常世学園は、21世紀初頭の《大変容》以降の世界の変容に対応するために造られた学園都市である。
 学園たる所以は、世界観などのページで記したように、魔術や異能を制御し、習得させるため。異世界の異邦人にはこの世界のことを知ってもらうため。その学びの場であるからこそ「学園」なのである。しかし、かといって普通の学園とは常世学園は大きく異なる。
 ここではその常世学園の学制やシステムなどについて記述する。

入学

 常世学園は世界の異変、《大変容》後の世界のあり方のテストケースとして作られた学園であり、ひとつの都市でもある。そのため、普通の学校とはシステムが異なる。入学条件は特に設けられていない。年齢、性別、この世界の者であるか否か、異能や魔術を使うか否か、人間か否か、それらすべては問われない。
 この学園都市の住民として暮らすこと、そして学生や教師として生活すること、それが第一の条件である。来たるべき世界のモデル都市として、疑似社会としての目的のためにも、この学園都市で生活するということが一番大きな役割となる。それさえ果たされれば、どのような人間であれ種族であれ、学園都市は受け入れるとされている。
 年齢層は学生教師ともにさまざま。傾向としては若年層の入学が多いものの、老境に入った者が入学することもありえないことではない。
 学園創立直後は、突如の異能の発現に悩まされる者や、異邦人などが詰めかけて学園内は混乱したものの、それから十数年経った今はある程度落ち着いている。
 一種の駆け込み寺のような役割も期待されているため、入学条件は非常に緩い。過去の経歴なども深くは問われないため、問題が起こることも多い。なお、場合によっては監視など生活に制限が設けられることもある。

 学園としては当然認めていないものの、正規の手続きを取らずに島内へと紛れ込み、住民となっているような者も存在する。そして、そういった者たちを完全に排除することもまた不可能である。
 学園創立当初は学費などは徴収されなかったものの、学園が軌道に乗ってきた現在は学費が徴収されている。住民の増加の影響のためでもある。一種の税金のようなものであり、大した額ではないものの、親族などの援助がない場合は自身で学園内で稼ぐ必要がある。正式な学生には学生証が交付され、これによって学園都市の設備を自由に利用することができる。
 なお、何かしらの事由によって正規の入学を果たせず学生証を得られない学生は、偽造学生証を用いることが多い。正式な呼称ではないが、そのような学生たちは「二級学生」「下級学生」「準学生」などと呼ばれている。

入学願書の異能・魔術の有無の記入について

 常世学園の入学願書(あるいは調書などの類)には、異能・魔術の有無についての記入欄は存在していない。それらを「秘匿しているか/秘匿していないか」がまず問われ、秘匿していない場合は自らの異能や魔術について記入する自由がある。秘匿している場合は異能や魔術の詳細について記入する必要はない。
 このような問いとなっている理由は、《大変容》から数十年を経た現在、異能や魔術はプライベートな問題へと変化しつつあるためである。特に異能は一つの「個性」として理解しようとする/理解すべきであるという風潮があり、公的な機関が異能について根掘り葉掘り尋ねることはハラスメント的な問題・人権侵害の問題に発展する恐れがある。このため、異能・魔術の有無については上記のような回答欄となっている。秘匿の有無については勿論それが一般に公開されることはない。異能が発現していると公称する自由も当然存在する。学生証などに異能について記入する生徒・教師もいる。入学時に秘匿していたが、入学後しばらくしてから異能について公表し、異能制御の授業を受けるようになったという生徒も当然存在する。

 なお、当然異例も存在する。極めて暴走の危険が高い異能や、周囲に危険が及ぶ可能性があると事前に判断・診断された上で学園へと入学した生徒については異能についての調査が行われることもある。
 この手法については危険ではないかという批判も存在する。学園設立当初は入学者への異能診断が「義務」とされていたが、理事会の消滅と共にこの「義務」は消失した。この異能診断の義務を復活させるべきであると強硬に主張する団体も存在するが、学園としては異能診断の「義務」を復活させる予定はない。建学の理念に反するためである。
 上記のような配慮は取られているものの、常世学園の学生間では異能の秘匿・公表についてそれほど深刻に考えられているとは必ずしもいえない。異能を持つ多くの学生は異能の制御を目的として入学しており、異能を秘匿していては異能の制御について学ぶことが困難であるためである。プライバシーの問題はあるものの、自らの異能について話すことは学生内では普通に行われていることである(勿論そうでない者もいるだろう)。
 このような問題が意識されているのは常世学園ならではともいえる。学園の外では異能者への心ない発現や差別的な見方も少なくなってきたとはいえ、存在しているためである。
 ※異能を秘匿しているという設定のPCも可能であり、異能のために特殊な管理・監視状態にあるという設定のPCも問題ないということです。

