常世学園には様々な組織が存在する。ここではそれら組織ついて概略する。
学内で生まれた組織、学外で成立した組織などがひしめき合うのがこの常世学園である。基本的に学内の運営に強く関わるのは学内組織である。
しかし、元々外部で生まれた組織などが学園内に影響力を持つということもありうる。例えば、研究組織であるとか、犯罪組織のようなものである。
魔術協会などもこれにあたる。特に、魔術に関しては元来様々な系統が存在するため、魔術を教える教員が何かしらの魔術関係の組織に入っているというのも珍しい話ではない。
異能に関しても同様である。世界の変容後、異能の研究を行っていたのは常世財団だけではない。その規模は様々だが、異能研究組織は存在する。大国などにも独自の異能研究機関は存在する。
これらの組織の関係者が常世学園で生徒や教師をやっていても何も不思議ではない。組織の支部が常世島に設けられることもあるだろう。研究機関として常世学園と合同で研究を行う組織も多い。
学内組織
常世学園の学内組織とは、つまるところ「部活」と「委員会」のことである。この二つが学園を運営する基盤となる。
「部活」とは一般にいう部活動のようなものもあれば、生徒の運営するいわゆる企業、商店やサービス業などの商業活動も常世学園では「部活」の一種である。そのため、常世学園における「部活」という語の意味は、非常に幅の広いものであるが、店名などには必ずしも~部とつける必要はない。
「委員会」とは常世学園を統治する組織群の事を言う。基本的な名称などは普通の学校制度でいう委員会に重なる部分も多いが、その権限は強く、国家における各省庁などに相当する。学園都市の運営になくてはならない存在である。
学園都市が都市として機能するための重要な機関であるため、「部活」や「委員会」に所属し活動する生徒に対しては、その活動に応じて単位が認定されることになっている。これによって、単位の心配をせずに活動を行うことができるのである。なお、部活については、単位の認定は活動内容によるので、必ずしも単位として認定されるとは限らない。
部活や委員会などによる収入は様々であるため、ある程度の貧富の差も生まれることになる。また、部活や委員会の枠外である学生同士の集まりや結社なども学内組織に含まれる。
以下、「部活」や「委員会」について概略する。
部活
常世学園における部活とは、普通の学校における部活動の意味もあり、さらに学生における都市運営、商業活動までも含む大きなものである。部活の一つ一つが大小の企業、商店であるといえる。勿論、経済活動を伴わない部活も多く存在する。
商業活動の場合、部活の施設などは店舗などの形態を取ることになる。部活設立には5名以上の人員が必要だが、それ未満の場合でも協議の上認可されることもあるという。大規模な部活になればそれだけ学園都市にとって重要な存在となり、学園側から支援金などが与えられる。
当然ながら、校則に違反したり公序良俗に反するような部活は設立を否決される。しかしながら、落第街などでは学園側の認可を得ずに、校則に違反するような部活が多く存在する。これらの部活は違反部活などと呼ばれる。風紀委員会・公安委員会の摘発の対象であり、これまでも同委員会は大きな成果を挙げている。しかしながら、現実世界で違法組織が消滅しないのと同様に、違反部活全ての一掃には至っていない。
人数を集めて、校則に則った部活であればその認可は容易い。活動のための施設なども、小規模なものならば学園側から提供される。
顧問などは設立に必要とはされないが、設置することは可能である。教師が顧問として部活を立ち上げることも可能である。
「大部活」
常世学園の中で特に巨大な規模を誇る部活動を指す。一般社会における大企業に相当し、学園都市内の経済的な影響力や運営への貢献度が特に高い。
運営形態は大部活それぞれによって異なるため一概に言う事はできない。小規模な部活を傘下に傘下に収めたグループ形式を取ることもあれば、専門性に特化することによって大きく成長した大部活もある。異業種を含めた様々な部活を合併し取り込むことで成立した複合部活体と呼ばれる大部活も存在するが、後述の委員会による調整により、影響力を多く持つことはできても支配的な存在になることは難しい。
常世学園が未来社会のモデルである以上、現実の企業にも存在する部活の買収・統合、接収なども禁止されているわけではない。しかし、制度上部活の規模による特権の有無はほぼ存在しないため(インフラなどに関わる場合はある程度特殊な権利も存在し得る)、特殊な事情がない限り強制的に小規模部活が大規模部活に吸収されるということはない(場合によってはそういう強引な合併も存在するだろう)。
学生起業プログラムによる起業・支援を経て大部活へと発展した部活も存在する。学生起業プログラムでは、起業/経営支援のために学内/学外からの投資も行われることもあるが、あくまで組織運営の決定権は部活側に存在する。一般的な企業とは異なり、投資額がいくら大きかろうが投資者が学外にいる限りは部活に直接的な影響を及ぼすことができない。これが常世学園という存在の特殊性によるものであり、部活が企業の傀儡になることを防ぐ意味合いがある。あくまで学生による運営が前提となっているといえるだろう。
学外の企業の支部として部活が作られることもあるが、常世学園の校則が第一に適用され、同種の部活との両立を図るような調整が生徒会によって行われている。これにより、大部活と多種多様な中小規模の部活とが併存することが可能となっている。常世学園の実験都市としての性格上、あらゆる可能性を試す必要があり、それ故にこそ部活の認可は容易であり、保護・支援制度も設けられている。とはいえ、経済活動をメインにする部活の場合、倒産する可能性も当然存在している。学園である以上、再チャレンジの可能性は常に残されているものの、支援制度を使用しなかったり、あるいは違反部活と関わりを持っている場合などはこの限りではないだろう。
つまるところ、部活に直接参画し影響を及ぼしたいのであれば、常世学園の学生または教職員になる必要があるということである。逆に言えば学内関係者になることができれば部活への関与も積極的に行うことが可能となる。このため、学外企業から学生・教職員が送り込まれるような例も存在している。ただし、上述の通り生徒会による調整が存在しているため、一部活が特定分野全てを掌握するということはまず不可能である。
委員会傘下の部活/委員会下部組織として取り込まれる例
大小の部活は、委員会の業務の一部委託なども引き受ける場合もあり、委員会の業務負担の軽減にも一役買っている。委員会の業務全体というよりは、それぞれの部活の専門性を活かした特殊業務の委託や、生産面での委託などが主体であって、委員会の活動全体そのものが部活に委託されるということはない。当然ながら、委員会そのものが特定の部活に支配されることもありえない。委員会は国家における国家機構、官庁に相当するものだからだ。
業務委託を受けることによって、委員会の下部組織としての性格を持つようになる部活も存在している。様々な事情により委員会への所属を望まないもの、特定の業務への従事のみを求める学生・教職員がこういった委員会傘下の部活に所属することが多い。当然ながら、正規の委員が有する権限は存在せず、委員会の運営に直接参加することもできない。委員会での直接的な活躍を望むのならば、委員会の委員になるべきであろう。
元は部活ながら、委員会の一部局として正式に組み込まれるケースもある。この場合は文字通り委員会の部局の一つとなるため、正式の委員として所属することとなる。
一例として、違反者・犯罪者を私的に捕縛し積極的に私刑を加えるような、いわゆる「自警学生」集団・組織(自警的学生・組織の全てが違反学生・組織とされるわけではない。協力者/協力組織として認められている場合もある。いわゆる「魔法少女」等の場合後者に属することが多い)を常世学園内の秩序に取り込むため、風紀委員会の一部局として採用するといったものである。
あるいは、委員会の部局とはせず、上述した委員会の業務委託を受ける部活を設立し、所属させることによって制御するというような例もある。この場合、ある程度の司法取引的なものが行われることもある。批判も当然存在するが、《異能》/《魔術》を使う者が年々増加し続ける《大変容》後の社会にはこういった手法も必要と思われるため、試験的に常世学園では実施されている。
《大変容》後に出現したヒーロー/魔法少女、異世界の勇者的存在などをどのように社会に受け入れていくかという問題の解決のための試行錯誤の一つである。多くの場合、彼らは世界の平穏や平和のために戦っているのであって、それら自警的行為の全てを犯罪行為として認定してしまうのは現実的ではないためである。また、出現した能力を使いたいという心情は普遍的なものでもあるといえ、それを活かす場所を作ることは重要である。無論、様々な理由により委員会への所属を望まず、あくまで外部協力者としてあろうとする者や、違反学生とされることもいとわずに自身の思想のままに活動する者もいるため、全てが委員会や関連組織に所属するわけではない。
