね」
「いやはや、参った」

――昨日のベンチになっていた後の話だ。

(いや、タンマ。空気感も何もない)
――昨日の大道具になっていた後の話だ。

本部が襲撃された。
そこまで、正義にあつい、等と抜かすつもりもないし。
むしろ、不良風紀委員たる自分としては、だが。

――なんにしても。それは激烈な出来事だ。
そんな不良風紀委員でさえ、動かざるを得ない。
今日も今日とて、昼間から働いてしまった。だれだ自分は。

「……つーか。そっちまでやっぱ届いてるよな。……まぁそりゃそうか」

薄野ツヅラ > 「まァ、風紀の人らは優秀だしぃ──……」

また一口。カラン、とグラスの中の氷が鳴いた。
今朝方の風紀委員の本部の強襲。
現状、何事もなかったのように見えてはいるが、内部では委員が今も仕事をしている。
風紀委員の彼と同じく、正義感に燃える性質ではない彼女ですら、眉を顰めた。
何とも笑うしかできないのに笑えない現状を打破するのは中々に大変だろう。

「中々忍び込んだヤツはアタマが足りてないご様子ねぇ……
 此の島で公権力に喧嘩を売るのは考えなくても得策じゃないってくらいは解るでしょうに」
「自殺志願者かしらぁ、としか思えないわよねェ──…」

皮肉気に、ひとつ溢して目を細めて笑う。

「島の平和を守る連中に喧嘩を売るって完全にテロか何かよねェ、理由は知らないけどぉ」
「不良風紀委員さんも捜査とかする訳ぇ?」

渡辺慧 > 「一応ね。キャラじゃねーし、下っ端だし」
「たいしたこたぁできやしねーけど」

捜査。
聞き込み、等のそれでしかないが。
地道なそれ。まぁ、島内をふらりふらり、といつも歩いている自分には、合っているのかもしれないが。

「そーいうもんじゃねーの。……視野が狭くなるもんだよ、何かに気を取られると」
「――それが許されない、のは。まぁ、致し方ない」

まるで、擁護するかのような口調だが。
――珍しく、皮肉げな何か。なにに対して、皮肉ってるのかわかりようもないが。

それを消すようにコーヒーカップを傾けて唇を濡らした。

「理由は知らないけどね」
そう。彼女のセリフを同じようにしていいながら。
締めくくった。

薄野ツヅラ > 「キャラじゃない奴らが働く程ってねェ」
「でもなに、ちゃんと片付くように祈っとくわぁ」

不良風紀委員のこの、普段全く"らしくない"ことしかしない友人が働くというなら。
それは当然、応援するのが当然というか。
それなりに応援してやろうかな、とは思う。友達も少ないし。

「そうならないように反面教師、じゃないけど」
「……、其れなりに一回アタマ回してから喧嘩売るべきだったわよねェ、惜しい」

即座に「イヤ、売る心算も予定もないけど」、と付け足して。
ふああ、と大きく欠伸をひとつ。

「ま、暫く大変そうだけど頑張って」
「何かあったら手伝うわぁ、あ───なに、赤より白のが似合うしねェ」

照れ隠しでもなく、皮肉でもなく。
世間話をのんびり、のらりくらりとした二人が続ける。

渡辺慧 > 唇の端を上げた。
赤か白か。
この赤は……ある意味、別人になるためのソレ。
ガワもナカも、変わっていないように見えるが、正しく。
それは“風紀委員”のそれだった。

