2015/08/06 のログ
■平岡ユキヱ > 「…」
少しの間、無言でうつむく。体調が悪いわけではない。
『絶好調すぎて』爆裂しそうなため、ぐっとこらえただけだ。
異能や魔術が飛び交うほど、その『おこぼれ』的なエネルギーを無尽蔵に取り込むのが…。
「『幻想変換炉・臨界突破(ブレイクスルー)』…」
バッ、と青白い光と熱放射が始まる。風紀の何人かが警報を鳴らし始めた。
サイレンの音が辺りに響くか。重大な異能、魔術による事故の危険を知らすサイレンだ。
「騒ぐなって…! われらの矜持は専守防衛…! 我慢に付き合ってもらうぞ!」
じりりと拳を構えたまま、人間幻想発電所もとい人間爆弾ユキヱさんが笑う。
■川添 孝一 > 「それだけじゃねぇ。風紀委員会が守っているのは、人の心だ」
「人々は異能という暴力が簡単に罷り通る世界で何を頼りに生きている?」
「風紀委員会だよッ!! なら……こんなこと許していいわけがねーだろ!!」
拳を握る。戦える。戦えるなら、勝つために動く。
それが自分の命を終わらせることになっても。
「俺は正義じゃねー……正義っていうのはな、お前が今踏み躙ったもののことを言うんだ!!」
「お前がモノみてーに気絶させた人間が正義だ!!」
「お前が何の考えもなしに放火した場所が正義だ!!」
「お前が今、大手を振って暴れてる……ココこそが正義なんだ!!」
「許されると思うなよ!! 認められると思うなよ!!」
「お前に何の事情があれ……お前がやったことは決して許されない!!」
相手の姿が掻き消えると、心臓を押さえて蹲る。
「待ちやがれ……っ!! この街の正義は……絶対に屈しないぜ…!!」
必死に鼓動を押さえつける。
力を減衰させるイメージ。
まだ残り時間がある。間に合う。自分の力を退化させる。
追放されし異形の果実(エグザイル・レッドフレア)なら川添孝一にもコントロールできる。
そのレベルまで異能のステージを下げる。
そんなこと、今までしたことがない。
だが、やるしかない。
俺が死んだら妹がこの世界で一人だけになってしまう。
それだけは、絶対にできない。
蹲ったまま、必死に力を押さえ込んだ。
今にも破裂しそうな心臓を、両手で押さえながら。
■白崎玲刃 > まあ、俺も面倒くさいのは嫌だけどな
隠れんぼの隠れる方って楽しいじゃないか?だからこそ、隠れたくなるってものだ
まあ、出頭したとしても確実に何年かの禁固だろう?
素直に出頭して、結局檻に入れられるってのは、俺としては嫌なんだよ
ほら?牢屋の中って暇だろう?
【苦笑いをしたまま、しかし、いちいち言葉を返す
華霧とは逆に、なかなか律儀な性格ではあった】
ははは…その手段取っちゃうさ。
おいおい……これは…
【逃げる事に関して頷きつつ
華霧の全力によって現れた多数の物体を
探知の魔術が感知し、玲刃は息を飲む】
………流石にこれは、捕まえるどころか、俺潰れるぞ?
…こっちもあと4枚か…とはいえ、背に腹は代えられない…な
セット B
【手加減されていたとしても、耐久面で心許無い玲刃にとっては
コンクリートの塊等が混じっているそれは致命的な量に見える
その光景を煙幕の中で探知した、玲刃は、苦笑いで苦言を申しつつも
だが、しかし、諦めてはいなかった。
ローブの裏側に持った呪符Bの枚数を枚数を確認して苦々しい表情を浮かべつつ呪符による防護を発動する。
発動枚数は2枚、1枚で1音速を超えた際の空気抵抗の衝撃に耐えられる耐久性を持つそれは
果たして、華霧の攻撃を防ぎきる事は出来るだろうか?】
[てれぽーと つかえるか なら もんだいないな]
セット A
【ミウの念話を聞いた玲刃は、ならばこちらも独自で撤退するべきかと判断する
そうして防護を1枚発動させた玲刃は、次の逃げの一手の為に
そのまま加速の呪符を発動し、壁を砕きながら斜めに路地へと
加速しながら落下しようとする。
ちなみに、現在玲刃が居る方向は、正面玄関方向では無く、正面から左側の側面の路地に面した方向である。】
■白色のローブを羽織った少女 >
正面玄関前
『オ前ナライケルダロウ?』
乱子は暗黒染みたゴーレムに、擲弾砲に榴弾を放り込む。
その勢いで降下し、ロケットパンチが回避された。
巨大な拳はどこかへと消えていくが、すぐにゴーレムへと戻る。
『グワアアアアアア!!
見事ダ……』
そのまま、ゴーレムは倒れてしまった。
だがまだ立ち上がろうとしてくる……がうまく立ち上がれない。
これは、ゴーレムの完全敗北になるだろう。
その時、白色のローブを羽織った謎の人物が突然、ゴーレムのお腹の上に空間転移してくる。ミウである。
ミウは再び音声を創りだした。
『そこまでだな……』
ゴーレムは突然、姿を消す。ミウによる空間転移だ。
そしてユキヱちゃんと対峙していた黒騎士もミウの空間転移で消えていった。
ユキヱちゃんと黒騎士の戦いはこれからだっただろうが、致し方ない……。
『今回は残念ながら、我々の負けのようだ……。
それでは、素直に敗走させてもらうとしよう』
それだけ偽の音声で言い残し、空間転移していった。
一階廊下。
既にスケルトンは全滅。
だがネクロマンサーは不気味に笑いながら、暗黒の空間へと消えて行った。
■平岡ユキヱ > 「転移か…厄介な」
構えを、そして残心を解き、息を吐く。臨界状態を超えた異能を落ち着かせるのに、
これは大分苦労しそうだなと小さく息を吐いた。
もちろん、追跡も苦労するだろう、それよりかは襲撃しそうな奴という下りから探したほうがまだ早いか。
「…あの白色ローブ。見たことない手合いだったな」
放射を続ける中、静かにそう呟いた。
同じ階で戦っていた流布堂に対しては。只今の機動見事なり、と短く述べて頭を下げる。 >流布堂
■流布堂 乱子 > 「ご高評を頂き恐悦至極、というところですね!」
位置エネルギーを運動エネルギーに変える。
平たく言うと降下分の速度を乗せて、
地上の凍りついた風紀委員の上を(すり抜けられるほど翼は小さくない)
通りすぎて逆袈裟に切り上げようとしていたところで、ストップが入った。
起動していたブレードが空気を焦がす。
羽ばたいて滞空しつつ、去っていく白いローブの人物を眺めながら、
(悪態の一つもつこうかと思いましたけれど、
この上なく饗されてしまってはそんな失礼な事も言えませんし)
この戦闘でずいぶんと欲求も発散されたし、参戦目的も非常に達成しやすい状況だった。
だから、あと一息の間合いを詰めることもなく。転移していくのを見ているだけ。
やがて、刃を収めて地に足をつける。
辺りの氷漬けの風紀委員に対してできることはない。
「そうですね、この辺りで騒動が起こるとすれば二級学生の手合いかと思ってましたけれど。」
呟きに対しては同調を返しつつ。
頭を下げられれば、こちらも不格好に頭を下げた。
「ゴーレムと黒い騎士に囲まれるところでした。来て頂けて本当に助かりました」
「ところで」
「……あの氷、溶かしてあげたほうがいいんでしょうか。見た目には涼やかなんですけれど」
■園刃 華霧 > 「違いナイ。そりゃ逃げてモ仕方ないナー。
アタシも、暇は大嫌いでネ。気が合うってモンだ」
けらけらと笑い、笑いながら……しかし容赦なく弾幕を注ぐ。
しかし、殺意はなく……コンクリート塊は速度を抑え、ゴムボールのような殺傷性の低いものだけ高速で打ち出される。
強力な障壁であればほとんど防げるであろう。
「ン……壁はりやがったカ……まあ、そうなるナ。
ついでに逃走、とナ……ンー……ンー……」
明らかに人や床に当たったのと違う異音を聞き取り、そして
壁の破砕音を聞く。
一応、おっかけるか……アー……めんどうな……
よし。
一瞬、逡巡するがそのまま追いかけて駆け出す。
折角なので、一手、打っておこう。
ご案内:「風紀委員会本部」にレイチェルさんが現れました。
■園刃 華霧 > 「皆の者、出会え、出会え!クセモノが逃げたぞおおおおっ!」
■白色のローブを羽織った少女 > 氷は、ゴーレムがいなくなった事で解けていく。
氷らされた人も全員、無事である事だろう。
■園刃 華霧 > 拡声器でも使ったのかというような大声を張り上げ……
そのまま、男を追って空を駆け落ちる。
■川添 孝一 > うぶっ、と呻いて血の塊を吐き出す。
残り2分。
自身のコントロールを。力の減衰を。異能の退化を。
ただひたすらに願って異能を組み上げていく。
まるで複雑な機械のように積み上げられた異能を。
自分でも扱える単純な武器にするイメージ。
残り1分。
体の端々が震える。
目の前の死は残酷だ。どこまでも冷たい。
力を制御する。ただそれだけのことが、こんなにも難しい。
残り30秒。
死。死ぬ。死んでしまう。死にたくない。絶対に死ねない。
残り10秒。
そこでようやく、川添孝一の異能は強制進化の前に落ち着いた。
「うえー……死ぬかと思った…」
仰向けになり、ごろりと寝転がる。
我ながら暢気な言葉だ。
「……あいつ、何が目的で風紀委員会を襲ったんだ…?」
「私怨とは思えない。だが…街の基盤を覆すようなことを、どうして……」
そこまで考えた辺りで、意識を手放す。
川添孝一は救急搬送されるだろう。
■平岡ユキヱ > 「奴らも伊達に風紀をやっていない。その内、勝手に溶けて動き出す。」
一応の熱放射で周囲の身近なものは溶かしつつ、そう言い放った。
ある意味残酷であるが、これもまた平岡という存在の本質でもある。
いやこの猛暑続く最近ではむしろサービスか…。 >流布堂
「負傷者の搬送急ぐぞ! ここで死人を出しては風紀の恥だ!」
やいのやいの周囲をせかしながら、けが人の面倒に奔走する。
■白崎玲刃 > なんとか防げたが…
……追ってくるか…!
【華霧の攻撃を防ぐことが出来た事に安堵しながらも
華霧が追ってこようとしている事に目を見開きながら落下して行く
玲刃は破壊した壁から落ちながらも、
一秒に満たない程の瞬間的にではあるがマッハ1の速度が出ていた体は
既に2階程の高さの所へまで落ちていた。】
……このままだと、落下か…だが。
【加速の呪符の効果が切れ、不自然に減速したものの
出ている速度は相当なものであり、このまま地面に撃墜しては落下死も免れないだろうと思われたが
玲刃は路地の一点をそう、マンホールを見やり、にやりとほくそ笑み
ローブの裏へと隠していた布都御玲を取り出し構え
そのまま落ちて行こうとしていた…
だが、その時】
■流布堂 乱子 > 「本隊は中央突破ですか」
と爬虫類じみた形に変化させた耳を立てる。
先の白いローブの人影をあくまでも陽動と見ての例えだ。
「もう少し時間差で溶けてくれたほうが、救護に近づく人は冷えた中を歩けたんでしょうけれど」
氷が溶けた風紀委員達については、
敵性存在の魔術の影響下にあった以上はメディカルチェックを受けさせられるのでしょうね、というのが外様である乱子の推測だが、
もちろん手伝えることは特に無い。
人を運ぶときに翼を広げて飛ばないといけないのでは効率が下がるのが目に見えている。
「敵の本隊が負傷者に向かってこないように妨害してきます、
来なければ来ないで適当に追ってきますので、またいずれ。」
慌ただしく歩き去るユキヱの背中へ声を投げかけて。
先ほど聞こえた壁の破壊音へ向けて翼を広げた。
■レイチェル > 風紀委員会の路地を疾駆する金髪の少女が一人。
腕には風紀委員の腕章をつけている。
レイチェル・ラムレイその人である。
彼女はつい先程まで外部から遮断された訓練施設でトレーニングを行っていたのだが、
今しがた連絡を確認して本部まで駆け抜けてきたのである。
「さて、襲撃者はまだ居るかねぇ」
詳しい情報までは聞いていないが、
複数の襲撃者が現れたということは耳にしている。
とにかく今は急がねば、と全力疾走するレイチェルであった、が。
「っ!?」
上からの気配を察知し、そちらを見上げて――
人影を確認。
咄嗟に回避行動をとろうとするが、疲弊した身体は言うことを効かず、
そのまま激突する形となる……!
■平岡ユキヱ > 「了解。どうもこの一辺、いやに慌ただしい。互いに警戒するとしよう」
サンダル姿のまま、流布堂とは反対方向へと動き出す。
非番のはずなんだが…もう完全に巻き込まれた。頼んでもいないのに、同期の風紀たちが次々と情報を送ってよこす。
「オイィ! やめろ! 私は普通に花火大会とかそういう行事に参加したいんだよ!」
ユキヱから発せられる光が一層強くなる。
全員退避ー! とか結構緊迫した叫び声が現場で響いていたとか。そうでないとか。
ご案内:「風紀委員会本部」から平岡ユキヱさんが去りました。
■白崎玲刃 > ………なっ!?