また、委員会関連の部活の取り組みの一つとして、違反学生の社会復帰・更生のサポートがある。常世学園は学園である以上、学生の再チャレンジや社会復帰・更生は特に重要視されている。異能などによって決して望まぬながらも違反学生とならざるを得なかった例なども多く存在するためだ。元違反学生をどのように扱うかについては委員会内の部局によっても違いがあり、懲罰的なものもあれば更生面を重視したものもあり、濃淡がある。これは、現実社会における異能・魔術・異邦人犯罪者などの更生に向けての試験的な取り組みであり、様々な方法が試みられている。能力を最大限、合法的に活かせる場所を用意するということである。しかし、全ての存在を受け入れることは現実としては不可能であり、違反学生もそれを望まぬ場合もあり、問題の完全な解決には至っていない。
稀有な才能を見せる違反学生が、こういった委員会関連の部活や部活から部局に組み込まれた組織のメンバーとしてスカウトされる場合もある(司法取引が持ちかけられる場合もある)。卓越した能力により、禁忌として指定されている危険な数式(ルーシュチャ方程式)を興味本位かつ独力で解いてしまい、異形の神であるニャルラトホテプの化身を現実世界に召喚しかけ、危うく大惨事を巻き起こすところであった違反学生が、風紀委員会の霊的・魔術的事件専門の組織にスカウトされた例がある。
減刑や監視の有無・規模についても組織次第といったところであり、一定しているわけではない。委員会内の部局の思想的対立もあり得るだろう。
なお、委員会関連の部活ではなく、委員会そのものにも、こういった更生的側面を目的とした部局は存在する。関連部活としてワンクッション置いているのは、問題発生の際のリスク回避という側面も少なからず存在する。委員会内部の組織としてある場合は、元違反学生への何かしらの行動制限・監視などがあるケースが多いだろう。
異邦人と部活
常世学園の部活(大小問わず)の特徴としては、部長・最高経営責任者の出身世界や種族は問わないということにある。「地球」人であろうが異邦人であろうが在籍している以上は「学生」であるため、待遇的な差別は存在しない(学園の制度上・理念上の話であり、部活によってはそういった差別が存在する場合もあるだろう)。故に、商業系部活においては、異邦人が部長・最高経営責任者を務め、卒業後にその部活を足がかりとして異邦人をCEOなどとした会社を起業するというような例も増えてきている。
こういった常世学園発の異邦人系企業は、常世学園卒業者の異邦人の受け皿ともなっている。ただし、これは本質的な解決策というわけではない。常世学園発の企業でなくとも異邦人を差別なく受け入れるのが理想的であり、《大変容》後の「超・多様性社会」に必要なあり方だが、現実はなかなかそう上手くは行っていない。
異邦人を最高経営責任者とする常世学園発ではない学外企業も存在するが、「地球」人のみの企業と比べればまだまだその数は少ない。故郷へと帰る道筋ができた際、異邦人は「地球」を離れて帰還してしまうのではないかという懸念は常に存在しており、それ故に「地球」人主体の企業では、異邦人を役員などに選出することに及び腰になる場合がある(無論、そういった問題を気にしない企業もある)。
こういった問題が現在もなお残っている以上、常世学園発の異邦人系企業は重要な存在としてありつづけている。無論、異邦人だけでなく様々な理由により既存の社会への帰属が難しいものたちの受け皿として、こういった企業は機能している。
委員会
常世学園における委員会は、国家における各省庁に相当する。政府機関のようなものであるといえ、「委員会」という名称は学園都市運営の基本が学生によって行われている証左であるともいえる。生徒会を中心にしてそれらは運営され、学園都市の正常な運営のために日々活動している。そのため、特別な権限を有していることが多い。
例えば風紀委員会などは国家で言う警察機構に相当する。学園都市の運営が生徒中心に行われていることの証左であり、一つの国家的存在である所以となっている。特別な権限を有する代わりに責任も生ずる。その権限を乱用することは許されない。生徒とはいえ、学園都市は一つの社会であり、今後の未来の都市のモデルなのであり、それを運営する生徒にはそれなりの責任や義務が課せられる。
学園草創期には生徒会の上に「理事会」が置かれ、常世財団の人間や国連の人間がその任について学園都市を運営しようとしていたが、学園都市の住民に学園都市の運営は任せるべきであるという意見が挙がり、常世財団が同様の意向を示したため、理事会は消滅した。
しかし、常世財団は今でも学園内に存在している。生徒会などに影響力を有しているといわれる。生徒会長の任命権は常世財団にある。なお、各委員会の下部組織や、下部組織として部活が作られることもある。
以下、常世学園における委員会を記述する。
「生徒会」
常世学園の組織機構の中の頂点にあるのがこの生徒会である。国家で言う行政府、立法府、司法府に相当する。
常世財団を除けば、「生徒会」よりも上に存在する組織は存在しない。
生徒会長、副会長、幹部、そして多数の執行委員によって成る委員会である。
学園都市運営の頂点にあり、強い権限を持つが、常世学園は自由と平等を標榜しているためよほどの非常時事態でなければ強権が発動されることはほとんどない。
基本的には無闇に学園を運営する生徒や教師たちの活動に関与しない方針とされている。
生徒会役員の選出方法であるが、生徒会長と副会長に関しては常世財団の指名によって行われる。
生徒会室は学園区域の校舎棟の最上階に設けられている。
「風紀委員会」
風紀委員とはその名の通り、学園の風紀を正すための委員会である。国家で言う警察機構に相当する。
警備に始まり、校則に違反する学生の逮捕や拘束、違反部活の取り締まりなどを行う権限を有する。不正を働く教師も風紀委員会の取り締まりの対象となる。
違反学生の懲役や再教育も風紀委員会の役割である。学園区域に本庁があり、常世島の色々な場所に分署などが存在する。それぞれの地下には違反学生などを拘留するための留置所等がある。
「交通部」「警邏部」「刑事部」などの部署が存在する(機能としては現実の警察のそれに相当する)。
風紀委員は刑事部などを一部の例外を除いて、職務時には風紀委員会の制服の着用が義務付けられている(無論非番等の場合は制服の着用義務はない)。
異能や魔術関係の犯罪も増えているため、風紀委員会の戦力の増強も必要との声も近年高い。
鉄道委員会と協力し、特殊車輌やパワードスーツ、機動兵器などの開発も行っている。
なお、常世島内の安全を保障する組織の一つでもあるため、怪異との戦いも風紀委員会の職務の一つである。
ただし、怪異との戦いは専門性が求められる場合もあるため、祭祀局や図書委員会との共同作戦が行われることも少なくない。
対怪異部隊も風紀委員会内にはいくつか存在しているため、祭祀局などの力を借りずとも怪異と対決することは可能である。
霊的事件についての調査においては、祭祀局と職掌が被ることもあり、事件解決の方針について議論となる場合もある。
公安委員会とは組織として互いに敵対しているわけではなく、共同の作戦を行うことも珍しくない。
ただし、公安委員会によって事件を持っていかれる場合も事実存在するため、管轄面での対立が現場レベルで行うことはある。無論、公安委員会が担当していた事件が風紀委員会の管轄に移る場合もある。
風紀委員会には「保安部」が存在しており、保安部所属の委員には、要人の警護や潜入調査、情報収集などを行うための仮の身分が発行されることもある。
保安部はその職務内容上、公安委員会と競合する場合があり、任務の秘匿性が高い場合はお互いに所属を知らないまま敵対するようなケースも存在する(大部分はすぐに事情が判明するため、問題になることは少ない)。
風紀委員会本庁(学園地区委員会街)
風紀委員会の本庁。常世島内の風紀委員会の署と委員を統括するための本部庁舎である。
構造としては、下層部分は日本国にて明治44年(1911)から大正12年(1923)まで使用された警視庁の「日比谷赤煉瓦庁舎」とよく似ており、後年増築された上層部分は現代的なビルという造りになっている。
レトロとモダンを共に備えた庁舎となっているが、これは過去を忘れずかつ現代にも順応するという風紀委員会の目指すべき理想の表現であると言われている。
設備としては一般学生向けの窓口・会議室・資料室・休憩室・宿直室・取調室などの他、各部署の本室が置かれている。特殊な部屋もいくつか存在している。
武器類・防具類の保管庫なども存在するが、保安上の理由からこれらの場所は風紀委員会の外には明らかにされておらず、本庁以外にも島内に保管場所は存在する。
また、一時的に違反者を勾留しておく拘置所なども存在する。
門には守衛の役を務める委員が配置されているが、来庁者に威圧感を与えないような様々な工夫がなされている。
風紀委員会の性格上警備は特に厳重であり、科学的・魔術的な多種多様な防壁が十重二十重に張り巡らされている。
「生活委員会」
学園都市における生活全般を司る委員会。必要に応じて学園都市内のインフラなどを管理・整備することを基本的な業務とする。日本国で言うところの総務省・厚生労働省に相当する委員会だが、もちろんあくまで「相当する」組織であるため、職務内容や内実がそれらと同一というわけではない。
交通(一部業務は鉄道委員会と連携して行われる)、医療・病院・保健関係(医療・病院・保険関係は《保健委員会》へと移管された)、郵便・運輸関係、情報ネットワーク関係のインフラ整備も生活委員会の担当である。
異邦人関係の問題についても基本的に生活委員会が担当する。状況や場合にもよるが、異邦人への「地球」に関する説明や、常世学園そのものの説明などを行うのは生活委員会が行うことが基本である。
