学園都市の住民には大きく分けて二つの種類が存在する。それは「生徒」と「教師」である。学園都市が「学園」であるための必然である、
 また、これらの他にも住民は存在するが、学園都市のほとんどの住民はこの二種に分類される。
 ここでは主にその「生徒」と「教師」について説明する。

「生徒」

 その名の通り、学生のことである。常世学園に異能や魔術について学びに来たもの、異邦人としてこの世界を学ぶためにやってきたもの、その理由は様々であるが、常世学園に学びに来ている者を生徒と呼ぶ。
 生徒には授業に出席し所定の単位を修得し、学費を納める義務があるが、それさえ満たせば学園都市の住民として学園都市の設備など自由に利用することができる。
 入学条件に性別や年齢、種族、出身世界などは問われない。常世学園で学ぶ意志があればどのような存在であれ学園は受け入れると表明している。
 これは主に異邦人に配慮した措置である。また、21世紀初頭の世界の変容によって突如異能を発現させた人間は若年層が多かったものの、それよりも上の年代であっても異能を発現させる者も存在するためであった。
 常世学園において生徒は学ぶ以外にも様々な活動をすることができる、部活や委員会に入って学園の運営に協力することも、学園は生徒に求めている。
 生徒は学園において主権者であり、都市を運営する主体と言える。

 なお、異邦人を含め、経済基盤を持たず学費などの納入に非常な困難が見られる場合、ある程度の援助や学費免除などの措置も取られる。
 ただし、それもその他学生が、差別的・優遇であるなどと判断しない、問題なく生活できる限度までの援助である。
 基本的に、その能力が如何に強大で、如何に有益であったとしても、それによって一部生徒が学園側から特別に扱われるということはない。また、異能や魔術を持たぬ生徒であっても、学園の制度上何かデメリットがあるわけではない。
 委員会などの運営に関わる権能に差はあれども、学園では生徒は皆平等であることが第一とされている。
 ※下記に記したような、偽装学生証、裏口入学、二級学生の存在を否定するものではありません。

 しかし、噂では、内部の手引きなどにより正規の手続きを踏まずに常世学園に入学する生徒もいるという。その場合、偽造学生証などが作られる場合が多い。
 このように非正規の手続きを踏む者は特殊な事情であることが多いとされ、学費を得るためや偽造学生証の更新のために落第街などの違反部活で働くのだという。
 常世学園への入学条件は創立の目的もあり緩いものだが、様々な事情により正規の手続きを踏めない生徒も存在する。学費が払えない、自分の存在を公にしたくない、命が狙われているなどの諸所の理由のため裏口入学する学生がいる。
 このような学生は侮蔑を込めて二級学生などと呼ばれる。学園都市の暗部の一つである。このような学生たちが落第街で働かされ、落第街を支えている。
 度々この件は生徒会を通じて常世財団に報告されるも、そのような事実はないと奇妙にも見過ごされている。

「教師」

 教師もまた、生徒と並んで学園都市の主体となる存在である。
 教師の主な役割は通常の学校などとそれほど大きく変わることはなく、生徒へ講義を行い、生徒を指導・教導することが主な役割である。
 教師の条件も年齢や性別、種族や出身世界は問われない。しかし、生徒とは違い、生徒を指導する力があることがひとつの条件となる。つまり、教師としての実力が必要とされる。
 といっても、あまり難しいことではない。異能や魔術、異世界、あるいはその他学問・技術等を生徒に教えられる力があればいいのである。現代では異能や魔術、異世界に関しても体系的な学問ができており、異能や魔術を教えられる人間も育っている。
 学問的な知識の講義でも構わないため、必ずしも教師が異能や魔術を使える必要はない。
 元より異能や魔術の存在を、《大変容》以前から知る組織などに在籍していたものなら尚更である。
 教師兼研究者として働く職員も学園は募集している。
 なお、「校長」や「教頭」などの役職は存在しない。学園都市の運営は「生徒会」「委員会」が行うためである。

 かつては常世財団が教師希望者などをしっかりと審査し、常世財団の息のかかった教師などに講義を任せていたものの、現在ではそのような方針は取られていない。
 現状ではとても教師の数が生徒に足りているとは言えないため、教師採用の条件はかなり下がってきている。特に過去については問われないため、怪しげな人間であっても採用される場合もある。