レイチェル…!?
【そうして、マンホールへをプラズマで消し飛ばしながら下水へと落ちようとしていた玲刃は
眼下に駆けてきた者を見やり、その者が知り合いである事を含めた驚きと共に目を見開き、
咄嗟に布都御玲の電源を切り、ながらフックロープ上方に投擲し引っかけなんとか減速しようとするも
慌てていた為か、狙いが定まらず外れる】
ああ……こうなったら…どこまで防げるかはわからないが…!
セット B
【衝突するのは防げないだろうが、せめて自分とレイチェル双方の受ける衝撃を減らすために
残りの防護の符2枚のうち、1枚をレイチェルに投擲し、
もう一枚を1自分の体に付け
咄嗟に防護を発動させながらレイチェルと激突する形となるのであった。
果たして、その衝撃でレイチェルの足元にあったマンホールの蓋は外れるだろうか?】
■園刃 華霧 > 「さて、にっがさんゾッと」
落下速度に空中を蹴る速度を足し、更なる高速で躊躇なく空を駆け下りる。
というか、この速さ出しても追いつけないって、どんだけだアイツ……
減速できんのかね……まだ切り札でもあるかな……?
「……って」
見たことの有る顔が下にいた。
なんか慌てて武器らしきものをしまったな……
んー……知り合いなのかね?
でもやばいな、これ。
「あ」
思わずマヌケな声を出してしまったが許せ。
ものの見事にぶつかりおったぞ、レイチェルちゃんダイジョウブかね。
そう思いながら、駆け下りる……そろそろ追いつくはずだ。
■レイチェル > 「っ痛!? ……って、白崎玲刃? てめぇ、何やって……!」
激突。
一瞬の内であったが、その顔は見て取った。
衝撃により大きく仰け反るレイチェル。
視認したのは、確かに以前会ったことのある、白崎玲刃であった。
投擲された防護と白崎の防護が合わさり衝撃は和らぐも、マンホールの蓋は
白崎の落下により開かれることだろう。
と同時に、レイチェルは掌を翳した。
■流布堂 乱子 > 人が空を飛べる時代に、たかが翼でたかだか羽ばたきで飛ぶトカゲが何の自慢をできようか。
参戦目的を振り返れば、わざわざ人通りのない路地でおっとり刀で戦闘に加わるつもりはない。
水平速度を絞って高度を上げると、彼方のマンホールに人影が群れるのが見える。
「……捕り手が2で犯人は1。
この分ならこっちに流れてはこなさそうですね」
風紀委員会本部とは別のビルに着地して、屋上を横切ると委員会街から女子寮に翼を向けた。
ご案内:「風紀委員会本部」から流布堂 乱子さんが去りました。
■白崎玲刃 > ……不味い……見られた…!
【激突の衝撃によって玲刃の顔から灰色の仮面が外れ、地面に転がり落ちる。
そして、その瞬間に聞こえた声を聞き、不味いとこれでは作戦の完全な失敗だと思いながらも
現状落下した衝撃により玲刃はどうする事も出来ない。】
いや、違う、このまま共に落ちてしまえば…
【もう無理かという諦めに玲刃は首を振る
目撃者が居ようと、共に下水に流されれば、正体がばれるのは遅れるだろう
故に、翳した掌に対抗するように、落下の衝撃を使う様にして、
レイチェルを道連れに下水に落ちようとする。】
ご案内:「風紀委員会本部」から川添 孝一さんが去りました。
ご案内:「風紀委員会本部」に『蜘蛛の糸』さんが現れました。
■園刃 華霧 > 「って、おいおいおいおイ!?
何する気だヨっ」
叫ぶ。
レイチェルを巻き込んで落ちようとしてるな。
駆け落ちか?駆け落ちなのか。
落下するだけに。
「待てッテッ!」
地面への落下は空間を歪めて衝撃を殺す。
殺しながら肉薄しようとする。
■『蜘蛛の糸』 > 網を成した金属の糸は、さながら蜘蛛の巣のよう。
水に濡れた蜘蛛糸のようにきらりと光るそれは、下水道への出入り口を包み込むようにして張られていた。
ここにいない風紀委員の誰かさんがあらかじめ張っていたのだろう。
本部を少し調べれば、他の逃走に使えそうな通路にもそれらしきものが見られるはずだ。
もしもこれに対する対策を取らなければ、落下した者は金属の網に包まれることだろう。
■白色のローブを羽織った少女 > しかし、華霧の前には白いローブを羽織った人物が突然空間転移して立ちはだかる。
自分の声とは違い、またもや声を創造して普段のミウとは違う口調で発した。
『待つのはお前だな』
そして、華霧の目の前に魔法陣が創造される。
その魔法陣からは黒竜の首が現れ、足止めしようとする。
■レイチェル > 「時空《バレット》――!」
異能を発動させようとするが、自分と白崎の共に落下する先に罠が仕掛けて
あることに気がつき、その手を一旦止める。
「……この糸は」
このような罠を張る人物。
思い当たる節が一人、風紀委員には居た。
白崎の落下に道連れにされながら、糸へと落下していく――
■白崎玲刃 > ………っ!?なんだこれは…!
金属の網か…それなら……これで……!
【下水にそのまま落下しようとした玲刃は
金属の網に阻まれ動揺する。
しかし、最後の抵抗にとローブの裏に隠し持った布都御玲取り出し
プラズマによって分解し断ち切ろうとする…
しかし、他の風紀委員たちも玲刃を捕まえようと来ているだろう
果たして、玲刃が布都御玲によって『蜘蛛の糸』を断ち切るのと
風紀委員が玲刃を捕まえるのとどちらが早いだろうか?】
■園刃 華霧 > 「おぉ!?テレポートってヤツかネ。少女ヨ。
ケド待て、と言われテ……待つヤツが居るカってネッ!
あ、そりゃアタシの発言もだナ」
冗談めかせて、余裕めかせて駆けながら喋る。
とはいえ、目の前には変な黒い龍っぽい首に白いローブの少女がいるのは変わらない。
さて、どうしたものか……龍の首をどうにかするのはしんどそうだ。
仕方ない。隠し芸其の三、かなあ……これ疲れるし、失敗すると大変なんだけど。
「さて、てーコトで。"お前"はどーするでショー?
1:戦う、2:回避する、3:どうにも出来ない現実は非情である」
けけけけけ、と笑ってみせる。
「答えは……逃げル!」
走る女は減速せず……そのまま、空間を割り……その中へ消えていく。
何も出来なければそのまま数m先、に少女たちを超えた先に居るだろう。
■レイチェル > 白崎が何を思って風紀委員会襲撃などという行動に出たのか、
レイチェルの知る所では無かった。
だが、話を聞く為にも、このまま逃がす訳にはいかない。
「待てよ、お前には聞かなきゃいけねぇことがある……!」
そう口にすると同時に、網の切断を妨害しようと、白崎の腕を掴む。
■白色のローブを羽織った少女 > 玲刃君を追撃する風紀委員も続々と現れる事だろう。
ひとまず、このマンホールからは追撃させない。
再び声を創造。
『お前も随分とユニークな能力を使うようだな。
そうか、お前は逃げるを選択するのか……。
それはきっと、間違ってはいないだろう』
空間が割られたかと思ったら、華霧はそこに消えていく。
そして、白いローブの人物の背後に、華霧が現れた。
『逃げるのは全然構わないが……。
追いかけるのは、許さないぞ』
ミウは、絶対零度という現象を地面に創造する。
地面が急に氷りついていく。
その氷により、マンホールも塞がれる事になる。
氷はかなり分厚く、鉄よりも遥かに固い。砕くのは容易ではない。
『暑い季節だからな……。
涼しくしてやった』
■白崎玲刃 > 待てと言われて待つ奴はいるか?
【とは言ったものの、
切断する手を止まられれば、あとは射出する以外に方法は無い】
聞かなきゃいけない事なら、俺が逃げるにしろ、捕まるにしろ後で答えてやるさ。
それと、危ないから当たるなよ。
【最後の抵抗をレイチェルに阻まれ、ながらプラズマ射出のトリガーに指を掛ける。
プラズマのチャージがまでの数秒間で玲刃を引き上げられれば…】
…!?
上まで塞がれただと!?
これじゃあ、捕まえる事は無理みたいだな
【この展開には玲刃も予想外だったのか驚きながらも
上に出来た氷の蓋を見ながら好都合だと笑みを浮かべる
掴まれた腕に力を入れ拮抗させながら金属の網へと向けてプラズマを射出させようとするだろう。】
■園刃 華霧 > 「ぅ、ワ~……少女も、大概だナ。
龍呼んだリ、氷作ったリ……そんダケ出来りゃ、こンな派手な遊びしなくても色々とやれるコトもあるだろーニ。」
コンコンっと……マンホールの上の氷を蹴る。
なんだこれ。硬いわ、厚いわ……
万年氷でも断ち切れる剣でも必要かね。
流石にソンナものの持ち合わせはないが……
「少女は、さっきのニーサンのオトモダチってトコかネ。
名前、はー……教えてくれンかナ?」
やれやれ、と肩をすくめつつ。
男の名前はさっきレイチェルが口走っていたはずだ。
しかし、そこに触れる義理はないし……とりあえず、こっちを聞くだけは聞く。
ついでに万年氷を割る手段……だが。
なくはないけれど、ちょっと流石にちゃんと狙いを定めないと
"助けてやろう、ただし真っ二つだ"
みたいな事になってしまったらソレはやばい。
ヘラヘラ喋りながらも慎重に下の位置関係を目測する。
■レイチェル > (凍った……!? 魔術か、異能か……? それとも……)
白崎の腕を掴みながら、マンホールの蓋が存在していた部分が氷で覆われていくのを
目撃する。厄介なことになった、と。レイチェルは軽く舌打ちをする。
《右目》が解析したあの氷の強度は、鋼鉄以上。いや、鉄などとは比較にならない硬さを
誇っているようだ。
今から時空圧壊《バレットタイム》を使ってあの氷を何とか打ち砕こうものなら、
相当な労力と時間を必要とする。恐らく、時間いっぱい使わねばならないだろう。
白崎のプラズマを防ぐことなど不可能だ。
と、思考先を氷へと奪われている間に白崎のプラズマが射出された――!
■『蜘蛛の糸』 > 網はあっけなくプラズマに切断され、その際『カチリ』と小さな音がした。
真っ二つになった網が、ぶらんと垂れ下がる。
―――こうやって逃げ道を塞いでおけば、そいつは網の下へ……下水道に向かって逃げようとするだろう。
それでいい。そうするがいい。
そもそも入れないようにして別のルートを探させるよりは、ここでチェックメイトに嵌めてやる方が手っ取り早い。
役員の体力とて無限大ではない。
下水道に広がる分かれ道。そのいくつかが鉄格子に阻まれている。
上への出入り口は当然『網』が塞いでいるので一々断ち切らなければならない。
ならば逃亡者は、一体何処へ逃げるのだろうか。
■白色のローブを羽織った少女 > 音声創造。
『ほう……。
悪いが、こちらは遊びでもないのでな』
黒竜が魔法陣から抜けて、その姿を現していく。
『さてどうかな』
ばればれだろうけど、あえて惚ける。
『そうだな、このような場で名乗りを上げるのは、相応しくない。
今は退いておけ……。
お前の命を取ろうとまで思わない』
黒竜が、前に出る。その威圧感はかなりのものだった。
『それに、無理にこの氷を割るものでもない』
■白崎玲刃 > ………これで、どうにか…逃げられる、か。
【射出されたプラズマが、金属の網の物理的な強度に関係なく分解してゆく
もし、魔術的な防備やエネルギー的な防備があったならば防げたかもしれないが、
物質的な防備ではプラズマによる分解の前には意味が無かった。
そうしながら、逃げられそうな予感に気が緩み気を失いながら
下水へと落ちて行く。
しかし、】
【その先には分かれ道の所々に鉄格子のある下水道
果たして、玲刃はどこまで流れ着いて行くのであろうか。
だがそれは、気絶した玲刃には、今はまだ分らぬ事であった。】
■園刃 華霧 > 「やーれヤレ、命を取ろうとは思わない、割にひっドいナマモノが目の前に居る気がするンだけど?
それとサー。逃げたヤローはまあ、この際ドーデモいいとして。
この下にはアタシの同僚まで一緒に居るんだケド。ソイツはどーしてくれンのさ、少女?」
へーへー、おみそれいたしやした、と投げやりな言い方で肩をすくめつつ、そんな風に目の前の問いかける。
その間に、下の網は切断され男は落ちていく。
男は?ではレイチェルはどうなった?
■レイチェル > 「このまま落ちたら下水か……」
渋い顔をするレイチェル。
当たり前だ。何だかんだで年頃の娘なのだから。
白崎と共に落下しながら、彼女が目の前の男の様子を見れば――
気を、失っている。
(……はぁ!? なに気ぃ失ってんだよお前!)