「――俺もそう思うよ」

ならば、それに応えるためにも。
早く終わることを祈らせてもらおう。
――もちろん。最小限の努力を払って。――

君を追うのは苦労しそうだな、なんて苦笑をこぼした後。
だから、やめてくれよ、なんて言外に含め。

「しかし。重要参考人のうち、一人の情報は流れてきてるんだ」
「気休め、いや――。……まぁ、そのうち終るんじゃねーかな」

そこに、何かしらの痕が残るのは。
――それこそ、罪というべきなんだろう。

ご案内:「カフェテラス「橘」」に六道 凛さんが現れました。
六道 凛 >  
『情報転送するよ。データ照合、きっちり見て、仕事をしてください』

タブレットからは囚人服のアバターから。
インカムからは電子音。

情報が流れ出てくる。

『魔術迷彩はすごかったけど、こっちの世界の隠蔽が甘いね。電脳神でも連れて来るべきだったよ。脚本どうりとかいう
終末を告げる機械仕掛けの神をさ』

ずらららっと、映像解析、IDから。
情報世界の端から端まで。

しかし、現実では動けないだから――……

保護者から告げられたのは監視カメラなど
風紀にある電子データの解析。
焼け落ちた本部から、抜き取ること。
それと――それを、”現地”に届けること。

その任務のはじめとして、
淡々と、任せられた役割をすることにした。

『電子情報で足りない点があったら、申請して
 保護者の許可があれば流すから』

それを行っているのがパソコンも、電子機器も
何もいじっていない、カウンターに居る一人の少年だと
だれが予測できただろうか――

渡辺慧 > わずかに目を見開き驚きを現した後。
即座に、また。目を細め、周囲を目線だけで見た。

――気づけば。直ぐ近くに。
それこそ、自らの前で物語を綴った少年。

――彼か? いや、どうだろうな。
不可解乍らも、その思考しながらも。
その流れてくる情報は非常に有益だ。

それを聞き乍らも、横にいる彼女へ。
「……さて。どういうことだろうね」
笑みの――どういった性質のかは。――性質を込めた声を上げ乍ら。

――もし、そうなら。その少年にも届け、とばかりに。

薄野ツヅラ > 「まァ風紀委員会、だものねェ──……」
「気に喰わないけど公安委員会と双璧を成す治安維持組織。屹度そのうちあっさり解決するわぁ」

手元に置いていたタブレットがぼうと光を灯す。
メールの受信か、それとも誰か──公安のあの上司か、それとも恋人とも違うそれか。
……、その程度しか自分に連絡を入れてくるような人間に心当たりはない。
訝しみながら視線を落とす。

「……──ハッキング…?」
「さあて。全く状況が解らないのはボクもよぉ」

ひとまず返信。状況が読めなさすぎて一周回って冷静になる。
タブレットに表示されたのは頭から杭の刺さったテディベアのアバター。
実に趣味がいいとは言いにくい。

トントンと指先が躍る。
何の用心もなくファイルを開いていく。……仕事か、と一瞬思うものの公安のシステムではない。
全く状況をつかめないまま。

『しばくぞ』、とだけ書いて。見えない世界でテディベアが文章を運ぶ。
──少年には未だ、気付かない。

六道 凛 >  
静かに、ほぅっと息を吐いた。

ふたりとも”頭が良すぎた”

だから警戒するし、不機嫌になるし。
推測するし、思考する。

でも、その頭の良さは嫌いじゃない。
むしろ保護者からしてみれば、嬉しい事実なのだろう。

――趣味が一周回っていいのかもね

目の前でぴょんぴょんはねてメッセージを告げて。
しばくぞこらぁっと、怒った表情をする杭っくまー。
可愛いかもしれない、その仕草と。姿見のギャップで。

『事は起きた。ということは調査の時間。管轄は違うけど
 調査は仕事のうちでしょ。だから、”調査の連携”……
 風紀だけの情報、公安だけの事にはならないでしょ
 だって、島の正義という舞台が壊された』

ほんの少し、憤りを感じていた。別に風紀とか正義とか
そういうのは、興味ないし実感もない。
ただ――この行為で”居場所がなくなった”と
務めを果たせなかったと、そう心で泣いていた人を知っている。
打ちひしがれ、苦しんだ人を、知っている。
それはきっと、同じはずで――
それはきっと、自分が知ってる”現実―きず―”だから。

『だから流しておく。――しばくってどういういみ?』

クエスチョンマークを浮かべた囚人が、首をかしげながらメッセージを運んできた。

『それに、調査が終わったら実行力。実働部隊の出番
 そっち”も”できるよね、キミ。多分だけど。やる時はやるって感じ』

総電子音が告げて。
静かに、日本茶を啜った

渡辺慧 > 「相変わらず趣味が良いね」

とてもとても、それは趣味が――濁しておくが。
それを見やりながら。

しばくなよ、と零しながら、再び流れ出したそれ。

「君は俺の上司かよ」
と、ぼやくが。ありがたく頂いておく。

――正義の舞台。
自分にとって、それは。
確かに自分も、そう。……なぜ、自分は怒りを感じた?
――だって、ふうきいいんは、にい……――。

くだらない思考を切り捨てる。

「……下っ端だっつーの」

だが、まぁ。

風紀、公安。
今まで、しっかりとした連携というものを感じたことはなかった。
――ある意味。いい機会なのかもしれない。

――だから、やらないといけない。
何かの為に。

薄野ツヅラ > 『仕事だ、って言うならやるけども。
 今回のクソ面倒なことにボランティアで首を突っ込む心算はないわぁ
 生憎公安委員も暇じゃあないのよねェ、それにボクは多趣味なもので
 正義とかは別に如何でもいいわぁ、仕事ならやる
 仕事じゃないなら"面白くない"ものには手を出さない、それがボクの主義でねェ』

趣味がいいな、と云われれば「可愛いでしょ」、と。
正義も何も知ったことじゃあないが、公安委員への仕事なら自分は腰を上げるしかない。
公安委員会と云う『地位』に居座る為には必要なこと。
誰かに依存するためには場所が必要だ。ならば其の場所に居座る為には。