常世島での生活一般を司る組織であるため、様々な問題が持ち込まれる委員会である。持ち込まれる問題を分類し、担当する各種委員会へ案内するなどの業務も行っており、学園生活の一般窓口的な性格を有している。
カバーする業務内容は多岐に渡るため、生活委員への負担を軽減させるために一部の業務を部活動に委託する場合もある。
生活委員会庁舎(学園地区委員会街)
常世島内・学園都市内のインフラや学生生活に関わる業務を執り行う生活委員会の本部庁舎。
外見としては一般的なビルであり、学園生活の主要な部分を取り仕切る委員会である故に一般学生向けの窓口が多い。
学内の物理的なインフラを整備するための機器類が保管されている倉庫が併設されている。
会議室や休憩室など、業務に必要な設備は全て揃っている他、転移荒野に出現した異邦人に「地球」のことを説明するためのレクチャールームや一時的な宿泊場所も用意されている。
常世島内の郵便局の本局も生活委員会庁舎に併設されている。
「保健委員会」
学園都市における医療全般を司る委員会。
国家における国立病院に相当する校立《常世中央病院》を始めとした医療施設群、及び学園地区に点在する小規模な診療施設である《保健室》を運営する。保健委員の多くは医療従事者としての職務を担うこととなる。
前世紀の日本国本土にて一般的であった西洋医学の他、漢方などの東洋医学など様々な地域の医療技術が保健委員会では用いられている。
治療には科学的な手法の他、《魔術》的な手法、歴史的に医療とも深く関わりのあった「錬金術」(アラビアの錬金術師の多くは医師であった)も積極的に取り入れられており、患者の症例によって使い分けがなされる。
いわゆる「呪術医」「巫医」なども保健委員会に所属している。これは《大変容》後の《魔術》が広がった「地球」のありようを良く示しているといえる。「呪詛」による病なども《大変容》後の世界では珍しいものではなくなっており、そういった症状への対処には《魔術》が用いられるのが常である。
《魔術》が現実のものとして存在している以上、「呪術医」などの《魔術》的医療従事者を排除することは非現実的である。故にこそ、前世紀ではいわゆる「オカルト」的な分類がなされてきた治療法も復活を遂げている。
《魔術》や霊的な事象への対処も求められることから、保健委員会と《祭祀局》は相互に緊密な連携を取っており、《保健委員会》に《祭祀局》の局員が出向することも行われている。逆も然りであり、《保健委員会》の委員が《祭祀局》に出向することもあり得る。
こういった事情の他、《異邦人》の中には「地球」の近代医学を忌避する者も存在するため、様々な医療手法が保健委員会では用意され、試みられている。
この保健委員会の施策とその結果は国際社会からも常に注目されるところである。
医療研究機関としての性格もあり、「地球」における科学的・《魔術》的な手法を用いて《大変容》以後の様々な病/疾患、魔術/異能性疾患への治療・対処法が研究されている。
《異邦人》が齎す医療技術は「地球」の医療を飛躍させる可能性もあり、保健委員会で積極的に研究が進められている。
「錬金術」は《大変容》を経て「復活」を遂げており、保健委員会内の錬金術関連部局によって研究が行われている。ヘルメスの学は、ヘルメス・トリスメギストスの「エメラルド・タブレット」の研究は、保健委員会にも受け継がれていると言えるだろう。「錬金術」の研究は人類の未来のために公開されることが前提となっており、秘伝・秘術としての「錬金術」を重視する《魔術協会》に所属する一部の組織や魔術師からは批判も行われている。
保健委員会での活動は、医療・看護・介護等の分野の授業単位として認定される。
保健委員会に所属することで医療関係の知識や経験を得ることが出来、保健委員会の所定の課程や試験に合格することで国際医師免許を取得可能。
現在ではほぼすべての「地球」国家が《常世学園》と国際医師免許の提携を行っており、在学中に医師免許を取得した場合、各国でも医師として働くことが出来るようになる。
保健委員会の審査を経て認可を受けることができれば、国家における私立病院や医療研究部活を学生・教員が設立することができる。運営資金については正しく申請すれば補助を受けることも可能であり、《大変容》後の「地球」における医療の未来のモデル形成が促進されている。
通常の就学年限である4年で国際医師免許を取得することは可能であり、本人の努力次第である。しかし、それだけの年月で全ての課程を修了するのはかなり難易度が高いことも事実であり、医師を目指す保健委員会の委員の就学年限は一般学生より長めの傾向にある。
保健委員会の組織内には麻薬取締部局・部隊(通称「麻取」)が存在し、常世島内の薬物犯罪に対しての捜査権・指導権・逮捕権を持つ。かつては《生活委員会》に置かれていた部署であったが、《保健委員会》に機能が移管された。
麻薬取締官は薬物犯罪専門の警察官というべき存在であり、正式に「武装」が許可されている。業務内容の性格上、風紀委員会と共同で作戦を行うことも少なくない。
《大変容》以後、科学的・《魔術》的を問わず作成された危険な麻薬・幻覚剤・霊薬・呪薬の類が世界中の暗部で流通しており、《常世島》もそれは例外ではない。《常世島》が世界の縮図としての性格を持つ以上、当然であるとも言える。
保健委員会という医療を司る組織の部隊であるため、薬物乱用者への治療も麻薬取締の部局が行う。風紀委員会が捕縛した薬物乱用者が治療のために保健委員会に預けられるケースは年々増えてきている。
当然ながら、風紀委員会などと同様に「麻取」は麻薬の売人や常習者を「殺害」するようなことを目的・前提とはしておらず、その目的は「治療」と「更生」にある。
その他、委員会内の特殊部隊の一例として、危険な状況の中での救急搬送を実行するための《特殊救急機動部隊「アスクレピオス」》を挙げることができる(後述)。
防疫やバイオハザードなどに対応する部隊も複数存在しており、事態に応じて現場に急行することとなる。
《異能》発現により心身に問題を抱えた者たちの校立サナトリウム(療養所)の運営も保健委員会が行っている。
校立サナトリウムは環境の良い静かな場所に設置されていることが多く、学園地区からは基本的には離れた場所に作られる。
様々な事情で登校が困難な《異能》発現者の学生・職員たちが療養をしながら過ごす場所だが、様々な技術が発展を遂げた現代においては、科学的・《魔術》的な手法を用いての極めて現実と近似した遠隔授業も珍しいものではなく、サナトリウムにいながら授業に出席することが可能である。
《常世学園》の外ではここまで整った療養と勉学を環境は中々用意できないため、異能性障害や病を持つ者の多くが《常世学園》への入学を希望している。
《異能》発現者の増加に伴い、異能性障害・疾患を持つ者も増加しており、専用の療養所の拡充が求められている。人員確保の問題などもありそれらの声全てに応えることは困難であるものの、努力は続けられている。
ロゴマーク・制服
保健委員会のロゴマーク・シンボルは、世界保健機関(WHO)などと同様に「アスクレピオスの杖」を中心としている。
ギリシャの医神アスクレピオスの所持していた杖であり、一匹の蛇が巻き付いている(ヘルメスの持つ杖ケリュケイオン(カドゥケウス)とは別物である)。
「アスクレピオスの杖」は病院や軍などの医療部隊の象徴として使用されてきたという歴史を持つ。常世学園においてもそれは変わらない。
「アスクレピオスの杖」の下に描かれたものは「盾」であり、常世島を病や病原体から「護る」という意志の表れである。「盾」の中の白十字は「医療」や「病院」がイメージされている。
ロゴの下部に描かれているのは「橘」の枝葉である。橘は言うまでもなく常世国の象徴とも言える果実であり、常世学園のシンボルでもある。橘は一年中葉が緑色のままでる常緑樹であり、「永遠性」や「再生」を象徴する果物・樹木であった。田道間守が求めた「非時香菓」こそは橘であり、不老長寿の仙果としても知られる。
こういった意味合いを持つ橘をロゴに組み込むことで、医療による長寿や癒やし、再生・復活の象徴としているのである。ロゴの「緑」も常緑樹の橘がイメージされている。
保健委員会の制服である「白衣」や車輌・設備などに保健委員会のロゴが描かれているが、単に「アスクレピオスの杖」のみを描く場合もある。色合いも部局によって変えることも可であり、必ずしも全てが緑色で統一されているわけではない。
制服は白衣のほか、ナース服(ズボン・スカート両タイプあり)や防護服、あるいは宗教的・呪術的なものなど多種多様であり、目的に応じて使い分けがなされる。
職務に支障がないのであれば制服の改造は自由である。その代わり、保健委員会のロゴマークを刺繍する、ワッペンを貼る、腕章をつけるなどの、身分を証す措置が求められる。
なお、委員としての活動外においては保健委員会の制服の着用義務はない。
特殊救急機動部隊「アスクレピオス」
《特殊救急機動部隊「アスクレピオス」》(Special Emergency Services Team:通称「S.E.S.T.」)は保健委員会内に置かれた特殊部隊の一つであり、救急部隊・救助部隊である。
保健委員会の救命士の中でも、特に危険な現場に赴く者たちが所属しており、極めて特殊かつ危険な状況下での任務遂行が前提となっている。
災害の中、落第街などの《常世島》内の危険地帯での活動の他、重火器などの兵器、魔術師や《怪異》による呪詛、神的存在の祟り、《魔術》や《異能》、毒、未知の病原体が飛び交う中での救急搬送が想定されているため、様々なタイプの救急隊員が所属している。