気を失った人間が下水に流されれば、どうなるか。
気が付かなければ、最悪溺死する。
事情を聞くどころの話では無いし、みすみす目の前の
命を危険に晒すことをするようなレイチェルでは、勿論無い。
勿論、風紀委員会を襲撃したと思われる人物を逃すようなことも、
しない。
「ったく、しょうがねぇな……!」
クロークからワイヤーガンを取り出し、
マンホールと下水道を結ぶ鉄製の梯子に向けて射出。
自らも、白崎も、下水へと落ちないように梯子まで、
振り子の形で近づけば、その梯子を掴む。
■白色のローブを羽織った少女 > 音声創造。
『そちらが何もしなければ、こちらも何もする気はない。
もともと、こちらの大敗だからな。
お前の同僚に関しては、後で救出してくれ』
まずいかな……そろそろ限界が近い……。
神力の使いすぎで、目眩までしてくる。
今回は、本当に無茶をしすぎた……。
あまりにも敵が多く、そして巨大だったから仕方がないだろうか。
だが、それを悟られないように平然とする。
『それでは、この場はひとまず撤退するとしよう。
魔術で出来たこの竜は時間が経てば自然に消える上、何もしなければ大人しくしているので、無理に対処する必要はない。
では、またな』
それだけ言い残して、空間転移で姿を消す。
次に現れた場所は下水道。
ミウは、サイコキネシスで浮遊した状態である。
連戦に続く連戦であるが、玲刃君を救出しに行こうと思う。
なんとそこには、梯子を掴む金髪眼帯の少女と、そして気絶した玲刃の姿。
もう大分息も荒くなっている……。
さて、どうしたものか。
音声を創造する。
『その人を返してもらおうか?』
■白崎玲刃 > 【再生の異能がある事によって、
酸欠による細胞の壊死に拮抗するくらいは出来、
濁死する事が無い為下水に落ちるという手段を選んだ玲刃ではあるものの
絶対に今度は絶対に無くさないようにと布都御玲を強くにじり締めたまま、気絶している玲刃は、
そのまま気絶した状態でレイチェルに抱えられたまま抵抗は出来ない
当然、ミウが現れた事についても気絶している為、反応する事は出来ないが
偶然、ローブの内側から、ミウ用の神力補充の為の魔力補充符、が数枚落ちるだろう。】
■園刃 華霧 > 「って、おーイ! ……チェ、消えたカ……
ハー……好き勝手言っちゃッてサー」
自分も好き勝手言っていることは棚に上げて、盛大にため息をつく。
やれやれ、どうしたものか。
「何もしなけりゃ、大人しくしてルって言われてもネー。
黒龍……オマエ、消えるのカ? オマエ、時間がたったら……自然に、消えるのカ?」
目の前で、一応は大人しくしている龍に向かって声をかける。
ミギャン、と……龍は答えたのかよくわからないけれど一声鳴いた。
「そッカ。オマエも大変だナ……モーちょっと思いやり欲しいよネ。
かわいそーニ。うんウン。あ、オマエ、肉食べル?」
もぐもぐ、と。また何処からか取り出したケーキを齧る。
そして通じているのか通じていないのかよくわからない意思疎通を龍と交わしていた。
ミギャン。
「……ン、で……レイチェルちゃんは無事っぽい、ケド……
なンか、固まったナ……あの少女、あっちいったカ……?」
厚い氷の向こう……微かに見える、男とレイチェルの動きを注視する。
……氷を割る算段を、そろそろ固めよう。
■レイチェル > 「はぁ? 返して欲しいだ……? はっ、お断りだぜ。
てめぇ、自分らが何しでかしたか分かってんのか?
オレ達風紀はこの島の平和を守るのが役目だ、これだけ大事しでかしといて、そう
簡単に帰して貰えると思うなよ? どんな事情があるか知らねーが、話はたっぷり
本部で聞かせて貰うぜ。白崎玲刃と……それから、てめぇからもな!」
ワイヤーガンをクロークの内にしまい、今度はテーザーガンを取り出し、その銃口を
声の主へと向けた。
レイチェルはダンピールであり、身体強化も行っているサイボーグである。
梯子に腕をかけ、白崎一人を片腕で抱えるくらいであれば、問題は無い。
銃口を向けると同時に、機械化された《右目》で浮遊する少女を走査《スキャン》するが――。
■白色のローブを羽織った少女 > 玲刃君のローブからは数枚の符が落ちてくる。
それが神力補充のための魔力補充符である事を察し、それを握るり使用する。
ありがとう……玲刃君。
これでなんとかしてみせる!
この白いローブは創造神がこの作戦のために創りだしたものであり、特殊な術式がかけられていた。
術式が邪魔して、スキャンなどでこのローブに羽織られている者の情報を得る事は、かなり困難を極める。
こちらも無策で陽動しているわけではない。
音声創造。
『ならば力づくで取り返すが、構わないな?
ああ、十分分かっている。
風紀委員には悪い事をしたが、こちらにも目的があるのでな……。
悪いが、お前が抱えているその男と一緒に帰らせてもらうぞ?
こちらからはお前と話す事もないので、本部への同行は拒否させてもらうとしよう』
そしてテーサーガンが向けられた。
『そんなものを私に向けるものではないぞ……。
何もお前を傷つけようというわけではないのだ。
その男を返してくれれば、それでいいのだがな』
そう言いながら、ミウは自身の周囲にいくつもの漆黒の魔法陣を創造する。
これから、何かする気である。
■レイチェル > 「話すことも無いだとか、勝手に決め付けてんじゃねーよ。こっちは聞きたいことが
山ほどあるんでな!」
走査《スキャニング》――解析《アナライズ》……不可能《エラー》。
滅多に見ることの無いエラー表示に小さな驚きを隠せないレイチェルは、軽く舌打ち。
しかしながら、映像は記録できた。
仕方あるまい、と気を取り直してテーザーガンの引き金にかけた
指に力を込める。
「オレが傷つく傷つかないの問題じゃねぇ。オレはこの島の皆の安全を守る風紀委員の
端くれとして、てめぇらを逃がす訳には行かねーってだけのことだ。お前が話すことが
あろうが無かろうが、このまま見逃すって訳にゃいかねーんだ、よっ!」
息もつかせぬ銃撃が、ローブを羽織った少女へ向けて放たれた――!
■白色のローブを羽織った少女 > テーザーガンが発射して、それは見事に白いローブの少女へと命中。
……っ!?
神力も失ってきているので、想定外に大ダメージとなった。
だがそれでも気絶せずに、神の丈夫な体を持つなんとか堪えてみせる。
音声創造。
『安心するがいい。
こちらの目的が済めば、風紀委員に手を出す理由はなくなり、平和になる。
それと、テーザーガンがこの私に通用すると思っているのか?』
常のミウならともかく、消耗したミウにはかなり危うかったが……。
『では、次はこちらからいかせてもらおう』
複数の漆黒の魔法陣より、数万もの黒く太い糸が創造され伸びる。
糸はレイチェルを傷つける事なく、巻きつけようとする。
その隙をついて、気絶している玲刃君を奪還しようと試みる。
■レイチェル > 「何が……」
ぎり、と歯軋り。
マンホールの下で、少女の小さな声が響く。
「何が『安心』だよ、てめぇの言葉からは、一片たりとも『安心』なんて感じねぇ!
それに平和だ……? この事件が今後どれだけ爪痕を残すと思って――」
撃ち尽くした非殺傷銃を構えたまま、柳眉を逆立て、そう口にするレイチェル。
「趣味の悪い魔術だな! 今すぐぶった斬って――」
クロークの内から魔剣を取り出そうと……したのだが。
疲弊していた身体は動きが普段よりもずっと鈍く。
結果、その内の数本に巻きつかれてしまう。
続く糸が群がるようにレイチェルの元へと巻きつき、
またたく間にその身を拘束していく。
これをこの場ですぐに振りほどく力も今は無い。
となれば、最早ローブの少女が白崎を確保するのは赤子の手を捻るよりも簡単であろう。
■『蜘蛛の糸』 > ―――これは自分がひとえに転移魔術を修めているから言えた事だが……
そんな便利な魔術、追い詰めるべき道の中で使わせては『罠』の体を成さない。
もし自分が同じ状況に遭ったのならば、さっさと転移してしまうことだろう。(10万円が飛ぶが)
なのでとっくにこの道は、風紀の魔術使いにディスペル化させてある。
全ての魔術を防ぐことは適わないが、ここでは『転移魔術』に絞るだけでいい。
向こうからは入れても、こちらからそうする事は出来ない。それがより『罠』としての質を高める。
もっとも、それさえ跳ね除けてしまうというのであれば最初から絶対に捕まらないものと見た方がいい。
鉄格子のない道は、下流に向かうソレだけだ。
■白色のローブを羽織った少女 > 彼女の怒りは最もだ。
安心、なんてものは襲撃犯が口にするものでもない。
音声創造。
『そう言われると、言い返す言葉もないな。
だが何も、目的もなしにこんな事をやっているわけではない。
今回は、大敗してしまったわけだがな……』
糸は、金髪眼帯の少女を拘束していく。
その隙に、玲刃君を奪い返す事には成功。
そのまま玲刃君を抱いて、この場からテレポートしようと試みるが──。
発動……しない!?
何か、この空間に施されている。
こちらは連戦で消耗しているとは言え、神の能力を無力化させるなんて、大したものだ……。
し、仕方がない……。
一旦、玲刃君を抱いて、下水に飛びこむしかない……。
白いローブの少女は、玲刃君を抱いて下水に飛びこむ。
■レイチェル > (こっちは言い返したくても声が出ねーっての!)
糸はレイチェルの口を、腕を、胸を、足を、締め上げるように拘束していく。
ぎちりぎちりと、殺さない程度に抑えてはあるのだろうが、それでも全く身動きが
取れない程度には、彼女の身体を縛り上げていた。
ローブを纏った少女は白崎を連れて下水に飛び込もうとしているようだ。
百歩譲って下水に飛び込むとしても、この拘束があってはこちらが溺れるだけだ。
(簡単に、逃すかよっ……!)
糸の拘束から逃れようと、力を振り絞るレイチェル。
ぶちり、ぶちり、と。
その拘束具が破壊されようとしている――!
■園刃 華霧 > 「……のっぴきならンことになってそーだナ……
さて……そンじゃ……そろそろ、カ……」
厚みを調べている間に、ケーキ、アンパン、コーラ、和三盆と甘味をじっくり味わっていた。
別にサボっていた訳じゃなくて充電である。
この異能は燃費があまり良くない。
さっきから大技を使ってるので、疲れて仕方ないのだ。
下手に使いすぎるとガス欠になってしまう。
「さ、て……流石に3m、もアレば届くか、ネ……
割るのは面倒そうだシ、もうソッチは帰りでいいヤ。」
よいしょーっと伸びをする。
そして、チラッと黒龍をみる。
「ジャ、あーばヨ。悪イな、龍。まだ遊んでいたいンだけどサ?
アタシはまた、逃げル。」
氷の代わりに、空間を割る。
空間を飛び越え……氷の下へ……"落ちる"ように降りる。
■『蜘蛛の糸』 > 常世学園の下水道は、とある一つの出口に集約される。大いなるただ一つの道に。
その水流を下っていけば、その先にあるのは歓楽区の川。
流されるかどうかは彼女次第と言ったところだが……
終点に近付くにつれて、下水は浅くなっていく。水の流れに任せることはやがて出来なくなってしまうことだろう。
もしそこまで着いたのなら
歓楽街のまばゆい光が、暗闇の下水道を照らしているのが見えるだろうか。
■白色のローブを羽織った少女 > 下水に飛び込んだ白いローブの少女。
レイチェルは糸を力で破壊していき自由の身、そして華霧まであの氷を突破してきた。
下水から、千里眼でその状況を見ている。
まずい状況になって来た。
なんとか、玲刃君を助ける方法を考えないと……。
ひとまず、下水の奥深くまで潜る。
今までどんな窮地も乗り越えてきた玲刃君なら、こんな時どうするだろうか……?
とりあえず今は、下水の流れるままに行くしかない。
だが、どこまで水の流れに任せられるかも分からない。
追っ手はどうしよう……。
二人以外の追っ手は、ひとまず表の黒竜が足止めしてくれるだろうか……。
出た先に、待ち伏せとかあったりするのだろうか……。
■『蜘蛛の糸』 > 水の流れは、速い。
誰かが今すぐにでも走りだせれば追いつけるのだろうが……
穢れた水に流され往く二人はやがて、無事浅瀬に辿り着くことだろう。
出口には至らないが、若干の彼方には外の光が見える。
遊欲の光は御柱となって、二人のもとへ降り注ぐ。
輝ける光の前では、穢れた水でさえまるで宝石のようだ。
―――ヘリの羽音さえ聞こえなければ、少しは見惚れていられたかもしれない。
■白崎玲刃 > 【気絶した玲刃は何も答えず
ミウに抱かれながらただ下水を共に流れてゆくのみである。
もし現状玲刃が起きていたならば、
そのまま歓楽街の川まで流れてゆき、待ち伏せが居たとしても力を振りきって、転移疎外の範囲から逃れ、その瞬間に転移をするか
もしくは、下水をある程度まで進み、一部でルートを外れ影に潜みながら休憩し
ある程度体力が回復した所で強引に突っ切るなり、鉄格子を破り別の方向へ進み続けるなりの手段を考えるだろう。】
■レイチェル > 糸を振り解き、自由の身になった頃にはもう、二人の姿は見えなくなっていた。
追いかければ間に合う、かもしれないがそれだけの余力も無い。
『風紀委員襲撃者両名、下水を利用して逃走中。歓楽区に至るルートを通っている模様。
応援を要請』
声に出せば、端末である《右目》から風紀のシステムへその一文が通達される。
「……ちっ、白崎玲刃、てめぇは何たってこんな……」
一応見知った顔である彼が、何故このような事を企てたのか。
定かでは無いが、明らかにする必要がある。
さて、頭上の氷を如何にしたものか。
この体力であの氷を何とかするのも、別のマンホールまで歩いて行くのも、
だるいな、などと思うレイチェルであった。
■園刃 華霧 > 「ヘーイ、レイチェルちゃーん。景気はー……悪い、みたいだネー。」
降りてみれば、拘束された同僚の姿。
あ、でもなんかブチって言った。ブチって。
すっげえ。
「ハー……逃げられタ、かー……どーする?