──まァ、協力も。
偶にはそんなスパイスも悪くはないだろう。
性質の合わない奴とではない。気の合う奴と──未だ知らぬ誰か。
……多分、そこそこ仲良くはなれる──となら。悪くはないかな、と。

「……嫌いじゃないわァ」

『うっさい』

自分よりも情報戦に長けているであろう彼に、ひとつ言葉を送り付けて。
タブレットに趣味の悪いテディベアが躍る。可愛い。

六道 凛 >  
『上司じゃないけど……ぼくの仕事だから』

これで背景は整った。
公安も動く選択肢が増えた。
風紀も手札が増えた
今の、この場での”役割”は終わったのだ。

『動く理由とかは、この際きっと、関係ない
 でも――そこに所属するからの役割があるはずだから
 そのためのバックアップならいくらでもするよ、ぼくは』

そう、上司じゃないから。
やるべきことは、きっと変わらない。
まだ……”彼女たち”を盛り立てていた時のようにはできないけれど。
ちょっとだけ、”演じてみた”。それらしく
でも、きっと帰ったら――崩れちゃうだろうな
そんな乾いた感想を抱いて。

『――公安が”万一”の札になればいい。風紀は大打撃だから
 もしダメだったら助けてほしいなってSOS。だから握っておくのが キミの仕事』

ふと、見た手の傷をみて
ぼんやりと、思い出す。
うまく行かなくてうまくできなくて。
自分を傷つけた時、すごく怒られた。

――キミの腕は、身体は無価値なものではないんだよ

拾ってくれたあの人にそう言われたのを思い出して。

『それじゃ、おつかれ』

そっとその場からからんっと音を鳴らして、喫茶店からだれかが去っていった

ご案内:「カフェテラス「橘」」から六道 凛さんが去りました。
渡辺慧 > 「あら珍しい」

――どことなく閉鎖的な、いや。――自閉的?
そんな彼女が――。……変わる、ということなのか、これが。

所属する理由は、ともかく。
役割――下っ端、といったろうに。
そう。下っ端だ。

――これは、下っ端でも、動くための、糧なのだ。
理由、標識。何といえばいいか。

「大道具役かなにかかな」
楽しげに嘯きながら。
流れてくる、その情報。

タブレットに写ったテディベアに満悦している彼女に。

「…………なんか。押しつけられたな」
そうやって、唇をゆがめながら。
去っていく、その少年を。
横目で見ながら。

薄野ツヅラ > 「多少くらいはいいでしょ?」
「ホラ、アレよぉ──キャラじゃないけど、ってヤツ」

誰に命令された訳ではない。仕事でもない。
ただ、自分の手元に情報が舞い込んだだけの話。
上司に告げてもいいし告げなくてもいい。
ただ、情報を掴まされただけの話。選択肢は多岐に渡る。
───それなら。

「まァ、好き勝手やらせてもらうわぁ──……」

こつこつ、タブレットの画面を叩く。

「やられっぱなしは気に喰わないし、まァ」
「風紀がダメそうならボクも話はしておくわぁ、折角貰った訳だし」

言外に"風紀委員内で解決するのを期待する"、と。
そして氷も溶けたアイスティをまた一口、ストローに口を付けて。

「………まァ」

自分に任されたのは『もしもの時』。
そのもしもがないように。

「頑張れ、でいいのかしらぁ」

───少年には、最後まで気付かなかった。
次に出逢うのは現実か、其れとも。

渡辺慧 > 喉の奥で、笑う、
キャラじゃない。それはいい。
そう、たまにはいいのだ。
――この、なぜか。本当になぜか分からないが、馬の合う友人同士。
キャラを崩すのも、たまには。

だから。
下っ端な自分が、動ける道が増えただけの話。
役割をこなすための、駒。
行ける未知の選択肢を絞るための物。

「そりゃ。――らしいな」
例え、公安にいても。
その気質は、何処となく――。

「生憎」
「意外と、うちの組織は強いんだ」

なんたって、自分のようなのがいるしな。と肩をすくめる。
だから、そう手を煩わせないというかのように。
だから、十二分に手伝ってくれというかのように。
コーヒーを又一口。
唇を湿らせて。

「最小限には、と返させてもらうよ」

『もしもの時』。
そのもしもを作らないように。

薄野ツヅラ > 「流石『正義の味方』ねェ」

口から転がり落ちたのは皮肉か、はてさて──
友達、とも違う、親友、とも違う彼。
戦友にはならなきゃいいけど、と内心で独り言ちながら。
珍しく気の合う彼が意地でも崩さなかった──崩せなかったのかも、解らないが。
そんな深いところに踏み入る心算もなければ踏み入ってくることもない彼に。
少しくらい付き合ってやってもいいかな、と。