入学後の異能診断について

 上述の通り入学時の異能診断の「義務」は存在しない。ただし、自らの「異能」について診断をしてもらいたいという生徒も多く存在する。異能の制御のためには、科学的・医学的な診断も必要であるためだ。このため、生徒は入学時・入学後に異能診断を受けることができる。自らの希望制であるため義務でない。診断は異能学に精通した教員や研究員などがこれを行い、当然プライバシーは厳守される。診断によって自らの異能のタイプやカテゴリ、効果などを明確に知る生徒も少なくない。異能についてどのように付き合いたいか、どのように用いて生きたいかなどのカウンセリングも行われ、生徒の意志が特に重視される。
 この診断時に異能名を与えられることが多いが、自ら名付ける者も少なくない。異能に名を与えることによって異能のイメージをが明確になり、制御が行いやすくなったという事例の報告もある。ただし、診断精度は未だ完全ではなく、検査にかかることがない場合や正確な結果でない場合もあるため、その点は留意しておかなければならない。
 また、異能を持たないものが異能に発現する可能性について診断を受けることもできる。ただし、異能に対する研究はまた途上のため、診断の精度は当然100%ではない。
 生活委員会や保健室などに相談することで診断自体は毎日受けることができるが、四月に行われる健康診断では希望制の大規模な異能診断が行われ、この時期に診断に赴く者が多い。


学年/修業年限

 常世学園は学園であり、「学年」という概念も当然存在するが、それは一般の学校の「学年」とは意識が大きく異なる。入学する年齢は問われないため、どのような生徒であれ、最初は「一年生」として数えられる。そして、一年ごとに通常の学校のように学年は上がる。初等部・中等部・高等部などの区分は設けられていない。ただし、それらの学習課程に相当する授業・カリキュラムは存在するため、小・中・高校を卒業したという資格を得ることができる。
 一応の修業年限は4年とされてはいるものの、それが強く制度として意識されているわけではない。残ろうと思えば長く学園に残ることができる。何故ならば、異能や魔術の習得、異邦人のこの世界の学習にかかる時間などは、人によって大きく異なるため、必ずしも4年で全ての課程が修了するとは限らないからである。入学した年齢によっては修業年数が延長される場合もある。
 また、この学園都市は「学園」であると同時に「モデル都市」である。既にそこに人々の生活が生まれているため、修業年限を終えたために追い出すというようなこともできない為である。
 いわゆる飛び級の制度もあり、特別に優秀な成績を収め、飛び級の申請し、学園から認められた場合はすぐに進級することができる。このため、学園側の審査に通り、その資格を満たすと判断された場合は、修業年限の4年を待たずに卒業することも可能である。

 学園都市としては、異能、魔術、異世界などの融和のための人材を育成することが目的であり、永久に学園都市に生徒が留まることは目的ではない。あくまでモデル都市としての学園都市であり、いずれはこのような都市が世界中に作られることが理想とされる。
 しかし、学園の居心地がいいと考えるものもあり、自ら留年するものなどもいるため、学園の悩みの種の一つでもある。常世島の外に居場所がないために常世学園に入学した者も少なからず存在するため、そういった特別の事由がある場合は卒業の延期が考慮される場合もある。


授業/単位制度/進級・留年

 常世学園では様々な授業が実施されている。異能/魔術/異世界に関するもののほか、多種多様な学問など、幅広いジャンルをカバーしている。基本的に授業は教師が行う。ただし、学生が主導する授業などの場合は、学生が学生に教えるということもありうる。
 授業に関しては教師の裁量に任されていることが多く、非常に多種多様な授業が実施される。教師の趣味のような授業も中には存在する。授業は様々なものがあるとはいえ、最も力が入れられているのは異能や魔術の習得や制御について、そして異世界についての授業である。理由としては、今の世界にとってこれらの理解や「制御」が最も重要視されているためである。
 授業などにもよるが、単に能力が強大であることで評価が上昇するということはない。社会と問題なく過ごせるように社会の中で異能や魔術を融和させる「モデル」を示すことが学園の目的だからである。
 異能や魔術については積極的に「実習」が行われる。実践してこそそれらの制御が身につくことが多いためである。異能などを全く持たない場合であっても、未来を担う人材としてしっかり授業は行われる。
 授業に関しては、生徒たちが授業を選択する形式であり、自身にもっとも必要だと思われる授業を取ることになる。いくつか特定の履修サンプルが用意されているため、それを参考にすることも可能。異能などに関してはそれぞれ個人によってタイプが異なるため、教師と相談して個別の指導を受けることもある。
 単位の認定の方法なども授業それぞれであり、試験を行う場合、レポートの提出で認める場合、委員会や部活の活動が単位として認定される場合、その他など、教師次第である。