現場に駆けつけるための特殊救急車両も多く保持しており、《鉄道委員会》と連携して作戦を行うことも多い。
限界的な状況下での救急任務を遂行するため、万難を排すべく保健委員会にあって「武装」を行う特殊部隊の一つである。救命活動に障害となる事象を乗り越えるためにこの「武装」は使用される。
破壊や死を旨とする《怪異》や、病原体/ウィルスであれば別であるが、任務遂行の障害となる違反学生などを制圧することはあっても「殺害」することは目的としていない。保健委員会は「生命」を救うが最大の使命だからである。
特殊救急機動部隊の名称である「アスクレピオス」は言うまでもなくギリシャ神話の医神「アスクレピオス」から取られている。
「アスクレピオス」は卓越した医術により死者を蘇らせたことでゼウスの怒りを受けて死したという伝説を持つ。その「アスクレピオス」の事跡に倣い、本来であれば死ぬはずであった患者・傷病者を救うことを特殊救急機動部隊「アスクレピオス」は第一の目的としている。
たとえ自然の理法に反したとしても、救える命は万難を排して救わねばならない。それが特殊救急機動部隊のモットーである。
故に、救命の対象に差別はない。それがたとえ二級学生であろうとも、不法入島者であろうとも——全てを救うことはできないとしても、「アスクレピオス」は救助を行うであろう。
ロゴ・シンボルマークの色は救急車両の「赤と白」がイメージされたものである。特に「赤」は「緊急」としての意味合いが強くもたらされている。
中央に配置されている意匠は「アスクレピオスの杖」であり、保健委員会のロゴと差別化のため左右を反転させている。
本ロゴマークにおいて「アスクレピオスの杖」の先端が尖っているのは、「剣」や「槍」などの「武装」をイメージしたものだからである。そういった「武力」をもってして救急医療を阻む障害を突破し、生命を救うという意志の表れである。
「アスクレピオスの杖」をの周囲を囲む白の六本の柱は、国際的に救急医療の象徴となっている「スターオブライフ」をイメージしている。
「鉄道委員会」
常世島内を走る鉄道の運営を行う委員会。駅員として停車駅の管理・運営を行い、電車(路面電車・地下鉄等を含む)の運転士や車掌業務・鉄道警備等を行う。
業務内容の兼ね合いから生活委員会との関係が深い。郵便物の運搬・運輸関連などの業務は、生活委員会と鉄道委員会が協力して行うことが珍しくない。
基本的には「鉄道」の運営を行うが、その他交通機関も鉄道委員会の管轄下にあるものが多く、例えば学内の路面バスなどの統括も鉄道委員会が行っている。
島内には私鉄や私バスも運行しているが、これも鉄道委員会の許可を得てのことである。
高い科学/霊的・魔術的技術を有している委員会でもあり、学内防衛システムの一端を担う存在でもある。
いわゆる「列車砲」と言われる兵器類を幾輌も保持しており、学園の危機の際にはこれらの防衛装置が使用されることになる。
ただし、島内にて使用するようなものではないものではないため、学園草創期を除いてはこれらの「列車砲」の類が直接使用されたケースはほとんど無い。主に外敵への使用が前提とされている。
様々な車輌や機体の開発も行っており、車輌が二足歩行のロボットに変形するものや、パワードスーツの類、ある程度の思考を有する自動人形など様々なものが試作されている。
これらの車輌・機体は常世島の生活を豊かにするために使用されるほか、転移荒野などに投入されて常世学園の安全保障を一翼を担う。
鉄道委員会で開発された車輌・機体は各種委員会に提供されることも珍しくない。なお、各種委員会でも独自の車輌・機体の開発は行われている。
「鉄道」という存在は怪異や都市伝説の類とも関係が深いため、祭祀局との共同作戦を行うことも多く、祭祀局と協力して夜間などに出現する怪異を打ち倒すための「祓除列車」もいくつかの車輌が稼働している。
部局としては「運輸部」(鉄道委員会の主な業務である鉄道・交通機関の運行・車掌業務や運輸を担う)、「工作部」(車輌の開発や製造、メンテナンスを行う。一般的な鉄道車両を担当する「一般車輌課」、武装車輌や人型機体・パワードスーツなどを担当する「特殊車輌課」などが置かれている)、車輌運行時の敵性存在の排除や鉄道設備内での警察・警備的役割を担う「鉄道公安局」(公安委員会との混同を避けるため、「鉄道警備隊」などと呼ばれることが多い。かつての日本国有鉄道の「鉄道公安局」と近い性格を持ち、《大変容》以前の日本の「鉄道警察隊」とも近い)などが置かれている。
「鉄道公安局」は車輌内や鉄道関連施設構内での警察権・逮捕権を所有している(逮捕後は風紀委員会ないし公安委員会に身柄を引き渡すことが一般的)。
その職掌が風紀委員会や公安委員会とも近しいため、風紀委員会または公安委員会への移管が検討されたこともあった。しかし、「鉄道公安局」内部からの反対と、業務には鉄道への専門的な知識も必要とされることから、風紀・公安両委員会への移管は沙汰止みとなった。
とはいえ、鉄道関係の事件や兵器/機体運用・開発関係で風紀委員会などと連携することも多いため、両委員会の関わりは深い。「鉄道公安局」への出向を行う風紀委員も存在している他、逆に「鉄道公安局」から風紀委員会へと転属する者もいる。
半ば引退状態となった上級生の風紀委員会の委員を引き抜くことも一時期行っており、風紀委員会との関係が悪化したこともあったため、そういった問題を防ぐために「出向」という形が積極的に取られるようになった。
特殊な機体・車輌の整備や開発のために各委員会へと出向している「工作部」の委員も多い。開発やメンテナンスなどのノウハウを得るために鉄道委員会への出向を行う他の委員会の委員もいる。
事件発生の際は当然ながら風紀委員会などとの協力が必要となり、強く推奨されている。しかしながら管轄を巡って現場の委員同士で諍いが発生することもある。
学園創立初期の混乱期には、他の委員会と共同し、常世島に襲来した怪獣や巨大怪異などを鉄道委員会の兵器によって打ち倒した事例が存在する。風紀委員会や公安委員会と並んで常世島の安全保障を担う機関として鉄道委員会には大きな予算が分配されている。
常世学園の兵力は着実に増強の一途を辿っているため諸外国から懸念や批判が表明されることもあるが、モデル都市としての常世学園の重要性や常世学園がどこの国家にも所属していない組織であることから、現状は時折国連からの監査が行われるなどの干渉に留められている。
鉄道委員会庁舎(学園地区委員会街)
常世島内の鉄道や交通機関を司る鉄道委員会の本部庁舎。
常世島の様々な場所を走る鉄道などの交通機関の管制室としての機能も持っており、日々の運行の管理を行い、各駅舎に指示を出している。
庁舎内の中央管制室には常世島内の公共交通機関の運行状況を表示するモニターがいくつも置かれている。
車両の保管庫の一部も併設されている。常世島の危機の際に用いられる魔導式超長距離列車砲「稜威雄走」、荷電粒子列車砲「韴霊」が地下保管庫にあり、緊急時には各種委員会の承認の元地上に上げられ使用される。
とはいえ、そういった状況はめったに起こるものではなく、学園草創期以外では今のところ使用されていない。
島内に向けて使うような代物ではないため、常世島に外敵が迫った場合の使用が想定されている。
制服
鉄道委員会の委員には制服が用意されている。
委員会としての公務時には着用が必要だが、「学生の自己表現を阻害しないため」「学生の様々な事情に配慮するため」という理由からかなり自由な改造が認められている。理由があれば他の制服や私服を認められる。制服規定は厳しいものではなく、業務に差し障りがないのであれば原則としては当人の意志が尊重される。
これは他の委員会の制服も同様である。異邦人や「人類」以外の存在も常世島に存在する以上、性別による制服の規制は存在せず、委員自身の意志に任されている。
業務内容によっては規定の制服を着用せずに別の服装で活動を行うこともある。
鉄道委員会の制服一式は「制帽・制服・腕章(「鉄道」もしくは鉄道委員会の部局名が記載されるのが一般的)」である。
制服のデザインそのものは上述の通り改造可能だが、基本的なデザインは以下の通り。
ジャケットや外套(コート)はダブルボタン式で、襟は古い日本の学生服のような詰襟である。制服はズボンタイプとスカートタイプがあり、委員の性別に関係なく選択が可能。
制帽はかつてフランス陸軍や警察で用いられ、それを参考にした明治時代初期の大日本帝国陸軍や警察も使用していた「ケピ帽」と呼ばれるものである。
このタイプの制帽は《大変容》以前の日本の一部の鉄道でも用いられていたものであり、その流れを酌んでいる。
制服の色合いは濃紺あるいは深緑を基調としており、装飾の色は金色または銀色が多い。全体的な雰囲気としてはレトロである。しかし、業務に支障をきたさないのであれば制服の色の変更は自由である。「鉄道公安局」の制服は「黒」である。
また、鉄道警備業務を行う「鉄道公安局」の委員は剣・サーベル・銃器などの武器を携行する。
なお、上記の制服は主に鉄道運行業務や車掌業務などを務める委員に定められたものであり、車両の整備や開発を行う者や特殊車輌の操縦を行う者は必ずしも指定の制服の着用は求められておらず、業務に支障をきたさないようなデザインの制服が部署ごとに定められている場合もある。
「図書委員会」
学園都市に存在する図書館において図書館の運営、図書管理などを主に行う委員会。禁書図書館に所蔵された魔導書や禁書の管理も行うため、その業務には危険を伴うこともある。