とりあえず、戻ル?」
遠くへ消えていく二人の姿を眺めつつレイチェルに問う。
……いや、あれは逃げたっていうか流されたって感じだが。
■白色のローブを羽織った少女 > やがて浅瀬に辿り着き、光が見えてきた……。
久しぶりに光を見た気がする……。
ここからは玲刃君を背負って徒歩で行くしかないようだ。
千里眼で先を確かめると、その先にあるのは歓楽街。
ルートを外す事も考えたが、ここまで来たら歓楽街へと突っ切るしかなさそうだ。
──それに、玲刃君なら策の一つとして、そう考えるだとう……という気がした。
最初こそゆったりとした速度で歩いていたが、その足並みは速くなっていく。
玲刃君を助けないと……。玲刃君助けないと……。玲刃君を助けないと……。
頭の中で、それだけを考え続ける。
「わたしも、無様なものね……」
下水道にすら響かない掠れた声で、そう呟いてみせた。
■レイチェル > 『襲撃者の一人は、白崎玲刃。もう一人は、詳細不明だが、強力な魔術を使う模様。注意されたし』
更に情報を付け加える。
「あいつが何だったか知らねーが、あれだけのことが出来るんだったら、溺死はしねーだろ。
あいつも、白崎玲刃も……」
太腿に巻き付いた最後の糸を千切ると、レイチェルは溜息をついた。
手は回しておいた。後は、他の風紀委員に任せるしかないだろう。
「ま、戻るしかねーだろ。片方は、身元が分かってる。もう片方はさっぱりだが、
まぁ聞いてみるしかねぇだろうな……」
華霧にはそう帰して、首をニ、三度横へ動かした。ようやく自由だ、と言わんばかりに。
■『蜘蛛の糸』 > 彼女らにとって幸運だったのが、予想以上の戦力に際し、『待ち伏せ役』までもが防衛に駆り出されたこと。
本来であればここで確保する手筈だったのが、
『神』に挑む仲間と燃える学園の状態を聞いてしまっては、いてもたってもいられない。
彼らは学園と、風紀委員の名誉を守るために戦ったのだ。
犯人確保よりも、学園の平和と仲間の魂を取った事を間違いだとは言えるのだろうか。
それがたとえ、大量破壊の大悪党を逃がす羽目になったとしても……
外に出れば、ディスペル圏からは逃れられることだろう。
■園刃 華霧 > 「は。ホントに知り合いだっタってーワケね。
ま……その辺のコトは、後で分かるカ。今は大人しく帰る、しかなさそーネ。」
やれやれ、と肩をすくめてみせる。
あの変態仮面の名前は白崎玲刃というらしい、ということだけは覚えておこう。
「ほんジャ……帰る……って、氷ぶち破ルしかナイのかネ。
レイチェルちゃん、なンかウマイ手が有ったラ、先に言ってナ。
ヤルなら、結構疲れルのヨ」
■白色のローブを羽織った少女 > 下水や戦闘などでボロボロとなったミウは、玲刃君を背負って歓楽街に出る。
待ち伏せを覚悟していたが、意外にも静かなものだった。
「はぁ……はぁ……。
追っ手も、なしね……。
ここまでこれば……」
あのまま二人が下水道で閉じ込められていても気の毒なので、ひとまず絶対零度の氷は消滅させる。
魔術により生み出された黒竜もそろそろ姿を消す事だろう。
とりあえず、空間転移できる場所に移動しなければいけない。
「はぁ……はぁ……。
この辺り……なら……」
そのまま二人は、歓楽街から空間転移してこの場から消える事だろう。
■レイチェル > 「オレも昼からトレーニングずっとしてたんだがな……しかもかなり力入れてだ」
じっとりとした目で華霧を見るレイチェルは、やれやれと肩を竦める。
「流石に疲れちまったからそっちに頼むぜ」
と、手をひらひらさせて華霧の行動を待つ。
ご案内:「風紀委員会本部」に切野真智さんが現れました。
■園刃 華霧 > 疲れた、任せる。
ざっくり言えばそんなことを言われた。
あー、しっかり特訓というか、訓練、みたいなことしてるわけね。
流石だね、ナガレイシだね。
「んじゃ、しゃーナイ。せーぜー頑張りマスよット。
せーノ……って、アレ?」
さ、目標をセンターに入れてスイッt……
ウン?氷消えたね?
……なるほど。邪魔しなきゃ龍は消える、とも言ってたし……
どうやらアレだけ派手なことをした割に、害意はないってわけだ。
へーんなの。ま、いっか。
「……氷、消えきったワ。ま、楽に上がれるし……いいよネ?
レイチェルちゃん、上がる力、残ってる?
なんなラ、手伝うケド」
■白崎玲刃 > 【気絶したまま玲刃はミウに背負われ下水道を下り
そうして歓楽街まで抜けるとミウの転移によって共に転移するのであった。】
【今回の突入の作戦を決行する事から解る通り
玲刃は抑止力を言うものを解さない
玲刃にとっては、いつもの依頼や戦闘となんら変わりが無いように
剣を取りも戻す事等に、必要だから決行した、それだけであった。
結局のところ
権威というものを解さない玲刃は
今回の作戦による、風紀委員会への影響など考え付きすらもしていなかったのだろう。】
ご案内:「風紀委員会本部」から白崎玲刃さんが去りました。
■レイチェル > 「そりゃ特訓はオレみたいな荒事屋にとっちゃ日課だぜ。 と、流石にそれくらいの力は残ってるさ」
氷が消えれば難なく地上へと戻ることが出来る。
「さて、と。まぁ、こっからどうなるか分からねぇが……とりあえず、上に任せるしかねーな。
それでまた仕事を言い渡されるんなら、一所懸命やることになるだろーが、よ」
華霧に肩を竦めて見せる。
「今日のところはとりあえず、休ませて貰うとするか」
そう言って、レイチェルは女子寮の方へと歩いて行くのだった。
ご案内:「風紀委員会本部」からレイチェルさんが去りました。
■園刃 華霧 > 「さっすが、専門家。ま、ソレならアタシも無駄な体力を使わなくテ済むからいいネ」
よいしょっと、と。上にあがる。
なんだか、サボってたはずが大変なことになったなあ……
「まー、ねエ……話デカすぎて、アタシの懐じゃどーにもならンね。
ほいほい、ンじゃ、おつかれサン、レイチェルちゃん」
ひらひら、と女子寮に去っていくレイチェルに手を振る。
「さーテ……アタシはどーしよーかネ……」
まだ騒ぎの続く建物を眺めながら、のんびりと考えた。
そういえば、龍のヤツ、消えてるな。
話してみれば良い奴だったのに……残念だ。いや、話が通じていたのか知らないけれど。
ご案内:「風紀委員会本部」から白色のローブを羽織った少女さんが去りました。
■切野真智 > 殆どの動ける委員達が、この襲撃で被害を受けた仲間達に肩を貸して、あるいは担架に乗せて搬送していく中、今更現れた男は一人、逆走する様に本部へと向かっていく。
着の身着のまま、という言葉が正しいだろうか。
ジャージにサンダル、ボサボサとした暑苦しい髪形で、真夏の汗をだらだらと流し、息は上がりきっている。
唯一右腕にしている腕章が、彼が風紀委員だということを表しているだろうか。
片手にはスマートフォン。話し相手は直属の先輩だ。
「ハァハァ…今、本部に着いたトコ…ッス…ハァ、強ち、委員長命令って、嘘じゃ、ないみたい、ッス。ハハ、先輩の、嘘だっての、はわかってます、って…」
なんておどけて見たものの、横を行く仲間達の姿を見れば、相当な手練れが侵入してきたことはわかる。
これだけ多くの委員達が、悪に悠然と立ち向かう戦士達が、一騎当千の能力者達が、ただただ、無力化されている。
ぎりり、と悔しさを噛みしめて、1秒でも早く、と本部入口へ向かう。
自分の役割は、この常世学園の平和のシンボルである風紀委員会を元の形に見せかけること。
いつまでもこのような醜態を晒していては、他の学生の恐怖を煽るだけだ。
せめて見せかけだけでも平常を保っておかねば、無用の心配を起こしてしまう。
自分には戦闘を行う異能や魔術は無い。本部を護る力は無い。
(皆…お疲れ様でした。良くぞ守ってくれた…。)
だが、風紀を護る力はある。そう信じて。
(ここからは俺達の戦場だ。)
映画の様な台詞を心の中で唱えて、煙草に火をつける。
■園刃 華霧 > 「うン……?」
入り口の方にやってきた男がいる。
今更このタイミングでやってきて、しかも誰かを手伝うでもなく、佇む。
さて、風紀の腕章をしているし……んん、なんか見覚えはある、な。
何だったっけか?
「……」
まあ、ちょっとした暇つぶし。
余興も余興。
多分、少しは功労者だし、見物くらいさせてもらおうかな。
そう思って、ちょっと近寄って様子を伺う。
■『蜘蛛の糸』 > 一方、張られた網の方はと言うと……
なぜか海水でずぶ濡れになった状態で駆けつけてきたご本人によって、その全てが回収されたのであった。
ご案内:「風紀委員会本部」から『蜘蛛の糸』さんが去りました。
■切野真智 > と、カッコつけたのは良いものの、一体どうやって隠せというんだ。
まずは、現状の把握からか。
自分で火をつけておきながら、不快な煙草の煙にゲホゲホと咳き込む。
やっぱり一回タンマ、と携帯灰皿に煙草を捻じ込んだ。
一度冷製になろう、と両頬をバシっと叩いて気合を入れる。
普段腑抜けている分、こんな時だけ熱くなっても空回りするだけなのは、自分も良く知っている。
(報告では確か、3階に穴が開いて、1階に放火…だったか。)
と本部の正面を見渡す様に、じりじりと下がっていく。
…そんな中、だんだんとこっちに近づいてくる女性の姿。
ああ、なんだか見たことがあるような無いような。
自分の業務を一瞬忘れて、脳味噌をフル回転させる。
「えっと・・同期のソノバさん・・、だっけ?」
■園刃 華霧 > 「ほいほい、園刃サンだヨ。
そっちはー……えーっと……マッチーだっケ?」
同期といわれ、そうだったかな、と思いながら……まあ同じ風紀ってことじゃそうだな、と思う。
そして、自分も悪い頭をフル回転させながら名前を思い出してみる、が……
微妙に残念な結果に終わった。残念、ちょっと違う。
「ナニ、お仕事すンの? そーいや、なンか特技あったんだっけカ。」
■切野真智 > マッチー…。
もういいやソレで。覚えてもらってたカウントにしておこう。
「そ、そう呼ばれるのは初めてだけども、たしかにマッチ―だ。」
と調子の狂ったようなぎこちない笑顔を向ける。
「俺は、幻覚の異能があってさ。
いつまでもこのまんまじゃ、学生達が不安になるだろうし、取り繕っとけって。」
俺にはこれくらいしかできないから、と謙遜しながらも、誇りは感じている様だった。
■園刃 華霧 > 「うン? アレ? ひょっとして、ちょっと違ってタ?
いや、悪いネ。アタシ、物覚え悪くてサー。」
悪いね、とは言いつつもあまり悪びれた様子はない。
一応、謝意は少しくらいは有るようだが。
「アー……応急処置ってヤツな。修理だとカ、建築だトカでもなきゃ、簡単に直せないモンなー。
なるほど、マッチーなかなかやるネェ」
そりゃすごい、と……これは素直に賞賛していた。
建物一個分取り繕うんだから実際大したものだと思う。
■切野真智 > 謝罪には良いって良いって、と軽く返す。
相手に謝罪の意志が無いことを感じ取ってか、それともただ単に気にしてないだけか。
笑いながらも真剣に本部の様子を眺める彼の顔からは読み取りづらいかもしれないが、
性格的に後者だろう。
褒め言葉に多少は照れつつ
「流石に建物全体はキツいかな。
せめて正面だけだったら何とかなるんだけどねぇ…。
さすがに俺一人じゃどーも。
そのうち仲間は来るんだろうけどさ。」
本部を見上げ、袖で汗をぐいっと拭う。
小さな家位であれば外周ぐるっと彼の魔力量でも充分に隠せる程なのだが、この大きさでは。
(それにしてもクソ暑い。せめて飲み物くらい買ってくりゃ良かった。)
折角の休日に叩き起こされ、男子寮からココまでダッシュで移動してきたのだ。
緊急事態であるから、仕方がない、仕方がないことは解っているのだが、心の中でグチの一つ位は溢したくなる。
■園刃 華霧 > 「ァー……そー、だナー……
正直なトコ……今、前だから見えないケド側面とかモ酷いしナ。
六階は女子トイレの壁に大穴だシ、その女子トイレは床まで抜かれてルし。
五階は五階デ、横穴開けられてるってスンポーさネ。」
やー、やるもやったり見事なもんだ、と肩をすくめてみせる。
もっとも、其の一部は自分でぶっ壊したような面も微妙にないではない……ない。
景気良く、コンクリートぶん投げたしなあ……
いいや、この際、全部アイツのせいにしてやろうか……などと邪悪な考えがよぎる。
「しかし、マッチー。いくら夏だからっテ、汗ひどくないカ?