「ボクはボク、それ以上でもそれ以下でもない訳だしぃ──……
 ボクを駒に出来るのは唯一無二、ひとりだけよぉ」

なんだかんだと絡みのある彼がそう云うなら、屹度。
言葉通り、島の平和を守る『正義の味方』は。

「強いンでしょうねェ、そりゃ中々随分と」

皮肉交じりに、そう一言。
飄々とした、掴みどころのない彼がそう云い切るならばそれは屹度そうなんだろう。
故に、安心したように視線をアイスティに落として。
故に、一口喉を鳴らして片手はタブレットに伸びて。

「そのくらいでもいいのよぉ」
「頑張るのは『ヒーロー』の仕事だものねェ、『正義の味方』」

皮肉で覆った鼓舞に、ほんの少しのスパイスを添えて。

渡辺慧 > 「『正義』は必ず勝つ、とはだれが言ったんだか」

ふと覚えのあるフレーズをつぶやきながら。
またコーヒーを啜る。
――距離感か。

それとも、また、別のところに理由はあるのかもしれないが。
いずれにしても。

この件は、いずれ終わる。
その痕を、どうにかするのが、風紀であり、公安であり。
――その痕は、恐らく。これを引き起こした側にだって、あるはずなのだ。

終るか、終わらせるかは――それこそ『ヒーロー』の仕事。

「そう望まれるなら、『ヒーロー』は仕事するのさ」
「俺以外の誰かが、とかね」

自分はヒーローではなく。

「綴ってくれてもいいんだぜ」

小説の一文。
『賢明な風紀委員たちの活動により』

とでもまとめられてしまう存在だと。
だけれど、そこには、書かれるだけの何かがあると。

「赤い何かが、そっと視界を通り過ぎた、とでもさ」
先程、似合ってると言われたことを。
揶揄するように。からかうように。

もう一口、コーヒーを口に含んだ。

薄野ツヅラ > 「王道にして正道、って?」

からからと笑い声を落としながら、談笑を。
果たして先刻の彼も談笑に混じる時が来るやら、来ないやら。
男娼が混じることも、もしかすればあるかもしれない。
明日のことなんて、物語のページは白紙が続いているのだから、と。

白紙のページが赤い絵の具で、ペンキで、塗り潰されないように。
「紅いのは風紀の制服だけで十分よぉ」、なんて笑いながら。
物語が何時か終わりが来るように、この物語も終幕は来る。
何れ来る終幕を彩るのは風紀の赤か、果たして公安の黒か。

そんなのは知ったことじゃあないが、自分らは背景を描けばいい。
『ヒーロー』がより一層映えるように。
或いは『ヒーロー』が仕事をする前に話が終わるように。

「あッは、ヒーローショーを見に此の島に来たんじゃあないんだけれどねえ」
「アンタはそんな性質じゃあないのは重々承知だけれども」

特徴的な笑い声ひとつ。

「何、そんなに目立ちたかったら一本書くけどぉ、なんて」
「───恋愛小説か奇譚にしかならないわねェ、ボクの好みではないわぁ」

小説の一節でも、ドラマのワンシーンでも、演劇の大衆役でも。
それがなければ味気ないモノだ。
政治家のご高説も聴衆が居ないと映えないように、『ヒーロー』を呼ぶ子供たちが必要なように。
自分たちはそんな少しのスパイスに成れれば、───スパイスだ、と。

「赤い猫が目を覚ます、なァんてね」
「中々随分ご機嫌なことじゃないかしらァ」

氷の溶けきった、味の薄い、甘さの残るアイスティを一口含んだ。

渡辺慧 > 「蛇の道は蛇の道」

先刻の彼。
――いや、結局のところ、あれがあったからこそ。
今の、この空気があった、とでもいうのか。
大道具であり、観客であり、そのどれでもない。
だからこそ――。受け止めて、そして受け流して。

意味のない思考だ。意味のない単語の羅列だ。
だが、それが談笑と。なら、この場に彼がいるのも。
間違いではないのかもしれない。

「よくわかってるじゃないか」
「俺は、白いフードを着て」
「汚らしい恰好で、自由を謳歌して」
「そうして――」

――自分らしい、という言葉は。
はて。自分で言ってしまうのは――。

「シシシ」

特徴的な笑い声ひとつ。
「いいじゃないか、奇譚」
「おかしなものには違いがある」
「なら、そこには物語があるんだろう」

だから。

「『――そうして赤い猫は』」
「『気づくと白い衣を身にまとっていた』」

オチ、なんて聞かれてしまえば。

「『ただの毛の生えかわりさ』」

死ぬほど、つまらなくしてやるのさ。
ひどく、苦い苦い、そんなスパイスを。
この場で消費しきってしまおう、なんて。

そんな殊勝な考えはないのだけれど。