常世博物館の運営も基本的に図書委員会が行う。常世博物館の地下収蔵庫にも取扱に危険を要する呪具やアーティファクトが収蔵されているため、それらの管理業務には危険が伴う。
上述の通り魔導書や禁書の類を頻繁に扱う委員会でもあることから、それらを封印する術に長けた者が多い。魔術に造詣の深い者も多く所属しており、禁書図書館での臨時の召喚術行使なども図書委員会が行う業務の一つである。
その他、学内の資料やデータの整理も図書委員会の仕事の一つとして挙げることが出来、「地球」でも最高の規模を誇る電子図書館も有している。
《大変容》を契機として復活を遂げた「アレクサンドリア大図書館」(新アレクサンドリア図書館)や、数多くの魔導書を所蔵するアメリカ合衆国マサチューセッツ州アーカムのミスカトニック大学附属図書館など、日本国の国立国会図書館・国立博物館、大英図書館・大英博物館、バチカン図書館などの「地球」の様々な図書館・博物館などと提携しており、それらの図書館から危険な魔導書やアーティファクトの寄託を受けることもある。他の図書館の蔵書のデータベース化にも協力しており、現在では「地球」の図書館の蔵書のうち、かなりの数が電子化されている。
図書委員会は、「地球」のみならずあらゆる世界の「知識」「智慧」「霊知」――を収集整理し、「地球」の未来のために活用することを至上の使命とする。故に、個人で出版した書籍などもその対象となり、常世島内で学生・教職員が出版した書籍なども収集されている。学生・教職員による寄贈も受け付けており、義務というわけではないが一冊は常世島の大図書館に寄贈するのが望ましいとされる。
図書委員会には、魔術的なオブザーバーとして《魔術協会》や《魔術学会》から人員が派遣されている。派遣されている人員も、多くは常世学園に学生または教職員として在籍しており、図書委員会の活動へのアドバイスや場合によっては監査も行う。とはいえ、《魔術協会》や《魔術学会》の意向が優先されるわけではなく、あくまで行動決定の主体は常世学園の図書委員会に存する。《魔術協会》と《魔術学会》には常世学園内の図書委員会に命令を下すような権限を当然ながら持ち合わせていない。
図書委員会が扱う書籍のジャンルは「全て」であり、一般書・小説・コミック・学術書・魔導書などの区別は問わない。近年では《大変容》以前の書籍の収集にも力を入れており、《大変容》以前の「地球」の歴史や文化の記憶を保存するという役割も担っている。
図書委員会本部(学園地区委員会街)
常世島内の図書館・蔵書・魔導書やアーティファクトの管理封印修繕などを行う図書委員会の本部。
学園地区の大図書館と接続されており、基本的な業務は図書館で行われるため、本部では主に事務作業が行われる。
図書の納入などは本部に行われ、登録作業や製本作業、写本・写経作業、電子化のための撮影の類もこの本部で行われている。
各種委員会の会議などで使用する資料の提供を行う役割も担っているため、各種委員会に書籍データを送信する作業や、あるいは書籍そのものを運搬する業務も本部にて行われている。
「バベルの図書館構想」
図書委員会では、「地球」を含めたあらゆる「世界」の知識/智慧を常世島に集積し、未来のために活かすという方針を近年打ち立てており、その方針は「バベルの図書館構想」と呼称されている。「バベルの図書館」とは、ホルヘ・ルイス・ボルヘスの同名の短編小説、および作中に登場する図書館に由来する名称である。
作中の「バベルの図書館」は、これまで書かれたあらゆる本、これから書かれるあらゆる本が所蔵されていると考えられているが、当然ながら現時点でそういったレベルに常世学園の図書館が達しているわけではない。
しかしながら、常世学園の大図書館の所蔵数は「地球」で最大であり、《大変容》を契機として復活した「アレクサンドリア大図書館」などの世界中の図書館とも提携することで、稀覯書の原本あるいは写本が多く集められている。他の図書館と相互ネットワークが構築されており、現在ではそれぞれの図書館に所蔵されたかなりの数の蔵書が電子化され、電子端末上で閲覧することが可能となっている。
書物にもよるが、収蔵される書籍は必ずしもオリジナルの書物であることを重要視しているわけではなく、内容が完備されているのであれば写本・電子化書籍でも問題なく蔵書として受け入れられる。
異世界の書籍の入手難度は当然ながら「地球」のそれより遥かに高いものの、「門」や《異邦人》を通じてこの「地球」に招来された異世界の書籍やアーティファクトもかなりの数が収集されており、「地球」の図書館・博物館では最も多くの所蔵を誇る。
書籍収集官
「バベルの図書館構想」に基き、その構想を実現させるため、図書委員会には「書籍収集官」が置かれている。これは常世島の内外で、様々な書籍を収集する任務を帯びた職である。
該当書籍を所有する人物・機関と交渉を行う、あるいはオークションなどに参加するなどして書籍の収拾を行う。原本の購入・回収が行えない場合は、写本の回収や作成、電子化も行われる場合がある。
「書籍収集官」は、常世島の図書館にあらゆる知識を蓄積するために行動する役職であると言えるだろう。
魔導書などが関わる関係上、所属者も禁書図書館関連の委員が多いとされているが、取り扱う書籍は禁書・魔導書に限るものではない。上述の通り、様々な書籍を収集・回収するのがその職務内容であり、その任務全てに危険が伴うわけではない。
「書籍収集官」を行いながら図書委員会内の他の部局に所属する者もおり、兼任可能である。
「書籍収集官」が現地にて封印そのものを行う場合も多いが、図書委員会には魔導書やアーティファクト専門の解析・封印を行う役職・部局も存在するため、誰がそれを行うかについては時と場合による。
なお、極めて危険な図書であり封印が必要とされ、かつ適正な管理が行われておらず、犯罪などにその図書が用いられている場合は、常世島の内部においてそれを接収する権限を「書籍収集官」は持っている。《風紀委員会》/《公安委員会》/《祭祀局》の協力、あるいは合同での書籍回収作戦も行われることがある。
もちろんその権限の濫用は許されず、私的な目的でその権限を行使した場合は極めて重い罰則が下される。「書籍収集官」は、魔導書などの類が表の世界に現れた《大変容》後の「地球」、そして常世島であるからこそ必要な職と言えるだろう。
学園草創期には、図書館の書籍を充実したものとするため、「書籍収集官」によるやや強引な書籍の接収も行われたことにより、国際的な批難が向けられたという歴史がある。この反省に基き、現在の「書籍収集官」は書籍の収拾を紳士的に行うことが基本姿勢となっている。
職務内容上、「書籍収集官」は学外・常世島外に派遣されることもある。教師や顧問が同行する場合が多い。この回収業務は、《大変容》後の「地球」における危険な魔導書の回収例の一例として、ある程度の情報が学外に公開されている。
また、常世島内外での作業に際し、回収対象が魔導書などの場合には危険が伴うことも多い。魔導書の自律的な起動や怪異の類の召喚、呪術の発動などが作業に付随する可能性が常に存する。故に、「書籍収集官」にはそういった危険を回避、鎮圧するための科学的・魔術的な武力の保持や武装が許可されている。
回収した魔導書の情報などは、公開することが危険な情報は当然秘匿されるものの、可能な限り公開するという方針が打ち立てられている。これは《魔術》を「地球」に根付かせ、普遍的なものとしようとする態度の現れと言えるだろう。当然、公開される内容に特定の魔術の秘奥・秘法の一部が含まれる場合もあり、それらを公開されることを望まない魔術組織・結社も存在する。
この状況に対する《魔術協会》からの批判は常に存在しており、「書籍収集官」の活動を牽制、あるいは監視するために、《魔術協会》から《図書委員会》の一員として、結社員が入学するケースもある(学園の運営に直接関わることができるのは、学生と教職員だからである)。《図書委員会》や《生徒会》もそれは承知しており、監査の一環として受け入れている。
どこまでの情報を一般に公開すべきなのかという問題は常に存在しており、そういった《魔術》関連の書籍の取り扱いのテストケースとして、《図書委員会》の活動は学外でも注目されている。
「書籍収集官」はその職務の性格上、様々な書物への幅広い知識が求められる。しかし、全ての人がそういった知識を有しているわけではない。そして、上述の通りその任務には危険が伴い、一定程度の武力も必要となる。そういった力も、全ての人が有しているわけではない。これらの条件を同時に満たす存在は稀であるだろう。完全な条件に合致する存在のみを求めていては、「書籍収集官」のなり手がなくなる可能性が高いため、書籍収集任務には複数の才能を集めたバディあるいはチームで行うことも多い。当然ながら、場合によっては単独での活動もあり得る。代表的な例で言えば、書籍収集任務の現地には武力や魔術を用い荒事に長けたような者が向かい、それをサポートする形で知識を担当する者が同行、あるいは遠隔でサポートを行うといったケースがある。こういったバディ・チーム制は他の委員会でも用いられている。
「書籍収集官」となるためには、職務遂行に必要な知識や技術、話術、武力・身体能力のいずれかが求められる。そのための簡単な試験や面接の類は存在するが、そういったものは当人の努力で補える面も多い。重視されるのは当人の意欲である。
「書籍収集官」は図書委員会の役職ではあるものの、《祭祀局》の活動とも近い面があるため、《祭祀局》の局員が「書籍収集官」として出向する例もある。その他の委員会でも、何かしらの図書や魔術の知識、魔導書の取り扱いや封印作業の経験を得るために「書籍収集官」として出向を命じられることがある。