なに、暑がリ?」
汗を拭う様子の男に首を傾げてみせる。
■切野真智 > 「ゲ、6階のトイレも…?
難しいこと考えないで一番デカい正面だけ隠せば、皆が後やってくれるかなぁ…。」
3階の大穴に気を取られて気付かなかったが、人が通れるほど・・よりちょっと大きな穴が5階にも開いているではないか。
聞いてないよ、とボリボリと汗ばんだ頭を掻く。
「あぁ、ゴメン。
寮から猛ダッシュでコッチ来たもんだからさ、暑くて暑くて。
ひでぇ話だよなぁ、非番なのに叩き起こされて…って、非番の平岡サンも大暴れしたんだっけ。」
汗臭さとかで不快にさせたか、と思ってのちょっとした謝罪がいつの間にかにグチに。
こんなド暑い中でドンパチやってた人に向かっていうセリフではないか、と今更気づく辺り無神経である。
慌てて取り繕う。
「いや、まぁこんな状況で非番もクソも無いよな、うん。」
■園刃 華霧 > 「あっはっはっ、まー女子トイレのホーだしネー。
そっち凝視してたラ、それはソレでアレじゃないかナ。
だからまー、仕方ないんじゃないノ?
ま、アッチは人通りの少ないホーだし……とりあえず、正面を誤魔化すトコからじゃないかネ。」
けらけら、と笑いながら頭をかく男にいう。
それとも、覗きたい?と、からかうことも忘れない。
非常時にのんきなことであるが、自分の職務は済ませた……はず、だし、
なにより非常時だろうとスタンスは崩す気はない。
「あーあー……そーゆーコトか。
アタシも非番っちゃ非番だったンだけど、まー、しゃーナイね。
巻き込まれたモンは、ホント、しょうがナイ。
んじゃ、アタシの休憩ついでだ。飲み物くらいあげるヨ。」
どこから取り出したのか、手に二つ缶ジュースが握られている。
その内の一つを無造作に開けて飲み、もう一つを差し出す。
「ア。こっちのほーがよかっタ?」
■切野真智 > 「アハハ、流石にそこまでがっついちゃいないよ。」
女子トイレなんて覗いてもしょうがない。
覗いてもしょうがないんだ、と言い聞かせる。
未知の世界…ではあるが、あんなの小便器が個室に変わっただけじゃないか。
レパートリーが少なすぎて見ても飽きるに決まってるんだ。
そう念じつつも妄想の世界が膨らみそうになる。
今だけは夏の暑さに感謝しよう。
覗き放題かぁ、という邪念を持っても大量の汗と火照った顔が隠してくれる。
なんて不謹慎な。自分でも思う。
ふと現代の時間軸に意識が戻る。
危うく一生かえってこれないところだった。
多分顔には出ていないはずだ。
「そうだな、ショウガナイな…。
って、ジュースか!!すごく助かる!!」
どこから取り出したのだろうか、などというコトは気にするだけ野暮だろう。
マジックアイテムから異能から、様々あるし、なんだかもう見慣れてしまった。
「ありがたくコッチをいただくよ。」
と仰々しく頭を下げて、差し出されたもう一本を受け取る。
(コレそっちがいいなって言ったら間接キスが…)と囁く心の悪魔をガムテープでふんじばって。
■園刃 華霧 > 「今はぶっ壊れて、中に誰もいませんヨ、だしネー。
さて、ト……」
なんか、一瞬トリップしてたような気がするが気のせいか?
いや、気のせいじゃない気もするがまあ、コイツが犯罪者になったら容赦なくぶっ込むってことでいいだろう。
多分きっと今のところ実害はない。
「あとはアタシは見学ナ。
高みの見物……って、より低くから見上げル感じっぽいケド……
まあ、そんなトコで宜しくネ。
それ飲んでガンバレ、頑張れ」
そういって、近くに転がっている手頃なサイズの何かの残骸に腰掛ける。
■切野真智 > ぷしゅっと缶を開け
「おうよっ」
邪念を振り払うようにごきゅごきゅとイッキに飲み干す。
食道を通っていくソレが身体中の熱を下げていくのを感じる。
頭に冷静さが帰ってきた。
ふぅっと息を吐き。
園刃さんから隠す様にして、茶色の小瓶を取出し、続いて飲み干す。
落第街でこっそり買ったギリギリ合法の魔力増強の薬だ。
効果が切れた後に暴力的なまでの脱力感に襲われるが、非常事態であるし。
(ついこの間避難誘導で保健室いったばっかりだし…ぶっ倒れませんように。)
今度は堂々と、煙草に火をつける。
本部に向けて吹いた煙を起点に、じょじょに大きな壁ができていく。
それはやがて、本部の正面を完全に覆い隠すだろう。
■園刃 華霧 > 「ほー、ホー……」
煙が広がっていく。
ああ、これが噂の煙を使った幻覚術ってやつか。
少しだけ思い出した。
えーっと、なんか凄いアレな名前がついていたような……
らぶ……らぶ……えーっと、らぶ・いず・びゅーてぃふる?
なんか違う気がする。
「いや、なかなかどうしテ……凄いじゃないカ」
煙が本部正面を完全に覆い隠す。
これって結構な範囲じゃないのか?
もっとしょっぱいものを想像していただけに、割と本気で感嘆の声をあげる。
■切野真智 > そして、トレーシングペーパーの様に半透明な壁に、まるでトレースでもするかのように、玄関が作られ、窓の穴が開いていく。
そして扉ができて、窓枠ができ、窓がはめられて。
空のビルの張りぼての完成だ。個人製作の映画くらいならば充分な出来だ。
大きな作業はあっという間に完成だ。
感嘆の声に、ドヤ顔で応えるくらいの余裕はあった。
辛いのはココから、と気合を入れなおす。
その顔つきは真剣な真顔から、多少の辛さすら感じとれるだろう。
ただでさえ滝の様に流れていた汗が、これでもかと噴き出す。
本来見えるべき風景だけを補えば良いから、今現在も無傷の部屋はそのままでいいのだが、穴が開いてる部屋はそうもいかない。
窓からチラリと廃墟が見えました、というのは逆に不安を煽ってしまうだろうから。
窓の中の風景が描かれていく。
外から見える総合受付、休憩室、積まれた書類達、個人に合わせて曲げられた電気スタンド。
それらを大体の記憶から作り出すのには、かなりの時間を要するだろう。
まぁ細かい所なんて知らないから、自分のオリジナルがだいたいを占めるわけだが。
全ての工程を終えるのに、ざっと1時間程はかかるのではないだろうか。
■園刃 華霧 > 「ほーほー……」
すっかり宴会気分で色々と食事を取り出し始める始末。
酒でも飲めるなら、酒盛りでも始めるのではないか……
「やー……ゴクローサン」
パチパチ、と拍手した
■切野真智 > 一度作ってしまえば、維持が楽なのは、魔術とは違う彼の異能の利点か。
ふぅ、と汗を拭って園刃さんの方を見れば、一人宴会でも始まりそうな空気だ。
この女、人が頑張ってる隙にズルいぞ、いや、俺みんなが頑張ってる間寝てたわ。
なんて一悶着が起きる脳の余裕は無く、そのままその場に座り込む。
ビショビショのTシャツの僅かな袖で額を拭う。
「あ゛あ゛…ありがとう、ソノバさん…」
絞り出すような声で、ひらりと手を挙げるだろう。
どうやらその間に、補修の業者…を受ける様な学生や委員達も続々と集まり、側面や内装を担当する幻術使いも現れたようだ。
■園刃 華霧 > 「ほいほい、おつかれサン。
じゃあ報酬ニ、お茶と飯くらい、どーゾ」
座り込んでしまった相手に、流石に色々考える。
まあ、一時間くらい立ってたもんなあ……
じゃあしょうがない、ちょっとくらいいいや、と。
色々用意していた一人お食事会の残骸……いや、残飯……
いやいや、余り物……?を、差し入れる。
かじりかけとかじゃなかった……はず。うん。
■切野真智 > 本来であれば女の子との触れ合いがちょっと少な目な男子の例の力が暴走して、あ、コレ食べかけじゃ、とか、もしかして俺に気があるんじゃ、とか事実無根な哀れ極まりない妄想を繰り広げていたところだろう。
それどころではない。
あ゛あ゛あ゛と生気の無いゾンビの様な声を上げて立ち上がり、傍へと寄っていく。
そして、お裾分けを挟んで対面となる様な感じで再びどちゃりと座る。
なかなかに汗臭い。
「恩に着るよ…。実はメシも喰いそびれてさ…」
と、2日ぶりにオアシスにたどり着いた流浪の民の如く、余っていたおにぎりに手を付ける。
■園刃 華霧 > 「……ナー……ひょっとしテ、結構その異能って力、つかうノ?」
ゾンビとか実物なんて見たこと無いけれど、本物を見たらこんな感じだろうか、と。
実に失礼極まる感想を抱いて、思わず聞いてみる。
自分は少なくとも消耗型で、えらく飢えるから末期になるとこうなるんだろーか、とちょっとアレな気分もあったのである。
なお、宴会(?)の現場にはおかず含め、無節操にいろいろな食物が置いてあった。
一体これだけの物を何処に隠し持っていたのだろうか。
ご案内:「風紀委員会本部」に嶋野陽子さんが現れました。
■切野真智 > おにぎりを頬張りながら、から揚げをつまんでいたところ。
「んー・・」
とまで喋って、口に物が入ったままというのはマナー違反か、と思い、もぐもぐごくん。
「あー、いや、大体は魔力なんだけどな、集中するから精神も削れてさ…」
だからこそ今は頭を使わずにもぐもぐとお裾分けを食い漁るのだった。
なりふり構わず
「ゴメン、もう一本飲み物出たりするかい?」
なんて聞いてしまったりする。
■嶋野陽子 > 《風紀委員本部で負傷者多数》
という報せで救急出動し、応急手当てや負傷者の収容
を終えた陽子は、風紀委員会正面でピクニック?の様
に飲食物を広げている園刃先輩を見付けて、近付いて
行くが、もう一人の風紀委員が何やら作業を終えて、
そのピクニックに混じったのを見て歩みを止める。
白衣姿でも、その巨体は一目で識別可能だろう。
ピクニックに加わった男子は相当消耗しているようだ。
■園刃 華霧 > 「なるほど、ナー。そりゃ大変ダ。」
言葉通りなら、一時間は集中していたことになる。
そりゃつかれるだろう。
アタシなら、無理。出来ない。間違いなく音を上げる。
「あン? えーっと、ちょっと待てナ……多分、まだ……と、あっタ。」
だから、飲み物、と聞かれればちょっと素直に検討してみるのだった。
尊敬、とまではいかないが……ちょっとだけの感心分。
そして、手に魔法のように……いや、どちらかというと手品のように缶ジュースが現れる。
「ほい、どーぞ」
■切野真智 > まだ水分が残ってれば涙を流していただろうか。
やっとオアシスを見つけた(以下略)の顔だ。
「助かる…。」
勢い余って、半ば奪い取るようになってしまった。
もちろん悪意は無いのだが。
勢いよくプルタブを引き、喉を鳴らして一気に飲み干す。
かなり気持ち的に回復してきたようで、少しはましな顔つきになったようだ。
「今度会ったら何か奢るよ。
もらってばかりじゃ悪いし。」
自分が一段落ついた所、周りも段々と落ち着いてきたようだ。
と、周りを見渡す。
(うっわめっちゃでかい女の子いる。)
これ以上マシな感想が出なかったのか、と言いたくなるが疲れた脳味噌にはこれが限界だった。
元も悪いが。
学年合同の授業や、入学式に紛れてチラリと見たことが有る様な。
近づいてくるならば、よそよそしく会釈をするだろう。
■嶋野陽子 > 気を取り直して、救急箱から
経口補水液と疲労回復剤を2本ずつ取り出すと、
「お疲れ様です。差し入れと言っても経口補水液と
保健課特製の疲労回復剤しかありませんが、どうぞ」
と言って二人に会釈してから、差し入れを渡す陽子。
巨大な何かが暴れた跡の方を見て、
「随分と大きなモノが暴れたようですが、怪異の襲
撃でもあったのですか?」と園刃先輩に聞く陽子。
もう一人の風紀委員には、差し入れを手渡す際に、
「保健課一年生の、嶋野陽子と言います」と名乗る。
■園刃 華霧 > 「なンか世紀末の世界ヲ生きてキタ男、みたいになってンぞ……?