 教師を含む職員は、一般的な「学園」のそれとは権限などが異なる。
 教師は自らが有する知識・能力・経験を用いて授業を行い、それを通じて生徒を指導する立場ではあるものの、学園運営についての発言力が生徒より上回るわけではない。例えるなら、学園の授業を運用していくための「技官」である。
 立場・権力から言えば、学園都市を運営する生徒会、委員会の委員長/副委員長は教師より優越する存在となる。
 なお、一般的な「学園」で見られるような生徒・教師の関係は存在する。現在、生徒の多くは年若い年齢の者であるため、年長者としての教師が都市を運営する生徒たちの精神的なフォローを行うことは珍しくない。

 教師は「部活」と「委員会」の「顧問」になることができる。顧問は複数人存在することができる。ただし、生徒会に「顧問」は存在しない。
 顧問の存在しない「生徒会」を除く「委員会」の顧問は、委員長や副委員長などの幹部のような権限があるわけではない。
 教師として「委員会」活動への参加、また技術的・知識的な面でのサポートなどが基本的な役割となる。
 立場としては、委員長・副委員長などが上となる。
 「部活」(部活の性格や内容にもよる)については従来の「学園」における「顧問」に近いものとなる。
 ただし、「部活」の設立には必ずしも「顧問」を必要としない。

 「委員会」「部活」の委員/部員として教師が所属することも可能である。その場合は一般の「委員/部員」と同様の扱いになるが、教師は「委員会」の「委員長/副委員長」になることはできない。
 上述した通り、「教師」は己の知識・経験・技術を元に生徒たちを教育し、講義を行う立場にある。己の専門とする所を生徒たちに伝え、学園都市の運営を助ける役割をもつが、「教師」が行う講義は「異能」「魔術」「異世界」「文学/史学/数学などの学科」の範囲には収まらない。「経済学」「宗教学」「工学」「軍事学」「芸術」「音楽」など、非常に幅広い講義のジャンルが用意されている。座学である場合もあれば実習もあり、店舗経営の方法を実地で教えていくような講義も存在する。
 講義・演習の幅は広く、必ずしも全てが教室・演習場で完結するわけではない。それぞれの生徒が思い描く将来の進路のために必要な資格(教員資格/運転免許/司書資格/神職資格/対怪異狩猟免許/異能・魔術危険物取扱者資格/異能・魔術関係犯罪者に関する保護司資格など)を得ることができる「資格課程」「専門課程」も存在し、それに応じた授業も存在する(資格によっては修学年限の「四年」を越えて修学しなければならないものもある)。講義・演習の場は教室であり、街であり、店舗や宗教施設、転移荒野であり――「学園都市」故に、あらゆる場所が学びの場となる。一般の学園には存在しないような教員・授業が存在するのも常世学園の特徴である。

 非常に幅広い講義や資格課程については、世界的に異能・魔術・異邦人に関する専門的な知識を持つ者が求められていることもあり、多様な人材を輩出するという目的もあるが、「生徒」たちの進路を可能な限り広げるためという理由がある。「異能」「魔術」は、特に第三次世界大戦/異界大戦にて軍事・戦闘のために多く用いられたという経緯があり、現代においてもそういった認識を持つものがいないわけではない。しかし、常世学園としては「異能」「魔術」は戦闘・軍事のための力と限定して認めているわけではもちろんない。「異能」「魔術」などを用いたとしても、青少年が必ず戦闘や軍事の道に進むわけではない――そういった建学理念の表明とも言える。

 「学園都市」という一つの「都市」「疑似国家」を運営していくのは「生徒」であるが、「教師」は都市の運営が円滑に行われるように補助・フォローを行う。上述したとおり、「生徒」の多くは青少年であり、そのような年若い年齢であっても「委員会」などに所属して、「大人」としての活動を行わなければならないケースも少なくない。そして、そんな年若い「生徒」たちの心身のケアを行うことが「教師」に求められていることも多い。
 ただし、制度上、「教師としての十分な能力・知識」があれば若年者でも教職員となることは可能であるため、そういった若年の教職員に対する心身のケアやフォローについては課題が多い。生徒と共に成長、経験を積む教職員も存在することになるだろう。