近い性格の図書委員会の役職には「遺物管理官」がある。魔術・呪術的なアーティファクトの回収や収集を行い、それらの管理や封印作業を常世博物館にて行う。基本的な性格としては対象物が「遺物」となった「書籍収集官」として考えて差し支えない。
なお、「書籍収集官」と近しい職務・職掌を持つ図書委員会内の部局・下部組織はその他にも存在しうる。より魔導書を専門的に扱うものや、特定の信仰・宗教に対応したものなど、細分化された部局もあり、「書籍収集官」がその全てというわけではない。
「公安委員会」
司法権も一部有している委員会。常世学園の体制を揺るがすような事件やそれにまつわる人物や組織を調査し、監視、解散させる権限を持つ。
現実における公安警察や公安調査庁などが合わさったような組織である。常世学園の公安を司る。そのため、情報も開示されていないことが多い。
公安委員会の中でも、特に諜報活動や潜入調査などを行う委員は、仮の身分が付与される場合もある。そういった公安委員は、違反部活の調査や内部工作に従事することが多い。
風紀委員とはまた別の独立した警察機構といえる。
個々人の関係は別として、組織として風紀委員会と対立しているわけではなく、共同での業務や作戦に従事することも少なくない。
ただし、一部の職掌が風紀委員会と被っていることも事実であり、事件をとちらの委員会が対処するかなどの管轄問題は時折発生する。
委員会の性格上、公にされない任務も多いが、全ての委員がそういった任務に従事するわけではなく、公安委員としての身分を公開している者も存在する。
常世島内で効力を発揮する運転免許証の発行も公安委員会が行う。運転免許発行のための試験の管轄は公安委員会に属するが、実際の業務は風紀委員の交通部に委任されている。
原則として常世島内でのみ効力を発揮する運転免許証であるが、所定の審査や申請を経ることで国際免許証としての効力を付与することが可能。これにより、常世島外の国家での運転免許証とすることが可能(ただし、利用先の国家での申請等は必要)。
免許証などについての詳細は「こちら」を参照
常世学園では、重大事件の証人となる者に対して証人保護プログラムが適用される場合があり、その際の新たな学籍・身分の発行や対象者の保護の手続きは公安委員会庁舎で行われる。
証人保護プログラム・証人の保護は当然ながら風紀委員会と提携して行われることが多いため、風紀委員の公安委員会庁舎への来庁も珍しくない。
証人への呪殺などの魔術的攻撃を回避するため、証人の氏名の変更(「名」は呪いの対象となるため)などは速やかに行われる。
公安委員会庁舎(学園地区委員会街)
日本国の法務省旧本館に近い、格調高い外観をしている。
保安上の観点から内部の構造全てが明らかにされているわけではなく、潜入任務などに従事する公安委員が使用することの出来る隠された通用口や通路も多い。
潜入任務を行う場合は名前や顔を変える場合が当然ながら普通であり、公安委員会としての身分を知られることを回避するためにこのような隠された出入り口が利用される。
会議室や資料室、休憩室などの基本的な設備のほか、取調を行うための部屋なども完備されている。
公安委員会の性格上、学生の個人情報なども取り扱うことが多いため、警備は特に厳重であり、科学的・魔術的な多種多様な防壁が十重二十重に張り巡らされている。
「式典委員会」
常世学園で行われる公的な各種式典、催しやイベントなどを生徒の意見などを参考にしつつ実行に移す委員会。
学内での式典を司る委員会かつ外部の賓客への対応なども行う。
式典委員会は儀仗隊も独自のものを所有しており、様々な「楽隊」が儀仗隊に所属している。
儀仗隊は各種式典にて登場し、様々な「楽」を奏することに勤めている。学園祭である常世祭においてはライヴ・イベントを式典委員会が主催することもある。
様々な部活など学内組織の行う「イベント」への助言なども行っており、式典委員会を通せば話が早いことも多い。
「式典」を冠することから、ともすれば堅苦しい印象を受けることも少なくないのだが、かなり俗的なイベントにも式典委員会は融通を利かせてくれる。
学内でも有数の「リッチ」な委員会であり、本部庁舎や制服などはみすぼらしくないような高級な装飾が施されている。
これは、学外の賓客に対して式典委員会が常世学園の「顔」となる場合が少なくないためであり、不当に装飾を凝らしているなどというわけではない。
式典という性格上、風紀委員会や祭祀局との関わりも深く、儀仗隊として式典委員会の委員が各種委員会に出向しているケースも存在する。
常世島ではほぼ毎日何かしらの民間のイベントが行われているため、学園行事が無い日も式典委員会の業務は行われている。
部局としては「式部局」(王朝時代以降の日本の年中行事・伝統行事などを担当する)、「雅楽局」(日本の「雅楽」(管弦・舞楽・催馬楽・国風歌舞など)を演奏するための部局であり、主に神社仏閣の祭典・法要の際に出動する)などのほか、「興行部」(常世島内の興行・芸能活動などの推進を行う。演劇・舞踏会・スポーツなどにも関わる)、世界各国の音楽に対応した「楽隊」(傘下の部活も含まれているため、楽隊は大小様々に複数存在する)などが存在する。また、イベントで提供する料理の調理を行う部局も設定されている。
下部組織が多いことも特徴であり、音楽・芸能系、イベント系の部活が多く式典委員会の傘下に属している。
部局によって職務内容や所属委員の性格がかなり異なるため、式典委員会を一言で説明することは困難である。
音楽関連でいえば、雅楽の伶人(楽人のこと)がおり、オーケストラを構成する者たち、軽音楽バンド、民族音楽団体などもそれぞれの部局や下部組織に存在しており、それぞれが個別に活動を行っている。
常世島の音楽・芸能系、イベント・興行系の部活や団体は、その活動を通じて常世島の様々な場所やイベントの「公報」を行うことと引き換えに、部活などの団体が式典委員会の「公認」を得ることも可能である(無論非合法な組織は対象とならない)。
「公認」された団体は式典委員会より活動費の援助などを受けることが出来るが、「公認」を受けていない団体より優遇されるというような性格のものではない。特別な権力が付与されるわけでもない。
式典委員会による「公認」というシステムは、つまるところ常世島の音楽や芸能、興行などを盛り上げるための支援制度である。
様々な理由により委員会の傘下に入ることを好まない個人・団体も存在するため、全ての音楽・芸能・興行系の団体・個人が式典委員会に所属しているわけでは勿論ない。
式典委員会庁舎(学園地区委員会街)
常世島内の学内行事を取り仕切る式典委員会の本部庁舎。
式典を司ることから庁舎は装飾が凝らされており、島外からの来賓のための迎賓室も用意されている。
学内行事が行われる時期はかなりの忙しさを見せ、人の出入りがかなり多くなる。
学内のイベントの管理も行っており、学内イベント開催の申請のために来庁する学生も多い。
学内式典の際に活躍する儀仗隊や楽隊の練習が日々行われており、そのための練習施設も併設されている。
楽隊は世界各国の楽器演奏者が集められており、雅楽・アイリッシュ・オーケストラなど様々なジャンルの演奏を行うことが出来る。
式典という性格上祭祀局と共同して業務に臨むことが多いため、祭祀局員の出入りも多い。
興行部芸能課(歓楽街・常世渋谷に複数の事務所あり)
式典委員会の興行部中でも、特に「芸能」関係に特化した部局である。芸能・音楽系の下部組織も多くはこの部局の傘下となっている。
歌手・ミュージシャン・アイドル・俳優たち、またそれらのグループが「委員」として所属している。
芸能課への所属は基本的に希望制ではあるものの、様々な理由により式典委員会の他部署の委員が異動してくるような例も存在する。
複数の「事務所」が芸能課内に存在しており、「事務所」間にある種の競争原理が働くことによって常に活発な活動が行われる部局として知られる。
大規模な「事務所」の場合は求められるレベルも高くなるため、オーディションなどが行われることも珍しくない。
また、通常の秩序に収まることの出来ない学生を所属させ、音楽などの道に進ませることで、世界に自身の居場所を発見させるといったような更生制度としても機能しており、一定の成果を上げている(こういった更生支援策は他の委員会でも取られている)。
上記のような性格を持っているため、他の委員会の部局とはかなり毛色が違い、一般的な委員会の職務の内容とは異なっているものの、れっきとした式典委員会の一部局である。
かつて芸能課に所属していたグループにより、「歌舞」を通じて、常世島に現れた《異邦人》との一触即発の事態を避け、相互理解を導いたという事例が存在し、一種の伝説と化している。
伝説は別としても、異文化のコミュニケーションとして「音楽」や「踊り」は極めて有効であることが知られており、《異邦人》との融和・友好の手段としても注目を集めている。無論、“神々”との交流にも「楽」は深いつながりがあるため、祭祀局と共同して作戦に望むことなどもある。
式典委員会は、そういった異文化・異種族コミュニケーションの試験場であるとも言えるのだ。
なお、当然ながら常世島に存在するアイドル・歌手などの全てが式典委員会に所属しているわけではなく、活動に式典委員会の許可が求められることもない。
芸能課所属アイドルグループ 《超常的歌舞音曲偶像集団「常世少女」》