み、水……みたいナ」
うわー、すげー、とか思いながら飲み物を飲む姿を見る。
割と大雑把な性格ゆえか、奪い取るように持って行かれたことはあまり気になっていない模様だ。
「ォ、いいノ?正気? ……ま、何か、くらいならへーきカ。」
其の言葉がなにを意味しているかは……冷静に見れば食事の残骸らしきモノが異様に多い、ことで気がつくかもしれない。
「うン? 陽子ちゃんか。
悪いケド、探し人は見てないヨ……って、今は違う用件カ。
お仕事ゴクローサン。
アタシらは仕事終わっておやすみモードさ。
ああ、アレ? シタッパなアタシからはなんとも……
そのうち、偉いサンが何か言ってくれるでショ。とりあえず、公式発表待ってヨ。」
でかい、説明不要……な女子に目をやって軽く挨拶する。
■切野真智 > 「嶋野サンもご苦労様、風紀委員2年の切野真智って言います。」
学年的には先輩とは言え、自分だけ座って自己紹介をするのは忍びない。
よっこいせ、と立ち上がってから軽く頭を下げるだろう。
正直、立っても座っても見下ろされることには変わりないのだが。
(これ、さっきの魔力増強と飲み合せて大丈夫かなぁ)
と思いつつ、どうもどうも、と笑顔でそれらを受け取る。
経口保水液をちびちびと飲みながら、再び座ったところで改めておかずを摘み出す。
食べても食べても無くならないような量だ。
コレが残飯だっていうんだから驚きだよなぁ…驚き…おどろ…
「あ、ちなみにソノバさん、あの、うん、何かってラーメン特盛まででお願いします。」
と頭を下げる。
■嶋野陽子 > 園刃先輩はまだしも、切野先輩はまだ
空腹のようだ。そこで陽子は自分も夕食を食べようと
した所で出動がかかり、夕食の焼きそばを異次元スト
レージに保管したままな事を思い出す。
切野先輩が立ち上がると、
「お気遣いなく。お掛けください」と言うと、
「私も御一緒してよろしいですか?」と聞く陽子。
良いと言われたら、腰を下ろす前に、虚空から
出来立ての焼きそばの大皿と、取り皿と箸を
3組取り出すだろう。
■園刃 華霧 > 「ア、気づいタ? 気づいちゃったカー」
特盛りまで、と言われたので、けらけらけら、と笑う。
まあ、流石にお金を持っていなさそうな同期にたかって地獄に突き落とすような真似は……面白そうだけれど、やめておこう。
一瞬、脳内の悪魔が何か囁きかけたのは忘れておく。うん。
「ご一緒? まア、いーケド……もー単なる食事だヨ?
あとは食べるダケ、みたいなノ」
■切野真智 > 園刃さんの言葉に、大きく安堵のため息をつく。
「疲れて頭が回ってないんだ。そういうことにしといて。」
ただでさえ首が回ってないというのに、危うくヤミ金に手を出すところだった。
園刃さんの耳元に見える幻覚であろう悪魔が、消滅することを祈るのみ。
「俺は食い物が増える分には何も。むしろ歓迎しちゃうぜ嶋野さん」
とおどけて笑って見せる。
見た目は筋肉ムキムキで正直怖いが、かなり性格が良いというか、気が利くというか。
まぁこの学園に来るくらいだし、きっといろいろ有ったんだろう、と余計な詮索を控えることにした。
そして配られた皿と箸をどうも、と受け取り、遠慮もせずに焼きそばを自分の分だけよそい始める。
■嶋野陽子 > 『あとは食べるダケ、みたいなの』
という園刃先輩の言葉を聞いて、
「見ての通り、実は私も夕食をまさに食べようとした
瞬間に、出動がかかったのですよ。私の手料理なので、
皆様のお口に合うかどうか」と言いつつも、二人の
先輩に焼きそばを薦める陽子。
一人で食べるよりは、こうして複数で囲んだ方が美味
しく感じられるのが、焼きそばの魔力である。
■園刃 華霧 > 「ま、流石に……ネ。アタシも悪魔じゃないシ?」
一度誰かに悪魔と思われたような気がしないでもないけれど、忘れよう。
「そーかネ。そンじゃ遠慮無く……」
皿を受け取って、焼きそばを取る。
まあ食べ溜めってのも悪くない。
何しろ今日は色々使いすぎてだいぶ消耗しているのだ。
■切野真智 > 人様の焼きそばを最初に勝手にもぐもぐと食っている男は
「口に合うどころか、メチャクチャおいしいよ」
と賞賛するだろう。
料理もできるなんてすげーなー。
女子力たけー。
などと心の中で思いながら。
そして、園刃さんの言葉には苦笑いで
「その言葉、信じてるよ」
とだけ。
友達にご飯を奢ったら借金地獄にハマり落第街で売り飛ばされましたみたいな哀れな人生がなぜだか容易に想像できる。
実際話したことはコレが初めてといっても過言ではないので、探り探りではあるが、悪魔ではありませんように。
■嶋野陽子 > この身体を維持する為の膨大な
食料を全部外食していたら、とっくの昔に破産してい
る。自炊能力は生存の為の必須条件だし、逆にこれを
生かしてお金を稼いでいた事もある。
あ、今度は調理師免状に挑戦してみるか。と閃く陽子。
「お代わり、ありますよ」と、一皿目が空になったら、
全く同じ皿をもうひとつ出すであろう陽子。
喉が渇くだろうから、救急箱から経口補水液を追加で
出して配る。
■切野真智 > 「いや、俺はコレで一回離れるよ。他の術師達とも話しておかなくちゃいけないからね。」
と、経口補水液を受け取りながら立ち上がる。
「園刃サンも嶋野サンもご馳走様でした。」
と深々頭を下げる。
大分顔には生気が戻ったように見受けられる。
ゾンビの様な動きもかなり改善されたようだ。
「まぁまだまだ危ないだろうからお互い気を付けて、じゃあ。」
とふらふらと本部の側面の方へと歩き出した。
■嶋野陽子 > 「無理はなさらずに」と、
これからもう一仕事あるらしい切野先輩を見送る陽子。
そこで、園刃先輩には前回戦闘装備を見られていた事
を思い出す陽子。
「あのー…先日お会いした時の私の装備の事、誰にも
話したりしてませんよね?」と園刃先輩に聞く陽子。
■園刃 華霧 > 「ほいほい、おつかれサン。
気をつけてナー。アタシはそろそろ帰るヨ。」
手を振ってお見送り。
あとは帰るだけの方は実にのんびりであった。
「ん?ああ。 別に話す理由もないから話しちゃいなかったケド。
ナニ?アレって秘密の武装、トカそんな感じだったノ?」
よいしょっと、と立ち上がりながら陽子に答える。
ご案内:「風紀委員会本部」から切野真智さんが去りました。
■嶋野陽子 > 空になった皿や箸を、異次元
ストレージに格納しながら、
「あれは単なる対魔術装甲ですね。肩と頭のパーツ
にはレーダーも仕込んでありますが」と説明する陽子。
「まだ試験が終ってないので、保健課にしか登録して
ないのですよ、あの装備。落第街に行く事になった
ので、初めて装備したのです」と説明する。
片付けが終わると、
「では私はそろそろ失礼します。また今度」と言うと、
園刃先輩に一礼してから、生活委員会の方に向かう陽子。
■園刃 華霧 > 「アー、はいはイ。りょーかい、りょーカイ。
ていうカ、保健課、物騒なモンもってンな……オイ」
最後にぼそっと付け加え……
「ほい、おつかれサン。
アタシも帰るよ。そんじゃーネ。」
ぱたぱた手を振って、本部とは背を向けて……今日は女子寮に帰ってもいいかな、ちょっとつかれたわ……
そう思い、そちらに足を向けた。
ご案内:「風紀委員会本部」から嶋野陽子さんが去りました。
ご案内:「風紀委員会本部」から園刃 華霧さんが去りました。
ご案内:「委員会街」に蓋盛 椎月さんが現れました。
ご案内:「委員会街」から蓋盛 椎月さんが去りました。
ご案内:「委員会街ラウンジ」に蓋盛 椎月さんが現れました。
■蓋盛 椎月 > 山盛りのサンドイッチとアイスカフェラテ。
その目の前に座るのが疲労が抜け切れないといった体の蓋盛。
委員会街ラウンジ。普段使うような場所ではないが、その日は蓋盛はそこで食事していた。
そもそも必要に迫られない限り委員会街自体にあまり足を踏み入れることがなかった。
昨日起こった、風紀委員会本部襲撃事件。
その後始末要員として呼ばれた保健課員の中に蓋盛もいたのだ……。
もしゃもしゃとサンドイッチにかぶりつく。
「うめえな……」
■蓋盛 椎月 > 居合わせた風紀委員の話では、賊は人的被害を出さない、怪我をさせないことを繰り返し主張していたらしい。
その言葉通り、保健課員たちが診た風紀委員たちはほとんどが軽傷の域を出ないものだった。
ならよかったね、ということはないし、仕事はなかった、ということも全然ない。
蓋盛は戦士と呼ばれる人間についての機微にはそれなりに詳しいつもりだ。
風紀委員会は常世の治安維持の責を負う組織である。
実働部隊もデスクワークも含めある程度の覚悟を皆それぞれしている。
すなわち自分が傷ついても平和に身を捧げる、という誇りを。
危害を与えられなかったという事実はそれをむしろ大きく傷つけた。
賊の攻撃によって気絶していた委員が意識を取り戻し、
自分たちが賊に対し有効な手段を取れずただ弄ばれていたことを知った時の怒り狂乱した姿……。
賊に対しての怒りはもちろん、自分自身への憤り。
保健課員はそれらを宥める業務にも追われることになった。
幸い賊のうちの片方については身元が割れているらしい。
穴ぼこになった施設も幻術によっていち早く最低限取り繕われた。
最大限好意的に評価して、面目はぎりぎりのところで保たれた、といったところだろうか。
「はあ……」
ため息しか出ない。
ご案内:「委員会街ラウンジ」にオリハさんが現れました。
■蓋盛 椎月 > 風紀委員自体に対しての憤りももちろんある。
敵が強大だから取り逃がしましたとか、そういう言い訳が許される世界ではない。
しかしそれは彼らも重々承知しているだろうし、それをあの時表に出すのは
あまりにも酷な話であるというのは蓋盛も理解していたので、自制した。
ヨキが言った通り、賊は理解しても居ないし、興味すら無いんだろうな、と思う。
狼藉と、その影響が波及し、引き起こされる結果について。
派手なドンパチの裏で、平和を乱され、虐げられるのは常に力のない弱者だ。
カフェオレを啜って、自分で自分の肩を揉む。
「美少女メイドがほしい……世話してほしい……」
昨日は報告書を書いていたら深夜になってしまい、
委員会棟に宿泊するハメになっていたのだった。
■オリハ > 椎月がため息を吐きながら昨晩の事に思いを巡らせていると、横から脳天気そうな声がかけられる。
「どもーご注文のメイドでーっす♪」
視線を向ければ、記憶に無い生徒が花開かんばかりの笑みでこちらに敬礼のポーズをとっている。
「なんか昨日はこの辺りでお祭り騒ぎだったみたいですけど、保険のせんせーも駆り出されたの? 演目は? 目玉は? ……疲れた顔してると、周りにも移っちゃうゾ★ あ、肩もみます?」
馴れ馴れしく言いながら、背後にとことこと回る。
何が目的かはよくわからないが、昨晩のことについて聞きたいらしい。
■蓋盛 椎月 > 近づいてくる気配、かけられる声。
「おっ、渡りに船~。揉んで揉んで~」
疲れた表情を消し、のんきそうな薄笑いを作る。だらんと、鷹揚にラクな姿勢を取った。
何があったのか、と尋ねられ、んん、と天井を仰ぐ。
「いやあハハあたしがやらされたのは怪我人の手当とか、後始末だから。
何があったのかは伝聞でしか知らないな……賊が風紀委員会本部で暴れたってことぐらいしか。
風紀委員の子に尋ねたほうが早いと思うよ。
……ここに来てるってことは、きみもどっかの委員会の子かな」
■オリハ > 「はいはーい★ この美少女メイドオリハちゃんにお任せあれ―♪」
ニコニコと、蓋盛の肩を揉む手は見た目のチャラさに反して手慣れており、しっかりと揉み解す様に肩のツボを抑えていく。
「ま、デスヨネーって感じかしら?せんせーお疲れ様でーす。」
仰いだ顔を軽く覗き込むようにして労いの言葉を投げる。
「へぇー、賊。 陸の孤島みたいな島で指名手配される覚悟があるだなんて異能者とかそういうのなんですかねー。 ふんふん……風紀委員……って、誰か知り合いいたかな?」
随分と大騒ぎしてたから何かと思ったらテロリストですか。と、渋い表情で肩を揉みほぐしていく。
「はい、図書委員のオリハです! せんせーはあんまり本読まない人です? 図書館では余り見かけませんけど。 私のシフトが合わないだけかな?」
図書委員のオリハと名乗る少女。 特段名前が隠されてるわけでもなければあまり委員会活動をしていないわけでもないので、もしかしたら蓋盛も図書館を利用していれば何度か顔は見ているかもしれない。
■蓋盛 椎月 > 「あ~効くわ~~」
肩を押されて、ふやけた声を出す。
少女の質問にはそんなところだろうねー、怖いねー、などと適当に言葉を濁す。
無関係ではないとはいえ、その場に居合わせたというわけでもない。
いい加減なことを言って妙な噂として広がったら問題だ、と判断した。
「図書委員かぁ。あたしは養護教諭の蓋盛椎月。保健課の一員でもあるよ。
行かないわけじゃないんだけどね、図書館。
勉強苦手だしせっかく本借りても期限内に読みきれないってことが多くてさ……
あんまりお世話にはなれてないんだ……」
ひらひらと手を振る。
■オリハ > ふやけた顔の蓋盛に笑みをますます深めて、揉みから叩きに変更して更に解していく。
適当に濁されると、こっそり残念そうな表情を見せるも、手はマッサージは続けていく。
「蓋盛 椎月せんせーですよね? 知ってますとも知ってますともー、昨年1回貧血で保健室はお世話になりましたし?
