常世学園は自由と平等を標榜する学園都市である。来たるべき未来のモデル都市とされたために、異能や魔術の使用の有無、この世界の人間か否かなどの違いに関係なく住民は平等であるとしている。しかしながら、学園都市は一つの都市である。生徒を中心とした自治の都市である。そこには当然様々な問題や「闇」の部分が存在している。
 学園の治安を大きく揺るがす可能性のあるものも多くあり、根本的な解決のためには常世財団の協力が必要な場合が多いが、報告を受けても奇妙にも常世財団は沈黙を守ることが非常に多い。公式には認められていないが、厳然と存在する事実がそこにあるのである。ここではそれを概略する。

  • 不法入島者
    基本的に常世学園そして常世島に居住できるのは生徒と教師、学園関係者のみである。
    しかし、それ以外にも常世島に居住する者たちがいる。いわゆる不法入島者であり、様々な理由で常世島に流れ着いて、生徒などになるわけでもなく暮らす者たちである。
    学生証・職員証を持たないため、偽造学生証・職員証を作らない限りは学園の都市部でのサービスの利用はほとんどできない。そのため落第街のスラムや、未開拓地区などに居住する者が多いという。
    勿論風紀委員会などの摘発の対象だが、この不法入島者に関して常世学園の基盤である常世財団は沈黙を守っている。
  • 二級学生
    下級学生とも、準学生とも呼ばれる。公式には存在していないとされる者たちである。
    様々な理由で常世学園に正規での入学が出来なかった者たちである。違反部活の者などが外部から購入してきたような、奴隷的処遇を受けることが多い。
    偽造された学生証を持ち、その偽造学生証のために違反部活で違法な労働に従事させられるような事例が多いといわれる。
    表向きには普通の学生として生活しているところが不法入島者と異なるところである。偽造学生証であるにも関わらず発覚する事例が少ないのは、学園の中枢部に手引きを行う者がいるためとも噂される。
    表だって存在していないとはされているものの、事態が発覚すれば風紀委員会によって救出・保護されるケースもある。その場合、殺人などに手を染めていなければ、一年(場合によってはそれ以上)の学費免除と共に正規学生へと昇格される(無論場合によっては例外も存在する)。
    このような実例があるにも関わらず常世財団は沈黙を守ったままであり、二級学生についてはその闇が深いため、未だ根本的な解決には至っていない。
    ある噂では、二級学生などを常世財団や違反研究所が異能などの実験の被験者として使うことがあるため、野放しにされているなどとも言われているが、真相は不明である。
  • 違反学生・教師/違反部活/違反組織
    違反学生・教師、違反部活、違反組織はその名の通り校則に違反した学生、部活、組織などを言う。
    風紀委員会の取り締まりの対称であり、彼らの頭を悩ませる存在でもある。
    落第街やスラムなどに多く存在し、学園都市の治安を低下させている。違法な部活や行為を行う者や組織がこれに当たる。
    落第街にはギャング・マフィアなどと呼ばれるようなアウトローが存在しており、これらも違反学生などの一例である。
    島外からの犯罪組織の一員が学園都市にもぐりこむことなどもあり、由々しき事態であるとされている。
    時折風紀委員会の手入れが落第街に入るものの、根本的な解決には至っていない。
    近年は特に異能や魔術を用いて事件を起こす違反学生などが増えている。大規模な事件に発展することもあり、一般学生は注意を要する。
    違法な研究に手を染める研究所もこれに該当する。
  • 怪異
    常世島内では様々な怪異の出現が報告されている。原因は様々であり、何か一つの要因があるわけではないといわれる。
    特に未開拓地区は時空が歪んでおり、異世界からの怪異や魔物などが出現する危険な場所となっている。遺跡の内部にもそれらは出現している。
    危険な存在であり、常に風紀委員会などは都市部に怪異が出現しないように警備を行っているが、まれに都市部に怪異が現れ事件を起こすこともある。
  • 常世財団
    常世学園の前身であり基盤となっている組織は常世財団である。世界に光明を齎した存在だが、謎が多い組織でもある。
    あまりに謎が深いため、学園都市内で秘かに倫理に反するような実験などを行い、拉致した生徒などに異能を植えつけたり、違法な魔術実験をしているなどという噂が絶えない。
    学園草創期には理事会として学園の運営のトップに立っていたものの、早々に手を引いて、学園運営は常世島の住民たちに任せている。
    しかし生徒会の会長や副会長への任命権を保持しており、未だ影響力は強いとの噂もある。
    学園で起こる事件や怪異などに対して消極的な態度なのも、この学園都市を一つの実験都市だと考えているからではないかと考える学生もいる。
    実際に不可思議な存在であり、表に出てくることもほとんどないので、このような噂は増え続けるばかりである。
    常世学園の末端の研究員やエージェントなどはその身分を公開して学園内で生活していることも多い。人員数なども公開はされておらず、その実態は不明瞭であるといえる。
    なお、常世財団が学園都市の問題に直接手出しをしない理由の一つとして、「学園都市の問題はその主体である生徒が解決しなければ意味がない」と考えているためであるという説もある。この学園都市は将来の社会のモデルを示す舞台であり、その将来の社会には「常世財団」のような組織は本来存在しない。常世財団が強権を発動し学園都市の問題を解決するということは学園の建学の理念に反するとも解釈できるという。
  • 異邦人と異能無保持者、世界の《大変容》後の闇
    これは常世学園のみの問題ではなく、《大変容》後の世界の問題、闇といえるものである。
    変容後の世界には異邦人や魔術使い、異能者など、現実とは思われていなかったものが次々と出現した。
    今では世界の多くの人間がこの事実を受け入れ、共に歩んでいくという認識を持っているが、人類の全てがそうというわけではない。
    常世学園は異邦人とこの世界が共に歩んでいけるという未来を示すために造られた学園都市だが、未だ問題は多い。
    異邦人への差別意識や、異邦人側からのこの世界の人間への差別意識、そういった考えを持つ者たちも存在している。
    異能を持つものや魔術を使うものを、化け物だと呼ぶような人間もいる。逆に、異能者や魔術を使う者が多い環境では、異能も魔術も使えない人間を低くみる者もいる。
    学園都市内でもこのような問題が残されている。常世学園は全ての存在の自由と平等を標榜している。これらの問題の解決策を示すのも、この常世学園に求められていることである。