式典委員会の芸能課の中でも特に有名なグループとしては、「常世少女」が存在する。
ここでいう「常世」とは「永き齢(よ)」を指しており、長寿・長老・永久不変の人を意味する(『日本書紀』顕宗天皇即位前紀の歌謡内の「……たなそこも やららに 拍ち上げ賜へ 吾が常世等」を参照)。
すなわち「常世少女」とは不老長生の少女、永遠の少女、不変の少女を意味する。「常世少女」に所属するは、見た目は幼いながらも永き時を生きてきた者たちである。
《大変容》の後、神々、神仙/仙人/真人(神人)、吸血鬼、妖精・エルフ、天使、悪魔、妖怪などが現実のものとして「復活」を遂げた。
それらの存在の中には、悠久の時を経ながら、老いることを知らぬ者たちが存在していた。
そんな存在たちが所属しているのが「常世少女」である。
そういった者たちが人の世にて生きるため、「人」と繋がるための手段の一つとして「歌」と「舞」を選択した結果、「常世少女」は誕生した――とされる。
信仰・畏怖の対象としての偶像・神像たる「アイドル」は変容を遂げ、新たなる姿を得たのである。
《大変容》後に「復活」を遂げた者たちと「人」との新たな関係の一つ、超常的存在の形而下の姿の一つとして注目に値するであろう。
超常にして霊的なる存在の「模像」「似像」としてのアイドルはこうして「復活」した――と、そのように語られることもある。
「常世少女」内でもいくつかグループが存在しており、そこでもある種の競争原理が働いている。
このため、常にメンバーは募集されている。
楽曲のジャンルは統一されておらず、民謡から神楽歌、オペラに歌謡曲、詩吟、電子音楽、現代音楽など様々である。
代表アルバムは『常世少女、あるいは現代の藐姑射神人』、『非時香菓』など。仙人を名乗る少女たちを中心にして編まれたものであり、ステージ上の仙術で話題を集めた。
委員会関係組織
「祭祀局」
常世島内の「霊的守護」「霊的調和」を司る機関。
神性や精霊の類、天神地祇(日本における天つ神国つ神や中国における神祇の意味ではなく、全ての霊的な存在をここでは指す)への「祭祀」を行い、常世島内の霊的な調和を守護することを職務としている。退魔的な職務も存在するが、あくまで主たる目的は島内の霊的な調和を保つことである。
学内の宗教団体についての管理を行うのは「公安委員会」などの管轄であり、「祭祀局」が担当するわけではない(祭祀局としての知見が必要な場合は無論協力を行う)。特定の宗教の布教や弾圧を行うことも勿論ない。常世学園内では宗教の自由は「強く」保障されている。
学園草創期においては生活委員会の一部局であったが、その職務の特殊性・専門性のために独立した。
「地球」における伝統的な宗教を始め、新旧・異世界のものを問わず様々な「宗教」「信仰」の祭司・宗教者――神職や巫女、陰陽師、僧侶、道士、神父・牧師、祓魔師(エクソシスト)、ドルイド、シビュラの他、霊能者や異世界における神官など――が局員として集められている(破壊的・校則に違反するようなものは除く)。あらゆる宗教で信仰される「神性」への対応が求められる故である。
執行の必要に迫られる祭祀の種類は多種多様であるため、霊的・宗教的・魔術的な祭祀・儀式だけではなく、それらと科学を習合されたアプローチも行われる。科学的な方法に対して、局内では反対意見を持つものが存在しないわけではない。
専門的な祭祀・儀式を求められる事件・事象に対して「風紀委員会」や「公安委員会」、「生活委員会」などより諮問があった場合は助言を行う。あるいは直接解決に協力することも多い。ただし、「風紀委員会」や「公安委員会」にも霊的な事象への対処を行う部局は存在するため、それで事足りる場合は祭祀局の出動は行われないこともある。基本的には他の委員会との足並みは揃っているが、霊的な解決を快く思わないものも一部存在するともいう。
常世島内には特定の土地の領有を主張し、祟りや霊障などを発生させる神性・精霊(妖怪なども含む)が稀に現れる。「祭祀局」の局員たちは神性に対応した「祭祀」「祭儀」を行い、神性と交渉することとなり、現れた神性に対して宗教施設群に新たな社や祠を設け、そちらへの鎮座を要請するという例が多い。島内の歪んだ龍脈や地脈の修復も行う。
島内に害意のみを齎すものは「怪異」として判断され、討伐・除霊・調伏が行われることもある。場合によっては局員との「契約」や「使役」の対象となることもあるだろう。なお、祭祀局の使役・契約対象となった神性や精霊、悪魔に類するものも安全性が証明された場合は入学も可能である。
なお、あくまで「祭祀」は学園内に「神」「精霊」などとして現れるものを対象とし、「生徒」「教師」「職員」として振る舞う神性などについては対象外である。たとえ「神」であったとしても、常世学園に「生徒」や「教師」として登録した以上は他の存在と平等に扱われるためである。
「祭祀局」は転移荒野などに現れた「神性」とファーストコンタクトのために出動することもあり、祭祀や交渉の結果、その神性に入学の意志が認められる場合は生活委員会にその旨を伝えるということも行う。ただし常に祭祀局が出動するわけではない。
常世島内に発生する霊的な事象は多種多様であるため、必要な場合は局外の宗教者や祭祀系部活への協力要請を行うこともある。
怪異の中には、祭祀局によって使役される者たちが存在する。主に「学生」としての道を選ばなかった者たちはこれに当てはまることが多い。
自発的に協力している、調伏された結果協力しているなど祭祀局に所属する理由は様々である。
怪異との共生のあり方については様々な施策が講じられており、その試験ケースの一つであるといえるだろう。
怪異を使役するということについては、祭祀局の中でもよく思わない局員もいるため、時折議論に発展する。
比較的、陰陽道・修験道系の祭祀局員は、怪異を使役することについて肯定的であるとされる。
祭祀局本部(学園地区委員会街)
学内の霊的秩序・霊的防御を司る組織である祭祀局の本部。
祭祀局草創期は日本人の祭祀局員が多く、神道系の祭祀がメインで行われていたため、本部庁舎は屋根に千木や堅魚木を備えており、神社の社殿を模したかのような外観に作られている。
霊的防御のための様々な社・神殿・教会・祠の類が鎮座しており、常世島に存在する様々な神に対し、それぞれに応じた宗教・信仰の祭式作法によって日々祭祀が行われている。
日本国の京都の吉田神社境内の斎場所大元宮の如く、常世島内の「天神地祇八百万神」(つまり全ての神である)を祭る神殿も祭祀局本部の敷地に作られており、霊的防御の重要な拠点である。
その他、明代の神怪小説である『封神演義』に登場する「封神台」も設置されており、島内に出現した友好的でない神仙の類を祭祀局の道士が倒し、魂を神として封じる際に用いられる。
祭祀局と戦った怪異の中には、祭祀局の元で式神や使い魔として使役されることを条件として祓われずに済んだ者も存在する。
そんな存在のための宿舎の類も祭祀局本部に置かれている。
これらの存在の使役は危険と常に隣り合わせであり、かつ霊的存在の人権問題として批判の的になることもあるが、霊的存在をどのように人類社会になじませていくかという試験的行為であるといえる。
地下には様々な霊的防壁の張られた管制室が数部屋存在し、常世島内での祭祀局の大規模祭祀・祓・作戦の際の司令部として機能する。
なお、場合によっては祭祀局本部ではなく作戦の現場に司令部が設けられることもある。
霊的な攻撃を避けるという保安上の観点から、詳細が明らかにされていない部屋も多く存在する。
加えて、霊的な防御については常世島一の設備を備えている。
常世島の存亡の危機の際には、祭祀局で祭る「天神地祇八百万神」に祈りを捧げる最大規模の霊的島防祭祀が行われる。
気軽に行えるような代物ではなく、準備などにもかなりの時間や手間がかかるため、通常ではまず行うことはできない。
研究機関
常世島には主に「異能」や「魔術」、「異世界」について研究を行う機関が多く存在する。常世島が一種の研究都市であると言われる所以である。
ここでは学園内に本拠を置く研究機関を挙げる。
「異能学会」
異能学に関する研究連絡・議論、知識の交換、提携の場となることを通して異能学の進歩普及に貢献するための事業を行い、学術文化の発展と異能についての正しい理解の啓蒙に資することで、《大変容》以降の混沌たる世界の調和に寄与することを目的とする。異能の実態やその種類、歴史、制御法などについて様々なアプローチに基づいて研究する学会である。異能学関連では世界最大規模。
異能を研究することで、異能を持つ者と持たぬ者が平等に暮らしていく社会システムの範を世界に示すということが学会の理念である。常世学園が未来の社会のテストケースであることから、常世学園と異能学会の関わりは深い。学生の異能についての研究調査報告もここで行われるが、生徒本人が公開を許可した場合や特別の場合を除き、プライバシーなどは厳守される。
学生や教職員の入会や研究発表は当然可能で、異能の有無も問わない。その発足は《大変容》以後であり、常世財団の支援によるものである。学会誌は『異能学』。常世学園の生徒・教師であるならば誰でも受け取りが可能。
「魔術学会」
魔術学に関する研究連絡・議論、知識の交換、提携の場となることを通して魔術学の進歩普及に貢献するための事業を行い、学術文化の発展と魔術についての正しい理解の啓蒙に資することで、《大変容》以降の混沌たる世界の調和に寄与することを目的とする。魔術の実態やその種類、歴史、制御法、社会における役割などについて様々なアプローチに基づいて研究する学会である。魔術学関連では世界最大規模。