あはは、図書館は勉強本だけじゃないですよ?
漫画とか、はやりの小説も置いてありますから、ご利用してくださいねー♪」
やがて、ひと通り揉み終わるとポンと肩を叩いて背筋を伸ばさせる。
「はいっ、お客さん凝ってましたね~。 『医者のふようじょー』にならないように気を付けてくださいよ?」
ささ、次のご注文は如何です? と言いながら、横に座ってこっそり山盛りサンドイッチの一つを盗み食い。
■蓋盛 椎月 > 「あれ? そうだったか。すまないね、物覚えが悪くて……」
たはは、と笑い、記憶を探る。
オリハ。確かにそんな名前の少女とは会ったことがあるような。
……しかしこんな人物だっただろうか?
とはいっても保健室には多くの生徒が訪れる。単に記憶の混合が起こっているだけだなと結論付けた。
じゃあせっかくだしそのうち図書館寄ってみようかな、とダイレクトマーケティングに応じ。
「医者の不養生、紺屋の白袴、よく言われるよ。
一応自分の健康はギリギリで守ってるつもりなんだけどね……」
サンドイッチが盗み食いされることにはおいおいと苦笑するが、特に咎めはしない。
肩もみの礼だと考えればいいだろう。
「んや、さすがにこれ以上注文なんてないよ。
マッサージありがと、助かったよ」
■オリハ > 「いいんですよぅ、今日また暫く覚えてもらえれば★」
本日最初に会った時のような花の咲いたような笑みを再び見せると、もう一つサンドイッチを頬張って立ち上がる。
「んぐっ… ゴクン えへへ、せんせーのお役に立てたなら良かったでーす♪ それじゃサンドイッチご馳走様でしたー!」
どうやら、最初からサンドイッチが目当てだったのかもしれない。
パタパタと手を振ると、助走をつけてから空へふわり、
と羽根を広げて浮かび上がり数メートルまであがった所で粒子状にほどけて宙に霧散する。
―――人の居ぬ間に手伝う家小人《ブラウニー》ではないだろうが、パッと現れてはパッと消えてしまった。
ご案内:「委員会街ラウンジ」からオリハさんが去りました。
■蓋盛 椎月 > 「んじゃまたね……って、ずいぶん自由な退場の仕方したなあ……」
きらきらと輝く粒子をぼんやりと眺めた。
残りのサンドイッチを頬張り、カフェラテで流し込む。
「食った食った……」
色々と難しいことを考えはしたが、何が出来るというわけでもない。
マッサージの腕は大したものだったらしく、それなりにマシにはなった。
医者の不養生という言葉を受けるまでもなく、今日は一日休みを取ろうと思っていた。
自分としてはずいぶん仕事したつもりだったし、責められはしまい。
立ち上がり、肩を回してラウンジを去った。
ご案内:「委員会街ラウンジ」から蓋盛 椎月さんが去りました。
ご案内:「委員会街:公安事務室」に夕霧さんが現れました。
■夕霧 > カタカタとPCを操作する音。
片手には書類。
何時も通りで何時もと変わらない風景。
あの休みから何が変わったか、と言えば。
特に何も変わらない。
皆怪我を見ればそれは事実休んだのだな、と納得はするものであった。
ので、何時もと変わらない。
ただ包帯は外れたものの、前髪に隠れてはいるが傷が残った事と、若干片腕に違和感があることぐらいか。
心なしかそのせいで処理の速度は遅かった。
ご案内:「委員会街:公安事務室」に緋群ハバキさんが現れました。
■緋群ハバキ > キータッチの音が殺風景な室内に木霊する。
普段通りの業務。書類を作成し、他部署からの書類を処理し、各セクションへと配送する。
夏季休暇期間と言えど、常世学園における公的機関である委員会がその活動を休止することはない。
PCモニターに向かう少年は、その緋色の瞳をちらりと離れたデスクへと向ける。
視線の先の先輩は、何等変わること無く作業を行っていた。
優秀にして完璧。そんな言葉を連想させる彼女であるが、しかし少し前、不意に休んだと思えば次の日には包帯を巻いて事務室へと姿を現したのだ。
彼女が頑健であることは知っているし、故に自分のような新米が心配した所でそんなものは取り越し苦労であることも分かっている。
が――
(家でドジしたって怪我じゃないよねぇ……)
少年の思考は、未だその際に交わした会話の内容にあった。
恐らく、戦闘状況が在ったのだろう。それは分かる。
本来戦闘要員ではないとは言え、いざ鉄火場となれば切り抜けられる実力を持った構成員は公安委員会という組織の性質上、多い。
彼女とてその一人であり、自分もその実力を十分その身に叩きこまれたからこそ、その戦闘が苛烈であったのだろうという推測は成り立った。
(……じゃ、どうしてその事についての言及が無いばかりか、下手な嘘までついて隠してるのってのが……)
ここの所暫く、そんな思考が頭のなかをぐるぐると堂々巡りして。
自然、作業効率は落ちに落ちていた。
■夕霧 > 視線は感じる。
それは紛れも無く彼からのものであり。
その視線にどうしたものか、という気持ちもある。
他の皆はそれほど気にはしなかった。
いや正確に言えば気にしないでいてくれた、と言う方が良いのかも知れない。
そういう組織だからこそ。
追及すると言うのは非常に難しい事である。
故に皆【家でドジをした】と言う事にしておいてくれている。
ただ一人、彼――緋群ハバキを覗いては。
そして、こちらに気をやっているせいか、仕事効率はかなり落ちていると見ていい。
(さて、どうしたものですかなあ)
彼女とて、それを口に出すのは憚れる。
何せ原因が自分である。
故に、作業効率が落ち切った彼が他の皆に手が止まっているなどと書類を丸めて頭を軽く叩かれている所などを見ているしかなかったのである。
「……」
ちらりと見れば思わず目が合う。
■緋群ハバキ > 「ぅーむ」
小さく唸り、コーヒーカップを傾ける。
少年とて、触れず忘れるのが最良であり、また求められている態度であることは自覚している。
が――胸に熾る違和感は、飲み下した後のカフェインの匂いのように消えない。
或いはそれは自覚し得ない心理の働き故ののものか、と殊更に己を客観視し、どうにかそのものから視線を外そうとしていたのだが――
「……、」
その何処か困ったような目と、己の視線が合う。
カップを置き、何事か考えて。
ぐぬぬと唸って暫く、弾かれたように立ち上がり、
「先輩!
さっぱり作業手につかないんで気分転換に買い物行きます!
なんか買ってくるものありますか!?」
意を決して、何が在ったのかと切り出そうと思った矢先。
口は全くその意を汲まず、思いの外の言葉を紡いでいた。
■夕霧 > 「何か買うものですか?」
自らの作業効率が悪くなり、気分転換に買いものに行く、と。
一瞬何か意を決したように見えた気がした、が気のせいだったのか。
……と言う訳でも無いのだろう。
「そうですねえ」
少し考えた末。
「……じゃあペットボトルのお茶を」
そう言って財布から二人分の飲み物代を出しハバキに渡そうとするだろう。
「少し、ゆっくりしてきてもええですよ。整理できるまで」
そう言うと、視線を一端外し、デスクトップへと向き直った。
己から言う気は無い。
ただ聞かれたのなら。
そう考えつつ。
■緋群ハバキ > 「あ、いや。あの」
飲み物代を渡された事を恐縮するべきか、それとも本来問いかけるべきを問うべきか。
思考と態度のバランスが崩れている事を自覚する。
呆けた声を発して差し出された紙幣をじっと見て――
――視線を外した夕霧の言葉を聞いて、深呼吸。
今聞かねば、恐らくずるずるとそのまま引きずりながら、時折忘却の海から浮上して己を後悔に苛ませる。
そう考えた。故に、今度は間違えずに。
「……の前に。
やっぱ、気になってしゃーないんで。
……怪我した日、と。あと、その後。
何か、あったんスか」
マナー違反なのかも知れないし、事実何かが在ったのだとしても以前なぜ公安に入ったのかを尋ねた時のようにはぐらかされるのかも知れない。
だが、聞かざるを得なかった。それが何故なのかは――深く考えないようにした。
■夕霧 > 「……」
カタ、と書類の束を置きハバキへと向き直る。
何も無いと言うのは余りにも余りである。
「……少しやんちゃしただけですよ」
額に手を当てて傷を撫でる。
思わずその時、その後を思い出して。
笑みが零れる。
何時もの彼女の笑い方では無い。
愉しいものを思い出した。
そんな笑い。
「嘘、ついたのは謝ります」
ギ、と椅子を軋ませて立ち上がった。
「あの時は、そのやんちゃの後、すぐでしたので、どう―――説明しようか迷ってたんですよ」
コツ、コツとハバキへと近づきながら。
そう、つらつらと並べ立てた。
■緋群ハバキ > 「やんちゃ、スか」
意外そうな声と表情であった。
事実、少年はその言葉に意外なものを感じている。彼女が振るう暴力は、己が理想とする”管理されたベクトル”と似たものだと思っていたから。
――が、それは結局ひとりよがりの理想の投影に過ぎない。
その事には、少年は自覚的であれた。故に、失望でなく、ただ意外に認識が変わった、というだけの事。
――だったのだが。
「……、」
何処か、愉しむような。
傷の甘さに酔うような笑み。
それは何処かしらに艶めいた気配を纏わせていて。
魅せられたように二の句を継げずに居た少年は、歩を進める彼女に、当惑の表情を向けた。
「愉しかった――ん、ですね。そのやんちゃ」
言葉を探るように視線を彷徨わせ、呟くように問いかけた時には、緋色の視線はメガネ越しの瞳を正面から見られはしなかった。
胃の腑に、名状しがたい重いものが横たわる。
■夕霧 > 「そう、やんちゃ」
頷き、また一歩と近づいた所で。
問われるその言葉。
愉しかった―――?
言われて我に返る。
口元を少しだけ抑えた。
笑っていた、ようで。
「……ああ、ごめんなさい」
謝罪の言葉が口から出る。
その謝罪は何についてなのか。
「少し、不謹慎でした」
立ち止まり、視線を泳がせるハバキを真っ直ぐに見た。
「笑いながら、言う様な事やありませんね」
そう言いながらも苦笑する。
否定が無いままに。
■緋群ハバキ > 「いや、別に――」
不謹慎という事は無いだろう。あれだけ練り上げた業を持つ者が、それを振るう所に愉悦を見出さぬという筈もない。
その手触りは即ち、鍛錬や経験が報われるという充実でもあり。故に、少年は己がその愉悦に呑まれぬよう常に意識する。
だが、その笑顔はどこか、それとは質を異にするような気がした。
或いは穿ち過ぎなのか。
けれど、
「あ――」
思考を言葉にする前に、立ちはだかった壁は、大きい。
その笑みの、意味について考えた時。
不意打ちのように自身が目を逸らしていた心の内に焦点が合って、故に己の身勝手さに身を竦ませる。
海に行った時でさえ見せなかった彼女の笑顔。
つまるところ自分は、その笑みの向かう先に――嫉妬しているのだと。
気付いてしまえば、もう視線を合わせる事は出来なかった。
「……ホントに心配してるんスから」
絞り出せたのは、僅かにそんな言葉だけだった。
■夕霧 > そんな彼の心境に。
残念ながら彼女は気付かない。
気付けない。
ただ、視線を合わせてはくれない後輩。
少しだけ困ったように笑って。
「ええ、ごめんなさい」
心配させているのは自覚していた。
故に素直に謝った。
否定は出来ない。
否定する術は無い。
彼女にとっての日常だったもの。
それしかなかった頃の日常。
・・・ ・・
非日常から日常へと戻してもらったあの感覚は。
酷く乱暴に言い換えるならお預けを延々と喰らった状況にとんでもない好物を投げ込まれた感覚で。
―――。
軽く頭を振った。
今はそれを気にしているべきでは無いのに。
「ええ。本当に気を付けます」
口と心と言うのは相反するものなのだろうか。
考えている事と。
口を付く言葉は何一つ一緒では無い。
■緋群ハバキ > 恐らく、その謝罪も。
「気をつける」というその言葉も。
自分への気遣い故の言葉であると理解できるが故に、少年はすぐに応えを返すことが出来なかった。
この学園で初めて得られた緋群ハバキの『日常』。ある種夕霧は、その象徴ですらあった。
それもまた勝手な理想の投影であろう。
だが、彼女は完璧に優秀に、規範を守り模範を示していたのだ。
我知らずその姿への憧れが、密やかに心中を灼く焦がれへと変ず程に。
だが気遣いつつも、彼女は否定しない。
それは恐らく、自身が抱く焦がれよりももっと強い、彼女の胸の熾火が燃え盛ったという事実への充足であり――
「あーいや、俺なんかに心配されても困るのははい、分かってますって!