 常世学園は「単位制」である。規定された単位を修得することにより進級し、卒業することができる。単位の認定には様々な手段があり、授業はもちろん、学園内で学園の発展に貢献した場合、部活や委員会での働きなどによっても単位は修得できる。
 基本的に一年ごとに規定された単位数(カリキュラムによって規定数は異なる)を取得すれば次の学年に進級でき、単位をさらに多くとれば飛び級も可能である。一年ごとに規定された単位数をクリアできなかった場合は留年となる。基本的に留年するだけではペナルティなどは存在しない。
 しかし、一年間全く単位を取らなかったりと極端な場合は学園側からの指導や、学園都市での生活に一部制限が加わることもあるが、滅多な事ではこのような制裁は加えられることはない。
 ただし、常世学園はかなり特殊な環境であり、色々な価値観が集う場所でもあるので、単位なども比較的柔軟に対処されやすい。
 前述したように、単位の取得方法は授業には限らない。様々な方法が学園都市には用意されている。


校則

 常世学園において校則とは一般社会における「法律」と同義である。学生や教師が守るべきルールである。基本的には一般的な法律と同じようなものであり、殺人や窃盗など、人や学園に害をなす行為は罰せられる。重大な犯罪を行った場合は、風紀委員によって収監されることになる。これも、普通の社会と同じである。
 異能や魔術、種族ごとの特殊能力などは個性として認められており、学園内での行使は禁止されていないが、これもまた法に触れないレベルで、である。当然法に触れるような目的で異能や魔術を使うことは禁止されている。
 戦闘目的で異能や魔術を使うことは、「実習」や委員会などの職務従事時、緊急時、自己防衛のためなどを除いて禁止されているものの、違反学生なども増え、守られていない状況がある。
 なお、異邦人たちにはそれぞれ元の世界の独自の法律がある場合もあり、それは遵守されるべきものであるが、当然この「地球」の人倫に反さないレベルでである。


制服

 常世学園には制服着用の義務はない。生徒の自由・自主・自立を重視しており、異邦人の中には「制服」という文化を持たない者たちも少なくないため、制服の着用は義務とされていない。ただし、着用の自由も存在する。《大変容》から数十年立った現在でも、島外の「地球」の学園では制服はごく普通に着用されており、「地球」出身の生徒には馴染み深い存在であるといえる。故に、旧世紀の産物とはいえ制服を着用する生徒も少なくない。無論、好んで制服を着用する異邦人も存在する。
 なお、風紀委員については制服の着用が義務つけられている(公務の場合)。ただし、刑事部などは例外である。
 制服は入学前の手続き時に購入することが可能なほか、島内に存在する「制服屋」で購入することができる。特に有名な「制服屋」は「倭文(しとり)服飾部」であり、価格は安くないが、ファッション性が高いものである。金銭的に購入が難しい場合は学園より制服が支給される場合があるが、ファッション性は高くない。
 「制服屋」による新作の発表は季節の変わり目、衣替えの時期に行われる。


部活/委員会

 常世学園において、学生が行ういわゆる部活動はその範囲が広く、商業活動などもそれに含まれる。飲食店などが代表例である。部活を作るために顧問は必ずしも必須ではなく、生徒会の審査に通ればそれで設立が可能になる。部活で得た金銭は税として学園に収めるもの以外は自身の収入とすることができる。
 落第街などには校則に違反するような部活、非公認の違反部活なども多く存在している。

 委員会は学園都市を運営する行政機関のようなものである。生徒会を頂点として、学園都市の運営に関係する様々な委員会が存在する。生徒会は立法府、風紀委員会はいわゆる警察のようなものであり、学園都市にとって重要な組織である。
 部活や委員会は学園都市の運営に直接かかわるもののため、それに従事する学生は授業に多く出れない学生も多い。そのため、部活や委員会の活動によって単位の修得が可能である。委員会の場合は給与も支給されるが、一般生徒との経済的な格差を増大させるような額ではない。
 部活や委員会については「学内組織」の項で詳述する。


卒業/進路

 卒業に必要な単位を修得すれば卒業する資格を得ることができる。卒業する場合には卒業試験が存在する。決まった形があるわけではなく、自身が学園生活で学んだことや業績などを、卒業試験担当教官の前で己の思うように表現する。そして、学園を卒業しても問題がなく、異能や魔術を持つものの場合はそれがしっかり制御できること、異邦人の場合はこの世界に溶け込んで暮らしていけるかどうかが確認されれば、晴れて卒業となる。

 卒業後の進路は様々であり、常世学園の教員や研究生・研究者として学園に残る者もいれば、学園で学んだことを活かし、祖国に帰って混乱する世界の秩序の形成に協力する者もいる。
 学外の学校(高校や大学など)に進学するものもいる。卒業後行方知れずになるものなどもおり、基本的に生徒の思うように任される。