魔術を「学術的」に研究する機関であるため、魔術協会・魔術結社の類とは異なるが、多くの魔術結社が参加している。《大変容》以降、魔術の存在は公然の事実となり、世界的に大きな混乱を齎すこととなり、これに危機感を抱いた魔術協会が常世財団の支援を受けて設立した。
魔術を人類の発展のための技術体系と位置づけ、魔術についての正しい知識や使用法、危険性などを世界に公表していく役割も担っているが、そのためにこれまで多くの魔術結社が秘匿していた術理や魔導書の存在を暴くこととなったため、一部の魔術結社や魔術師からは批判の声も存在している。
魔術協会がその設立に関与したものの、魔術学会は魔術協会の傘下にあるわけではない。結成当初は魔術協会の影響を強く受けた学会であったが、現在は常世島の魔術の学術機関として独立している。そのため、魔術協会とその性格を一にするものではない。現在ではアカデミックな組織としての性格が強く現れており、必ずしも魔術協会と魔術学会の意見が一致するとは限らない。
当然ながら研究機関であるため、入会の条件に魔術使用の有無は問わない。学生の入会も可能。学会誌は『魔術学』。常世学園の生徒・教師であるならば誰でも受け取りが可能。
学外組織
異能・魔術関係組織
「世界魔術協会」
一般に「魔術協会」と呼称される。《大変容》によって世の表舞台に魔術の存在を暴露されてしまった大小の「魔術結社」の類が洋の東西や教義の違いを超えて結成した協会。
魔術の伝統を守り、魔術の命脈を保ち、魔術の正しい使い方を伝道することが目的であるとする。
上記のように公称してはいるものの、人類全体に魔術の恩恵をもたらそうとしているというわけではなく、魔術が無闇に一般の人間に広まらないように統制することが真の目的でもあるという。
このため、常世学園や魔術学会の魔術を広く一般に広め啓蒙するというような態度には批判的である。魔術は高度な技術体系であると称し、一般に広く流布させるには危険があるという慎重な立場を取る。
秘術とされてきた術式や魔導書の存在を明らかにされたために、常世学園や魔術学会に敵意を持っている魔術師も一部にはいるという。なお、魔術協会内にも常世学園や魔術学会に親和的な者もいないわけではない。
異能についても、魔術協会上層部には懐疑的な見方をする者が少なくなく、伝統的な旧来の魔術や魔術世界を重視する集団だと言えるだろう。
常世学園の動向を探るために、生徒や教師として入学する魔術協会会員も一部存在する。
魔術学会への態度としては、学会の学術大会に代表団を派遣するなど、相互の関係が必ずしも悪いというわけではないが、魔術学会は広く魔術を学術的に研究し、その結果を一般に正しく広め還元することを目的とするのに対し、魔術協会も表向きは同様な目的を掲げているものの、真の目的は魔術が無闇に一般の人間に広まることを統制することであり、魔術学会がアカデミックな機関としての性格を強くしていくごとに彼我の間に摩擦が生まれていった。
上述したとおり、魔術学会に対し魔術結社などから批判が行われており、魔術協会内でも魔術学会との立場の違いから批判的な言説を行う魔術結社・魔術師は少なくない。《大変容》以前は魔術はごく一部の人間のみが知る隠匿された術であったが、《大変容》によってそれが表の世界に露見してしまったこともあり、現代魔術世界の代表的立場となった魔術協会に対して、その歴史への批判が外部より行われることもある。
また、伝統的な魔術師の家系などへの資金的な援助なども行っている。《大変容》に伴う災害による混乱や、魔術世界への批判の煽りを受ける形で経済的に困窮し、没落の憂き目に遭う魔術師家も少なくはなかったためである。また、常世学園の登場により、伝統的な魔術師家を含め魔術を学ぶものの多くが常世学園に入学することが多くなり、その経営状況を悪化させた一部の伝統的な魔術学校などへの支援も行う。
本部はアメリカ合衆国マサチューセッツ州の都市、アーカムに置かれている。
世界各地に中小規模の支部が置かれており、日本国の京都支部(神職・巫女・仏僧・陰陽師・修験者などが多く所属する。魔術協会の中では常世学園と比較的有効的な関係にあり、祭祀局との関わりも深く、神職や陰陽師の子弟を常世学園に入学させることも少なくない)、イギリスのロンドン支部(ロンドンを見舞った《大変容》災異である「闇の紀元」や「時代の再反復」の影響により、対「怪異」の術式を持つ魔術師・祓魔師・聖職者などが多く所属し、戦闘的な性格が強め。特に吸血型怪異への対処能力が高い)、アメリカ合衆国マサチューセッツ州のセイラム支部(暗い魔女裁判の歴史から転じ、現在は魔女の街としての性格があり、セイラム支部の構成員の多くは魔女である。魔女裁判時にセイラム外へと脱出していた魔女たちの末裔も多いという)が有名。
常世学園には常世島支部が設けられており、学園の魔術関係の施策に意見を投じる。
世界魔術協会は魔術結社集団の中では最大規模ではあるが、それ以外の協会が存在していないわけではない。
「国際異能発現者連絡会議」
《大変容》後に結成された異能者の組織の中で最も巨大なものがこの「国際異能発現者連絡会議」である。
異能者の地位向上や人権問題の解決を標榜する。
各国に支部があり、異能に発現した者たちの保護なども行い、孤児院なども運営している。
異能者の権利や人権を強く主張するあまり、魔術師や異邦人を軽視する傾向が見られ、常世学園や異能学会に対して批判的な立場を取る。
異能者のみを集めた学園都市を構想しているものの、実現には遠いという。
本部はドイツ連邦共和国の首都ベルリンに置かれている。常世学園には常世島支部が設けられており、学園の異能関係の施策に意見を投じる。
なお異能者の国際的な集団は「国際異能発現者連絡会議」以外にも多く存在する。
「国際異能者協会」
異能主義者によって作られた政治結社。「国際異能発現者連絡会議」から分派した「異能主義者同盟」を前身としている。「国際協会」とも呼称され、単純に「インターナショナル」と呼ばれることもあり、この呼称が最もよく使用される。
異能者の権利や人権を強く主張するのは「国際異能発現者会議」と同様であるが、その行動はより直接行動的・武力闘争的であり、暴力・武力や異能の行使をも是認している点に特徴がある。
「異能者」が一部の国家や地域で差別され、迫害されているという事実を強調し、「異能者」は異能を持たない者たちによって虐げられていると主張する。しかし、実際には「異能者」は《大変容》を契機として出現した人類の革新を体現する存在「超人」であると唱え、旧来の人類を超えた優位存在であると解釈しており、「異能者」たちの自覚や団結を促してもいる。
その主張の中でも特に異彩を放つのが、「人類全てが異能者になるべき」とするものである。「異能」の獲得は人類の進歩・革新であり、いずれ人類の全てが「異能」を持つようになると予言めいた主張を展開している。そのため、人工的な異能発現に対しては賛意を示しており、協会内では異能発現のための薬品の開発や実験が繰り返されているともいわれる。
人類全てが「異能者」となれば必然的に異能者への差別は消え、「異能」という言葉すらも消えてなくなるという理想を標榜している。
虐げられている「異能者」たちに「革新的存在」「超人」であるという自覚を持たせ、「異能者」が団結して差別に立ち向かい、世界を牽引していく存在となることを目指す結社といえる。
「異能者たちよ、気づくが良い。我々には「力」があるではないか。旧来の人類が持ち得なかった超常の力を我らは持っている。ならば、行動しよう。戦おう。我々は「超人」であり「新なる人」である。世界を革新させる存在であることを、搾取者たちに思い知らさなければならない」
「異能者宣言」(「超人宣言」などとも呼ばれる)という協会綱領を作成しており、諸国家・常世島にて出版し頒布を行っている。
「異能者宣言」の中の、「万国の異能者よ、団結せよ!」、「異能者に祖国なし」(国家・人種という括りではなく、「異能者」という点を紐帯とする集団であること示す)などの言葉が特に有名であり、「国際異能者協会」のスローガンになっている。
異能者への差別的な行いには武力・暴力を以て抵抗・対抗し、そのような所業を行った組織・国家・個人への攻撃をも行う組織である。
直接行動・武力闘争を是認し、強制的な異能発現を推奨するという立場は国際的にはとても認めることができないものである。少なくとも、建前上は異能の有無で人間の価値が計られることはなく、異能の有無に関わらず人類は平等であるとされているためである。
このため、諸国家からはテロ組織として認識されている。秘密結社・地下組織としての側面が強く、組織の全体構造については不明な点が多い。
本格的な活動が開始されたのはさほど昔のことではなく、常世学園創立後に発足したと目されている。
常世島にも支部が存在しており、世界で最も「異能者」が集まると言える常世島での活動は活発である。「異能者」による蜂起・世界革命すらも唱えることがあるため、公安委員会の監視対象となっている。
構成員のほぼ全てが「異能者」であり、かつ「異能者」であるがゆえに差別や迫害を受けた者たちであるとされる。
「異能者」至上主義とも言える主張を繰り返していることから、異能を持たない者の「異能者」への悪感情を刺激しており、多くの「異能者」は「国際異能者協会」の行動に対して批判的である。
なお、19世紀から20世紀に存在した国政政治結社「インターナショナル」との関係は一切ない。