いやー、にしても先輩も結構ヤンチャで楽しくなっちゃうとかお茶目な所がまたこう、ギャップ……よさ……
……え、っと。お茶でしたよね、すぐ買ってきますから!」
殊更に明るく取り繕う。
いつもの笑顔の仮面を鎧う。
けれど、それが上手く行っているのかは少年には分からず。
視線を合わせぬまま、少年は事務室から外へと走り去って行った。
彼女が渡した飲み物代をデスクに置き去りに。
■夕霧 > 二の句を告げる前に。
ばたばたと彼は出て行く。
追うにしろ、何か言うにしろ、その速度はやはり早く。
既にもうその場には居ない。
「……ふう」
少し息を吐く。
そもそも律せていたのだ。
こうなる事も無いだろうとも思っていた。
それがどうしてこうなったのか。
何が原因だったか。
何時からだったのか。
少しだけ考える。
事務室はもう誰もおらず。
残るは彼女のみ。
ギシ、と椅子に深く沈む。
後輩を窘めれそうもない。
何故なら既に彼女も、仕事が手についていなかった。
「……」
頬杖を付いてその考えに没頭する。
明確に。
どこだったのか。
結局彼女は思い出せず。
ハバキが飲み物を買って来るまで、ただ無表情に考え続けた。
ご案内:「委員会街:公安事務室」から緋群ハバキさんが去りました。
ご案内:「委員会街:公安事務室」から夕霧さんが去りました。
ご案内:「委員会街:風紀委員本部側面路地、保存されている現場」にリグナツァ・アルファニウス・ピセロットさんが現れました。
■リグナツァ・アルファニウス・ピセロット > 白い犬が臭いを嗅ぎながら、男を先導する。
それを見るとも無く視ながら、顎を撫ぜて。
貫頭衣の肩に冷気のヴェールを纏った男が保存されている現場を歩く。
昨日の襲撃騒ぎの折は不在にしていた後悔が、ないわけではない。
たとえそれが風紀委員会というものの役目であろうと、『生徒が傷つくのを見たくはない』と。
『教員としてできることが有るのではないか』と、そう言っていた先輩教員の言葉を忘れては居ない。
「…よく保存されているな。これならば遅れは苦になるまいさ」
この本部棟で数回使われた転移魔術はいずれも、未だ詳細の知れぬもう一人の侵入者に依るものであり、
靴跡やタイヤ痕を調べるのと同じ程度にはアタリマエのこととして、召喚と転移術の専門家としてこの呪文の構成を読み解き、
誰が使ったか、何処へ向かったか、何処から来たか。そういったことを知りにきた。
いや、鉄道委員会に顔を出していた男が話を聞いて、即座に風紀委員会前に"飛んで"きた。
■リグナツァ・アルファニウス・ピセロット > そして今、風紀の鑑識と揉めていた。
『なんでこんなところに犬を連れてきてるんですか?その犬には捜査能力が有るんですか?』
「いや、これは使い魔のアルヴァーンと言って」
『使い魔が必要なんですか?私達の邪魔をする為に?』
「いや、邪魔をしに来たわけではないのだが…」
アルヴァーンも何とかしてやりたいという顔で知った顔を探しているのだが、
生憎ながら見当たらない。
まだリグナツァは『鉄道委員会特別顧問』という肩書から抜けきっていない。
ただの『教員』として現れていたならば話を通せたかもしれないが、セクショナリズムが意識の端に残っている。
ご案内:「委員会街:風紀委員本部側面路地、保存されている現場」に黒神 蓮さんが現れました。
■リグナツァ・アルファニウス・ピセロット > 「いや、だからだな。
"風紀委員ではないが"、学園の一員として、"生徒のためにも"捜査に協力しようと…」
『結構です、先生!』
けんもほろろ、とばかりに会話は打ち切られてしまった。
立ち尽くす魔術師の裾を肉球で二、三度揺らすと、使い魔と魔術師の目が合う。
「……上手く行かぬな、どうも」
当たり前である。事件当時から居たならともかく、既に信頼されているものならともかく、
今この風紀委員会という組織に必要とされているのは"団結"であり、部外者の手ではなかった。
この炎天下にアスファルトから照り返しを受け、額に汗する者達の中に、貴族然として土足でふみいればこれ以外の結果は有り得ない。
そんなこともわからないからこんな主人なのかもしれない。
「……ゆっくりと牙に力を加えていって噛むのはやめてくれ、アルヴァーン」
■黒神 蓮 > (ぶらぶらとレジ袋を揺らしながら、仕事場に向けて歩いている)
(原因は先日の風紀委員本部襲撃事件、「風紀委員」というシステム全体にヒビを入れかねない事件を受けて、
風紀委員達はあらゆる対応に追われている、自分のそのうちの一人だ、
一応風紀委員に身を置いているとはいえ__自分は半ば引退して窓際仕事の身、
そんな自分まで召集されるとは、ただごとで済まなさそうだ)
(ちなみにレジ袋の中身は徹夜覚悟で購入したペットボトルコーヒーである、
普通に黒神の体格なら致死量になるレベルで買い込んである)
(そんなこんなで仕事場に向かっているが、ちょうど移動ルートに事件現場があったので立ち寄ってみた、
風紀委員として、事件現場を一目見ようとした行動だったが__
そこで面白いものを発見した)
「あれ、リグナツァ先生じゃないですか」
(主に体格への親近感とポンコツっぷりから個人的に目をかけている同僚を見かけた、
なんだかしょんぼりしていつも連れてるワンコにかぷかぶされている)
■リグナツァ・アルファニウス・ピセロット > 「アルヴァーン、痛い…痛い痛い痛い、痛い痛い痛い痛い痛い!」
自分で説明したとおりに、徐々に徐々に痛がる動作が大きくなっていく魔術師。
貫頭衣の裾から出た足首を抑えられているため、足を動かせば傷が深くなる。
そのため手をバタバタと振り、腰を捻り、肩に掛かったヴェールがひらひらと大きく揺れ動いて痛みを表していた。
「ハァー……ハァー…ああ……連教員か…」
ようやく離された足首を回しながら、傷になっていないか確かめた魔術師が、
掛けられた声に首をひねって見上げながら応答した。
着任して職員室に机を並べてから、なにかこう…温かいとだけいうには含みの有る視線を向けてくる同僚であり、先輩教員である。
「風紀委員本部で何か有ったと聞いてな、転移術に長けて追跡が困難だった、と、鉄道のほうで聞いたものだから」
委員会受付は往々にして街の噂を収集しているものである。
乱れた着衣を直し、ヴェールを再び肩にかけると、一人と一匹は連に向き直る。
「……せめて、今日になってからでも教員としてできることはないか、とな」
白い犬が目線を向けた先は、風紀委員会の鑑識達が忙しく動きまわる事件現場の数々。
「とはいえ、どうも邪魔をしてしまっていたようでな、退散しようかと思っていたところだ。」
■黒神 蓮 > (痛そう、超痛そう)
「あー……とりあえず、消毒しましょう消毒」
(ポンコツなリグナツァを色々とサポートしているワンコにガブガブ噛まれている、
またなんかやらかしたの? とか思いつつ、とりあえず異界から取り出した消毒液をポイッと投げ渡しておく)
「出来ること、ですか」
(そう言われても、彼は風紀委員ではなく鉄道委員、さすがに外部の人間に手伝わせるほどの緊急事態ではない、
一応生活委員の一部に協力を要請する箇所もあるらしいが、鉄道委員に出る幕は無いだろう)
「出来ること、といっても、「鉄道委員」には無いですけど__」
(そこまで言い、少し溜めてから__言葉を続ける)
「けど、リグナツァ先生にはあると思いますよ」
「先生は先生らしく普段通りどっしり構えてれば良いですよ、
今回の事件は風紀委員という組織にヒビが入りかねない事態、生徒達も心配だと思うんです、
実際、生徒の中には僕に問い詰めてくる子もいた、
けど__こういうときだからこそ、僕たち教員は普段通りでいるべきですよ、
どれだけ大人びていても、この学園の生徒たちは僕たちよりも子供だから__
僕たちが動揺してるとみんな不安になる、強がっていても不安の種は確かにある、
だから、教員は何時も通りに__何もないような顔をしながら生徒を守ればいいんですよ」
「ま、あんまり不安にならずに何時も通りで良いと思うんですよ」
(そこまで言って、喉が疲れたのか温いコーヒーを一気飲み、
実際、リグナツァに出る幕は無い、なら無いなりに幕の裏側を守ってくれればいい、
そうやって裏側を守ってくれる人たちがいるからこそ__風紀委員は安心して戦える)
■リグナツァ・アルファニウス・ピセロット > 「いや、傷はなかった。なぜだかこのアルヴァーンに噛まれるとそれはもう痛むのだ、何故だかな。
だが、助かる。使わせてもらおう。
それに強い匂いのものが塗って有れば噛むときに躊躇するかも知れぬしな」
とんでもなくみっともないことを言いながら、足を上げて消毒薬を塗る魔術師。
確かに白い犬はちょっと嫌そうである。
薬を塗りながら、鉄道委員会に役目のないことは十分に思い出していた。
大人数を長距離輸送する、という交通機関としての役割は緊急搬送に必要がない。
そして自分自身、鉄道を扱えない以上は鉄道委員会における役目も数えるほどしかない。
さきほど置いてきた受付の少女は、世間話の後にはこう切り出したはずだ、
『それでセンセ、例の謎のユーレイの正体はわかりました?』
鉄道委員会での騒動を離れて、こんなところに首を突っ込んで、みっともない真似を晒している暇は――
「……なるほど、な」
嘆息して消毒薬の蓋を閉めた。危うく地面に垂れるところだったそれを見れば、
自分でも考えこんでいたことはわかる。
「教員、いや…"先生"か。生徒の中には我々より年嵩のものも居るというのにな。少なくともこのリグナツァよりかは島に長く居るだろうに、不安となればすぐこちらを見る。」
自身を教員という枠に当てはめなければ、未だに自信を持って彼らに接することが出来るかは疑わしい。
ほんの一年前は、あちら側に居たのだ。最後には誰かが助けてくれるという思いとともに、自らの成績だけを誇っていられる側に。
「ただ……子供というのは失言だろう、連教員。
それとも皆の緊張を緩めるつもりならやはり先輩として一目置かねばならんな」
破顔して、微笑みを浮かべて。どこかでこの教員に対しては親近感を覚えているのか、と思いながら。
「貴方の言葉を承けよう。このリグナツァは普段通りに過ごせば良い、と。その通りにしてみせようではないか」
白い大型犬が主人の言葉に応じて立った。
先ほど言い争った現場に再び目を向ける。
今度は、魔術師がそちらへ向かって歩くのには追随せず、ただ見送った。
「……そこを退くといい、学生らよ。手本というものをひとつ見せてやる」
■黒神 蓮 > (そんなんだから周りにポンコツ扱いされるんじゃ、とは言わなかった、黒神蓮は後輩に優しい、
消毒液を塗るリグナツァを横目に、白い犬に目線を合わせておいでおいでしてみる、
地獄の書類仕事に向けて英気を養いたい、要するにモフりたい、目はそう告げている)
「……それもそうですね」
(確かに、子供というのは失言だったかもしれない、
炎の巨人事件、フィニーチェに関する一連の事件、そして風紀委員本部襲撃事件、
それらに必見立ち向かった学園の生徒達に、「子供」と呼ぶのは似合わないのかもしれない)
「……ま、ちょっと子供扱いする大人がいてもいいでしょう、子供ですから少しは甘えれる大人がいないと」
(事件現場に向かうリグナツァを見て、特に止めようとせずコーヒーを飲み干す、
「迷惑は掛けないでくださいよ」と言いつつも、動く様子はない)
■リグナツァ・アルファニウス・ピセロット > 白い大型犬は、主人から目を離すことはなく。
普段の職員室で疲れているか眠そうにしているか鴛鴦茶飲んでるリグナツァの隣にいるときとは打って変わって、届かぬ場所を行く主人を見つめている。
「迷惑は掛けんさ……ただ、大人の視座というやつを示してやる必要があるだけでな。」
苦情も罵倒もなんのその。現場に割って入ると、マンホールの上に触れて一言唸った。
「術、と言うのは噂話の尾ひれだな」
リグナツァの瞳には魔術分析用の『もう一つの瞳』が組み込んである。
触れた状態であれば魔術隠蔽の片鱗くらいは解除できる。
霧がかって見いだせなかった、この転移現象の痕跡が理解できる。
「転移術ではない、つまるところ我が受け持ちの学生でもない。
…こんなことを術も組まずにやっていたらこのリグナツァがどうしてやるかわからんしな」
ただの授業中のイタズラなら足元と頭上に『門』をつなげて自由落下運動を長時間楽しませるところだが、
あいにくここまでの大事を起こした生徒にはそれでは足りるまい。
「全員、離れていろ。……特に魔術を扱うものは目を開けるなよ、この先の学園生活で魔術の講義要項を見るつもりはないというなら別だが」
立ち上がった魔術師はいつもの通り、尊大に告げた。
「この転移を起こした者を探り当てるぞ」
■黒神 蓮 > (後ろを向き、リグナツァの姿を視界から外す、
ここから先は自分が手を出す領域ではない、必要なのは「匠の目」でなく「魔術師の目」だ)
「……頑張ってくださいよ」
(誰にも聞こえない、蚊の鳴くような声で呟いた)